耐える透矢！混沌の侵食を阻止せよ！②　作：はにわ改

　
ーー無機質な表情から繰り出されるウリエルの非情の一閃。
攻撃表示にされたアリアスは、己の身は護れても、マスターである透矢に降りかかる戦闘ダメージは回避できない。
そしてウリエルはこのターン、無敵。
ーー万事休すか。
誰もがそう思った。

「ーーリバース・罠カード、オープン！」

「罠カード？」

「『英雄の落日』！」

だが透矢の命の灯は消えなかった。
ギリギリの一線で踏みとどまる。

「自分フィールド上のT・Ｆモンスターを選択！
その素材となるモンスターを全てデッキに戻し、その後でカードを２枚ドローする！」

「透矢くん・・・さすがのしぶとさね！」

「俺はアリアスを対象に発動！」

地影戦で使われた罠カード。
アリアスの素材モンスター、最後の一枚でもあった『白銀の盾』が墓地からデッキへと回帰する。

「すまない・・・アリアス！」

『ーー気にしないで、マスター』

背に腹は変えられなかった透矢。
そう、墓地から素材モンスターが消えるということは、T・Ｆモンスターは場に維持できない事を意味する。
済まなさに顔を歪ませながらアリアスに声を掛けると、アリアスは穏やかな笑みでそれに応え、そして再びエクストラ・デッキへと帰っていった。
そして対象がいなくなったことでウリエルの攻撃は中断。
攻撃する前へ巻き戻され、再び対象を選ぶか攻撃しないかを選択する事となる。

「俺は２枚ドロー！」

アリアスの命の代償とも言うべきか、２枚のカードを得る透矢。
場が混沌天使によって制圧される中、希望を繋がなくてはならない。

「ーーバトル、再開！
ウリエルで『三騎士 守護の鎧』を攻撃！」

巻き戻されたバトルが再開。
改めて対象を選び直し、守護の鎧へと差し迫るウリエル。
今度こそ透矢に防ぐ術はなく、守護の鎧はウリエルの一刀のもとに切り裂かれた。
しかし守護の鎧は守備表示。
透矢にダメージはない。

「ーーバトルフェイズ、終了。
続けてメインフェイズ２」

刹那はバトルを終える。
まだウリエルの２回目の攻撃、ミカエル、ガブリエルの攻撃が残ってはいるが、いずれもリューゼリッドより攻撃力は下である。
今やリューゼリッドは透矢の場の最後の砦だ。

「ガブリエルを守備表示に変更。
更に永続罠カード、『カオス・ホール』の効果を発動」

「カオス・ホールをーー？」

まず守備力が３３００のガブリエルを守備表示にし、続けて発動が宣言されたのはカオス・ホール。
対象のモンスターをエンドフェイズまで除外する効果だが、一体誰を対象にするというのか。

「ーー『ミカエル』を除外」

「ミカエルを？！」

ラファエルの効果で、効果を無効にされて復活したミカエル。
しかし今再び、カオス・ホールの効果によって次元の歪みへと引きずり込まれる。

「ど、どういうつもりだ・・・？」

「ふふ、効果を無効にされたミカエルを１度除外し・・・そして帰還させれば、ラファエルの効果は断絶されるの」

「あ・・・」

「そう。
エンドフェイズにミカエルは力を取り戻した完全なる姿で蘇るわ」

カオス・ホールで除外し、帰還させる。
一見意味がないように思える行動だが、還ってきたミカエルは同じモンスターであり、ある意味『別のミカエル』とも言える。
すなわち今は効果を封じられているが、カオス・ホールによってその力を復活させようというのだ。

「ーーエンドフェイズ。
ミカエルが私の場に帰還する」

短い次元の旅を終えて、再三舞い戻ってくるミカエル。
完全なるミカエルーー。
一切の抵抗を許さない除外能力で、T・Ｆモンスターですら抹殺する天使が『復活』したのだ。

エンドフェイズだから、今すぐに効果を使われないのが救いか。

「（ま、まずいぜ・・・あのミカエルもそうだが、まずあのカオス・ホールを何とかしないとーー）」

透矢は改めて気付かされる。
混沌天使を倒すにはまず、カオス・ホールを破壊しなければならないことを。
例えミカエルを倒せるモンスターを従えようと、ミカエルを破壊できる効果を使おうと、カオス・ホールで逃げられればそれまで。

そしてミカエルを倒せなければ、今度こそ凌ぎきれない。

「ーーターン、エンドよ」

ーー透矢のターン。
このドローに命運が託される。

「お、俺のターン、ドロー！」

混沌（カオス）に支配されたフィールド。
四大天使を前に、透矢の希望を繋ぐ糸は解れ、切れる間際。

だが耐え抜くしかないーー。

何とか、切り札をその手に握るまではーー。