光と闇 会長・刹那の混沌を操る力！⑭　作：はにわ改

　
ーーやや高めのリスクを覚悟してリューゼリッドに下された攻撃宣言。

リューゼリッドの水を操る力によって、足元から吹き出す水に乗って高々と天空に飛び上がる。
そしてその三又の槍を投擲すべく、槍を持つ片手を大きく振り上げた。

『ーー疾槍術（しっそうじゅつ）四の型、奥義！
ーー龍星衝っ！』

リューゼリッドの咆哮と共に振りかぶり放られた槍。
巨大な質量の水の力をまとい、それが昇り龍の形を為す。

ーー標的はガブリエル。
通れば盤面では透矢が有利に立てるがーー。

「リバース・カード、オープン！
永続罠カード、『カオス・ホール』」

「くっ、永続罠カード！？」

「『混沌天使』モンスターが私の場にいる時のみ、発動可能！
１ターンに１度、フィールド上に存在するモンスター１体を選択して、エンドフェイズまでゲームから除外するの」

「除外・・・！」

「私はガブリエルを選択」

「何！？
リューゼリッドじゃないのか？」

「リューゼリッドを選択しても、耐性で防がれてしまうもの。
ガブリエルを護るために発動したんだから」

リューゼリッドの攻撃に合わせて発動された『カオス・ホール』。
その効果によりガブリエルは頭上の次元の穴へと吸い込まれ、その姿を消してしまう。

「ーーガブリエルがフィールドから消えた事で、リューゼリッドの攻撃力はダウンするわ」

「でも、リューゼリッドの攻撃は続行！
刹那にダイレクトアタックだ！」

リューゼリッドの攻撃力は相手の場のモンスター状況によってその都度変化する。
刹那の場からモンスターが消えた今、リューゼリッドの攻撃力は原点の１９００へ戻ったのだ。

目標は失いはしたが、透矢はリューゼリッドにそのまま攻撃を敢行させる。
ガブリエルの攻撃は、刹那へのダイレクトアタックへと変更された。
リューゼリッドが放った攻撃をその身に受け、刹那の表情が初めて歪む。

「うぅ・・・うっ！
う、ふふ・・・効いたわよ、透矢くん」

攻撃は通った。
これにより刹那のライフは１０２００から８３００まで減らされる。
しかし、前のターンの大量回復が効いており、未だ原点の倍以上のライフを維持。
刹那の表情にはまだ余裕が伺える。

「く・・・ガブリエルを倒せなかったかーー」

確かにダメージは与えた。
あの王者・刹那に。
しかしながら、カオス・ホールで除外されたモンスターはエンドフェイズに戻ってくる。
ガブリエルが帰還し、再びあの回復を使えば少なくともガブリエルの攻撃力２６００は回復されてしまうのだ。
今の攻撃は無駄ではないが、回復量を下回っていては、いつまで経っても刹那は倒せないのである。

「俺は・・・カードを１枚セットして、ターン・エンド」

リューゼリッドが元の場所に着地するのを目にしながら、透矢は最後の手札１枚を場にセットしてターンを終了。
残念ながらこれ以上の追撃は出来ない。

「エンドフェイズ、カオス・ホールで除外されたガブリエルが帰還するわ」

一時、身を隠したガブリエルが、次元の穴から再び舞い降りた。

「ガブリエルの出現で、再びリューゼリッドの攻撃力はアップするぜ！」

刹那の場にガブリエルが戻ったことで、リューゼリッドの攻撃力は再び３２００まで上昇。
しかしながらやはりガブリエルを生き残らせた事は大きく、透矢の表情に笑顔はない。

「（待てよ・・・あのカオス・ホールを何とかしないと、俺はいつまでたってもガブリエルを倒せないってことか・・・？）」

そう、カオス・ホールは永続罠カード。
１ターンに１度発動出来るため、毎ターンガブリエルはある意味安全な除外ゾーンへと隠れる事が出来る。

「（ガブリエルを維持し続けられたら・・・俺は、勝てないーー？）」

恐るべき刹那の混沌をコントロールする力。
だがそれすらも、刹那のデッキの力の一部分でしかない。

「さて・・・そろそろ、行こうかしら。
私の四大天使・・・その全てを見せて上げる」

刹那の口調に力が篭る。
ミカエル、ガブリエル。
そして残る２体の四大天使。
それを降臨させるための布石は既に出来上がっていたのだ。

刹那の圧倒的なデッキパワーに、透矢は対抗しきれるのか。
ーー試練の１ターンが迫り来る。