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Report#84「解と答え」 作:ランペル
ピー
「ターン順は西澤様、福原様、久能木様の順になります。
バトルロイヤルモードのルールにより、ドローフェイズ及びバトルフェイズが行えるようになるのは、最後に順番が回る久能木様からになります。」
[ターン1]
「スタンバイフェイズに手札から《マルチャミー・フワロス》を捨てて効果発動!
ボクのフィールドにカードがない事で発動でき、あなたがデッキかEXデッキからモンスターを特殊召喚する度にボクは1枚ドローさせてもらう!」
手札:5枚→4枚
西澤のターンから始まったデュエルだが、間髪入れずに渚が手札誘発を発動する。西澤は口元を緩ませながら、自身の手札へと視線を落とす。
「素晴らしい。今回は無事に誘発を初期手札に引き込めた様子。だが、当然その強力な効果を通してしまえば、人数差も相まり私の敗北は必至だ。ドローする効果を含む効果の発動により、手札から《灰流うらら》を捨て効果を発動。
69の0141番の《マルチャミー・フワロス》の効果を無効とする」
手札:5枚→4枚
「ちっ……」
先手をついた渚の効果発動は、手元で舞い散る桜の花びらにより無力化されてしまう。
「では、メインフェイズへと入る。
デッキから《斬機シグマ》を墓地へ送り、手札から《斬機サーキュラー》の効果を発動。自身を特殊召喚させてもらう」[守1500]
手札:4枚→3枚
流れるような動きでデッキからカードを墓地へ送り、それと同時にモンスターを展開していく西澤。
その召喚によって、まるで弓のような形状の武器を携えた人型のモンスターがフィールドへと降り立つ。
「EXモンスターゾーンに私のモンスターがいない為、墓地の《斬機シグマ》の効果を発動。自身を特殊召喚」[守1500]
サーキュラーへ続き、赤い装甲の人型のモンスターが巨大な刃を振るった。その出現に合わせて、サーキュラーの銀色の装甲へと虹色の光が反射していく。
「コストで墓地に送ってから、即座に蘇生だって?研究者様ってのは、使うカードも効率重視って訳ね」
1枚のカードから連鎖的に展開を行っていく西澤へ軽口を叩く渚。その軽口とは対照的に、視線は相手の盤面と自身の手札とを交互に見比べ警戒を続けている。
「効率的なのは発展の為には欠かせないものさ。自身以外に斬機が召喚、特殊召喚された事で、《斬機サーキュラー》の効果を発動。デッキより斬機魔法か罠カード1枚を手札へ加える事が出来る。私は罠カード《斬機超階乗》を手札へ」
手札:3枚→4枚
「なら、その処理後に手札から《ドロール&ロックバード》を捨てて効果発動!このターン、互いにデッキからカードを手札に加える事を封じさせてもらう」
渚手札:4枚→3枚
デッキからカードを加えた西澤の頭上へ、首から南京錠を提げた白い翼の鳥が巡遊を始める。
「ふむ、致命的ではないが痛手には間違いない。《ドロール&ロックバード》を宣言し、《抹殺の指名者》発動」
手札:4枚→3枚
妨害に対し、即座に解を示す西澤。
フィールドへと鎧を身に纏う金髪の女性騎士が現れ、頭上を舞う鳥獣へと剣先を向ける。その直後、飛び上がった騎士は空を飛ぶ鳥獣を斬りつけ地面へと落とした。
「クソ、これも防いで来るか……」
「69の0141番の手札誘発の引き込みは素晴らしい。だが、私の引きも中々のようだ。デッキより宣言したカードの同名を除外し、その同名の効果をターン終了まで無効にさせてもらおう」
渚の2枚目の妨害を潜り抜けた西澤が、呼び出したモンスター達を重ね合わせる。
「レベル4の《斬機サーキュラー》と《斬機シグマ》でオーバーレイ。
エクシーズ召喚。
ランク4《斬機ダランベルシアン》」[攻2000]
金色の装甲に覆われた精密な機械人形が、双方向へ刃の向けられた薙刀を圧縮したような武器を振るい、フィールドへと現れる。
「ダランベルシアンのオーバーレイユニット2つを消費する事で効果を発動。デッキより、斬機カード1枚を手札へ加える」
ダランベルシアンの周囲を巡回していた2つの光の玉が弾けた瞬間、その中から花びらが舞う。舞い落ちる花びらを目で追っていく西澤の耳へ、久能木のデュエルディスクより効果発動の音声が流れ込む。
「《斬機ダランベルシアン》の発動にチェーンして、手札の《灰流うらら》を捨てて効果を発動します。その効果を無効にします。」
久能木手札:5枚→4枚
「おっと、今度は君か。ならば、手札より《ファイアウォール・ディフェンサー》を通常召喚」[攻1200]
手札:3枚→2枚
久能木の手札誘発を通し、動揺するでもなくモンスターを召喚する西澤。小型のドラゴンの様な物体がフィールドへと現れ、その身体に張り巡らされる赤い文様が渚達へ警告を示す様に点滅すると、リンク召喚のゲートが西澤の頭上にて開かれた。
「私は《ファイアウォール・ディフェンサー》と《斬機ダランベルシアン》でリンクマーカーをセット。
リンク召喚。
LINK2《スプラッシュ・メイジ》」[攻1100]
データの断片の水しぶきを周囲へ散らしながら、魔法使いを彷彿とさせるモンスターが呼び出される。
「リンク素材となった《ファイアウォール・ディフェンサー》の効果発動。
デッキより、《ファイアウォール・ガーディアン》を特殊召喚」[守2000]
青い文様を走らせた新たなファイアウォールがフィールドへ現れ、《スプラッシュ・メイジ》が杖を掲げた。
「《スプラッシュ・メイジ》の効果発動。墓地より《斬機サーキュラー》を対象に、守備表示で特殊召喚」[守1500]
データの飛沫を散らしながら、地面に空いた穴よりサーキュラーが蘇る。そのまま新たなリンクのゲートが開かれ、サーキュラーはそれへ溶け込む様に素材となる。
「サーキュラー1体でリンクマーカーをセット。
リンク召喚。
LINK1《リンク・デコーダー》」[攻300]
ネットワークで生まれた小型の騎士が、電子の剣を振るう。
「続けて《スプラッシュ・メイジ》と《リンク・デコーダー》でリンクマーカーをセット。
リンク召喚。
LINK3《トランスコード・トーカー》[攻2300]
3つの赤い軌跡がリンクマーカーに満ちる。それによって、近未来的なオレンジ色を主とする装甲に身を包み、光り輝くコードが全身を巡るモンスターがゲートより飛び出した。右手で構えられたその銃口は、渚達を真っすぐに捉えている。
「攻撃力2300以上のリンク素材となった事で、《リンク・デコーダー》の効果を発動。自身を特殊召喚する。
さらに、《トランスコード・トーカー》の効果を墓地の《スプラッシュ・メイジ》を対象に発動。対象モンスターを自身のリンク先へ特殊召喚させる」[攻300]
「それは止めさせてもらう……!
フィールドにカードがない事で、手札から《無限泡影》を《トランスコード・トーカー》を対象に発動。その効果はターン終了まで無効だ」
渚手札:3枚→2枚
フィールドへと蘇った《リンク・デコーダー》。それに続くように左腕を掲げる《トランスコード・トーカー》だったが、周囲にポコポコと無数の泡が沸き立つと、効果を無力化され膝をつく。
「これで誘発が3枚目となるね69の0141番。先程は1枚も引けなかった反動といったところか?だが、ここからが本番なんだ。
繋げ、進化を担うサーキット!召喚条件はモンスター2体以上。リンク3の《トランスコード・トーカー》と《ファイアウォール・ガーディアン》でリンクマーカーをセット。
リンク召喚。
LINK4《ファイアウォール・ドラゴン》」[攻2500]
ゲートより出現したのは、電子を翼に宿す守護竜。西澤から見て、右側に位置する場所へと降り立つと、背後を護るように巨大な翼を勇ましく広げた。
「大型モンスターが出てきたね……」
「リンク素材として使用したガーディアンの効果。自身を《ファイアウォール・ドラゴン》のリンク先へと特殊召喚だ」[守2000]
守護竜の背後へ位置するゾーンへと、《ファイアウォール・ガーディアン》が呼び戻される。
「《ファイアウォール・ガーディアン》と《リンク・デコーダー》を素材にリンクマーカーをセット。
リンク召喚。
LINK2《Gゴーレム・クリスタルハート》」[攻0]
《ファイアウォール・ドラゴン》から守護されるように、その背後に現れたのはハートの形をした結晶。その出現により守護竜が声をあげる。
「素材となった2体は、それぞれの効果により除外される。そして、リンク先のモンスターがフィールドを離れた事で《ファイアウォール・ドラゴン》の効果発動。1ターンに1度、手札からサイバース族モンスターである《パラレル・エクシード》を特殊召喚」[守2000]
手札:2枚→1枚
翼を広げる守護竜へと導かれ、翼を持った蛇の様なモンスターがフィールドにて羽ばたく。
「《パラレル・エクシード》が特殊召喚された時、デッキから同名モンスターを呼び出す事が出来る。そして、同名により呼び出された《パラレル・エクシード》の攻守とレベルは半減する」[守1000]
《パラレル・エクシード》:☆8→4
頭部に備えられたXを彷彿とさせる模様が発光し、それに導かれ2体目の《パラレル・エクシード》が並び立つ。そして、西澤がデュエルディスクに触れると、フィールドのハートの水晶もまた光り輝き始めた。
「《Gゴーレム・クリスタルハート》の効果発動。墓地より、地属性リンクモンスターである《トランスコード・トーカー》を対象に自身のリンク先へ特殊召喚」[攻2300]
蘇生の後、クリスタルハートの存在する地面へとリンク召喚のゲートが浮かび上がる。
「《Gゴーレム・クリスタルハート》と《パラレル・エクシード》を素材にリンクマーカーをセット。
リンク召喚。
LINK3《デコード・トーカー・ヒートソウル》」[攻2800]
ゲートより巻き上がる爆炎。その炎を爪で引き裂き現れたのは、ライオンを彷彿とさせる電子の騎士だ。
「1000のライフを払い、《デコード・トーカー・ヒートソウル》の効果を発動。
私は1枚ドローする」
手札:1枚→2枚
西澤LP4000→3000
自らのデッキトップが燃え上がるのを気にする様子もなく、西澤は淡々とデッキからカードを引き抜く。
「フリーチェーンで1000ライフと引き換えに1枚ドローする効果か。展開札にしろ、誘発にしろ厄介だね……」
渚は盤面の情報を注意深く観察し頭に叩き込む。それと同時に、展開の終着を決める事となる西澤の右手へ引き込まれたカードにも意識を集中させる。
「結論から言えば、このドローはとても良い引きだったと言えるな。
《ファイアウォール・ドラゴン》が《デコード・トーカー・ヒートソウル》と相互リンク状態の為、効果発動。相互リンクしているモンスターの数まで、互いのフィールドか墓地のモンスターを持ち主の手札へと戻す。
私は先程素材に使用した《パラレル・エクシード》を手札に戻させてもらう」
手札:2枚→3枚
《ファイアウォール・ドラゴン》の頭部の装飾が光り輝くと共に、ビリビリと電磁を帯びたカードが地面より浮かび上がり、西澤の手へと加わった。
「ヒート・ソウルを対象に手札の《斬機アディオン》効果発動。自身を特殊召喚し、対象モンスターの攻撃力をターン終了時まで1000アップする」[守1000]
手札:3枚→2枚
プラスを模した剣を掲げたモンスターの出現により、ヒート・ソウルを覆う炎がさらに燃え上がる。
「(奴が引き込んだのは追加の展開札……。ここから何が出るにしろ、この手札じゃ確実にボクのターンは潰されるな。
残された勝ち筋は……)」
鋭い目線で西澤の展開を眺めていた渚は、少なくなった己の手札へと視線を落とす。そして、相方である久能木へ託す為に、必要な自身の動き方を模索していく。
「さて、総仕上げに入ろう。
繋げ、進化を担うサーキット!召喚条件は効果モンスター3体以上。リンク4の《ファイアウォール・ドラゴン》に《パラレル・エクシード》と《斬機アディオン》の3体でリンクマーカーをセット」
「な、リンク4モンスターも素材に!?」
エースモンスターに相当するリンク4モンスターをも素材へ巻き込む展開に、渚は驚きの声を洩らす。その声を合図に西澤のフィールドへと広がったリンク召喚のゲート。素材となったモンスター達が6つの赤い軌跡となり、リンクマーカーへ導かれていく。
「リンク召喚。
LINK6《ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ》」[攻3500]
左側へ位置するEXモンスターゾーンへと呼び出されたのは、新たなる《ファイアウォール・ドラゴン》。重厚感の増した電子の体からは特異な電磁波が迸っている。
「まさか、リンク6が出るとはね……」
「リンク召喚に成功した事で、手札の《パラレル・エクシード》効果発動。自身をシンギュラリティのリンク先へ特殊召喚」[守1000]
手札:2枚→1枚
西澤のフィールドへと再びモンスターが展開された。渚は目を細め、西澤の展開の仕上がりを予感する。
「ここで回収した《パラレル・エクシード》の展開……。シンギュラリティで終わるつもりはないようだね」
「このままでは大した妨害にはなり得ないだろう?私が試練として立ち塞がる以上、生半可な試練では観察結果の精度に直結してしまう。最も69の0141番と71の3374番の妨害のお陰でヒート・ソウルの引きへ頼る事にはなったがね。
繋げ、進化を担うサーキット!召喚条件はサイバース族モンスター3体以上。リンク3の《トランスコード・トーカー》に、《デコード・トーカー・ヒートソウル》と《パラレル・エクシード》の3体でリンクマーカーをセット。
リンク召喚。
LINK5《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》」[攻3000]
3体のモンスターが5つの赤い軌跡となり、ゲートのリンクマーカーを染め上げていく。マーカーが満たされた事で、ゲートより放出されていく七色の光と共に新たな電子の竜が飛び出す。
新たに顕現した闇の力を纏った《ファイアウォール・ドラゴン》が咆哮をあげれば、それに共鳴するように、シンギュラリティも虹色の電磁波を迸らせた。
「リンク先の《パラレル・エクシード》が墓地へ送られた事で《ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ》の効果発動。墓地より《デコード・トーカー・ヒートソウル》を特殊召喚」[攻2300]
密集する虹色の電磁波が激しく揺れ動き、その中央から逆巻く炎が巻き起こると《デコード・トーカー・ヒートソウル》がフィールドへ舞い戻る。
「続けて《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》の効果発動。1ターンに1度、デッキかEXデッキからサイバース族モンスター1体を墓地へ送り、自身にその属性を加えると共に攻撃力を2500上昇させる。
私はデッキから《斬機ダイア》を墓地へ送り、自身の属性に光を追加し、攻撃力を2500アップだ」[攻5500]
ネオテンペストの背後で展開された5対の電子翼。紫に発光していたその内の1対が黄色へと変化していく。
「永続の上昇……それに加えて相手ターンでも発動が可能か……」
「フフ、つまり私へターンが戻るまでに2度、攻撃力を上昇させる事が出来る訳だな。
カードを1枚セットし、ターンエンドだ」
手札:1枚→0枚
デュエルディスクの画面へと表示されている効果の詳細を確認し、表情が険しくなっていく渚。その様を嘲笑うかのような小さな笑みと1枚の伏せカードを以て、西澤のターンの終わりが告げられた。
西澤ーLP:3000
手札 :0枚
モンスター:《ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ》[左EXMZ]、《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》(攻5500)[中央左MMZ]、《デコード・トーカー・ヒートソウル》[左端MMZ]
魔法&罠 :伏せ×1
[ターン2]
「(伏せカードに、ヒート・ソウルのドローで誘発を引き込まれても妨害を打たれる。《ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ》のフリーチェーンのバウンスもある。それに、蘇生効果を使われれば、《ファイアウォール・ドラゴン》のバウンスまで増えるか……シンギュラリティのリンク先へ召喚も出来ないな。
これらの中で、潰しておくべき妨害は……)」
渚は、西澤が構えた妨害札の中で排除すべき優先度の高い物を選別し、思案を巡らせる。考え込む渚へ、西澤が収縮を繰り返す不気味な緑眼で見つめてくる。
「さぁ、君のターンだ69の0141番。最も、動ければの話だけどね」
「正直、厳しいだろうね。妨害を4つも使ってこれだけ展開されるとは思ってもみなかった。けど、簡単に負けを認める程、ボクは潔くないからね。
バトルロイヤルの為、ボクのドローフェイズはスキップだ」
己のターンを動かす渚へと、西澤が先手を仕掛ける。
「ならば、迎えるスタンバイフェイズに《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》の効果を発動させてもらう。
今度はEXデッキより《サイバース・ディセーブルム》を墓地へ送り、自身の攻撃力をさらに2500アップだ」[攻8000]
咆哮と共に一気に8000まで跳ね上がった攻撃力で一層の威圧感を放つネオテンペスト。しかし、渚が注目するのは不自然なタイミングで行われた攻撃力上昇効果の発動そのものだ。
「攻撃力上昇をこのタイミングで……。狙いはモンスターの墓地送りか」
「察しがいいね69の0141番。墓地へ送った《サイバース・ディセーブルム》は、私のフィールドにリンク4以上のサイバース族が居る状態で、相手が魔法か罠の効果を使用すれば、墓地から除外しその発動を無効化する効果を持つ」
妨害に手数を割き、残り手札2枚となった渚に対して新たに構えられた妨害。渚はチラリと久能木の方を見遣る。それを受け、静かに頷く久能木。
「なら、ボクがやる事はこれだけだ!
メインフェイズにあなたの墓地の《サイバース・ディセーブルム》を対象に《墓穴の指名者》を発動!対象モンスターを除外し、その効果を次のターン終了時まで無効化する」
手札:2枚→1枚
渚がカードをデュエルディスクへと叩き付け勢いよく発動する。西澤はそれに反応することなく、小さく笑みを浮かべるだけだ。
「《三戦の才》発動の条件は満たさないよ。チェーンはなしだ」
「《護神鳥シムルグ》を通常召喚。その召喚時効果により、あなたのフィールドの伏せカードを対象に手札へ戻させてもらうよ!」[1400]
手札:1枚→0枚
フィールドへ薄紫の翼を広げた神鳥が舞い降り鳴き声を上げた。その光景に西澤は、きょとんとした表情を見せるとすぐさまデュエルディスクを操作する。
「ほぉ。そう来るなら、温存しておきたかったが仕方ない。チェーンして対象カードである《斬機超階乗》発動。
墓地より《斬機サーキュラー》、《斬機シグマ》、《斬機ダイア》の3体を蘇生し、それらを素材にエクシーズ召喚を行う」[守1500][守1500][守1500]
西澤のモンスターゾーンを埋め尽くすように蘇生された3体の斬機。それらが飛び上がり交錯していくと、エクシーズ召喚の渦へと飲み込まれ大きな爆発を生み出す。
「レベル4モンスター3体でオーバーレイ。エクシーズ召喚。
ランク4《斬機ラプラシアン》」[守0]
金色の装甲に身を包んだ斬機が、特殊な形状の剣を威圧するように掲げた。
「対象カードが発動された事で《護神鳥シムルグ》の効果は不発。そして、エクシーズ召喚した《斬機ラプラシアン》のオーバーレイユニットを1つ取り除き効果発動。69の0141番のフィールドから《護神鳥シムルグ》を墓地へ送らせてもらう」
ラプラシアンが剣を振るうと、データの刃が特異な電子音と共に放たれ渚の《護神鳥シムルグ》を切り裂き破壊する。
「これで、2つの手札で2つの妨害を潰した……。後は、久能木君に託す事にするよ。
相手の魔法&罠ゾーンにカードがない事で墓地の《護神鳥シムルグ》の効果発動!」
「君ほどに用心深い性格の人間が、誰かに己が命運を託せるとわね。やはり、生物における信頼というものの価値の絶大さを体感させられる。その信頼と協力、共闘の果てに……1人では到底成し得ない事だとしても、他者との協力では成し得る事も可能だろうか?
《斬機ダイア》の効果を得た《斬機ラプラシアン》の効果を発動し、《護神鳥シムルグ》の効果を無効にする」
渚と西澤双方がこのターンの終わりを感じ取ると共に、次のターンへの期待を高めていく。
「ボクはターンエンドだ」
「エンドフェイズ、ライフを1000払い《デコード・トーカー・ヒートソウル》の効果を発動し、1枚ドロー」
西澤手札:0枚→1枚
西澤LP3000→2000
渚ーLP:4000
手札:0枚
[ターン3]
「フゥ………」
ターンが回って来た久能木は、いつの間にかタバコに火をつけており、ゆっくりと口から煙を吐き出す。吐ききって一拍空けた久能木は、西澤を見遣り、デッキトップへ指をかけていく。
「さぁ、私の目の前で人間の信頼、それに付随する可能性の価値を証明してみてくれ!」
嬉々としてそう叫ぶ西澤を前に、久能木はただただ静かにカードを引き込み、ターンを動かす。
「………」
手札:4枚→5枚
「ドローフェイズ。及びスタンバイフェイズへ移行します。」
デュエルディスクからサポート用の音声が流れ、引き込んだカードを確認した久能木。それを手中へ納めると、別のカードを手に取りデュエルディスクへと呼び出す。
「《ヴァンパイアの使い魔》を通常召喚します」[攻500]
手札:5枚→4枚
バサバサと音を立てながら、久能木のフィールドへ真っ黒な蝙蝠が羽ばたく。
「バトルフェイズへ移行します。
《ヴァンパイアの使い魔》で《ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ》を攻撃します。」[攻500]
久能木が行ったのは、攻撃力3500の《ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ》への自爆特攻。その行動と、覆らないであろう攻撃力差に怪訝な表情を浮かべる西澤。
「それが君達の見出す可能性なのか?71の3374番お得意の《九十九スラッシュ》発動でも、攻撃力差はひっくり返らないぞ」
西澤の顔色がそのまま変わる事はなく、向かってくる黒い蝙蝠に向けてシンギュラリティが虹色に輝く電磁波の光線を放つ。跡形もなく溶かされた《ヴァンパイアの使い魔》の先で、久能木がデュエルディスクで自らの顔を守り光線の余波を受け止める
「………!?」
久能木LP4000→1000
照射された光線によって、久能木の光線に触れた皮膚が激しく焼けただれる。与えられた痛みに表情が歪む瞬間、目と鼻、口に耳と、顔のありとあらゆる場所から大量の血が流れ始める。流れ落ちる血によって、ガクンと崩れる様に膝をつく久能木。装着していたヘッドホンが衝撃で外れ、くわえていたタバコも広がっていく血だまりへと落ちる。
「久能木君……!」
「ふむ……何もなしか。という事は、ここから可能性が生まれる訳だ。さぁ、膝をついている場合ではないだろう?立ちあがり、画策する可能性を私に披露したまえ」
久能木の様子を気にする渚と、その声に被さるように好奇心の赴くままに攻撃の意図を問いただす西澤。荒々しく息を零し、止まらない出血をそのままに手札を墓地へと送り込んだ久能木にデュエルディスクがアナウンスを始める。
「メインフェイズ2へ移行します。
手札から《ヴァンパイアの眷属》を墓地へ送り、墓地の《ヴァンパイアの使い魔》の効果を発動します。墓地からこのカードを特殊召喚します。」
手札:4枚→3枚
「チェーンして《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》の効果を発動。今度はEXデッキから《メレオロジック・アグリゲーター》を墓地へ送り、攻撃力を2500アップさせる」[攻10500]
ネオテンペストが3度目となる効果を発動し、それに対抗するべく久能木の影から《ヴァンパイアの使い魔》が生み出され、フィールドへと蘇った。
「500LPを支払い、特殊召喚された《ヴァンパイアの使い魔》の効果を発動します。デッキから、《ヴァンパイア・スカージレット》を手札へ加えます。」
久能木LP1000→500
「チェーンして墓地へ送られた《メレオロジック・アグリゲーター》の効果を《ヴァンパイアの使い魔》を対象に発動。その効果はターン終了時まで無効だ」
蝙蝠の周囲に地面から紫色の輪っか状の電波が送り込まれ、蝙蝠の羽ばたきが鈍くなった。
「あくまで結果は、過程の先に存在するものだ。観測者として君の狙いに興味こそあれど、デュエルの結果を敢えて左右するような決断は決してしない。こんな事を期待していないとは思うが、私から温情や過程に対する取引を持ち掛けようとしているのであれば、それが無意味な事である事は伝えておこう」
久能木の不可解な自爆特攻と、妨害に対する無抵抗さから西澤が警告を示す。そんな彼女を無視し、久能木は手札をデュエルディスクへと差し込む。
「カードを1枚セットします。」
手札:3枚→2枚
その直後、差し込んだセットカードと残された手札2枚の内1枚が墓地へ送り込まれる。それにより発動される最後の1枚を、久能木は勢いよくデュエルディスクへと叩き付け、その発動にアナウンスが続く。
「………」
「手札及びフィールドのカードを全て墓地へ送り、《大逆転クイズ》を発動します。自分のデッキの一番上のカードの種類を当てる事で、お互いのLPを入れ替えます。」
手札:2枚→0枚
「ほぉ、先程までの行動はこれが狙いか。という事は当然……」
冷静に左の緑眼を閉じた西澤は、目を閉じたまま口元を緩ませる。
「先程セットしたカードは《黒いペンダント》か。入れ替えた後のバーン量も調整済。そして、私にそのカードの発動を妨げるカードは存在しない……」
「まさしく一発大逆転の一手という訳だよ観測者さん?言っておくけど、デュエルに勝ちさえすればあなたを拘束する術は既に用意してある。結果を左右する決断をしない西澤さんならば、後出しで観測者権限を使って逃げ出すような事もしないだろうしね」
西澤の状況分析へ付け加える様に、笑みと共に睨みをきかす渚。無事に発動までこじつけた久能木も、血を零しつつ小さな笑みを浮かべる。
「69の0141番、71の3374番共にまるで既に勝利を確信しているかの様な表情を見せるじゃないか。だが、あくまで発動まで漕ぎつけた段階である事を忘れている訳ではないだろうね?ここからが本番、71の3374番における《大逆転クイズ》の発動はあくまでデッキのサブプランに過ぎない。つまりは、デッキトップの種類を確実に当てられるような構築にはされていないはずだ。そして、デッキトップ操作もされていない。3分の1とまではいかずとも、モンスターと魔法とが入り乱れ罠も差し込まれた君のデッキで、果たして的確に答えを導けるだろうか」
西澤は多弁に《大逆転クイズ》の成功確率が決して高くないという分析結果を口にする。その言葉に、渚が小さく笑う。
「研究者気質な連中ってのはやっぱり数字が好きなんだね?確かに、あなたの言うように正解を確信できるような根拠はないさ。
でもね。あの絶望的な妨害の中、このカードの発動まで漕ぎつけ、それを止める手立てを全て使わせているというこの状況こそが、ボク達の自信そのものなんだよ!」
「………」
高らかに宣言する渚に追従し、流れる血を拭いながら頷く久能木。そんな2人の視線を受けた西澤の肩が震える。
「そうか、可能性に己の命運をかける。その根拠は、自分達がそこに至るまでにかけた労力と財産、それらが結果に反映されるとそう信じていると。そう言いたいんだね?」
「御託はいい。どちらにしろ外せばボク達はあなたに殺される。だったら、上手く用意できた可能性を信じる事が無謀だなんて思わないね」
「いいでしょう!69の0141番の答えは十分です。
次は、71の3374番に問題を出す事としましょうか。さぁ、君は一体どんな答えを出しますか?」
「………」
西澤は不穏な言葉を久能木へ投げかけると、自身のデュエルディスクに指を這わせた。
「私はチェーンしてライフを1000払い、《デコード・トーカー・ヒートソウル》の効果を発動」
西澤LP2000→1000
「今更、カードを引いた所で無駄だ!久能木君!」
畳みかける様に久能木へ声を掛けた渚。西澤は久能木の目を真っすぐ見据えると、口元を嫌らしく歪める。
「フフ、71の3374番。回答するのは、私の《大逆転クイズ》への解を見てからでも遅くない。
《デコード・トーカー・ヒートソウル》の効果により1枚ドロー!
さらに、私のライフが2000以下の場合、自身を除外しEXデッキから同名以外でリンク3以下のサイバース族を特殊召喚出来る」
西澤手札:1枚→2枚
「このタイミングで展開だと……?」
渚の想定していた《デコード・トーカー・ヒートソウル》の役割は、ドロー加速による展開と誘発札の引き込みと考えていた。その想定を覆しかねないこのタイミングでの効果発動に、渚の額へ抗いようもなく汗が滲む。
効果の適用を受けたヒートソウルは右腕を高く掲げ、そこから溢れ出す炎がヒートソウルを覆い尽くしていく。
「我々研究者は、詰めるべき個所は徹底的に詰める。敗北の可能性が1%でもあるのならば、それを0にするまでだ。
現れよ、LINK1《セキュア・ガードナー》!」[攻0]
巻き上がる炎より飛び出したのは、体の各部位それぞれがシールドの役目を持った人型の存在だった。それがフィールドへと降り立つと共に、西澤の周囲を囲うように丸みを帯びた薄緑色のシールドが展開されていく。
「フフ、《セキュア・ガードナー》は特殊召喚したターン、私が受ける全ての効果ダメージを0にする効果を持つ。これは即時適用される効果の為、71の3374番が《大逆転クイズ》で正解を引き当てようとも、《黒いペンダント》で私へダメージは与えられなくなる訳だ」
「なっ……!?」
「………!?」
西澤が効果を伝えると、渚と久能木から先程までの活気ある表情は消え去り、驚きと明らかな陰りだけが残されている。
「さて、71の3374番。君の答えを聞かせてもらおうか?」
「………」
既にバトルフェイズを終えている久能木には、この《大逆転クイズ》と《黒いペンダント》のバーンによるコンボでしか勝利の目はない。このままターンを終えれば、待っているのは攻撃力13000にまで跳ね上がる《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》の複数回攻撃だ。疑いようもなく、久能木はおろか渚も死ぬ事となる。
身体に受けた特異な電磁波が久能木の体を蝕んで行く。1度は拭い、留めたはずの血が鼻と口からポタポタと流れ落ち始める。ゆっくりと鉄の味が混ざった唾を呑み込むと、久能木は渚の方へと視線を向けた。
「くそっ……。
ここまでか…………」
「………」
渚は口惜しそうに唇の端を噛みしめると、諦めたように自嘲気味な笑みと共に左目を閉じていった。
「………」
久能木は視線を自らのデュエルディスクへと向けた。画面には《大逆転クイズ》で回答するべきカードの種類の選択肢が表示されている。相手がダメージを受けない今となっては、これらの表示もなんの意味も為さない。
「………!」
久能木は何かに気づいた様に、小さく驚くとデュエルディスクへと触れた。
「モンスターを宣言します。」
デュエルディスクが告げた自らの選択。デッキトップへゆっくりと指をかけ、乱れた呼吸と気持ちを落ち着けるべく、空気を吸い込み一気に吐き出す久能木。
「久能木君……?」
聞こえるはずのない渚の声が聞こえた気がして、久能木の視線は渚の方へと向けられる。失意と自嘲に塗れた彼女の左目。そんな彼女の瞳に反射する自分自身の穏やかな表情。
「………」
己の覚悟が、揺るぎないものである事を確信し、正面を向き直す久能木。デッキトップからカードをゆっくりと引き込み、そのカードを晒す。
「デッキトップのカードは、モンスターカード《ヴァンパイア・フロイライン》。よって、自分と相手のLPを入れ替えます。」
アナウンスの告げた《大逆転クイズ》の正答。渚はその結果に、乾いた笑いを洩らす。
「はは……後はバーンが通っていたら大盛り上がり待ったなしだったのにね……」
無意味な成功に渚は更なる落胆を見せた。その時、渚のデュエルディスクが小さく振動する。
「ん……」
渚LP4000→500
久能木LP500→4000
「……は?」
「フィールドから墓地へ送られた《黒いペンダント》の効果が発動します。
相手に500ダメージを与えます」
渚が状況を理解する前に、久能木のデュエルディスクがとどめの一撃である《黒のペンダント》の強制効果をアナウンスした。それと同時に、渚へ心臓を握り込まれたかのような鋭い痛みが走る。
「ぐぁあ!?」
渚LP500→0
ピーーー
「福原様のライフが0になりました。」
閉鎖空間に響く敗者を告げるアナウンス。渚は痛みで胸元を抑えながら、久能木へとその意図を問いただす。
「くの……ぎ君……これは、何のつもりなんだ……」
「………」
すると、久能木はポケットからカードを取り出すと渚へ投げ渡す。それを受け取り、確認した渚の疑問が加速する。
「《ポジション・チェンジ》……?待て、君は一体何を……」
トン……。
「な……」
久能木は自らのデュエルディスクを1度だけノックした。その意味は、2人の中で共通させてある合図の1つ。
渚は驚くと共に、再度久能木を見遣る。久能木は渚から視線を逸らすと、震える指先で懐から取り出したタバコを口にくわえようとしていた。
「ボクに……逃げろって……?何故だ、何故そこまで……」
「フフ、フフフフ……。
それが、君の答えなんだね71の3374番」
堪えられなくなった西澤が、不敵に微笑みの声を洩らした。その小さな笑い声だけが満ちる閉鎖空間内で一瞬の静寂が生まれる。
「…………いや、こうなった以上、君がどんな思いであろうともボクのする事は1つだな……」
渚は困惑を滲ませた表情から一変、久能木と西澤に背を向け出入りを防ぐシャッターの前へと向かって行く。久能木は、その歩みを確認するとくわえた煙草に火を点ける。
「彼を置いていくのかい?このまま彼が死んでも気にもしないと?」
「はっ、ボクがここに残ったって死 体の数が2つに増えるだけさ。どうせ死ぬなら1人で十分って事を久能木君は分かってるんだよ……」
西澤の嫌味を含む問いかけに、振り返ることなく簡素に答えた渚。シャッターの前へ辿り着き立ち止まった彼女は、渡された《ポジション・チェンジ》のカードを見つめる。
「久能木君。君を助けたあの時から、ボクが与えた以上の恩を君は返してくれた。心から感謝している。
それと、悪かったね。君の協力した奴が……こんな無能で……」
渚はシャッターの方を向いたまま言葉を落とす。耳の聞こえぬ彼に、この言葉が伝わるはずのない事は理解している。だが、己の選択の果てに久能木を死なせてしまう結果となった事。その結果を前に、彼へ感謝や謝罪を伝える事はただの自己満足に過ぎない。
自分自身の気持ちに区切りをつける為だけの、傲慢な感謝と謝罪を零し、渚は久能木より渡された《ポジション・チェンジ》を発動する。
その瞬間、渚の姿は消え去る。数秒の後、シャッターの向こう側で誰かが走り去り、遠くなっていく足音だけが響いた。
「………」
火のついた煙草を指に挟んだまま硬直する久能木。呆然としている彼と、この場を去った彼女に向けて、西澤が拍手を送る。
「このような場面を、この目で見られた事を嬉しく思うよ。
さて、初めて聞く音のある世界……彼女の声はどうだっただろうか71の3374番。君の想像通りの声をしていたかい?いや、音のない世界を生きていた君には想像することなど出来はしないか。ならば、率直な感想をどうか教えて欲しい。
恩人との今生の別れ、その際に初めて耳を伝う彼女の声。君がこの実験でしか得られなかった体験を、ぜひ私に教えて欲しいんだよ」
久能木は自らの身に起こっている事が信じられない様に、左手で自らの耳元を抑える。
起きた出来事に対する理解が追いつかないでいた。今の自分には、聞こえるはずのない音が聞こえている。無音の世界とは打って変わり、音のある世界の騒々しさに驚かざるを得ない。フィールドに呼び出されているモンスター達の微かな動きや呼吸のような音。電磁波であろうビリビリとした小さな音。眼前の西澤の低く嫌らしい声色。
そして、背後より聞こえて来た震える女性の声……。
「………」
「肉体に囚われる時代はいずれ終わりを告げる。君達はこの世界を紛い物や作られた世界と思っているだろうけど、いずれ世界は逆転するのさ。ここでは、心理的、肉体的なハンデなど存在しない。逆にそれらは特異な能力となり、己の存在価値を高める役目を担うようになる。外の世界で適応出来ていた、健常と定義されていた者達はこちらでは適応できぬ無能力者となり、外の世界で適応出来なかった者が、こちら側ではその能力を遺憾無く発揮出来るのだよ。肉体に縛られ、その枷に人間性を否定されるなど……実に愚かな事とは思わないかい?」
笑みを交え、饒舌に己の思想を吐露し始める西澤。そんな彼女の声が、久能木の聴覚を断続的に刺激する。
「……フフ、君は本来聴力が得られると聞いてここへ来たはずだろう?お望み通りの聴力を君へと与えた。会話する能力が培われておらずとも、君が今この瞬間に感じ取った微細な感情の乱れ、心境の変化、脳から発せられる信号、それに付随する肉体の動きの全ては記録されている。
その表情は……驚きが大きそうだね。だが、喜ばしいだろう?
愛した人間の声を死ぬ前に聞き取れたんだ」
「………!」
口の動きではなく、耳へと伝わる振動で西澤の言葉を理解した久能木は、驚きと共に嫌悪の視線を西澤へ向けた。
「フフ、フフフフ……素敵だと思うよ。
愛する人間の為、自らの命を犠牲にする様をドラマチックと評するんだろう?美しくも儚い愛の片鱗。
あぁ、しかし私はこうも思うよ。己の感情を優先し、他者に苦しみを背負わせる事を強要する、醜く驕った自己愛とね。君が彼女を想ってしたこの選択を、彼女はどう受け止めただろう。彼女が君に面と向かって伝えられなかった言葉。その声の抑揚、感情の揺れ惑いを今の君ならば余す事なく聞き取れたはずだ。
彼女は今、どんな気持ちでこの場を後にしたんだろうね?」
「………」
「墓地から《馬頭鬼》を除外し、墓地の《ヴァンパイアの眷属》を対象として効果を発動します。対象モンスター特殊召喚します」[守0]
まるで、西澤の語り掛けを耳障りと言わんばかりに久能木は墓地よりカードを取り出しデュエルディスクへと叩き付けた。フィールドに真っ黒の獣が現れ、その半身の黒い影が地面へと落ち、獣の影を形成していく。
西澤は不敵な笑みを隠そうともせず、収縮と拡大を繰り返す緑眼で久能木を覗き見る。
「そう、邪険にしてくれるな。君にとって決して小さくはない69の0141番の声を聞くという願いを叶えたんだ。少しぐらい私の観察行為に協力してくれたっていいと思うんだがね」
「500LPを支払い、特殊召喚された《ヴァンパイアの眷属》の効果を発動します。デッキから、ヴァンパイア魔法カードか罠カード1枚を手札へ加えます。」
久能木LP4000→3500
西澤の語り掛けを拒絶する久能木は、震える指先で懸命に展開を続行する。そんな彼の行動を、嘗め回すように見つめる西澤が手中の1枚を翳した。
「フフ、悪あがきにすらなりはしないね。手札から《灰流うらら》を捨て、71の3374番の《ヴァンパイアの眷属》の効果を無効にする。さらに、チェーンして《ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ》の効果を発動。墓地にエクシーズモンスターが存在する事により、君の《ヴァンパイアの眷属》を対象に手札へ戻してもらう。
デュエルへ逃避しようとも、このデュエルの役目は先程の君の選択で決着している。それ程までに、私の声は耳障りだろうか?初めて音を感じ取る君でも、耳障りに思う音があるものなんだね。感動のあまり、ありとあらゆる音に対して好感を抱くとばかりおもっていたが」
西澤手札:2枚→1枚
桜の花びらが《ヴァンパイアの眷属》の周囲を舞い、シンギュラリティが咆哮をあげた瞬間に発生した虹色の電磁波が久能木のデュエルディスクに残されたカードを弾き飛ばす。
「………」
手札:0枚→1枚
「では、君が彼女へ好意を抱いたきっかけの方を問おう。己の好意の感情に気づいたのは一体いつの事だい?命を救われた時?彼女が君に利用価値を見出してくれた時?君を1人の人間として扱ってくれた時?彼女に協力していく時間の中で?あぁ、それとも君に実験脱出の手助けを助力した時に見せた生きる瞳を見た時かな?」
「ターンエンドします。」
久能木ーLP:3500
手札:1枚
[ターン4]
心の内へと土足で踏み入る悪辣な西澤の顔を見る事もせず、久能木はデュエルディスクの音声を用いて拒絶を示す。
「フフ、フフフフ……1人で喋っているだけに思っているだろう?君が今この瞬間に抱いている感情の全ては、後に数値化並び言語化して出力する事が出来る。71の3374番の表層からは探れない心の内は、後でゆっくり見させてもらう事としよう。さて、君が会話を拒むならば終わりにしようか?
私のターン、ドロー」
手札:1枚→2枚
心底楽しそうに笑っていた西澤は、デッキからカードを引き込むと途端に無表情となる。
「有意義な時間だったよ71の3374番。君の存在はここで終わるが、君が教えてくれた経験は必ずやこの先の未来を変える力となる。
《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》の効果を発動。デッキより風属性《パレレル・エクシード》を墓地へ送り、自身の属性に風と攻撃力2500をそれぞれ追加する」[攻13000]
高らかな叫び声をあげた《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》。その電子の翼の1対が新たに緑色へと輝き始める。
「《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》で71の3374番へダイレクトアタック」[攻13000]
翼を雄大に広げた守護竜が、口元で7色の電子の粒子を集約させていく。大きく首を振り上げたかと思えば、虹色に輝く光線が久能木に向かって勢いよく放出された。
「………」
目を閉じた久能木の体から徐々に感覚が消えていく。
薄れゆく意識の中、彼が最期に思い起こすのは渚の震えた声色だけだった……。
久能木LP3500→0
ピーーー
「久能木様のライフが0になりました。勝者は西澤様です。」
電子の塵と化し、存在そのものが消失した久能木。跡形も残っていない彼に向けて西澤が口を開く。
「71の3374番のした選択。それが、希望か呪いになるかは……69の0141番次第だ。
個人的にも、観測者としても、それが希望に繋がる事を願っているよ」
「ターン順は西澤様、福原様、久能木様の順になります。
バトルロイヤルモードのルールにより、ドローフェイズ及びバトルフェイズが行えるようになるのは、最後に順番が回る久能木様からになります。」
[ターン1]
「スタンバイフェイズに手札から《マルチャミー・フワロス》を捨てて効果発動!
ボクのフィールドにカードがない事で発動でき、あなたがデッキかEXデッキからモンスターを特殊召喚する度にボクは1枚ドローさせてもらう!」
手札:5枚→4枚
西澤のターンから始まったデュエルだが、間髪入れずに渚が手札誘発を発動する。西澤は口元を緩ませながら、自身の手札へと視線を落とす。
「素晴らしい。今回は無事に誘発を初期手札に引き込めた様子。だが、当然その強力な効果を通してしまえば、人数差も相まり私の敗北は必至だ。ドローする効果を含む効果の発動により、手札から《灰流うらら》を捨て効果を発動。
69の0141番の《マルチャミー・フワロス》の効果を無効とする」
手札:5枚→4枚
「ちっ……」
先手をついた渚の効果発動は、手元で舞い散る桜の花びらにより無力化されてしまう。
「では、メインフェイズへと入る。
デッキから《斬機シグマ》を墓地へ送り、手札から《斬機サーキュラー》の効果を発動。自身を特殊召喚させてもらう」[守1500]
手札:4枚→3枚
流れるような動きでデッキからカードを墓地へ送り、それと同時にモンスターを展開していく西澤。
その召喚によって、まるで弓のような形状の武器を携えた人型のモンスターがフィールドへと降り立つ。
「EXモンスターゾーンに私のモンスターがいない為、墓地の《斬機シグマ》の効果を発動。自身を特殊召喚」[守1500]
サーキュラーへ続き、赤い装甲の人型のモンスターが巨大な刃を振るった。その出現に合わせて、サーキュラーの銀色の装甲へと虹色の光が反射していく。
「コストで墓地に送ってから、即座に蘇生だって?研究者様ってのは、使うカードも効率重視って訳ね」
1枚のカードから連鎖的に展開を行っていく西澤へ軽口を叩く渚。その軽口とは対照的に、視線は相手の盤面と自身の手札とを交互に見比べ警戒を続けている。
「効率的なのは発展の為には欠かせないものさ。自身以外に斬機が召喚、特殊召喚された事で、《斬機サーキュラー》の効果を発動。デッキより斬機魔法か罠カード1枚を手札へ加える事が出来る。私は罠カード《斬機超階乗》を手札へ」
手札:3枚→4枚
「なら、その処理後に手札から《ドロール&ロックバード》を捨てて効果発動!このターン、互いにデッキからカードを手札に加える事を封じさせてもらう」
渚手札:4枚→3枚
デッキからカードを加えた西澤の頭上へ、首から南京錠を提げた白い翼の鳥が巡遊を始める。
「ふむ、致命的ではないが痛手には間違いない。《ドロール&ロックバード》を宣言し、《抹殺の指名者》発動」
手札:4枚→3枚
妨害に対し、即座に解を示す西澤。
フィールドへと鎧を身に纏う金髪の女性騎士が現れ、頭上を舞う鳥獣へと剣先を向ける。その直後、飛び上がった騎士は空を飛ぶ鳥獣を斬りつけ地面へと落とした。
「クソ、これも防いで来るか……」
「69の0141番の手札誘発の引き込みは素晴らしい。だが、私の引きも中々のようだ。デッキより宣言したカードの同名を除外し、その同名の効果をターン終了まで無効にさせてもらおう」
渚の2枚目の妨害を潜り抜けた西澤が、呼び出したモンスター達を重ね合わせる。
「レベル4の《斬機サーキュラー》と《斬機シグマ》でオーバーレイ。
エクシーズ召喚。
ランク4《斬機ダランベルシアン》」[攻2000]
金色の装甲に覆われた精密な機械人形が、双方向へ刃の向けられた薙刀を圧縮したような武器を振るい、フィールドへと現れる。
「ダランベルシアンのオーバーレイユニット2つを消費する事で効果を発動。デッキより、斬機カード1枚を手札へ加える」
ダランベルシアンの周囲を巡回していた2つの光の玉が弾けた瞬間、その中から花びらが舞う。舞い落ちる花びらを目で追っていく西澤の耳へ、久能木のデュエルディスクより効果発動の音声が流れ込む。
「《斬機ダランベルシアン》の発動にチェーンして、手札の《灰流うらら》を捨てて効果を発動します。その効果を無効にします。」
久能木手札:5枚→4枚
「おっと、今度は君か。ならば、手札より《ファイアウォール・ディフェンサー》を通常召喚」[攻1200]
手札:3枚→2枚
久能木の手札誘発を通し、動揺するでもなくモンスターを召喚する西澤。小型のドラゴンの様な物体がフィールドへと現れ、その身体に張り巡らされる赤い文様が渚達へ警告を示す様に点滅すると、リンク召喚のゲートが西澤の頭上にて開かれた。
「私は《ファイアウォール・ディフェンサー》と《斬機ダランベルシアン》でリンクマーカーをセット。
リンク召喚。
LINK2《スプラッシュ・メイジ》」[攻1100]
データの断片の水しぶきを周囲へ散らしながら、魔法使いを彷彿とさせるモンスターが呼び出される。
「リンク素材となった《ファイアウォール・ディフェンサー》の効果発動。
デッキより、《ファイアウォール・ガーディアン》を特殊召喚」[守2000]
青い文様を走らせた新たなファイアウォールがフィールドへ現れ、《スプラッシュ・メイジ》が杖を掲げた。
「《スプラッシュ・メイジ》の効果発動。墓地より《斬機サーキュラー》を対象に、守備表示で特殊召喚」[守1500]
データの飛沫を散らしながら、地面に空いた穴よりサーキュラーが蘇る。そのまま新たなリンクのゲートが開かれ、サーキュラーはそれへ溶け込む様に素材となる。
「サーキュラー1体でリンクマーカーをセット。
リンク召喚。
LINK1《リンク・デコーダー》」[攻300]
ネットワークで生まれた小型の騎士が、電子の剣を振るう。
「続けて《スプラッシュ・メイジ》と《リンク・デコーダー》でリンクマーカーをセット。
リンク召喚。
LINK3《トランスコード・トーカー》[攻2300]
3つの赤い軌跡がリンクマーカーに満ちる。それによって、近未来的なオレンジ色を主とする装甲に身を包み、光り輝くコードが全身を巡るモンスターがゲートより飛び出した。右手で構えられたその銃口は、渚達を真っすぐに捉えている。
「攻撃力2300以上のリンク素材となった事で、《リンク・デコーダー》の効果を発動。自身を特殊召喚する。
さらに、《トランスコード・トーカー》の効果を墓地の《スプラッシュ・メイジ》を対象に発動。対象モンスターを自身のリンク先へ特殊召喚させる」[攻300]
「それは止めさせてもらう……!
フィールドにカードがない事で、手札から《無限泡影》を《トランスコード・トーカー》を対象に発動。その効果はターン終了まで無効だ」
渚手札:3枚→2枚
フィールドへと蘇った《リンク・デコーダー》。それに続くように左腕を掲げる《トランスコード・トーカー》だったが、周囲にポコポコと無数の泡が沸き立つと、効果を無力化され膝をつく。
「これで誘発が3枚目となるね69の0141番。先程は1枚も引けなかった反動といったところか?だが、ここからが本番なんだ。
繋げ、進化を担うサーキット!召喚条件はモンスター2体以上。リンク3の《トランスコード・トーカー》と《ファイアウォール・ガーディアン》でリンクマーカーをセット。
リンク召喚。
LINK4《ファイアウォール・ドラゴン》」[攻2500]
ゲートより出現したのは、電子を翼に宿す守護竜。西澤から見て、右側に位置する場所へと降り立つと、背後を護るように巨大な翼を勇ましく広げた。
「大型モンスターが出てきたね……」
「リンク素材として使用したガーディアンの効果。自身を《ファイアウォール・ドラゴン》のリンク先へと特殊召喚だ」[守2000]
守護竜の背後へ位置するゾーンへと、《ファイアウォール・ガーディアン》が呼び戻される。
「《ファイアウォール・ガーディアン》と《リンク・デコーダー》を素材にリンクマーカーをセット。
リンク召喚。
LINK2《Gゴーレム・クリスタルハート》」[攻0]
《ファイアウォール・ドラゴン》から守護されるように、その背後に現れたのはハートの形をした結晶。その出現により守護竜が声をあげる。
「素材となった2体は、それぞれの効果により除外される。そして、リンク先のモンスターがフィールドを離れた事で《ファイアウォール・ドラゴン》の効果発動。1ターンに1度、手札からサイバース族モンスターである《パラレル・エクシード》を特殊召喚」[守2000]
手札:2枚→1枚
翼を広げる守護竜へと導かれ、翼を持った蛇の様なモンスターがフィールドにて羽ばたく。
「《パラレル・エクシード》が特殊召喚された時、デッキから同名モンスターを呼び出す事が出来る。そして、同名により呼び出された《パラレル・エクシード》の攻守とレベルは半減する」[守1000]
《パラレル・エクシード》:☆8→4
頭部に備えられたXを彷彿とさせる模様が発光し、それに導かれ2体目の《パラレル・エクシード》が並び立つ。そして、西澤がデュエルディスクに触れると、フィールドのハートの水晶もまた光り輝き始めた。
「《Gゴーレム・クリスタルハート》の効果発動。墓地より、地属性リンクモンスターである《トランスコード・トーカー》を対象に自身のリンク先へ特殊召喚」[攻2300]
蘇生の後、クリスタルハートの存在する地面へとリンク召喚のゲートが浮かび上がる。
「《Gゴーレム・クリスタルハート》と《パラレル・エクシード》を素材にリンクマーカーをセット。
リンク召喚。
LINK3《デコード・トーカー・ヒートソウル》」[攻2800]
ゲートより巻き上がる爆炎。その炎を爪で引き裂き現れたのは、ライオンを彷彿とさせる電子の騎士だ。
「1000のライフを払い、《デコード・トーカー・ヒートソウル》の効果を発動。
私は1枚ドローする」
手札:1枚→2枚
西澤LP4000→3000
自らのデッキトップが燃え上がるのを気にする様子もなく、西澤は淡々とデッキからカードを引き抜く。
「フリーチェーンで1000ライフと引き換えに1枚ドローする効果か。展開札にしろ、誘発にしろ厄介だね……」
渚は盤面の情報を注意深く観察し頭に叩き込む。それと同時に、展開の終着を決める事となる西澤の右手へ引き込まれたカードにも意識を集中させる。
「結論から言えば、このドローはとても良い引きだったと言えるな。
《ファイアウォール・ドラゴン》が《デコード・トーカー・ヒートソウル》と相互リンク状態の為、効果発動。相互リンクしているモンスターの数まで、互いのフィールドか墓地のモンスターを持ち主の手札へと戻す。
私は先程素材に使用した《パラレル・エクシード》を手札に戻させてもらう」
手札:2枚→3枚
《ファイアウォール・ドラゴン》の頭部の装飾が光り輝くと共に、ビリビリと電磁を帯びたカードが地面より浮かび上がり、西澤の手へと加わった。
「ヒート・ソウルを対象に手札の《斬機アディオン》効果発動。自身を特殊召喚し、対象モンスターの攻撃力をターン終了時まで1000アップする」[守1000]
手札:3枚→2枚
プラスを模した剣を掲げたモンスターの出現により、ヒート・ソウルを覆う炎がさらに燃え上がる。
「(奴が引き込んだのは追加の展開札……。ここから何が出るにしろ、この手札じゃ確実にボクのターンは潰されるな。
残された勝ち筋は……)」
鋭い目線で西澤の展開を眺めていた渚は、少なくなった己の手札へと視線を落とす。そして、相方である久能木へ託す為に、必要な自身の動き方を模索していく。
「さて、総仕上げに入ろう。
繋げ、進化を担うサーキット!召喚条件は効果モンスター3体以上。リンク4の《ファイアウォール・ドラゴン》に《パラレル・エクシード》と《斬機アディオン》の3体でリンクマーカーをセット」
「な、リンク4モンスターも素材に!?」
エースモンスターに相当するリンク4モンスターをも素材へ巻き込む展開に、渚は驚きの声を洩らす。その声を合図に西澤のフィールドへと広がったリンク召喚のゲート。素材となったモンスター達が6つの赤い軌跡となり、リンクマーカーへ導かれていく。
「リンク召喚。
LINK6《ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ》」[攻3500]
左側へ位置するEXモンスターゾーンへと呼び出されたのは、新たなる《ファイアウォール・ドラゴン》。重厚感の増した電子の体からは特異な電磁波が迸っている。
「まさか、リンク6が出るとはね……」
「リンク召喚に成功した事で、手札の《パラレル・エクシード》効果発動。自身をシンギュラリティのリンク先へ特殊召喚」[守1000]
手札:2枚→1枚
西澤のフィールドへと再びモンスターが展開された。渚は目を細め、西澤の展開の仕上がりを予感する。
「ここで回収した《パラレル・エクシード》の展開……。シンギュラリティで終わるつもりはないようだね」
「このままでは大した妨害にはなり得ないだろう?私が試練として立ち塞がる以上、生半可な試練では観察結果の精度に直結してしまう。最も69の0141番と71の3374番の妨害のお陰でヒート・ソウルの引きへ頼る事にはなったがね。
繋げ、進化を担うサーキット!召喚条件はサイバース族モンスター3体以上。リンク3の《トランスコード・トーカー》に、《デコード・トーカー・ヒートソウル》と《パラレル・エクシード》の3体でリンクマーカーをセット。
リンク召喚。
LINK5《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》」[攻3000]
3体のモンスターが5つの赤い軌跡となり、ゲートのリンクマーカーを染め上げていく。マーカーが満たされた事で、ゲートより放出されていく七色の光と共に新たな電子の竜が飛び出す。
新たに顕現した闇の力を纏った《ファイアウォール・ドラゴン》が咆哮をあげれば、それに共鳴するように、シンギュラリティも虹色の電磁波を迸らせた。
「リンク先の《パラレル・エクシード》が墓地へ送られた事で《ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ》の効果発動。墓地より《デコード・トーカー・ヒートソウル》を特殊召喚」[攻2300]
密集する虹色の電磁波が激しく揺れ動き、その中央から逆巻く炎が巻き起こると《デコード・トーカー・ヒートソウル》がフィールドへ舞い戻る。
「続けて《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》の効果発動。1ターンに1度、デッキかEXデッキからサイバース族モンスター1体を墓地へ送り、自身にその属性を加えると共に攻撃力を2500上昇させる。
私はデッキから《斬機ダイア》を墓地へ送り、自身の属性に光を追加し、攻撃力を2500アップだ」[攻5500]
ネオテンペストの背後で展開された5対の電子翼。紫に発光していたその内の1対が黄色へと変化していく。
「永続の上昇……それに加えて相手ターンでも発動が可能か……」
「フフ、つまり私へターンが戻るまでに2度、攻撃力を上昇させる事が出来る訳だな。
カードを1枚セットし、ターンエンドだ」
手札:1枚→0枚
デュエルディスクの画面へと表示されている効果の詳細を確認し、表情が険しくなっていく渚。その様を嘲笑うかのような小さな笑みと1枚の伏せカードを以て、西澤のターンの終わりが告げられた。
西澤ーLP:3000
手札 :0枚
モンスター:《ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ》[左EXMZ]、《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》(攻5500)[中央左MMZ]、《デコード・トーカー・ヒートソウル》[左端MMZ]
魔法&罠 :伏せ×1
[ターン2]
「(伏せカードに、ヒート・ソウルのドローで誘発を引き込まれても妨害を打たれる。《ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ》のフリーチェーンのバウンスもある。それに、蘇生効果を使われれば、《ファイアウォール・ドラゴン》のバウンスまで増えるか……シンギュラリティのリンク先へ召喚も出来ないな。
これらの中で、潰しておくべき妨害は……)」
渚は、西澤が構えた妨害札の中で排除すべき優先度の高い物を選別し、思案を巡らせる。考え込む渚へ、西澤が収縮を繰り返す不気味な緑眼で見つめてくる。
「さぁ、君のターンだ69の0141番。最も、動ければの話だけどね」
「正直、厳しいだろうね。妨害を4つも使ってこれだけ展開されるとは思ってもみなかった。けど、簡単に負けを認める程、ボクは潔くないからね。
バトルロイヤルの為、ボクのドローフェイズはスキップだ」
己のターンを動かす渚へと、西澤が先手を仕掛ける。
「ならば、迎えるスタンバイフェイズに《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》の効果を発動させてもらう。
今度はEXデッキより《サイバース・ディセーブルム》を墓地へ送り、自身の攻撃力をさらに2500アップだ」[攻8000]
咆哮と共に一気に8000まで跳ね上がった攻撃力で一層の威圧感を放つネオテンペスト。しかし、渚が注目するのは不自然なタイミングで行われた攻撃力上昇効果の発動そのものだ。
「攻撃力上昇をこのタイミングで……。狙いはモンスターの墓地送りか」
「察しがいいね69の0141番。墓地へ送った《サイバース・ディセーブルム》は、私のフィールドにリンク4以上のサイバース族が居る状態で、相手が魔法か罠の効果を使用すれば、墓地から除外しその発動を無効化する効果を持つ」
妨害に手数を割き、残り手札2枚となった渚に対して新たに構えられた妨害。渚はチラリと久能木の方を見遣る。それを受け、静かに頷く久能木。
「なら、ボクがやる事はこれだけだ!
メインフェイズにあなたの墓地の《サイバース・ディセーブルム》を対象に《墓穴の指名者》を発動!対象モンスターを除外し、その効果を次のターン終了時まで無効化する」
手札:2枚→1枚
渚がカードをデュエルディスクへと叩き付け勢いよく発動する。西澤はそれに反応することなく、小さく笑みを浮かべるだけだ。
「《三戦の才》発動の条件は満たさないよ。チェーンはなしだ」
「《護神鳥シムルグ》を通常召喚。その召喚時効果により、あなたのフィールドの伏せカードを対象に手札へ戻させてもらうよ!」[1400]
手札:1枚→0枚
フィールドへ薄紫の翼を広げた神鳥が舞い降り鳴き声を上げた。その光景に西澤は、きょとんとした表情を見せるとすぐさまデュエルディスクを操作する。
「ほぉ。そう来るなら、温存しておきたかったが仕方ない。チェーンして対象カードである《斬機超階乗》発動。
墓地より《斬機サーキュラー》、《斬機シグマ》、《斬機ダイア》の3体を蘇生し、それらを素材にエクシーズ召喚を行う」[守1500][守1500][守1500]
西澤のモンスターゾーンを埋め尽くすように蘇生された3体の斬機。それらが飛び上がり交錯していくと、エクシーズ召喚の渦へと飲み込まれ大きな爆発を生み出す。
「レベル4モンスター3体でオーバーレイ。エクシーズ召喚。
ランク4《斬機ラプラシアン》」[守0]
金色の装甲に身を包んだ斬機が、特殊な形状の剣を威圧するように掲げた。
「対象カードが発動された事で《護神鳥シムルグ》の効果は不発。そして、エクシーズ召喚した《斬機ラプラシアン》のオーバーレイユニットを1つ取り除き効果発動。69の0141番のフィールドから《護神鳥シムルグ》を墓地へ送らせてもらう」
ラプラシアンが剣を振るうと、データの刃が特異な電子音と共に放たれ渚の《護神鳥シムルグ》を切り裂き破壊する。
「これで、2つの手札で2つの妨害を潰した……。後は、久能木君に託す事にするよ。
相手の魔法&罠ゾーンにカードがない事で墓地の《護神鳥シムルグ》の効果発動!」
「君ほどに用心深い性格の人間が、誰かに己が命運を託せるとわね。やはり、生物における信頼というものの価値の絶大さを体感させられる。その信頼と協力、共闘の果てに……1人では到底成し得ない事だとしても、他者との協力では成し得る事も可能だろうか?
《斬機ダイア》の効果を得た《斬機ラプラシアン》の効果を発動し、《護神鳥シムルグ》の効果を無効にする」
渚と西澤双方がこのターンの終わりを感じ取ると共に、次のターンへの期待を高めていく。
「ボクはターンエンドだ」
「エンドフェイズ、ライフを1000払い《デコード・トーカー・ヒートソウル》の効果を発動し、1枚ドロー」
西澤手札:0枚→1枚
西澤LP3000→2000
渚ーLP:4000
手札:0枚
[ターン3]
「フゥ………」
ターンが回って来た久能木は、いつの間にかタバコに火をつけており、ゆっくりと口から煙を吐き出す。吐ききって一拍空けた久能木は、西澤を見遣り、デッキトップへ指をかけていく。
「さぁ、私の目の前で人間の信頼、それに付随する可能性の価値を証明してみてくれ!」
嬉々としてそう叫ぶ西澤を前に、久能木はただただ静かにカードを引き込み、ターンを動かす。
「………」
手札:4枚→5枚
「ドローフェイズ。及びスタンバイフェイズへ移行します。」
デュエルディスクからサポート用の音声が流れ、引き込んだカードを確認した久能木。それを手中へ納めると、別のカードを手に取りデュエルディスクへと呼び出す。
「《ヴァンパイアの使い魔》を通常召喚します」[攻500]
手札:5枚→4枚
バサバサと音を立てながら、久能木のフィールドへ真っ黒な蝙蝠が羽ばたく。
「バトルフェイズへ移行します。
《ヴァンパイアの使い魔》で《ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ》を攻撃します。」[攻500]
久能木が行ったのは、攻撃力3500の《ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ》への自爆特攻。その行動と、覆らないであろう攻撃力差に怪訝な表情を浮かべる西澤。
「それが君達の見出す可能性なのか?71の3374番お得意の《九十九スラッシュ》発動でも、攻撃力差はひっくり返らないぞ」
西澤の顔色がそのまま変わる事はなく、向かってくる黒い蝙蝠に向けてシンギュラリティが虹色に輝く電磁波の光線を放つ。跡形もなく溶かされた《ヴァンパイアの使い魔》の先で、久能木がデュエルディスクで自らの顔を守り光線の余波を受け止める
「………!?」
久能木LP4000→1000
照射された光線によって、久能木の光線に触れた皮膚が激しく焼けただれる。与えられた痛みに表情が歪む瞬間、目と鼻、口に耳と、顔のありとあらゆる場所から大量の血が流れ始める。流れ落ちる血によって、ガクンと崩れる様に膝をつく久能木。装着していたヘッドホンが衝撃で外れ、くわえていたタバコも広がっていく血だまりへと落ちる。
「久能木君……!」
「ふむ……何もなしか。という事は、ここから可能性が生まれる訳だ。さぁ、膝をついている場合ではないだろう?立ちあがり、画策する可能性を私に披露したまえ」
久能木の様子を気にする渚と、その声に被さるように好奇心の赴くままに攻撃の意図を問いただす西澤。荒々しく息を零し、止まらない出血をそのままに手札を墓地へと送り込んだ久能木にデュエルディスクがアナウンスを始める。
「メインフェイズ2へ移行します。
手札から《ヴァンパイアの眷属》を墓地へ送り、墓地の《ヴァンパイアの使い魔》の効果を発動します。墓地からこのカードを特殊召喚します。」
手札:4枚→3枚
「チェーンして《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》の効果を発動。今度はEXデッキから《メレオロジック・アグリゲーター》を墓地へ送り、攻撃力を2500アップさせる」[攻10500]
ネオテンペストが3度目となる効果を発動し、それに対抗するべく久能木の影から《ヴァンパイアの使い魔》が生み出され、フィールドへと蘇った。
「500LPを支払い、特殊召喚された《ヴァンパイアの使い魔》の効果を発動します。デッキから、《ヴァンパイア・スカージレット》を手札へ加えます。」
久能木LP1000→500
「チェーンして墓地へ送られた《メレオロジック・アグリゲーター》の効果を《ヴァンパイアの使い魔》を対象に発動。その効果はターン終了時まで無効だ」
蝙蝠の周囲に地面から紫色の輪っか状の電波が送り込まれ、蝙蝠の羽ばたきが鈍くなった。
「あくまで結果は、過程の先に存在するものだ。観測者として君の狙いに興味こそあれど、デュエルの結果を敢えて左右するような決断は決してしない。こんな事を期待していないとは思うが、私から温情や過程に対する取引を持ち掛けようとしているのであれば、それが無意味な事である事は伝えておこう」
久能木の不可解な自爆特攻と、妨害に対する無抵抗さから西澤が警告を示す。そんな彼女を無視し、久能木は手札をデュエルディスクへと差し込む。
「カードを1枚セットします。」
手札:3枚→2枚
その直後、差し込んだセットカードと残された手札2枚の内1枚が墓地へ送り込まれる。それにより発動される最後の1枚を、久能木は勢いよくデュエルディスクへと叩き付け、その発動にアナウンスが続く。
「………」
「手札及びフィールドのカードを全て墓地へ送り、《大逆転クイズ》を発動します。自分のデッキの一番上のカードの種類を当てる事で、お互いのLPを入れ替えます。」
手札:2枚→0枚
「ほぉ、先程までの行動はこれが狙いか。という事は当然……」
冷静に左の緑眼を閉じた西澤は、目を閉じたまま口元を緩ませる。
「先程セットしたカードは《黒いペンダント》か。入れ替えた後のバーン量も調整済。そして、私にそのカードの発動を妨げるカードは存在しない……」
「まさしく一発大逆転の一手という訳だよ観測者さん?言っておくけど、デュエルに勝ちさえすればあなたを拘束する術は既に用意してある。結果を左右する決断をしない西澤さんならば、後出しで観測者権限を使って逃げ出すような事もしないだろうしね」
西澤の状況分析へ付け加える様に、笑みと共に睨みをきかす渚。無事に発動までこじつけた久能木も、血を零しつつ小さな笑みを浮かべる。
「69の0141番、71の3374番共にまるで既に勝利を確信しているかの様な表情を見せるじゃないか。だが、あくまで発動まで漕ぎつけた段階である事を忘れている訳ではないだろうね?ここからが本番、71の3374番における《大逆転クイズ》の発動はあくまでデッキのサブプランに過ぎない。つまりは、デッキトップの種類を確実に当てられるような構築にはされていないはずだ。そして、デッキトップ操作もされていない。3分の1とまではいかずとも、モンスターと魔法とが入り乱れ罠も差し込まれた君のデッキで、果たして的確に答えを導けるだろうか」
西澤は多弁に《大逆転クイズ》の成功確率が決して高くないという分析結果を口にする。その言葉に、渚が小さく笑う。
「研究者気質な連中ってのはやっぱり数字が好きなんだね?確かに、あなたの言うように正解を確信できるような根拠はないさ。
でもね。あの絶望的な妨害の中、このカードの発動まで漕ぎつけ、それを止める手立てを全て使わせているというこの状況こそが、ボク達の自信そのものなんだよ!」
「………」
高らかに宣言する渚に追従し、流れる血を拭いながら頷く久能木。そんな2人の視線を受けた西澤の肩が震える。
「そうか、可能性に己の命運をかける。その根拠は、自分達がそこに至るまでにかけた労力と財産、それらが結果に反映されるとそう信じていると。そう言いたいんだね?」
「御託はいい。どちらにしろ外せばボク達はあなたに殺される。だったら、上手く用意できた可能性を信じる事が無謀だなんて思わないね」
「いいでしょう!69の0141番の答えは十分です。
次は、71の3374番に問題を出す事としましょうか。さぁ、君は一体どんな答えを出しますか?」
「………」
西澤は不穏な言葉を久能木へ投げかけると、自身のデュエルディスクに指を這わせた。
「私はチェーンしてライフを1000払い、《デコード・トーカー・ヒートソウル》の効果を発動」
西澤LP2000→1000
「今更、カードを引いた所で無駄だ!久能木君!」
畳みかける様に久能木へ声を掛けた渚。西澤は久能木の目を真っすぐ見据えると、口元を嫌らしく歪める。
「フフ、71の3374番。回答するのは、私の《大逆転クイズ》への解を見てからでも遅くない。
《デコード・トーカー・ヒートソウル》の効果により1枚ドロー!
さらに、私のライフが2000以下の場合、自身を除外しEXデッキから同名以外でリンク3以下のサイバース族を特殊召喚出来る」
西澤手札:1枚→2枚
「このタイミングで展開だと……?」
渚の想定していた《デコード・トーカー・ヒートソウル》の役割は、ドロー加速による展開と誘発札の引き込みと考えていた。その想定を覆しかねないこのタイミングでの効果発動に、渚の額へ抗いようもなく汗が滲む。
効果の適用を受けたヒートソウルは右腕を高く掲げ、そこから溢れ出す炎がヒートソウルを覆い尽くしていく。
「我々研究者は、詰めるべき個所は徹底的に詰める。敗北の可能性が1%でもあるのならば、それを0にするまでだ。
現れよ、LINK1《セキュア・ガードナー》!」[攻0]
巻き上がる炎より飛び出したのは、体の各部位それぞれがシールドの役目を持った人型の存在だった。それがフィールドへと降り立つと共に、西澤の周囲を囲うように丸みを帯びた薄緑色のシールドが展開されていく。
「フフ、《セキュア・ガードナー》は特殊召喚したターン、私が受ける全ての効果ダメージを0にする効果を持つ。これは即時適用される効果の為、71の3374番が《大逆転クイズ》で正解を引き当てようとも、《黒いペンダント》で私へダメージは与えられなくなる訳だ」
「なっ……!?」
「………!?」
西澤が効果を伝えると、渚と久能木から先程までの活気ある表情は消え去り、驚きと明らかな陰りだけが残されている。
「さて、71の3374番。君の答えを聞かせてもらおうか?」
「………」
既にバトルフェイズを終えている久能木には、この《大逆転クイズ》と《黒いペンダント》のバーンによるコンボでしか勝利の目はない。このままターンを終えれば、待っているのは攻撃力13000にまで跳ね上がる《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》の複数回攻撃だ。疑いようもなく、久能木はおろか渚も死ぬ事となる。
身体に受けた特異な電磁波が久能木の体を蝕んで行く。1度は拭い、留めたはずの血が鼻と口からポタポタと流れ落ち始める。ゆっくりと鉄の味が混ざった唾を呑み込むと、久能木は渚の方へと視線を向けた。
「くそっ……。
ここまでか…………」
「………」
渚は口惜しそうに唇の端を噛みしめると、諦めたように自嘲気味な笑みと共に左目を閉じていった。
「………」
久能木は視線を自らのデュエルディスクへと向けた。画面には《大逆転クイズ》で回答するべきカードの種類の選択肢が表示されている。相手がダメージを受けない今となっては、これらの表示もなんの意味も為さない。
「………!」
久能木は何かに気づいた様に、小さく驚くとデュエルディスクへと触れた。
「モンスターを宣言します。」
デュエルディスクが告げた自らの選択。デッキトップへゆっくりと指をかけ、乱れた呼吸と気持ちを落ち着けるべく、空気を吸い込み一気に吐き出す久能木。
「久能木君……?」
聞こえるはずのない渚の声が聞こえた気がして、久能木の視線は渚の方へと向けられる。失意と自嘲に塗れた彼女の左目。そんな彼女の瞳に反射する自分自身の穏やかな表情。
「………」
己の覚悟が、揺るぎないものである事を確信し、正面を向き直す久能木。デッキトップからカードをゆっくりと引き込み、そのカードを晒す。
「デッキトップのカードは、モンスターカード《ヴァンパイア・フロイライン》。よって、自分と相手のLPを入れ替えます。」
アナウンスの告げた《大逆転クイズ》の正答。渚はその結果に、乾いた笑いを洩らす。
「はは……後はバーンが通っていたら大盛り上がり待ったなしだったのにね……」
無意味な成功に渚は更なる落胆を見せた。その時、渚のデュエルディスクが小さく振動する。
「ん……」
渚LP4000→500
久能木LP500→4000
「……は?」
「フィールドから墓地へ送られた《黒いペンダント》の効果が発動します。
相手に500ダメージを与えます」
渚が状況を理解する前に、久能木のデュエルディスクがとどめの一撃である《黒のペンダント》の強制効果をアナウンスした。それと同時に、渚へ心臓を握り込まれたかのような鋭い痛みが走る。
「ぐぁあ!?」
渚LP500→0
ピーーー
「福原様のライフが0になりました。」
閉鎖空間に響く敗者を告げるアナウンス。渚は痛みで胸元を抑えながら、久能木へとその意図を問いただす。
「くの……ぎ君……これは、何のつもりなんだ……」
「………」
すると、久能木はポケットからカードを取り出すと渚へ投げ渡す。それを受け取り、確認した渚の疑問が加速する。
「《ポジション・チェンジ》……?待て、君は一体何を……」
トン……。
「な……」
久能木は自らのデュエルディスクを1度だけノックした。その意味は、2人の中で共通させてある合図の1つ。
渚は驚くと共に、再度久能木を見遣る。久能木は渚から視線を逸らすと、震える指先で懐から取り出したタバコを口にくわえようとしていた。
「ボクに……逃げろって……?何故だ、何故そこまで……」
「フフ、フフフフ……。
それが、君の答えなんだね71の3374番」
堪えられなくなった西澤が、不敵に微笑みの声を洩らした。その小さな笑い声だけが満ちる閉鎖空間内で一瞬の静寂が生まれる。
「…………いや、こうなった以上、君がどんな思いであろうともボクのする事は1つだな……」
渚は困惑を滲ませた表情から一変、久能木と西澤に背を向け出入りを防ぐシャッターの前へと向かって行く。久能木は、その歩みを確認するとくわえた煙草に火を点ける。
「彼を置いていくのかい?このまま彼が死んでも気にもしないと?」
「はっ、ボクがここに残ったって死 体の数が2つに増えるだけさ。どうせ死ぬなら1人で十分って事を久能木君は分かってるんだよ……」
西澤の嫌味を含む問いかけに、振り返ることなく簡素に答えた渚。シャッターの前へ辿り着き立ち止まった彼女は、渡された《ポジション・チェンジ》のカードを見つめる。
「久能木君。君を助けたあの時から、ボクが与えた以上の恩を君は返してくれた。心から感謝している。
それと、悪かったね。君の協力した奴が……こんな無能で……」
渚はシャッターの方を向いたまま言葉を落とす。耳の聞こえぬ彼に、この言葉が伝わるはずのない事は理解している。だが、己の選択の果てに久能木を死なせてしまう結果となった事。その結果を前に、彼へ感謝や謝罪を伝える事はただの自己満足に過ぎない。
自分自身の気持ちに区切りをつける為だけの、傲慢な感謝と謝罪を零し、渚は久能木より渡された《ポジション・チェンジ》を発動する。
その瞬間、渚の姿は消え去る。数秒の後、シャッターの向こう側で誰かが走り去り、遠くなっていく足音だけが響いた。
「………」
火のついた煙草を指に挟んだまま硬直する久能木。呆然としている彼と、この場を去った彼女に向けて、西澤が拍手を送る。
「このような場面を、この目で見られた事を嬉しく思うよ。
さて、初めて聞く音のある世界……彼女の声はどうだっただろうか71の3374番。君の想像通りの声をしていたかい?いや、音のない世界を生きていた君には想像することなど出来はしないか。ならば、率直な感想をどうか教えて欲しい。
恩人との今生の別れ、その際に初めて耳を伝う彼女の声。君がこの実験でしか得られなかった体験を、ぜひ私に教えて欲しいんだよ」
久能木は自らの身に起こっている事が信じられない様に、左手で自らの耳元を抑える。
起きた出来事に対する理解が追いつかないでいた。今の自分には、聞こえるはずのない音が聞こえている。無音の世界とは打って変わり、音のある世界の騒々しさに驚かざるを得ない。フィールドに呼び出されているモンスター達の微かな動きや呼吸のような音。電磁波であろうビリビリとした小さな音。眼前の西澤の低く嫌らしい声色。
そして、背後より聞こえて来た震える女性の声……。
「………」
「肉体に囚われる時代はいずれ終わりを告げる。君達はこの世界を紛い物や作られた世界と思っているだろうけど、いずれ世界は逆転するのさ。ここでは、心理的、肉体的なハンデなど存在しない。逆にそれらは特異な能力となり、己の存在価値を高める役目を担うようになる。外の世界で適応出来ていた、健常と定義されていた者達はこちらでは適応できぬ無能力者となり、外の世界で適応出来なかった者が、こちら側ではその能力を遺憾無く発揮出来るのだよ。肉体に縛られ、その枷に人間性を否定されるなど……実に愚かな事とは思わないかい?」
笑みを交え、饒舌に己の思想を吐露し始める西澤。そんな彼女の声が、久能木の聴覚を断続的に刺激する。
「……フフ、君は本来聴力が得られると聞いてここへ来たはずだろう?お望み通りの聴力を君へと与えた。会話する能力が培われておらずとも、君が今この瞬間に感じ取った微細な感情の乱れ、心境の変化、脳から発せられる信号、それに付随する肉体の動きの全ては記録されている。
その表情は……驚きが大きそうだね。だが、喜ばしいだろう?
愛した人間の声を死ぬ前に聞き取れたんだ」
「………!」
口の動きではなく、耳へと伝わる振動で西澤の言葉を理解した久能木は、驚きと共に嫌悪の視線を西澤へ向けた。
「フフ、フフフフ……素敵だと思うよ。
愛する人間の為、自らの命を犠牲にする様をドラマチックと評するんだろう?美しくも儚い愛の片鱗。
あぁ、しかし私はこうも思うよ。己の感情を優先し、他者に苦しみを背負わせる事を強要する、醜く驕った自己愛とね。君が彼女を想ってしたこの選択を、彼女はどう受け止めただろう。彼女が君に面と向かって伝えられなかった言葉。その声の抑揚、感情の揺れ惑いを今の君ならば余す事なく聞き取れたはずだ。
彼女は今、どんな気持ちでこの場を後にしたんだろうね?」
「………」
「墓地から《馬頭鬼》を除外し、墓地の《ヴァンパイアの眷属》を対象として効果を発動します。対象モンスター特殊召喚します」[守0]
まるで、西澤の語り掛けを耳障りと言わんばかりに久能木は墓地よりカードを取り出しデュエルディスクへと叩き付けた。フィールドに真っ黒の獣が現れ、その半身の黒い影が地面へと落ち、獣の影を形成していく。
西澤は不敵な笑みを隠そうともせず、収縮と拡大を繰り返す緑眼で久能木を覗き見る。
「そう、邪険にしてくれるな。君にとって決して小さくはない69の0141番の声を聞くという願いを叶えたんだ。少しぐらい私の観察行為に協力してくれたっていいと思うんだがね」
「500LPを支払い、特殊召喚された《ヴァンパイアの眷属》の効果を発動します。デッキから、ヴァンパイア魔法カードか罠カード1枚を手札へ加えます。」
久能木LP4000→3500
西澤の語り掛けを拒絶する久能木は、震える指先で懸命に展開を続行する。そんな彼の行動を、嘗め回すように見つめる西澤が手中の1枚を翳した。
「フフ、悪あがきにすらなりはしないね。手札から《灰流うらら》を捨て、71の3374番の《ヴァンパイアの眷属》の効果を無効にする。さらに、チェーンして《ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ》の効果を発動。墓地にエクシーズモンスターが存在する事により、君の《ヴァンパイアの眷属》を対象に手札へ戻してもらう。
デュエルへ逃避しようとも、このデュエルの役目は先程の君の選択で決着している。それ程までに、私の声は耳障りだろうか?初めて音を感じ取る君でも、耳障りに思う音があるものなんだね。感動のあまり、ありとあらゆる音に対して好感を抱くとばかりおもっていたが」
西澤手札:2枚→1枚
桜の花びらが《ヴァンパイアの眷属》の周囲を舞い、シンギュラリティが咆哮をあげた瞬間に発生した虹色の電磁波が久能木のデュエルディスクに残されたカードを弾き飛ばす。
「………」
手札:0枚→1枚
「では、君が彼女へ好意を抱いたきっかけの方を問おう。己の好意の感情に気づいたのは一体いつの事だい?命を救われた時?彼女が君に利用価値を見出してくれた時?君を1人の人間として扱ってくれた時?彼女に協力していく時間の中で?あぁ、それとも君に実験脱出の手助けを助力した時に見せた生きる瞳を見た時かな?」
「ターンエンドします。」
久能木ーLP:3500
手札:1枚
[ターン4]
心の内へと土足で踏み入る悪辣な西澤の顔を見る事もせず、久能木はデュエルディスクの音声を用いて拒絶を示す。
「フフ、フフフフ……1人で喋っているだけに思っているだろう?君が今この瞬間に抱いている感情の全ては、後に数値化並び言語化して出力する事が出来る。71の3374番の表層からは探れない心の内は、後でゆっくり見させてもらう事としよう。さて、君が会話を拒むならば終わりにしようか?
私のターン、ドロー」
手札:1枚→2枚
心底楽しそうに笑っていた西澤は、デッキからカードを引き込むと途端に無表情となる。
「有意義な時間だったよ71の3374番。君の存在はここで終わるが、君が教えてくれた経験は必ずやこの先の未来を変える力となる。
《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》の効果を発動。デッキより風属性《パレレル・エクシード》を墓地へ送り、自身の属性に風と攻撃力2500をそれぞれ追加する」[攻13000]
高らかな叫び声をあげた《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》。その電子の翼の1対が新たに緑色へと輝き始める。
「《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード-ネオテンペスト》で71の3374番へダイレクトアタック」[攻13000]
翼を雄大に広げた守護竜が、口元で7色の電子の粒子を集約させていく。大きく首を振り上げたかと思えば、虹色に輝く光線が久能木に向かって勢いよく放出された。
「………」
目を閉じた久能木の体から徐々に感覚が消えていく。
薄れゆく意識の中、彼が最期に思い起こすのは渚の震えた声色だけだった……。
久能木LP3500→0
ピーーー
「久能木様のライフが0になりました。勝者は西澤様です。」
電子の塵と化し、存在そのものが消失した久能木。跡形も残っていない彼に向けて西澤が口を開く。
「71の3374番のした選択。それが、希望か呪いになるかは……69の0141番次第だ。
個人的にも、観測者としても、それが希望に繋がる事を願っているよ」
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56 | Report#15「自己治療」 | 430 | 0 | 2023-07-25 | - | |
71 | Report#16「勝機、笑気、正気?」 | 495 | 0 | 2023-07-29 | - | |
61 | Report#17「幻聴」 | 405 | 2 | 2023-08-02 | - | |
76 | Report#18「ハイエナ狩」 | 453 | 0 | 2023-08-09 | - | |
58 | Report#19「おやすみ」 | 528 | 0 | 2023-08-13 | - | |
69 | Report#20「クラスⅢ」 | 399 | 0 | 2023-08-18 | - | |
56 | Report#21「視線恐怖症」 | 383 | 0 | 2023-08-23 | - | |
77 | Report#22「新たな被験者」 | 554 | 2 | 2023-08-28 | - | |
50 | Report#23「天敵」 | 355 | 2 | 2023-09-03 | - | |
70 | Report#24「吹き荒れる烈風」 | 380 | 0 | 2023-09-03 | - | |
49 | Report#25「情報屋」 | 321 | 2 | 2023-09-13 | - | |
52 | Report#26「再編成」 | 375 | 2 | 2023-09-18 | - | |
72 | Report#27「見えない脅威」 | 507 | 2 | 2023-09-24 | - | |
69 | Report#28「トラウマ」 | 469 | 2 | 2023-09-29 | - | |
55 | Report#29「背反の魔女」 | 578 | 2 | 2023-10-03 | - | |
77 | Report#30「潰えぬ希望」 | 585 | 2 | 2023-10-09 | - | |
62 | Report#31「献身」 | 347 | 0 | 2023-10-15 | - | |
63 | Report#32「好転」 | 382 | 2 | 2023-10-20 | - | |
68 | Report#33「身勝手」 | 351 | 2 | 2023-10-25 | - | |
59 | Report#34「ボス戦」 | 416 | 3 | 2023-10-30 | - | |
54 | Report#35「想起」 | 360 | 2 | 2023-11-05 | - | |
65 | #被験者リストA | 567 | 0 | 2023-11-05 | - | |
58 | Report#36「ノルマ達成目指して」 | 322 | 2 | 2023-11-10 | - | |
55 | Report#37「分断」 | 398 | 2 | 2023-11-15 | - | |
83 | Report#38「旅立ち」 | 555 | 0 | 2023-11-20 | - | |
55 | Report#39「幼き力」 | 360 | 2 | 2023-11-25 | - | |
50 | Report#40「囚われし者」 | 317 | 0 | 2023-11-30 | - | |
54 | Report#41「傍に居てくれるから」 | 396 | 2 | 2023-12-05 | - | |
68 | Report#42「どうして?」 | 437 | 1 | 2023-12-10 | - | |
54 | Report#43「拒絶」 | 317 | 0 | 2023-12-15 | - | |
60 | Report#44「不信」 | 376 | 2 | 2023-12-25 | - | |
51 | Report#45「夜更かし」 | 418 | 2 | 2024-01-05 | - | |
58 | Report#46「緊急回避」 | 493 | 0 | 2024-01-10 | - | |
68 | Report#47「狂気」 | 418 | 2 | 2024-01-20 | - | |
58 | Report#48「判断」 | 383 | 2 | 2024-01-30 | - | |
72 | Report#49「白化」 | 468 | 0 | 2024-02-10 | - | |
62 | Report#50「諦め切れない」 | 378 | 2 | 2024-02-20 | - | |
53 | Report#51「錯綜」 | 434 | 2 | 2024-03-01 | - | |
73 | Report#52「計画」 | 427 | 2 | 2024-03-05 | - | |
65 | Report#53「決意」 | 524 | 2 | 2024-03-10 | - | |
53 | Report#54「抜け道」 | 395 | 2 | 2024-03-15 | - | |
82 | Report#55「死の栄誉」 | 523 | 2 | 2024-03-25 | - | |
57 | Report#56「灼熱の断頭」 | 377 | 2 | 2024-03-30 | - | |
66 | Report#57「憧れの主人公」 | 380 | 0 | 2024-04-05 | - | |
60 | Report#58「記憶にいない娘」 | 308 | 2 | 2024-04-20 | - | |
48 | Report#59「蝕みの鱗粉」 | 324 | 4 | 2024-04-25 | - | |
68 | Report#60「歪み」 | 410 | 4 | 2024-04-30 | - | |
43 | Report#61「新たなステージ」 | 357 | 2 | 2024-05-10 | - | |
72 | #被験者リストB | 437 | 0 | 2024-05-10 | - | |
51 | Report#62「狂気の残党」 | 350 | 2 | 2024-05-20 | - | |
58 | Report#63「窒息」 | 366 | 2 | 2024-06-15 | - | |
56 | Report#64「護衛」 | 328 | 2 | 2024-07-10 | - | |
61 | Report#65「格付け」 | 333 | 2 | 2024-07-20 | - | |
81 | Report#66「赤い世界」 | 489 | 2 | 2024-08-05 | - | |
91 | Report#67「悪夢の始まり」 | 605 | 6 | 2024-08-15 | - | |
55 | Report#68「見せかけの希望」 | 357 | 4 | 2024-08-25 | - | |
54 | Report#69「未来を懸けて」 | 301 | 2 | 2024-09-05 | - | |
58 | Report#70「救われたい」 | 338 | 2 | 2024-09-15 | - | |
67 | Report#71「決意の隼」 | 484 | 2 | 2024-09-25 | - | |
48 | Report#72「勝者の在り方」 | 313 | 2 | 2024-10-05 | - | |
50 | Report#73「救われない」 | 330 | 2 | 2024-10-15 | - | |
41 | Report#74「死の責任」 | 310 | 4 | 2024-10-25 | - | |
49 | Report#75「喪失」 | 322 | 2 | 2024-11-05 | - | |
37 | Report#76「黙殺」 | 237 | 2 | 2024-11-10 | - | |
37 | Report#77「残されたモノ」 | 235 | 2 | 2024-11-20 | - | |
63 | Report#78「死別反応」 | 447 | 2 | 2024-11-30 | - | |
33 | Report#79「メモリアリティ」 | 207 | 2 | 2024-12-10 | - | |
32 | 観察報告レポート | 337 | 2 | 2024-12-10 | - | |
36 | Report#80「始動」 | 248 | 2 | 2024-12-20 | - | |
32 | Report#81「不可視」 | 314 | 0 | 2024-12-30 | - | |
44 | Report#82「揺れ惑う正義」 | 404 | 2 | 2025-01-10 | - | |
37 | Report#83「研ぎ澄まされし逆鱗」 | 282 | 4 | 2025-01-25 | - | |
30 | Report#84「解と答え」 | 250 | 0 | 2025-02-10 | - | |
27 | Report#85「序曲-死という舞台」 | 284 | 0 | 2025-03-20 | - | |
25 | Report#86「終幕-道化な生き方」 | 228 | 0 | 2025-03-25 | - | |
37 | Report#87「白き魚と朱の花」 | 324 | 2 | 2025-04-25 | - | |
38 | Report#88「死線」 | 367 | 4 | 2025-05-10 | - | |
35 | Report#89「衝撃」 | 263 | 4 | 2025-05-30 | - | |
33 | Report#90「愛着障害」 | 283 | 4 | 2025-06-10 | - | |
22 | Report#91「囚われの愛」 | 707 | 5 | 2025-07-05 | - | |
14 | Report#92「募る心労」 | 200 | 1 | 2025-08-25 | - |
更新情報 - NEW -
- 2025/08/30 新商品 LIMITED PACK WORLD CHAMPIONSHIP 2025 カードリスト追加。
- 09/10 15:52 評価 9点 《クラウソラスの影霊衣》「影霊衣の儀式魔法サーチ担当。 レベル…
- 09/10 15:47 評価 10点 《リンク・デコーダー》「お手軽リンク値増やしと《灰流うらら》…
- 09/10 14:59 評価 5点 《シンクロン・エクスプローラー》「召喚時に《シンクロン》を吊り…
- 09/10 13:22 評価 9点 《魔轟神獣ベヒルモス》「ずんぐりで愛らしい連中の揃っていた魔轟…
- 09/10 12:11 コンボ 拡散する魔瞳ワンキル。瞳の魔女モルガナの新コンボ。《瞳の魔女モルガ…
- 09/10 11:55 SS 第50話:影を焼き尽くす暁光
- 09/10 11:54 評価 8点 《未界域のモスマン》「他のカードの「コストとして」モスマンを捨…
- 09/10 11:30 評価 8点 《ライディング・デュエル!アクセラレーション!》「原作5Ds独特…
- 09/10 11:20 掲示板 知ってるSSあるあるやオリカの作り方を語って
- 09/10 11:12 評価 8点 《サイバース・シンクロン》「《サイバース》と《シンクロン》の名…
- 09/10 10:45 SS 前日譚フウラ・ジンキ編2
- 09/10 09:10 評価 10点 《魔轟神ガミュジン》「魔轟神待望のEXに入るレベル4チューナー。…
- 09/10 07:01 ボケ R-ACEエアホイスターの新規ボケ。無駄にかっこよくなったスーパー…
- 09/10 01:42 評価 10点 《リンク・デコーダー》「「《ファイアウォール・ドラゴン・ダー…
- 09/09 23:34 評価 6点 《創星神 tierra》「【焔聖騎士】デッキにデモンスミス、ス…
- 09/09 22:27 評価 10点 《シンクロ・フェローズ》「利便性高くていいですね。 遊星のフ…
- 09/09 22:13 掲示板 オリカコンテスト(R)計画処
- 09/09 21:38 掲示板 オリカコンテスト(R)計画処
- 09/09 21:23 評価 10点 《シンクロ・フェローズ》「1枚捨てて2枚サーチではなく、2枚…
- 09/09 21:13 評価 8点 《ヴァレット・シンクロン》「《ヴァレット》と《シンクロン》の名…
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