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Report#5「チュートリアル」 作:ランペル
どれだけの時間が経っただろうか…?
あれから、アリスさんは戻って来ない。何かあって遅れているのだろうか…?
その間に他の人がここに来てしまったら…。
何度も何度も同じことを頭の中で繰り返しながら、暗闇の中ただひたすらに待っていた。
「アリスさん……。
ピーー
あの音が鳴った。音が鳴った方から扉が開く音が聞こえ、光が入り込んできた。恐る恐るそちらへと目を向ける…。
「梨沙ちゃん!無事よね!?」
アリスさんが肩で息をしながら、立っていた。一体どれだけ急いでくれたのだろうか。その手には救急箱らしきものが握られており、すぐに私の元へと駆け寄って来てくれた。
「はい…!大丈夫です…」
「ほんとにごめんね…ちょっと、絡まれちゃって…」
どれだけ遠くなのかが分からないが、彼女はかなり息を切らしており、どことなく顔色も先ほどと比べると良くないように見えた。
「絡まれて?」
「ううん、気にしないで。それより、傷の所見せて」
「あっ、ありがとう…ございます」
彼女に促され、モンスターに噛まれた右腕を見せる。かなり深くまで噛まれたからか、まだズキズキと痛みがある。
「これは、相当やられたわね…。とりあえず、消毒していくね」
「はい」
そういうと彼女は救急箱から、懐中電灯を取り出し薄暗い部屋の床に置き、私の右腕を照らした。明かりの元で直視すると、牙が肉を抉っており、なかなかにグロテスクなことになっていた。
時間がたっていたからか、血は止まっており赤黒く変色している。そこへ消毒液を垂らされ、痛みが走る。
「いっ…!」
「あ、大丈夫?しみると思うけど、ちょっと我慢してね」
「いえ、すいません…」
消毒液が傷口を流れると、それだけですごく痛かったが何とか声を押し殺し、消毒した後に包帯を巻いてもらって治療を終えた。
「はい!とりあえず、応急処置でしかないけど…」
「いえ、だいぶ楽になりました。ありがとうございます。
…アリスさん。ここはなんなんですか?」
治療を終え、ここがどこなのかを彼女へ聞く。
「何って?」
「この場所です!私、訳も分からず連れてこられて、こんな真っ暗な所に閉じ込められて、それでいきなりデュエルをさせられて、殺されそうにもなって…」
「落ち着いて、混乱するのも無理はないわ」
「アリスさんはここがどこなのか知ってるんですよね?教えてください。ここがどこで、私がなんでここに連れてこられたのかを…」
まともに会話が出来る人と出会えたことで、今まで抱いていた疑問を次々と投げかける。
「教えてあげたいのはやまやまなんだけど…それは出来ないわ…」
「ど、どうしてですか…!?」
「まず、あなたがどうしてここに来たのか…それは私にも分からない」
「………」
「そして、ここがどこかという質問については、私たちにも決まりがあってチュートリアル中はそう言った事を教えちゃダメな決まりになってるの」
「そんな…そんなの…あんまりじゃないですか…。何も知らせずに殺されかけるなんて…そんなの……」
「…ごめんなさいね。私もいろいろと伝えてあげたいんだけれど…今は無理なの…」
「今は…ですか?」
「そう。さっき、チュートリアル中は教えれないって言ったでしょ?要するには、そのチュートリアルが終わったらそう言った制約は解除されるの」
「チュートリアル…?どういうことですか?」
「説明するね。梨沙ちゃんはさっきデュエルをしたよね?」
「……はい」
「あれがチュートリアルなの。チュートリアルは純粋なその人の力量を計るのが目的らしいのね」
「よく…分かりませんが、さっきのデュエルがチュートリアルなら、もうチュートリアルは終わってるんじゃないんですか?」
「チュートリアルは1回じゃないの。全部で3回」
「さ、3回…!?そんな…」
「その3回のチュートリアルを終えれば、情報の制約もある程度は解消されて、このフロアから外に出るのも許可されるようになるの」
「外!?外に出られるんですか?」
「外って言っても、この建物の中なのには変わりないから、梨沙ちゃんの思ってる外という訳ではないわ。それでも、チュートリアルが終われば、だいぶ事情も把握できるようになるから、それまでの辛抱と思って」
「チュートリアルを終えるってことは…また、デュエルをしないといけないんですか…?」
「…そうい事になるわね」
「………」
チュートリアルを終えないとアリスさんも詳しい情報を教えられない。しかし、チュートリアルはまだ2回も残っている…。
また、あのデュエルをしなければならない…。突き付けられた現実はあまりにも残酷な話だった。恐怖がより戻ってき、体は震え、目には涙がにじみだす。
「も、もう…あんな目には、あいたくありません…」
「…つらいよね。でも、ここから出るにはデュエルはしないといけないの」
「そんな…」
俯き黙る私へ今度はアリスさんが質問をしてくる。
「…あなたにデュエルを仕掛けてきたやつは、全身真っ黒で右目の下に傷がある奴だった?」
「え、はい。顔には傷があって暗かったですけど服も全部黒だったと思います…」
「そう、そうよね…。こういうことするのはあいつしかいないわよねぇ…」
「知り合い…なんですか?」
「そういう訳ではないけど…まぁそうなるかも…」
彼女はどこかムッとしたような、不快そうなよく分からない顔をし、その後すぐ優し気ながらも真剣な目で私を見てこう言った。
「ここにいる人たちにね、まともな人はほとんどいないの。その中でもあいつは一番イカレてる…一番危険な奴なの」
「危険…」
「そう。私もあんまり人のことは言えないけど、あいつは性格がひん曲がっててホントにクソ野郎っていう言葉が似あうやつだと思うわ」
「人のこと言えないって…アリスさんはあの人と全然違いますよ!私に…こんなに優しくしてくれて、いろいろと教えてくれて…」
私が言ったことを聞いた彼女はどこか寂しそうな顔になった。
「ありがと。そう言って貰えるぐらいにはいい人と思ってもらえるなら、あなたの為にも私とデュエルをしましょう?」
「デュエル…」
「大丈夫、チュートリアルでも多少はダメージが入ってしまうかもしれないけれど、少しでもダメージを減らせるように努めるわ。それに、あいつと違ってチュートリアル中は本来よっぽどのダメージ量じゃないと実際に痛手を負うことは少ないのよ?」
「そう…なんですか?」
「チュートリアル外ならいざ知らず、チュートリアル中にそんな傷を作る事なんて、普通はないわね…。あいつのプログラムはよっぽど危険なものに変換されちゃってるんだと思うわ」
「……」
「あなたの怖さ、つらさは私も分かってるつもり。でも、ここから出る為にはやらなきゃいけないことなの。ね?私と一緒にがんばろ?」
見ず知らずのはずの私に、一体どうしてここまでこの人は手をさし伸べてくれるのだろうか…。私を助けようとしてくれるこの人の言葉にはとても励まされ、安堵出来た。こんな訳の分からない場所からは一刻も早く出たい。彼女の言葉から勇気を貰った私は、頑張ろうという気持ちが高まってきていた。
こんな場所からは絶対に出てやる!
「…はい!頑張って、みます。デュエル…しましょう」
「よし!その意気だ。モチベーションを保つコツは外に出てからやりたいことを考える事よ」
アリスさんに言われて頭に浮かぶこと。親、友達、ご飯、遊び…外に出てやりたいことはいくらでもある。
「やりたいことは…いっぱいあります」
「…まだ、学生さんだもんね。私も頑張ってお手伝いするね」
「ありがとうございます」
「いいのいいの、それじゃ始めるわね?」
彼女がディスクを構え、それに習うように私もディスクを構える。そして、起動する二人のデュエルディスク。
ザザッピー
「ただいまよりブラックフロアにてデュエルを開始します。
ルール:マスタールール
LP:8000
モード:チュートリアル
リアルソリッドビジョン起動…。」
「もう一つのコツは、デュエル自体を楽しむようにすること!少しでも楽しめれば怖さも抑えられるはず。ね!」
「はい、お願いします!」
「デュエル!」 LP:8000
「デュエル!」 LP:8000
あれから、アリスさんは戻って来ない。何かあって遅れているのだろうか…?
その間に他の人がここに来てしまったら…。
何度も何度も同じことを頭の中で繰り返しながら、暗闇の中ただひたすらに待っていた。
「アリスさん……。
ピーー
あの音が鳴った。音が鳴った方から扉が開く音が聞こえ、光が入り込んできた。恐る恐るそちらへと目を向ける…。
「梨沙ちゃん!無事よね!?」
アリスさんが肩で息をしながら、立っていた。一体どれだけ急いでくれたのだろうか。その手には救急箱らしきものが握られており、すぐに私の元へと駆け寄って来てくれた。
「はい…!大丈夫です…」
「ほんとにごめんね…ちょっと、絡まれちゃって…」
どれだけ遠くなのかが分からないが、彼女はかなり息を切らしており、どことなく顔色も先ほどと比べると良くないように見えた。
「絡まれて?」
「ううん、気にしないで。それより、傷の所見せて」
「あっ、ありがとう…ございます」
彼女に促され、モンスターに噛まれた右腕を見せる。かなり深くまで噛まれたからか、まだズキズキと痛みがある。
「これは、相当やられたわね…。とりあえず、消毒していくね」
「はい」
そういうと彼女は救急箱から、懐中電灯を取り出し薄暗い部屋の床に置き、私の右腕を照らした。明かりの元で直視すると、牙が肉を抉っており、なかなかにグロテスクなことになっていた。
時間がたっていたからか、血は止まっており赤黒く変色している。そこへ消毒液を垂らされ、痛みが走る。
「いっ…!」
「あ、大丈夫?しみると思うけど、ちょっと我慢してね」
「いえ、すいません…」
消毒液が傷口を流れると、それだけですごく痛かったが何とか声を押し殺し、消毒した後に包帯を巻いてもらって治療を終えた。
「はい!とりあえず、応急処置でしかないけど…」
「いえ、だいぶ楽になりました。ありがとうございます。
…アリスさん。ここはなんなんですか?」
治療を終え、ここがどこなのかを彼女へ聞く。
「何って?」
「この場所です!私、訳も分からず連れてこられて、こんな真っ暗な所に閉じ込められて、それでいきなりデュエルをさせられて、殺されそうにもなって…」
「落ち着いて、混乱するのも無理はないわ」
「アリスさんはここがどこなのか知ってるんですよね?教えてください。ここがどこで、私がなんでここに連れてこられたのかを…」
まともに会話が出来る人と出会えたことで、今まで抱いていた疑問を次々と投げかける。
「教えてあげたいのはやまやまなんだけど…それは出来ないわ…」
「ど、どうしてですか…!?」
「まず、あなたがどうしてここに来たのか…それは私にも分からない」
「………」
「そして、ここがどこかという質問については、私たちにも決まりがあってチュートリアル中はそう言った事を教えちゃダメな決まりになってるの」
「そんな…そんなの…あんまりじゃないですか…。何も知らせずに殺されかけるなんて…そんなの……」
「…ごめんなさいね。私もいろいろと伝えてあげたいんだけれど…今は無理なの…」
「今は…ですか?」
「そう。さっき、チュートリアル中は教えれないって言ったでしょ?要するには、そのチュートリアルが終わったらそう言った制約は解除されるの」
「チュートリアル…?どういうことですか?」
「説明するね。梨沙ちゃんはさっきデュエルをしたよね?」
「……はい」
「あれがチュートリアルなの。チュートリアルは純粋なその人の力量を計るのが目的らしいのね」
「よく…分かりませんが、さっきのデュエルがチュートリアルなら、もうチュートリアルは終わってるんじゃないんですか?」
「チュートリアルは1回じゃないの。全部で3回」
「さ、3回…!?そんな…」
「その3回のチュートリアルを終えれば、情報の制約もある程度は解消されて、このフロアから外に出るのも許可されるようになるの」
「外!?外に出られるんですか?」
「外って言っても、この建物の中なのには変わりないから、梨沙ちゃんの思ってる外という訳ではないわ。それでも、チュートリアルが終われば、だいぶ事情も把握できるようになるから、それまでの辛抱と思って」
「チュートリアルを終えるってことは…また、デュエルをしないといけないんですか…?」
「…そうい事になるわね」
「………」
チュートリアルを終えないとアリスさんも詳しい情報を教えられない。しかし、チュートリアルはまだ2回も残っている…。
また、あのデュエルをしなければならない…。突き付けられた現実はあまりにも残酷な話だった。恐怖がより戻ってき、体は震え、目には涙がにじみだす。
「も、もう…あんな目には、あいたくありません…」
「…つらいよね。でも、ここから出るにはデュエルはしないといけないの」
「そんな…」
俯き黙る私へ今度はアリスさんが質問をしてくる。
「…あなたにデュエルを仕掛けてきたやつは、全身真っ黒で右目の下に傷がある奴だった?」
「え、はい。顔には傷があって暗かったですけど服も全部黒だったと思います…」
「そう、そうよね…。こういうことするのはあいつしかいないわよねぇ…」
「知り合い…なんですか?」
「そういう訳ではないけど…まぁそうなるかも…」
彼女はどこかムッとしたような、不快そうなよく分からない顔をし、その後すぐ優し気ながらも真剣な目で私を見てこう言った。
「ここにいる人たちにね、まともな人はほとんどいないの。その中でもあいつは一番イカレてる…一番危険な奴なの」
「危険…」
「そう。私もあんまり人のことは言えないけど、あいつは性格がひん曲がっててホントにクソ野郎っていう言葉が似あうやつだと思うわ」
「人のこと言えないって…アリスさんはあの人と全然違いますよ!私に…こんなに優しくしてくれて、いろいろと教えてくれて…」
私が言ったことを聞いた彼女はどこか寂しそうな顔になった。
「ありがと。そう言って貰えるぐらいにはいい人と思ってもらえるなら、あなたの為にも私とデュエルをしましょう?」
「デュエル…」
「大丈夫、チュートリアルでも多少はダメージが入ってしまうかもしれないけれど、少しでもダメージを減らせるように努めるわ。それに、あいつと違ってチュートリアル中は本来よっぽどのダメージ量じゃないと実際に痛手を負うことは少ないのよ?」
「そう…なんですか?」
「チュートリアル外ならいざ知らず、チュートリアル中にそんな傷を作る事なんて、普通はないわね…。あいつのプログラムはよっぽど危険なものに変換されちゃってるんだと思うわ」
「……」
「あなたの怖さ、つらさは私も分かってるつもり。でも、ここから出る為にはやらなきゃいけないことなの。ね?私と一緒にがんばろ?」
見ず知らずのはずの私に、一体どうしてここまでこの人は手をさし伸べてくれるのだろうか…。私を助けようとしてくれるこの人の言葉にはとても励まされ、安堵出来た。こんな訳の分からない場所からは一刻も早く出たい。彼女の言葉から勇気を貰った私は、頑張ろうという気持ちが高まってきていた。
こんな場所からは絶対に出てやる!
「…はい!頑張って、みます。デュエル…しましょう」
「よし!その意気だ。モチベーションを保つコツは外に出てからやりたいことを考える事よ」
アリスさんに言われて頭に浮かぶこと。親、友達、ご飯、遊び…外に出てやりたいことはいくらでもある。
「やりたいことは…いっぱいあります」
「…まだ、学生さんだもんね。私も頑張ってお手伝いするね」
「ありがとうございます」
「いいのいいの、それじゃ始めるわね?」
彼女がディスクを構え、それに習うように私もディスクを構える。そして、起動する二人のデュエルディスク。
ザザッピー
「ただいまよりブラックフロアにてデュエルを開始します。
ルール:マスタールール
LP:8000
モード:チュートリアル
リアルソリッドビジョン起動…。」
「もう一つのコツは、デュエル自体を楽しむようにすること!少しでも楽しめれば怖さも抑えられるはず。ね!」
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