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46話 可能性、繋いで その① 作:コングの施し
決闘王杯県予選を終え、ついに始まるアカデミア合宿。しかし多すぎる参加者を濾しとるふるいは、アカデミア本校までのスターチップ争奪戦であった。幕を開けた4時間の激闘。遊大はグンマ県2位の実力を持つ蜂谷加奈子から勝負を挑まれるが…
~
TURN:1
樋本 遊大(ターンプレイヤー)
LP:8000
手札:5
モンスター:
魔法罠:
フィールドゾーン:
蜂谷 加奈子
LP:8000
手札:5
モンスター:
魔法罠:
フィールドゾーン:
遊大「おれの先攻!フィールド魔法《化合電界》を発動!!」
赤と青、閃光と稲妻が駆け、流れ、塗り替わっていく世界。そして始まる新しいデュアルと共に奏でる彼のデュエル。
蜂谷「《化合電界》…う~ん、ウチの知らないカードだな。」
彼女が所属する蟻原中は全国大会常連の強豪。彼女はそこの代表としてこの合宿に参加している。そして、その強者渦巻く戦いの場を潜り抜けた彼女は、全国の県予選における、ベスト16以上のほぼすべてのデュエリストの名前と顔をリストアップし、この戦いに挑んでいた。
その上で彼女が編み出した攻略法は、極力県ベスト16以上の選手と戦わないこと。姑息だと言われようが、それはすなわち彼女が押さえている選手たちよりも弱いデュエリストと戦うことと同義であり、この戦いを生き抜く上での効率を上げる戦略となっている。
そして彼女が狙う最初の標的が、遊大であった。知らないことがイコールで自分よりも弱いことになっていることを、彼女は熟知している。
遊大「嫌でも効果なんざわかりますよ!おれはさらに永続魔法《切り裂かれし闇》を発動!」
しかし、グンマの県予選を準優勝で駆け抜けた彼女のデュエルに一切の油断はない。
蜂谷はすかさず、デュエルディスクに表示された2枚のカードのテキストを確認する。いかに準備をして来ようが、相手が県大会にも参加していない無名ともあれば、そのデッキは未知数。
蜂谷(《デュアルモンスター》をサポートする《化合電界》。そして、通常モンスターの展開を支える《切り裂かれし闇》…かあ。
市大会で止まっているから挑んだものの、なかなかしたたかに準備をしてくる子だね。)
初見殺しや素知らぬところから足を掬われぬよう、慎重にデュエルを見極める。
遊大「さらに魔法カード《篝火》を発動し、デッキから《炎天獣ーキャンドル》を手札に加え、そしてその効果で《キャンドル》を特殊召喚!」
《炎天獣ーキャンドル》(守)
☆4 炎属性・炎族/チューナー/効果
ATK:1700/DEF:0
遊大の手に宿っていた篝火が、ぼうっと強く燃え上がる。やがてそれはかわいらしい犬のようなモンスターの姿を象りフィールドに降り立った。
蜂谷「…チューナー、ってことは、《デュアル》を使いながらシンクロするデッキ?ってとこか。」
遊大「ま、見てりゃわかりますよ。
さらに通常召喚!《化合獣カーボン・クラブ》!」
六角の格子を描く光、ぱきぱきと音を立てて分離していくその一つが、『C』の文字を描く。次第にそれは膨れ上がり、鋏の姿を象った一匹のモンスターへと姿を変えた。
《化合獣カーボン・クラブ》(攻)
☆2 炎属性・水族/デュアル/効果
ATK:700/DEF:1400
遊大「《デュアル》は、再度召喚を行っていないときは通常モンスター扱い、ってことで、《切り裂かれし闇》の効果発動!デッキから1枚ドロー!」
蜂谷「それだけじゃないはずだな。《化合電界》…だったか?」
遊大「言われずとも!
《化合電界》の効果によって追加された召喚権を使うことで、《化合獣カーボン・クラブ》を再度召喚し、その効果を発動!」
両腕にある2つの鋏から、新たに格子状の光がぼんやりと現れる。その1つは遊大の手に、そしてもう1つは遊大の墓地に、まるで淡く炎をこぼしたように温かく宿る。
遊大「おれはデッキから《フェニックス・ギア・フリード》を墓地に送り、さらに《エヴォルテクター エヴェック》を手札に加える!」
蜂谷(…1枚手札、1枚墓地って…すごい効果。
召喚権を2個使わなきゃいけない故だろうけど、これは油断ならないかも。)
「やるじゃないか。キミ、本当に市で止まってるのか?」
遊大はトントンとデュエルディスクを指でついて答える。
遊大「ほんとに止まってますよ…恥ずかしい。
そういうアンタはディスクが言うにはグンマ準優勝でしょ!下っ端狙って負けるとか恰好つかないだろうけど、おれも本気で行かせてもらいますかンね!」
遊大が素早い動きでフィールドの2枚のモンスターカードを墓地に送る。同時に、映し出されている2体のモンスターが、炎をまとった矢じりとなって遊大の手元へ飛んでいく。
遊大「召喚条件は炎属性モンスター2体!サーキットコンバイン!!」
遊大の掲げる手の先に出現するサーキット。2本の燃ゆる矢じりを飲み込んだそれは、炎のような煌々とした輝きとともに赤い鎧の騎士を呼び出した。
遊大「リンク召喚!リンク2、《炎魔刃フレイムタン》!!」
《炎魔刃フレイムタン》(攻)
LINK-2 炎属性・戦士族/リンク/効果
ATK:1400[↙・↘]
フィールドに出現した新たなリンクモンスター。その騎士が刃をひとたび大地に突き立てると、遊大のフィールドに炎の壁が出現し、遊大の魔法罠ゾーンのカードたちをがっちりとしばりつけた。
蜂谷「…なあ~ンだ。
チューナーがいたからてっきりシンクロかと思った。
それより、表側の魔法罠を守る効果か。やっぱり見た目とか第一印象に反してしたたかだな、キミ。」
遊大「リアクションうっす!軽くショックだな!!」
~
遊大はもともとリンク召喚を会得していなかった。
数ある召喚法の中でも、もっとも汎用性が高いと言っても過言ではないリンク召喚。それゆえに苦悩していた。
時は県予選の翌週までさかのぼる。
放課後の部室。7月の空気は17時を回ってもまだ暑く、日中の日差しに暖められた風が、校庭の運動部員たちの掛け声と一緒に流れ込んできている。
かち、かち、
遊大「あ…手詰まった。」
かち、かち、
律歌「…じゃあ私の勝ちだね。」
遊大と律歌、2人の走らせるシャープペンの音が1人分だけになる。律歌が卓上のタイマーを止めた。彼らの手元にあるのは「Soulburner 転生炎獣のすゝめ」と記されている詰めデュエルのシート。
律歌「さすが天下のSoulbunerって感じ。リンク召喚の展開が結構複雑だね。」
遊大は大きくため息をつく。ぐっだりと机に突っ伏し、そのまま律歌のほうへと首を90度回す。
遊大「でもこれもSoulburnerが実際に作った盤面とは限らないじゃないすか…本当にいたかどうかもわからんのに。まず《転生炎獣の炎軍》ってカードを知らん。」
律歌「まあね。でも遊大…」
彼女は突っ伏した彼の頭と机の間に挟まったプリントを引っ張り出してつづけた。
律歌「リンク召喚…苦手すぎ。
もういっそ、デッキに組み込んで克服した方が早いんじゃない?」
~
遊大(…ったく、苦手だったのを克服したのに!この人はまるで当たり前みてーに!)
「おれは、カードを2枚セットしてターンエンド!」
TURN:2
蜂谷 加奈子(ターンプレイヤー)
LP:8000
手札:5→6
モンスター:
魔法罠:
フィールドゾーン:
樋本 遊大
LP:8000
手札:1
モンスター:《炎魔刃フレイムタン》(攻)
魔法罠:《切り裂かれし闇》セット×2
フィールドゾーン:《化合電界》
蜂谷「全く、てっきりシンクロするものかと思ってちょっとワクワクしたじゃないか。」
遊大が作ったのは、リンクモンスターの《炎魔刃フレイムタン》によって《切り裂かれし闇》と《化合電界》、そしてセット状態の魔法罠を防護する布陣。
蜂谷はセットされた2枚のカードのカードの中に、魔法罠側から《フレイムタン》を守るカードがあることを読み切っていた。しかしその上で彼女が取る戦法は…。
蜂谷「っし!じゃあ物量で潰すか!!」
遊大「…!!」
蜂谷「ウチはチューナーモンスター《B・F-毒針のニードル》を通常召喚し、その効果を発動!デッキから《B・F-連撃のツインボウ》を手札に加える!」
煩わしい羽音を立てながら、蜂谷のフィールドにモンスターが出現する。毒針を携えたその蜂のモンスターが今一度翅を広げると、もう一体、新たなモンスターが出現した。
蜂谷「さらに!手札に加えた《B・F-連撃のツインボウ》の効果で、手札から自身を特殊召喚!」
《B・F-毒針のニードル》(攻)
☆2 風属性・昆虫族/チューナー/効果
ATK:400/DEF:800
《B・F-連撃のツインボウ》(守)
☆3 風属性・昆虫族/効果
ATK:1000/DEF:500
遊大「チューナーと非チューナー…!あんたこそやる気だな!」
蜂谷「ま、とりあえずこれは小手調べってカンジ。行くよ!《連撃のツインボウ》に《毒針のニードル》をチューニング!」
2匹の蜂のモンスターは、羽音を立てながら円の字を描き、やがてそれは閃緑色の光る星の道標となる。
蜂谷「蜂出する憤激の針よ、閃光と共に天をも射貫く弓となれ。シンクロ召喚!《B・Fー霊弓のアズサ》!」
《B・F-霊弓のアズサ》(攻)
☆5 風属性・昆虫族/シンクロ/チューナー/効果
ATK:2200/DEF:1600
稲光が走り、蜂の顔を持った射手が真っ直ぐに弓を引く。そして遊大に走る、ある違和感。
遊大(こいつ…なんかおかしい!なんだ!?何が違う!?)
蜂谷が何も言わずとも、そのモンスターの立ち姿だけで感じ取れる違和感。今まで見てきたどのSモンスターにもなかった、異質な雰囲気。しかし蜂谷は、そして始まったスターチップ争奪戦というこの戦いは、遊大を待ってはくれない。
蜂谷「まだまだ!
手札から《死者蘇生》を発動し、墓地の《連撃のツインボウ》を再び特殊召喚!」
《B・F-連撃のツインボウ》(守)
☆3 風属性・昆虫族/効果
ATK:1000/DEF:500
遊大「…チューナーじゃない…?」
遊大はハッとする。蜂谷が使用した《死者蘇生》。それによって墓地から呼び出されるのはチューナーである《B・F-毒針のニードル》だと思っていた。そうであれば、相手のフィールドの合計レベルは7。より強力なシンクロモンスターを呼び出せるから。
しかしここで蜂谷が呼び出したのは非チューナーである《B・F-連撃のツインボウ》。特殊召喚されたモンスターがチューナーではないことが、遊大にその違和感の正体を気づかせた。
遊大「…いや、違う!
《霊弓のアズサ》…!そいつがチューナーか!!」
蜂谷「御名答!コイツはシンクロチューナーだ!
そして、レベル3の《連撃のツインボウ》に、レベル5のSチューナー《霊弓のアズサ》をチューニング!」
《B・Fー霊弓のアズサ》が天へと放った矢が、5つの星を描く。そして駆け抜ける光が地を貫き、新たなシンクロモンスターがその姿を見せた。
蜂谷「呼応する力。怨毒の炎を携え、反抗の矢を放て!シンクロ召喚!《B・Fー降魔弓のハマ》!!」
《B・F-降魔弓のハマ》(攻)
☆8 風属性・昆虫族/シンクロ/効果
ATK:2800/DEF:1600
群青の鎧は虫の外骨格のような生物的な光沢を放っており、右手に携えた弓はまっすぐに遊大を捉えている。
遊大「レベル8のシンクロ…エースモンスターか!」
蜂谷「《降魔弓のハマ》はシンクロモンスターを素材としているとき、2回攻撃できる!それじゃあバトルといこうか!!」
遊大「…!」
遊大はこの瞬間に手を止めた。彼が伏せているカードの1枚は《デュアル・アブレーション》。彼のデッキの根幹を成すと言っても過言ではないほどに持てる役割が大きい。
それゆえに《炎魔刃フレイムタン》を戦闘で破壊されることを嫌った。この一手が彼を苦しめることを知らずに。
遊大「メインフェイズ終了時、永続罠《デュアル・アブレーション》を発動!
手札を1枚墓地に送り、再度召喚扱いでデッキから《ダックドロッパー》を特殊召喚する!」
《ダックドロッパー》(守)
☆:1 水属性・鳥獣族/デュアル/効果
ATK:0/DEF:0
ザプン、と遊大の足元に水がせせらぐ。同時に遊大の足がその水流に流され、フィールドの中心まで押し出される。
そしてその遊大の背後から顔を覗かせる小さな水鳥とひよこの群れのモンスター。それが《ダックドロッパー》本体であった。
蜂谷「ああ?デュエリストを前に出すなんて、とんだ無礼者だね。
なんだいそのモンスターは?」
遊大「《ダックドロッパー》は、自身への効果の対象と破壊を無効にし、さらに自分への攻撃を全て直接攻撃にする効果を持つ…!
あんまり《フレイムタン》を破壊して欲しくないもんでね!」
蜂谷はその言葉を聞いて笑みを浮かべた。まるで自分の策に獲物がかかった時のように。
蜂谷「それでキミ自身が前に出てきたワケか。じゃあウチからレッスンだ。そういうモンスターは相手のメインフェイズに出さない方がいい。なぜなら…」
そのまま残った4枚の手札から1枚のカードを取り出し、そのデュエルディスクに叩きつけた。
蜂谷「詰ませにいけてしまうからね!」
遊大「…!?」
蜂谷が叩きつけたそのカード。背後に巨大な蜂巣が出現し、内より無数のモンスターが飛び出す。
蜂谷「魔法カード《一斉蜂起》を発動!相手のモンスターの数まで、墓地からレベル4以下の《B・F》モンスターを特殊召喚する!
蘇れ!《連撃のツインボウ》!《毒針のニードル》!」
《B・F-連撃のツインボウ》(攻)
☆3 風属性・昆虫族/効果
ATK:1000/DEF:500
《B・F-毒針のニードル》(攻)
☆2 風属性・昆虫族/チューナー/効果
ATK:400/DEF:800
遊大の背筋が凍った。完全なミスであった。初見のデッキとはいえ、直接攻撃を許すカードをメインフェイズ中に展開すること。そして相手の手札は決して少ないわけではない。
遊大(見通しが甘かった…!自分の動きを優先しすぎだ!)
蜂谷「さらに手札から《B・Fー必中のピン》を特殊召喚し、その効果でキミに200ダメージ!」
《B・Fー必中のピン》(攻)
☆1 風属性・昆虫族/効果
ATK:200/DEF:300
ぶんぶん、と小さく羽ばたく蜂のモンスター。その針が遊大のLPに小さく突き刺さる。
樋本 遊大 LP:8000→7800
遊大「くっ…そりゃそうか。ここぞってばっかに展開するよな!」
メインフェイズ終了時の遊大の《デュアル・アブレーション》の発動から、デュエルの流れは蜂谷の方へと大きく傾いていた。
そしてついに、展開された4体のモンスターによる文字通りの一斉蜂起が、遊大のLPを貫かんとしていた。
蜂谷「じゃあ今度こそバトルだ!」
遊大「…おれへの攻撃は、《ダックドロッパー》の効果により全てダイレクトアタックとなる…!」
蜂谷「さあさいってらっしゃい、ウチの《B・F》たち!!」
デュエルディスクに映るフェイズが「MAIN」から「BATTLE」へと移ると、蜂谷のモンスターたちが一斉に遊大の方へと飛びかかる。
蜂谷「《B・F-毒針のニードル》!《B・F-必中のピン》!直接攻撃だ!」
先発で遊大の元へと突っ込んでくる2体の蜂のモンスター、鋭利な2突きが、遊大のLPを貫く。
《B・F-毒針のニードル》 (ATK:400)
《B・F-必中のピン》 (ATK:200)
樋本 遊大 LP:7800→7400→7200
遊大「ぐあっ…!だがまだLPは…!!」
このターンにいわゆる「リーサル」はない。そう踏んでいた遊大だったが、残された《連撃のツインボウ》の毒針が二重の刺突となって遊大に襲い掛かった。
《B・F-連撃のツインボウ》 (ATK:1000)
樋本 遊大 LP:7200→6200→5200
遊大「はっ…!?」
死角からの二撃。手札から特殊召喚する効果にしか目を向けていなかった。その攻撃を決めた蜂谷は得意げに笑みを見せる。
蜂谷「《連撃》の名は伊達じゃないだろう?
そして二重の攻撃を持っているのはコイツだけじゃない!
《B・F-降魔弓のハマ》!!」
蜂の甲殻をまとった二重の射手。その左手が弦を離すと、瞳の先の銀色の矢が瞬く間に遊大の眼前へと迫り、ソリッドヴィジョンにも関わらず痛みを覚えてしまうほどに、ざっくりとその身を貫いた。
《B・F-降魔弓のハマ》 (ATK:2800)
樋本 遊大 LP:5200→2600
遊大「ぐあああっ!!!」
蜂谷「さらに!相手に戦闘ダメージを与えたことで、相手のモンスターの攻撃守備力を1000ポイントダウン!」
《炎魔刃フレイムタン》 ATK:1400→400
《B・F-降魔弓のハマ》の一閃によって、遊大の身が大きく後ろへと吹き飛ばされる。このターンで大きく削られたLP。しかし、全ての攻撃をプレイヤーへと喰らわせる効果を持った《ダックドロッパー》を、遊大は《炎魔刃フレイムタン》と魔法・罠を守るためだけに呼び出したわけではない。
蜂谷「最後の攻撃!!
《B・F-降魔弓のハマ》の二撃目!貫け!!」
鋭利な矢針を携えた射手が、翔を轟かせて大きく飛び上がり、その弦を大きく引く。遊大のわずかなLP狙いを定め、その一撃を放った。
遊大「はぁ、はぁ…!
《ダックドロッパー》を出したのは、《フレイムタン》を守るためだけじゃ、ねえぞ!!!」
空を裂き、喉元までせまった一撃。遊大が叩きつけた1枚のカードから、金色の星が放たれ、彼を貫かんとした一本の矢を弾き返した。
蜂谷「おっと…!?」
遊大「罠発動!《王魂調和》!」
死に物狂いで防いだその一撃。《王魂調和》から放たれた8つの星は円を描き、やがて巨大な竜の姿を描き始める。
遊大「《王魂調和》は相手の直接攻撃を無効にし、さらに墓地のモンスターを素材として除外することで、シンクロ召喚を行う!
おれは合計レベル8となるように、《炎天獣ーキャンドル》と《エヴォルテクター エヴェック》を除外!」
蜂谷「直接攻撃時にシンクロ…なかなかいいカードをつかうじゃあないか!見せてみろ!」
遊大「破壊を司る黒鉄の龍!憤怒の炎で仇なう者どもを焼き焦がせ!
シンクロ召喚!《ブラック・ブルドラゴ》!!」
《ブラック・ブルドラゴ》(攻)
☆8 炎属性・ドラゴン族/シンクロ/効果
ATK:3000/DEF:2600
大地が裂け、炎が吹きあがる。火山の山肌を思わせるような黒い光沢の鱗は熱を帯びて揺らめき、その咆哮は火焔と共にフィールドに轟く。
遊大「まだだ…!こっちも初戦から負けるわけ行かないんでね!」
蜂谷は2枚のカードをディスクにセットし、開いた両手でぱしっと拳を合わせる。最初こそ狩人のような目つきだった彼女の顔にもじんわりと笑みが宿っている。
蜂谷「上等だよ!手札を2枚セット!
ウチはこれでターンエンドだ!!」
TURN:3
樋本 遊大(ターンプレイヤー)
LP:2600
手札:0→1
モンスター:《炎魔刃フレイムタン》(攻) 《ブラック・ブルドラゴ》(攻) 《ダックドロッパー》(守)
魔法罠:《切り裂かれし闇》 《デュアル・アブレーション》
フィールドゾーン:《化合電界》
蜂谷 加奈子
LP:8000
手札:0
モンスター:《B・F-降魔弓のハマ》(攻) 《B・F-必中のピン》(攻) 《B・F-毒針のニードル》(攻) 《B・F-連撃のツインボウ》(攻)
魔法罠:セット×2
フィールドゾーン:
遊大「おれのターン!」
迎えた遊大のターン。ここで手札の枚数は1枚。このターンでの反撃に乗り出そうとしている遊大であったが、蜂谷のモンスターの効果が彼の思考を引き付けていた。
《B・F-降魔弓のハマ》(攻)
☆8 風属性・昆虫族/シンクロ/効果
ATK:2800/DEF:1600
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):Sモンスターを素材としてS召喚したこのカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。
(2):このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時に発動できる。相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力・守備力は1000ダウンする。
(3):相手が戦闘ダメージを受けなかった自分バトルフェイズの終了時に発動できる。自分の墓地の「B・F」モンスターの数×300ダメージを相手に与える。
紺碧の鎧をまとった蜂の射手。その矢じりがまっすぐに自分の心臓に向けられている。
遊大(《B・F-降魔弓のハマ》…2回攻撃にステータスダウンの効果。そして極めつけが…)
「そいつの3つめの効果…だよな。もうリーチってわけだ。」
蜂谷「おや?気づいてたか。」
《B・F-降魔弓のハマ》の3つ目の効果。遊大はすでにバトルフェイズの時点でその効果を確認していた。遊大に残されたLPはすでに2600。バトルフェイズ終了時にバーンダメージを与える効果も、今でこそ蜂谷の墓地に《B・F》は《B・F-霊弓のアズサ》しかいないが、次のターンのシンクロやリンク召喚での展開で墓地が肥えてしまえばその時点で遊大の敗北となる。
遊大(つまりこのターンで《降魔弓のハマ》を除去しなきゃ次のターンが回ってくる保証はないわけだ。…なら!!)
「いくぞ!おれは《炎魔刃フレイムタン》の効果を発動し、除外状態の炎属性モンスター1体を手札に加える!ブレイズエクステンド!」
《炎魔刃フレイムタン》が真っ赤に燃えたその剣をフィールドに突き立てると、燃え広がったその炎が一枚のカードとなって遊大の手元へと飛んでくる。勢いよくキャッチしたそのカードは《エヴォルテクター エヴェック》。
遊大「除外されている《エヴォルテクター エヴェック》を手札に!」
蜂谷(…《炎天獣ーキャンドル》を手札に戻して効果発動。ってわけじゃないんだな。いや、効果が使えない感じか…?)
遊大「さらに今手札に加えた《エヴォルテクター エヴェック》を墓地に送り、《ブラック・ブルドラゴ》の効果を発動!!ブルノワールフレア!!」
《ブラック・ブルドラゴ》がその巨木のような腕で大地を叩き割る。流し込まれる炎がフィールドを揺らし、蜂谷のセットされたカードまで及ぶ。地が隆起し、そのカードを熱光が貫かんとした瞬間、高速の矢じりがその腕に突き刺さった。
蜂谷「おっと、そのカードを割られると困るんだ。
《毒針のニードル》の2つ目の効果を、《降魔弓のハマ》をリリースして発動。相手のモンスター効果の発動を無効にする!」
腕に突き刺さったその矢じりから黒紫色の液体が流し込まれ、《ブラック・ブルドラゴ》のその体が相反して色を失っていく。
遊大「…なんでだ!?」
セットされたカードを守った蜂谷。その防護は予想内であったが、ある1つの事実が彼を惑わせた。
遊大(ミス…じゃないよな。
《降魔弓のハマ》をコストにする意味ってなんだ?絶対に残してたほうがいいはずだよな。)
蜂谷「《降魔弓のハマ》をコストにしたのはミスじゃないか?って顔だな。ミスじゃないんだなこれが!永続罠《シンクロ・ゾーン》を発動!」
遊大「シンクロゾーン?」
ゴゴ…
重苦しい音を立て、フィールドに緑色の輝きを放つ陣が出現する。そしてその中心より、もう一度ゆっくりと蜂出する紺碧の射手。
蜂谷「シンクロモンスターが墓地に送られた場合、そのモンスターをチューナー扱いで特殊召喚する!ふたたび出でよ!《B・F-降魔弓のハマ》!!」
《B・F-降魔弓のハマ》(攻)
☆8 風属性・昆虫族/シンクロ/(チューナー)/効果
ATK:2800/DEF:1600
ジャリ…!
翡翠色の光を放つ戦陣は、《B・F-降魔弓のハマ》を呼び出しただけに留まらない。《ブラック・ブルドラゴ》と《B・F-降魔弓のハマ》以外のフィールドのモンスターが、陣と同じ色の鎖によって音を立てて縛り付けられた。
遊大「なんだこれ…!?」
蜂谷「このカードがフィールドに存在する限り、シンクロモンスター以外の攻撃は許されない。」
遊大はその瞬間にハッとした。
ここで攻撃を止めるカードを展開したこと。そして《B・F-降魔弓のハマ》をもう一度呼び出したこと。
それにより、もう一枚のセットカードの存在が少しずつ頭の中ではっきりとしていくのを感じる。
遊大(《ブラック・ブルドラゴ》の攻撃力は《B・F-降魔弓のハマ》を上回っている。べつに戦闘破壊時に《シンクロ・ゾーン》を使うことだってできたはずだ。だったらもう一枚のセットカードは自然とわかってくるよな…!)
「フィールド魔法《化合電界》の効果を発動!」
遊大の背後より、熱と冷気をおびた巨大な波が押し寄せる。迫りゆくその波は《ダックドロッパー》のカードを巻き込み、そのまま蜂谷のもう一枚のセットカードへと向ってゆく。
そして同時に、蜂谷もハッとした。ミス、とまでは言わない。しかし、心のどこかで相手を下に見ていたからこそ生まれた思考のスキに、その一本の穴に、遊大の刃が迫りつつある。
良くない予感。勝利から遠のく気配が、蜂谷の背筋に冷汗となって駆け抜けた。
蜂谷「ここでセットカードを破壊…!?」
バリン…
音を立てて砕かれたカードは《B・F・N》。相手のバトルフェイズを終了させ、さらに追加の《B・F》モンスターを展開するカード。すなわちここで、遊大の《B・F-降魔弓のハマ》を討ち取るという狙いが現実味を帯びる。
遊大「いくぞ!バトルだ!!」
蜂谷は大きくため息をつく。額に手を当て、目を瞑る。まるで自分の行動を見直すように。
蜂谷「…やれやれ。すまない。ちょっと舐めてた。そうかハマが狙いで…。。」
蜂谷の零した言葉はやがて独り言へと変わる。遊大にも聞き取れないほどに小さな声で。まるで小さな蜂が飛び回る羽音のように。
遊大(独り言…。だが、ここで《B・F-降魔弓のハマ》を狩る!!)
じりじりと寄りゆく黒竜。《ブラック・ブルドラゴ》。巨木のような剛腕を振り上げたとき、閉じられていた蜂谷の瞼がぱっちりと開く。
「あんまり舐めるなよ。」
その言葉と同時に、フィールドが大きく揺らめく。緑色の結界は崩れ始め、蜂谷のモンスターたちも同じ色の光となって消えていく。
遊大「な…んだァ!?」
蜂谷「相手メインフェイズ終了時、《シンクロ・ゾーン》の最後の効果を発動!」
遊大「そのカード…!まだ効果があったのか!!」
蜂谷「ウチのモンスターのみを素材として、シンクロ召喚を行う!」
光となって消えていくモンスター達。《B・F-降魔弓のハマ》を中心として、2体の《B・F》たちがそれぞれ星となっていく。繋ぎ合わさっていくそれぞれの可能性。そして輪郭を現す、巨大な蜂の要塞。蜂谷の駆るモンスター、その王とも呼べる新たなシンクロモンスターが、胎動を始めた瞬間である。
続く
~
TURN:1
樋本 遊大(ターンプレイヤー)
LP:8000
手札:5
モンスター:
魔法罠:
フィールドゾーン:
蜂谷 加奈子
LP:8000
手札:5
モンスター:
魔法罠:
フィールドゾーン:
遊大「おれの先攻!フィールド魔法《化合電界》を発動!!」
赤と青、閃光と稲妻が駆け、流れ、塗り替わっていく世界。そして始まる新しいデュアルと共に奏でる彼のデュエル。
蜂谷「《化合電界》…う~ん、ウチの知らないカードだな。」
彼女が所属する蟻原中は全国大会常連の強豪。彼女はそこの代表としてこの合宿に参加している。そして、その強者渦巻く戦いの場を潜り抜けた彼女は、全国の県予選における、ベスト16以上のほぼすべてのデュエリストの名前と顔をリストアップし、この戦いに挑んでいた。
その上で彼女が編み出した攻略法は、極力県ベスト16以上の選手と戦わないこと。姑息だと言われようが、それはすなわち彼女が押さえている選手たちよりも弱いデュエリストと戦うことと同義であり、この戦いを生き抜く上での効率を上げる戦略となっている。
そして彼女が狙う最初の標的が、遊大であった。知らないことがイコールで自分よりも弱いことになっていることを、彼女は熟知している。
遊大「嫌でも効果なんざわかりますよ!おれはさらに永続魔法《切り裂かれし闇》を発動!」
しかし、グンマの県予選を準優勝で駆け抜けた彼女のデュエルに一切の油断はない。
蜂谷はすかさず、デュエルディスクに表示された2枚のカードのテキストを確認する。いかに準備をして来ようが、相手が県大会にも参加していない無名ともあれば、そのデッキは未知数。
蜂谷(《デュアルモンスター》をサポートする《化合電界》。そして、通常モンスターの展開を支える《切り裂かれし闇》…かあ。
市大会で止まっているから挑んだものの、なかなかしたたかに準備をしてくる子だね。)
初見殺しや素知らぬところから足を掬われぬよう、慎重にデュエルを見極める。
遊大「さらに魔法カード《篝火》を発動し、デッキから《炎天獣ーキャンドル》を手札に加え、そしてその効果で《キャンドル》を特殊召喚!」
《炎天獣ーキャンドル》(守)
☆4 炎属性・炎族/チューナー/効果
ATK:1700/DEF:0
遊大の手に宿っていた篝火が、ぼうっと強く燃え上がる。やがてそれはかわいらしい犬のようなモンスターの姿を象りフィールドに降り立った。
蜂谷「…チューナー、ってことは、《デュアル》を使いながらシンクロするデッキ?ってとこか。」
遊大「ま、見てりゃわかりますよ。
さらに通常召喚!《化合獣カーボン・クラブ》!」
六角の格子を描く光、ぱきぱきと音を立てて分離していくその一つが、『C』の文字を描く。次第にそれは膨れ上がり、鋏の姿を象った一匹のモンスターへと姿を変えた。
《化合獣カーボン・クラブ》(攻)
☆2 炎属性・水族/デュアル/効果
ATK:700/DEF:1400
遊大「《デュアル》は、再度召喚を行っていないときは通常モンスター扱い、ってことで、《切り裂かれし闇》の効果発動!デッキから1枚ドロー!」
蜂谷「それだけじゃないはずだな。《化合電界》…だったか?」
遊大「言われずとも!
《化合電界》の効果によって追加された召喚権を使うことで、《化合獣カーボン・クラブ》を再度召喚し、その効果を発動!」
両腕にある2つの鋏から、新たに格子状の光がぼんやりと現れる。その1つは遊大の手に、そしてもう1つは遊大の墓地に、まるで淡く炎をこぼしたように温かく宿る。
遊大「おれはデッキから《フェニックス・ギア・フリード》を墓地に送り、さらに《エヴォルテクター エヴェック》を手札に加える!」
蜂谷(…1枚手札、1枚墓地って…すごい効果。
召喚権を2個使わなきゃいけない故だろうけど、これは油断ならないかも。)
「やるじゃないか。キミ、本当に市で止まってるのか?」
遊大はトントンとデュエルディスクを指でついて答える。
遊大「ほんとに止まってますよ…恥ずかしい。
そういうアンタはディスクが言うにはグンマ準優勝でしょ!下っ端狙って負けるとか恰好つかないだろうけど、おれも本気で行かせてもらいますかンね!」
遊大が素早い動きでフィールドの2枚のモンスターカードを墓地に送る。同時に、映し出されている2体のモンスターが、炎をまとった矢じりとなって遊大の手元へ飛んでいく。
遊大「召喚条件は炎属性モンスター2体!サーキットコンバイン!!」
遊大の掲げる手の先に出現するサーキット。2本の燃ゆる矢じりを飲み込んだそれは、炎のような煌々とした輝きとともに赤い鎧の騎士を呼び出した。
遊大「リンク召喚!リンク2、《炎魔刃フレイムタン》!!」
《炎魔刃フレイムタン》(攻)
LINK-2 炎属性・戦士族/リンク/効果
ATK:1400[↙・↘]
フィールドに出現した新たなリンクモンスター。その騎士が刃をひとたび大地に突き立てると、遊大のフィールドに炎の壁が出現し、遊大の魔法罠ゾーンのカードたちをがっちりとしばりつけた。
蜂谷「…なあ~ンだ。
チューナーがいたからてっきりシンクロかと思った。
それより、表側の魔法罠を守る効果か。やっぱり見た目とか第一印象に反してしたたかだな、キミ。」
遊大「リアクションうっす!軽くショックだな!!」
~
遊大はもともとリンク召喚を会得していなかった。
数ある召喚法の中でも、もっとも汎用性が高いと言っても過言ではないリンク召喚。それゆえに苦悩していた。
時は県予選の翌週までさかのぼる。
放課後の部室。7月の空気は17時を回ってもまだ暑く、日中の日差しに暖められた風が、校庭の運動部員たちの掛け声と一緒に流れ込んできている。
かち、かち、
遊大「あ…手詰まった。」
かち、かち、
律歌「…じゃあ私の勝ちだね。」
遊大と律歌、2人の走らせるシャープペンの音が1人分だけになる。律歌が卓上のタイマーを止めた。彼らの手元にあるのは「Soulburner 転生炎獣のすゝめ」と記されている詰めデュエルのシート。
律歌「さすが天下のSoulbunerって感じ。リンク召喚の展開が結構複雑だね。」
遊大は大きくため息をつく。ぐっだりと机に突っ伏し、そのまま律歌のほうへと首を90度回す。
遊大「でもこれもSoulburnerが実際に作った盤面とは限らないじゃないすか…本当にいたかどうかもわからんのに。まず《転生炎獣の炎軍》ってカードを知らん。」
律歌「まあね。でも遊大…」
彼女は突っ伏した彼の頭と机の間に挟まったプリントを引っ張り出してつづけた。
律歌「リンク召喚…苦手すぎ。
もういっそ、デッキに組み込んで克服した方が早いんじゃない?」
~
遊大(…ったく、苦手だったのを克服したのに!この人はまるで当たり前みてーに!)
「おれは、カードを2枚セットしてターンエンド!」
TURN:2
蜂谷 加奈子(ターンプレイヤー)
LP:8000
手札:5→6
モンスター:
魔法罠:
フィールドゾーン:
樋本 遊大
LP:8000
手札:1
モンスター:《炎魔刃フレイムタン》(攻)
魔法罠:《切り裂かれし闇》セット×2
フィールドゾーン:《化合電界》
蜂谷「全く、てっきりシンクロするものかと思ってちょっとワクワクしたじゃないか。」
遊大が作ったのは、リンクモンスターの《炎魔刃フレイムタン》によって《切り裂かれし闇》と《化合電界》、そしてセット状態の魔法罠を防護する布陣。
蜂谷はセットされた2枚のカードのカードの中に、魔法罠側から《フレイムタン》を守るカードがあることを読み切っていた。しかしその上で彼女が取る戦法は…。
蜂谷「っし!じゃあ物量で潰すか!!」
遊大「…!!」
蜂谷「ウチはチューナーモンスター《B・F-毒針のニードル》を通常召喚し、その効果を発動!デッキから《B・F-連撃のツインボウ》を手札に加える!」
煩わしい羽音を立てながら、蜂谷のフィールドにモンスターが出現する。毒針を携えたその蜂のモンスターが今一度翅を広げると、もう一体、新たなモンスターが出現した。
蜂谷「さらに!手札に加えた《B・F-連撃のツインボウ》の効果で、手札から自身を特殊召喚!」
《B・F-毒針のニードル》(攻)
☆2 風属性・昆虫族/チューナー/効果
ATK:400/DEF:800
《B・F-連撃のツインボウ》(守)
☆3 風属性・昆虫族/効果
ATK:1000/DEF:500
遊大「チューナーと非チューナー…!あんたこそやる気だな!」
蜂谷「ま、とりあえずこれは小手調べってカンジ。行くよ!《連撃のツインボウ》に《毒針のニードル》をチューニング!」
2匹の蜂のモンスターは、羽音を立てながら円の字を描き、やがてそれは閃緑色の光る星の道標となる。
蜂谷「蜂出する憤激の針よ、閃光と共に天をも射貫く弓となれ。シンクロ召喚!《B・Fー霊弓のアズサ》!」
《B・F-霊弓のアズサ》(攻)
☆5 風属性・昆虫族/シンクロ/チューナー/効果
ATK:2200/DEF:1600
稲光が走り、蜂の顔を持った射手が真っ直ぐに弓を引く。そして遊大に走る、ある違和感。
遊大(こいつ…なんかおかしい!なんだ!?何が違う!?)
蜂谷が何も言わずとも、そのモンスターの立ち姿だけで感じ取れる違和感。今まで見てきたどのSモンスターにもなかった、異質な雰囲気。しかし蜂谷は、そして始まったスターチップ争奪戦というこの戦いは、遊大を待ってはくれない。
蜂谷「まだまだ!
手札から《死者蘇生》を発動し、墓地の《連撃のツインボウ》を再び特殊召喚!」
《B・F-連撃のツインボウ》(守)
☆3 風属性・昆虫族/効果
ATK:1000/DEF:500
遊大「…チューナーじゃない…?」
遊大はハッとする。蜂谷が使用した《死者蘇生》。それによって墓地から呼び出されるのはチューナーである《B・F-毒針のニードル》だと思っていた。そうであれば、相手のフィールドの合計レベルは7。より強力なシンクロモンスターを呼び出せるから。
しかしここで蜂谷が呼び出したのは非チューナーである《B・F-連撃のツインボウ》。特殊召喚されたモンスターがチューナーではないことが、遊大にその違和感の正体を気づかせた。
遊大「…いや、違う!
《霊弓のアズサ》…!そいつがチューナーか!!」
蜂谷「御名答!コイツはシンクロチューナーだ!
そして、レベル3の《連撃のツインボウ》に、レベル5のSチューナー《霊弓のアズサ》をチューニング!」
《B・Fー霊弓のアズサ》が天へと放った矢が、5つの星を描く。そして駆け抜ける光が地を貫き、新たなシンクロモンスターがその姿を見せた。
蜂谷「呼応する力。怨毒の炎を携え、反抗の矢を放て!シンクロ召喚!《B・Fー降魔弓のハマ》!!」
《B・F-降魔弓のハマ》(攻)
☆8 風属性・昆虫族/シンクロ/効果
ATK:2800/DEF:1600
群青の鎧は虫の外骨格のような生物的な光沢を放っており、右手に携えた弓はまっすぐに遊大を捉えている。
遊大「レベル8のシンクロ…エースモンスターか!」
蜂谷「《降魔弓のハマ》はシンクロモンスターを素材としているとき、2回攻撃できる!それじゃあバトルといこうか!!」
遊大「…!」
遊大はこの瞬間に手を止めた。彼が伏せているカードの1枚は《デュアル・アブレーション》。彼のデッキの根幹を成すと言っても過言ではないほどに持てる役割が大きい。
それゆえに《炎魔刃フレイムタン》を戦闘で破壊されることを嫌った。この一手が彼を苦しめることを知らずに。
遊大「メインフェイズ終了時、永続罠《デュアル・アブレーション》を発動!
手札を1枚墓地に送り、再度召喚扱いでデッキから《ダックドロッパー》を特殊召喚する!」
《ダックドロッパー》(守)
☆:1 水属性・鳥獣族/デュアル/効果
ATK:0/DEF:0
ザプン、と遊大の足元に水がせせらぐ。同時に遊大の足がその水流に流され、フィールドの中心まで押し出される。
そしてその遊大の背後から顔を覗かせる小さな水鳥とひよこの群れのモンスター。それが《ダックドロッパー》本体であった。
蜂谷「ああ?デュエリストを前に出すなんて、とんだ無礼者だね。
なんだいそのモンスターは?」
遊大「《ダックドロッパー》は、自身への効果の対象と破壊を無効にし、さらに自分への攻撃を全て直接攻撃にする効果を持つ…!
あんまり《フレイムタン》を破壊して欲しくないもんでね!」
蜂谷はその言葉を聞いて笑みを浮かべた。まるで自分の策に獲物がかかった時のように。
蜂谷「それでキミ自身が前に出てきたワケか。じゃあウチからレッスンだ。そういうモンスターは相手のメインフェイズに出さない方がいい。なぜなら…」
そのまま残った4枚の手札から1枚のカードを取り出し、そのデュエルディスクに叩きつけた。
蜂谷「詰ませにいけてしまうからね!」
遊大「…!?」
蜂谷が叩きつけたそのカード。背後に巨大な蜂巣が出現し、内より無数のモンスターが飛び出す。
蜂谷「魔法カード《一斉蜂起》を発動!相手のモンスターの数まで、墓地からレベル4以下の《B・F》モンスターを特殊召喚する!
蘇れ!《連撃のツインボウ》!《毒針のニードル》!」
《B・F-連撃のツインボウ》(攻)
☆3 風属性・昆虫族/効果
ATK:1000/DEF:500
《B・F-毒針のニードル》(攻)
☆2 風属性・昆虫族/チューナー/効果
ATK:400/DEF:800
遊大の背筋が凍った。完全なミスであった。初見のデッキとはいえ、直接攻撃を許すカードをメインフェイズ中に展開すること。そして相手の手札は決して少ないわけではない。
遊大(見通しが甘かった…!自分の動きを優先しすぎだ!)
蜂谷「さらに手札から《B・Fー必中のピン》を特殊召喚し、その効果でキミに200ダメージ!」
《B・Fー必中のピン》(攻)
☆1 風属性・昆虫族/効果
ATK:200/DEF:300
ぶんぶん、と小さく羽ばたく蜂のモンスター。その針が遊大のLPに小さく突き刺さる。
樋本 遊大 LP:8000→7800
遊大「くっ…そりゃそうか。ここぞってばっかに展開するよな!」
メインフェイズ終了時の遊大の《デュアル・アブレーション》の発動から、デュエルの流れは蜂谷の方へと大きく傾いていた。
そしてついに、展開された4体のモンスターによる文字通りの一斉蜂起が、遊大のLPを貫かんとしていた。
蜂谷「じゃあ今度こそバトルだ!」
遊大「…おれへの攻撃は、《ダックドロッパー》の効果により全てダイレクトアタックとなる…!」
蜂谷「さあさいってらっしゃい、ウチの《B・F》たち!!」
デュエルディスクに映るフェイズが「MAIN」から「BATTLE」へと移ると、蜂谷のモンスターたちが一斉に遊大の方へと飛びかかる。
蜂谷「《B・F-毒針のニードル》!《B・F-必中のピン》!直接攻撃だ!」
先発で遊大の元へと突っ込んでくる2体の蜂のモンスター、鋭利な2突きが、遊大のLPを貫く。
《B・F-毒針のニードル》 (ATK:400)
《B・F-必中のピン》 (ATK:200)
樋本 遊大 LP:7800→7400→7200
遊大「ぐあっ…!だがまだLPは…!!」
このターンにいわゆる「リーサル」はない。そう踏んでいた遊大だったが、残された《連撃のツインボウ》の毒針が二重の刺突となって遊大に襲い掛かった。
《B・F-連撃のツインボウ》 (ATK:1000)
樋本 遊大 LP:7200→6200→5200
遊大「はっ…!?」
死角からの二撃。手札から特殊召喚する効果にしか目を向けていなかった。その攻撃を決めた蜂谷は得意げに笑みを見せる。
蜂谷「《連撃》の名は伊達じゃないだろう?
そして二重の攻撃を持っているのはコイツだけじゃない!
《B・F-降魔弓のハマ》!!」
蜂の甲殻をまとった二重の射手。その左手が弦を離すと、瞳の先の銀色の矢が瞬く間に遊大の眼前へと迫り、ソリッドヴィジョンにも関わらず痛みを覚えてしまうほどに、ざっくりとその身を貫いた。
《B・F-降魔弓のハマ》 (ATK:2800)
樋本 遊大 LP:5200→2600
遊大「ぐあああっ!!!」
蜂谷「さらに!相手に戦闘ダメージを与えたことで、相手のモンスターの攻撃守備力を1000ポイントダウン!」
《炎魔刃フレイムタン》 ATK:1400→400
《B・F-降魔弓のハマ》の一閃によって、遊大の身が大きく後ろへと吹き飛ばされる。このターンで大きく削られたLP。しかし、全ての攻撃をプレイヤーへと喰らわせる効果を持った《ダックドロッパー》を、遊大は《炎魔刃フレイムタン》と魔法・罠を守るためだけに呼び出したわけではない。
蜂谷「最後の攻撃!!
《B・F-降魔弓のハマ》の二撃目!貫け!!」
鋭利な矢針を携えた射手が、翔を轟かせて大きく飛び上がり、その弦を大きく引く。遊大のわずかなLP狙いを定め、その一撃を放った。
遊大「はぁ、はぁ…!
《ダックドロッパー》を出したのは、《フレイムタン》を守るためだけじゃ、ねえぞ!!!」
空を裂き、喉元までせまった一撃。遊大が叩きつけた1枚のカードから、金色の星が放たれ、彼を貫かんとした一本の矢を弾き返した。
蜂谷「おっと…!?」
遊大「罠発動!《王魂調和》!」
死に物狂いで防いだその一撃。《王魂調和》から放たれた8つの星は円を描き、やがて巨大な竜の姿を描き始める。
遊大「《王魂調和》は相手の直接攻撃を無効にし、さらに墓地のモンスターを素材として除外することで、シンクロ召喚を行う!
おれは合計レベル8となるように、《炎天獣ーキャンドル》と《エヴォルテクター エヴェック》を除外!」
蜂谷「直接攻撃時にシンクロ…なかなかいいカードをつかうじゃあないか!見せてみろ!」
遊大「破壊を司る黒鉄の龍!憤怒の炎で仇なう者どもを焼き焦がせ!
シンクロ召喚!《ブラック・ブルドラゴ》!!」
《ブラック・ブルドラゴ》(攻)
☆8 炎属性・ドラゴン族/シンクロ/効果
ATK:3000/DEF:2600
大地が裂け、炎が吹きあがる。火山の山肌を思わせるような黒い光沢の鱗は熱を帯びて揺らめき、その咆哮は火焔と共にフィールドに轟く。
遊大「まだだ…!こっちも初戦から負けるわけ行かないんでね!」
蜂谷は2枚のカードをディスクにセットし、開いた両手でぱしっと拳を合わせる。最初こそ狩人のような目つきだった彼女の顔にもじんわりと笑みが宿っている。
蜂谷「上等だよ!手札を2枚セット!
ウチはこれでターンエンドだ!!」
TURN:3
樋本 遊大(ターンプレイヤー)
LP:2600
手札:0→1
モンスター:《炎魔刃フレイムタン》(攻) 《ブラック・ブルドラゴ》(攻) 《ダックドロッパー》(守)
魔法罠:《切り裂かれし闇》 《デュアル・アブレーション》
フィールドゾーン:《化合電界》
蜂谷 加奈子
LP:8000
手札:0
モンスター:《B・F-降魔弓のハマ》(攻) 《B・F-必中のピン》(攻) 《B・F-毒針のニードル》(攻) 《B・F-連撃のツインボウ》(攻)
魔法罠:セット×2
フィールドゾーン:
遊大「おれのターン!」
迎えた遊大のターン。ここで手札の枚数は1枚。このターンでの反撃に乗り出そうとしている遊大であったが、蜂谷のモンスターの効果が彼の思考を引き付けていた。
《B・F-降魔弓のハマ》(攻)
☆8 風属性・昆虫族/シンクロ/効果
ATK:2800/DEF:1600
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):Sモンスターを素材としてS召喚したこのカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。
(2):このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時に発動できる。相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力・守備力は1000ダウンする。
(3):相手が戦闘ダメージを受けなかった自分バトルフェイズの終了時に発動できる。自分の墓地の「B・F」モンスターの数×300ダメージを相手に与える。
紺碧の鎧をまとった蜂の射手。その矢じりがまっすぐに自分の心臓に向けられている。
遊大(《B・F-降魔弓のハマ》…2回攻撃にステータスダウンの効果。そして極めつけが…)
「そいつの3つめの効果…だよな。もうリーチってわけだ。」
蜂谷「おや?気づいてたか。」
《B・F-降魔弓のハマ》の3つ目の効果。遊大はすでにバトルフェイズの時点でその効果を確認していた。遊大に残されたLPはすでに2600。バトルフェイズ終了時にバーンダメージを与える効果も、今でこそ蜂谷の墓地に《B・F》は《B・F-霊弓のアズサ》しかいないが、次のターンのシンクロやリンク召喚での展開で墓地が肥えてしまえばその時点で遊大の敗北となる。
遊大(つまりこのターンで《降魔弓のハマ》を除去しなきゃ次のターンが回ってくる保証はないわけだ。…なら!!)
「いくぞ!おれは《炎魔刃フレイムタン》の効果を発動し、除外状態の炎属性モンスター1体を手札に加える!ブレイズエクステンド!」
《炎魔刃フレイムタン》が真っ赤に燃えたその剣をフィールドに突き立てると、燃え広がったその炎が一枚のカードとなって遊大の手元へと飛んでくる。勢いよくキャッチしたそのカードは《エヴォルテクター エヴェック》。
遊大「除外されている《エヴォルテクター エヴェック》を手札に!」
蜂谷(…《炎天獣ーキャンドル》を手札に戻して効果発動。ってわけじゃないんだな。いや、効果が使えない感じか…?)
遊大「さらに今手札に加えた《エヴォルテクター エヴェック》を墓地に送り、《ブラック・ブルドラゴ》の効果を発動!!ブルノワールフレア!!」
《ブラック・ブルドラゴ》がその巨木のような腕で大地を叩き割る。流し込まれる炎がフィールドを揺らし、蜂谷のセットされたカードまで及ぶ。地が隆起し、そのカードを熱光が貫かんとした瞬間、高速の矢じりがその腕に突き刺さった。
蜂谷「おっと、そのカードを割られると困るんだ。
《毒針のニードル》の2つ目の効果を、《降魔弓のハマ》をリリースして発動。相手のモンスター効果の発動を無効にする!」
腕に突き刺さったその矢じりから黒紫色の液体が流し込まれ、《ブラック・ブルドラゴ》のその体が相反して色を失っていく。
遊大「…なんでだ!?」
セットされたカードを守った蜂谷。その防護は予想内であったが、ある1つの事実が彼を惑わせた。
遊大(ミス…じゃないよな。
《降魔弓のハマ》をコストにする意味ってなんだ?絶対に残してたほうがいいはずだよな。)
蜂谷「《降魔弓のハマ》をコストにしたのはミスじゃないか?って顔だな。ミスじゃないんだなこれが!永続罠《シンクロ・ゾーン》を発動!」
遊大「シンクロゾーン?」
ゴゴ…
重苦しい音を立て、フィールドに緑色の輝きを放つ陣が出現する。そしてその中心より、もう一度ゆっくりと蜂出する紺碧の射手。
蜂谷「シンクロモンスターが墓地に送られた場合、そのモンスターをチューナー扱いで特殊召喚する!ふたたび出でよ!《B・F-降魔弓のハマ》!!」
《B・F-降魔弓のハマ》(攻)
☆8 風属性・昆虫族/シンクロ/(チューナー)/効果
ATK:2800/DEF:1600
ジャリ…!
翡翠色の光を放つ戦陣は、《B・F-降魔弓のハマ》を呼び出しただけに留まらない。《ブラック・ブルドラゴ》と《B・F-降魔弓のハマ》以外のフィールドのモンスターが、陣と同じ色の鎖によって音を立てて縛り付けられた。
遊大「なんだこれ…!?」
蜂谷「このカードがフィールドに存在する限り、シンクロモンスター以外の攻撃は許されない。」
遊大はその瞬間にハッとした。
ここで攻撃を止めるカードを展開したこと。そして《B・F-降魔弓のハマ》をもう一度呼び出したこと。
それにより、もう一枚のセットカードの存在が少しずつ頭の中ではっきりとしていくのを感じる。
遊大(《ブラック・ブルドラゴ》の攻撃力は《B・F-降魔弓のハマ》を上回っている。べつに戦闘破壊時に《シンクロ・ゾーン》を使うことだってできたはずだ。だったらもう一枚のセットカードは自然とわかってくるよな…!)
「フィールド魔法《化合電界》の効果を発動!」
遊大の背後より、熱と冷気をおびた巨大な波が押し寄せる。迫りゆくその波は《ダックドロッパー》のカードを巻き込み、そのまま蜂谷のもう一枚のセットカードへと向ってゆく。
そして同時に、蜂谷もハッとした。ミス、とまでは言わない。しかし、心のどこかで相手を下に見ていたからこそ生まれた思考のスキに、その一本の穴に、遊大の刃が迫りつつある。
良くない予感。勝利から遠のく気配が、蜂谷の背筋に冷汗となって駆け抜けた。
蜂谷「ここでセットカードを破壊…!?」
バリン…
音を立てて砕かれたカードは《B・F・N》。相手のバトルフェイズを終了させ、さらに追加の《B・F》モンスターを展開するカード。すなわちここで、遊大の《B・F-降魔弓のハマ》を討ち取るという狙いが現実味を帯びる。
遊大「いくぞ!バトルだ!!」
蜂谷は大きくため息をつく。額に手を当て、目を瞑る。まるで自分の行動を見直すように。
蜂谷「…やれやれ。すまない。ちょっと舐めてた。そうかハマが狙いで…。。」
蜂谷の零した言葉はやがて独り言へと変わる。遊大にも聞き取れないほどに小さな声で。まるで小さな蜂が飛び回る羽音のように。
遊大(独り言…。だが、ここで《B・F-降魔弓のハマ》を狩る!!)
じりじりと寄りゆく黒竜。《ブラック・ブルドラゴ》。巨木のような剛腕を振り上げたとき、閉じられていた蜂谷の瞼がぱっちりと開く。
「あんまり舐めるなよ。」
その言葉と同時に、フィールドが大きく揺らめく。緑色の結界は崩れ始め、蜂谷のモンスターたちも同じ色の光となって消えていく。
遊大「な…んだァ!?」
蜂谷「相手メインフェイズ終了時、《シンクロ・ゾーン》の最後の効果を発動!」
遊大「そのカード…!まだ効果があったのか!!」
蜂谷「ウチのモンスターのみを素材として、シンクロ召喚を行う!」
光となって消えていくモンスター達。《B・F-降魔弓のハマ》を中心として、2体の《B・F》たちがそれぞれ星となっていく。繋ぎ合わさっていくそれぞれの可能性。そして輪郭を現す、巨大な蜂の要塞。蜂谷の駆るモンスター、その王とも呼べる新たなシンクロモンスターが、胎動を始めた瞬間である。
続く
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59 | 1話 転入生 | 785 | 0 | 2020-10-25 | - | |
75 | 2話 巨竜の使い手 | 804 | 0 | 2020-10-31 | - | |
71 | 登場人物紹介 〜東雲中編〜 | 847 | 0 | 2020-11-04 | - | |
107 | 3話 黒き刺客たち | 916 | 3 | 2020-11-14 | - | |
83 | 4話 暗く冷たく | 705 | 0 | 2020-11-23 | - | |
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81 | 15話 刹那の決闘 | 630 | 0 | 2021-05-29 | - | |
97 | 16話 リベリオス・ソウル | 627 | 0 | 2021-06-08 | - | |
71 | 17話 リトル・ファイター | 549 | 0 | 2021-07-22 | - | |
70 | 18話 強者への道、煌めいて | 509 | 0 | 2021-10-30 | - | |
68 | 19話 黒い霧 | 726 | 0 | 2022-01-02 | - | |
56 | 20話 大丈夫! | 488 | 0 | 2022-03-08 | - | |
86 | 21話 魂を繋ぐ龍 | 633 | 0 | 2022-04-03 | - | |
75 | 22話 原初の雄叫び その① | 589 | 2 | 2022-05-02 | - | |
59 | 23話 原初の雄叫び その② | 578 | 2 | 2022-05-04 | - | |
46 | 24話 焼け野原 その① | 421 | 2 | 2022-11-10 | - | |
44 | 25話 焼け野原 その② | 476 | 0 | 2022-11-11 | - | |
38 | 26話 蒼の衝突 その① | 398 | 0 | 2023-02-28 | - | |
41 | 27話 蒼の衝突 その② | 381 | 0 | 2023-03-24 | - | |
45 | 28話 憧れゆえの | 520 | 2 | 2023-04-15 | - | |
36 | 29話 黒い暴虐 | 281 | 0 | 2023-07-20 | - | |
57 | 30話 決闘の導火線 | 481 | 2 | 2023-07-30 | - | |
32 | 登場人物紹介 〜光妖中編〜 | 347 | 0 | 2023-08-03 | - | |
31 | 31話 開幕!決闘王杯! | 257 | 0 | 2023-08-12 | - | |
31 | 32話 ガムシャラ | 380 | 2 | 2023-08-25 | - | |
24 | 33話 目覚める龍血 その① | 273 | 2 | 2023-09-02 | - | |
32 | 34話 目覚める龍血 その② | 298 | 2 | 2023-09-06 | - | |
51 | 35話 雨中の戎 その① | 403 | 4 | 2023-09-19 | - | |
23 | 36話 雨中の戎 その② | 248 | 2 | 2023-09-23 | - | |
26 | 37話 チャレンジャー | 373 | 2 | 2023-09-30 | - | |
47 | 38話 心に傘を | 379 | 2 | 2023-10-07 | - | |
24 | 39話 龍の瞳に映るのは その① | 332 | 3 | 2023-10-22 | - | |
28 | 40話 龍の瞳に映るのは その② | 297 | 2 | 2023-10-26 | - | |
40 | 41話 花と薄暮 | 372 | 2 | 2023-10-30 | - | |
29 | 42話 燃ゆる轍 その① | 341 | 2 | 2023-11-07 | - | |
26 | 43話 燃ゆる轍 その② | 258 | 1 | 2023-11-09 | - | |
25 | 44話 襷 | 249 | 1 | 2023-11-14 | - | |
22 | 45話 星を賭けた戦い | 340 | 3 | 2023-11-17 | - | |
24 | 46話 可能性、繋いで その① | 295 | 2 | 2023-11-28 | - | |
34 | 47話 可能性、繋いで その② | 281 | 2 | 2023-12-07 | - | |
23 | 48話 揺れろ。魂の… | 229 | 2 | 2023-12-28 | - | |
26 | 49話 エンタメデュエル | 250 | 2 | 2024-01-07 | - | |
34 | 50話 乗り越えろ! | 298 | 3 | 2024-01-26 | - | |
55 | 51話 Show Me!! | 301 | 0 | 2024-02-01 | - | |
29 | 52話 モノクロの虹彩 | 359 | 1 | 2024-02-08 | - | |
29 | 53話 激昂 | 248 | 2 | 2024-02-22 | - | |
23 | 54話 火の暮れる場所 その① | 209 | 0 | 2024-03-02 | - | |
44 | 55話 火の暮れる場所 その② | 303 | 2 | 2024-03-07 | - | |
28 | 56話 赫灼の剣皇 | 298 | 2 | 2024-03-11 | - | |
37 | 57話 金の卵たち | 224 | 2 | 2024-03-18 | - | |
26 | 合宿参加者リスト 〜生徒編〜 | 196 | 0 | 2024-03-20 | - | |
33 | 58話 一生向き合うカード | 272 | 2 | 2024-03-24 | - | |
27 | 合宿参加者リスト〜特別講師編〜 | 217 | 0 | 2024-03-31 | - | |
36 | 59話 強くならなきゃ | 285 | 2 | 2024-04-03 | - | |
28 | 60話 竜を駆るもの | 157 | 0 | 2024-04-20 | - | |
40 | 61話 竜を狩るもの | 243 | 2 | 2024-04-22 | - | |
30 | 62話 反逆の剣 | 178 | 2 | 2024-04-26 | - | |
29 | 63話 血の鎖 | 243 | 1 | 2024-05-01 | - | |
39 | 64話 気高き瞳 | 301 | 2 | 2024-06-02 | - | |
20 | 65話 使命、確信、脈動 | 252 | 2 | 2024-06-16 | - | |
29 | 66話 夜帷 | 174 | 0 | 2024-07-14 | - | |
23 | 67話 闇に舞い降りた天才 | 208 | 2 | 2024-07-18 | - | |
23 | 68話 陽は何処で輝く | 186 | 2 | 2024-07-30 | - | |
23 | 69話 血みどろの歯車 | 180 | 2 | 2024-08-16 | - | |
18 | 70話 災禍 その① | 164 | 2 | 2024-08-28 | - | |
23 | 71話 災禍 その② | 162 | 2 | 2024-09-01 | - | |
18 | 72話 親と子 | 114 | 2 | 2024-09-09 | - |
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- 2024/09/30 新商品 WORLD PREMIERE PACK 2024 カードリスト追加。
- 09/30 12:47 評価 8点 《鎖付き飛龍炎刃》「《サラマンドラ》と《鎖付きブーメラン》が合…
- 09/30 12:43 掲示板 オリカコンテスト(R)計画処
- 09/30 12:27 評価 8点 《サラマンドラ・フュージョン》「明らかに《聖騎士の追想 イゾル…
- 09/30 12:15 評価 7点 《果てなき灰滅》「《灰滅》の永続罠。 自身の送り付けが可能な《…
- 09/30 12:15 デッキ 灰よ
- 09/30 11:56 掲示板 オリカコンテスト(R)計画処
- 09/30 11:49 評価 6点 《灰滅せし都の先懸》「相手の場にエース級や《滅亡龍 ヴェイドス…
- 09/30 11:47 評価 9点 《滅亡龍 ヴェイドス》「名前と出で立ちから《ドラゴン族》っぽく…
- 09/30 11:45 評価 7点 《灰滅せし都の英雄》「灰滅の妨害要員になれるカード。 《滅亡龍…
- 09/30 11:41 デッキ さらりと強化された暗黒界
- 09/30 11:37 評価 7点 《灰滅の憤怒》「ほぼ《滅亡龍 ヴェイドス》を墓地に送ってそれを…
- 09/30 11:27 評価 8点 《灰滅せし成れの果て》「素材のゆるさが本体。 《果てなき灰滅》…
- 09/30 11:23 評価 9点 《滅亡き闇 ヴェイドス》「主に《果てなき灰滅》による融合効果で…
- 09/30 11:19 ボケ Voici la Carte~メニューはこちら~の新規ボケ。私の人生…
- 09/30 11:14 評価 7点 《終わりなき灰滅》「《滅亡龍 ヴェイドス》でセットできる永続罠…
- 09/30 11:06 評価 8点 《灰滅の復燃》「灰滅の妨害方法は破壊に偏っていますが、このカー…
- 09/30 11:04 ボケ 狂愛の竜娘アイザの新規ボケ。"狂愛"…? 失礼だな…"純愛"だよ。 …
- 09/30 11:01 ボケ 暗黒界の文殿の新規ボケ。さて…今日は伊東ライフ先生にするか…
- 09/30 11:00 評価 5点 《狂愛の竜娘アイザ》「 自ら相手にくっついた挙げ句に心中してく…
- 09/30 10:58 評価 8点 《果てなき灰滅》「《滅亡龍 ヴェイドス》によってセットできる罠…
Amazonのアソシエイトとして、管理人は適格販売により収入を得ています。
そんな彼女の編み出した攻略法がベスト16以上のデュエリストを避けて星を稼ぐ戦術。トップ勢を避ける事で必然的に強くないデュエリストを狙いにするのは、星を稼ぐという目的においては実に堅実ですね。
そんなリストアップから漏れた遊大が標的になった訳ですが、逆に言えば未知の敵。地雷を踏み抜く可能性があるのが、この戦略の欠点ともいえるかもですね。
新たに編み出したリンク召喚を披露した遊大ですが、他の召喚法より素材に必要な条件が緩いというのもあり、蜂谷相手にはあまり驚かれず少ししょんぼりしてますねw
連撃と数による物量を得意とするB・Fを前に一気にライフを削られた遊大。ブラック・ブルドラゴも展開するが、大型のシンクロを呼び出される予兆が…。
遊大は蜂谷の猛攻に耐え抜けるのか?次回以降も気になる所です! (2023-11-30 14:23)
勝ち越し7点が条件のこの戦い…強い奴らと当たっていてはあまりに非効率ですからね。欠点こそあれど、雑魚狩りにシフトするのは合理的といえるでしょう。
いっせいにモンスターを展開するB・Fデッキ。シンクロデッキの中ではなかなか勢いがある方ですし、わかりやすいデッキなので全国の舞台で使用する者がいてもおかしくないのでは?と思った次第です。
キャラクターたちの敵がどんどん強くなっていく舞台!今後どのような強敵が待つのか乞うご期待です! (2023-12-07 20:10)