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Report#7「報酬」 作:ランペル
ピーーー
「アリス様のライフが0になりました。勝者は裏野様です。」
アナウンスが梨沙の勝利を報じる。
デュエルに勝った…。
映し出され質量を持ったモンスター達、それが実際に動きデュエルを繰り広げる。これほどワクワクするものもなかっただろう。
私はいつの間にか本気でデュエルそのものを楽しんでいた。
「負けちゃったね~」
最後の衝撃で倒れこんだアリスさんが笑いながら起き上がる。
「あ、アリスさん。大丈夫…ですか?」
「あぁ、このぐらい全然平気だよ。それより梨沙ちゃん、なかなかやるじゃない!」
「今回はデュエル自体を楽しめたので、頑張れた気がします!」
「ふふ、そうね。楽しかったわね」
にっこりと微笑むアリスさんの笑顔を見て、心が温かくなったような感じがした。
恐ろしい環境に身を置いていた私とこんなにも楽しいデュエルをしてくれた。私にデュエルの楽しさを思い出させてくれた彼女には感謝しかない。
「はい!アリスさんのおかげで楽しいデュエルが出来ました!」
「そんな私のおかげだなんて。梨沙ちゃんが頑張ったからだよ」
アリスさんが照れくさそうに目線を逸らす。
「アリス様へデュエルボーナスが送られます。ご確認ください。」
アナウンスが流れ、それと同時にアリスさんのデュエルディスクが一瞬光る。
「デュエルボーナス…?」
「あぁ、ここではデュエルをするとこんな感じで報酬が得られるの」
「報酬ですか?」
「まだ詳しいことは言えないけど…お金みたいなものよ」
「え!?お金が貰えるんですか?」
今回は楽しかったものの、前回のデュエルは非道そのものだった。どちらにせよ、この環境でデュエルを行った者に対して報酬が発生することに驚いた。
「うん。デュエルの内容によって差はあるけれどね」
「報酬…」
報酬という言葉からここがどういう場所なのかを改めて考える。デュエルを依頼されて、デュエルを行ったから報酬が発生している…。
言うならデュエルの演者としての出演料だろうか?しかしながら、私はそういったことに関しては素人同然だ。ショーで雇われたとは記憶がなくともあり得ないと分かる。
では、ここは報酬を得る為に人が集まった場所という事だろうか?
「(あ…」
最初に出会った男が言っていたことが思い返される。
(「お前がここにいるのは、お前が望んだことなんだからなぁ?」)
考えられない事だが、記憶がない以上断言する事は出来ない。
まさか自分がお金に釣られてこんな危ない所に来たとは到底信じたくはないが…男の発言から考えるとその可能性もあり得なくはない…。
考えれば考える程に身が凍る。本当に自分の意思でこんな所へ来たのだとしたら、自分が本当に自分なのかを疑いたくなる。それほどまでに…あのデュエルは恐ろしかった…。
「梨沙ちゃん?大丈夫?」
はっと我に返るとアリスさんが心配そうにこちらの顔を覗き込んでいた。
「あ、だ、大丈夫です」
「やっぱり複雑だよね…。梨沙ちゃんとデュエルした私が報酬貰ってるなんて…」
「え?あ、いや…」
「全部は否定できないけど、梨沙ちゃんを心配した気持ちは本当だよ。今までも…ひどい事されてきた子はいたから…」
そう言いながらアリスさんはつらそうにしながら右手で自分の包帯が巻かれた左腕をぎゅっと握っている。
「…アリスさんが私を心配してくれた事なんて疑う余地ないですよ。そして、心配してくれる人が居た事で私がどれだけ救われたか…」
この人が居なかったら私は立ち直れていなかっただろう。死にかけ、殺されかけた環境で手を差し伸べてくれた。
それがどれほど私にとって救いとなっただろうか。
窮地に陥った状況から救い出されたことを思うと自然と目頭が熱くなる。
「アリスさんには本当に感謝してますよ!アリスさんが居なかったら私、怖くておかしくなってたと思いますから」
にこやかに笑いながらアリスさんへと感謝を告げた。それを受けてアリスさんもにこやかに笑いながら返してくれる。
「えへへ…そうまで感謝されると…照れちゃうよ?」
「ふふふ」
出会ってまだ数十分の関係だが、優しさ溢れるアリスさんとは強い信頼が生まれているように感じた。もしアリスさんが困っている時には全力で手助けをしたいと心からそう思えた。
「梨沙ちゃんの報酬は、チュートリアルが終わった時にまとめて貰えると思うから」
「あ、私も貰えるんですね」
「うん、額までは憶えてないけど…そこそこ貰えたはず…?」
「アリスさんは、何かお金使いたい事ってあるんですか?」
「私は………特に、ないかな」
妙に寂しそうな笑顔を彼女は見せた。
「よし、それじゃそろそろ私は行くね」
「あ、行っちゃうんですか?」
彼女がいなくなることでどうしても不安は大きくなる。
自然と彼女を惜しむ言葉が口から漏れ出す。
「私も梨沙ちゃんとはもっと一緒に居てあげたいけど、そうも言ってられないのよね…」
「そうだ。チュートリアルは確かあと1回ですよね?もう一度アリスさんとデュエルするのは無理なんですか…?」
「チュートリアルの相手を出来るのは1人1回までなの。
だから、申し訳ないんだけど私がもう一度デュエルすることは出来ないわ…」
「そうですか…」
「梨沙ちゃん…大丈夫。
チュートリアルデュエルでは衝撃があるくらいだったでしょ?
最初にここへあなたとデュエルしに来た奴以外でチュートリアルのシステムに干渉できるやつはいないはずよ。
だから、デュエル自体は勝っても負けても誰かが傷ついたりはしないわ」
「確かに、今回のデュエルはほとんど痛いとかはなかったですね…」
「そ、誰が来るかは分からないから、おかしな奴が来るかもしれないけど、デュエル自体のダメージはほとんどないから次のチュートリアルは怖がらなくても大丈夫だからね」
「はい」
「チュートリアルが終わったら全体でアナウンスが流れると思うし、その時にあなたへこの場所の説明が簡単にされると思うわ。
だから、もう少しの辛抱よ」
「はい、ありがとうございます」
私の不安を少しでも和らげようとしてくれているのだろう。アリスさんは私に様々なアドバイスと私を安心させるように優しく話しかけてくれる。
「うん!ここではどれだけデュエルにのめり込めるかが鍵よ。辛くて苦しい事も、デュエルの楽しみを思い出せれば耐えられるはずだから…!」
アリスさんはとても明るい声で私に語り掛けてきていたが、その表情が何とも寂しげだったのが印象に残った…。
「そう、ですね」
「頑張ってね!お姉さんとしては梨沙ちゃんは妹みたいなものだからね」
「あはは、なんですかそれ」
一瞬見えた寂しげな表情はすぐに消え、私をからかうように笑顔を向けられ思わず笑ってしまった。
「チュートリアルが終わったらまた来れると思うから、その時に改めていろいろと教えてあげる」
「分かりました。アリスさんありがとうございます」
「それじゃ、またね」
アリスさんがこちらへと手を振りながら、扉へと向かって行く。
扉まで辿り着くと扉が両側へと開きそれと同時に部屋の明かりが落とされていく。
アリスさんと少しずつ閉じられる扉と狭くなっていく外の光を見送る。
扉が完全に閉じられると共に、再びここは完全な暗闇に包まれた…。
「行っちゃった…」
完全に視界が閉ざされるこの暗闇はどうしても不安になってしまう。先ほどまでよりましとは言え、こうまで暗いとどうしても不安だ。
「(…なんでここ、こんなに真っ暗にするんだろう…)」
湧き上がる不安をかき消すように素朴な疑問が心に浮かんだ。
「アリス様のライフが0になりました。勝者は裏野様です。」
アナウンスが梨沙の勝利を報じる。
デュエルに勝った…。
映し出され質量を持ったモンスター達、それが実際に動きデュエルを繰り広げる。これほどワクワクするものもなかっただろう。
私はいつの間にか本気でデュエルそのものを楽しんでいた。
「負けちゃったね~」
最後の衝撃で倒れこんだアリスさんが笑いながら起き上がる。
「あ、アリスさん。大丈夫…ですか?」
「あぁ、このぐらい全然平気だよ。それより梨沙ちゃん、なかなかやるじゃない!」
「今回はデュエル自体を楽しめたので、頑張れた気がします!」
「ふふ、そうね。楽しかったわね」
にっこりと微笑むアリスさんの笑顔を見て、心が温かくなったような感じがした。
恐ろしい環境に身を置いていた私とこんなにも楽しいデュエルをしてくれた。私にデュエルの楽しさを思い出させてくれた彼女には感謝しかない。
「はい!アリスさんのおかげで楽しいデュエルが出来ました!」
「そんな私のおかげだなんて。梨沙ちゃんが頑張ったからだよ」
アリスさんが照れくさそうに目線を逸らす。
「アリス様へデュエルボーナスが送られます。ご確認ください。」
アナウンスが流れ、それと同時にアリスさんのデュエルディスクが一瞬光る。
「デュエルボーナス…?」
「あぁ、ここではデュエルをするとこんな感じで報酬が得られるの」
「報酬ですか?」
「まだ詳しいことは言えないけど…お金みたいなものよ」
「え!?お金が貰えるんですか?」
今回は楽しかったものの、前回のデュエルは非道そのものだった。どちらにせよ、この環境でデュエルを行った者に対して報酬が発生することに驚いた。
「うん。デュエルの内容によって差はあるけれどね」
「報酬…」
報酬という言葉からここがどういう場所なのかを改めて考える。デュエルを依頼されて、デュエルを行ったから報酬が発生している…。
言うならデュエルの演者としての出演料だろうか?しかしながら、私はそういったことに関しては素人同然だ。ショーで雇われたとは記憶がなくともあり得ないと分かる。
では、ここは報酬を得る為に人が集まった場所という事だろうか?
「(あ…」
最初に出会った男が言っていたことが思い返される。
(「お前がここにいるのは、お前が望んだことなんだからなぁ?」)
考えられない事だが、記憶がない以上断言する事は出来ない。
まさか自分がお金に釣られてこんな危ない所に来たとは到底信じたくはないが…男の発言から考えるとその可能性もあり得なくはない…。
考えれば考える程に身が凍る。本当に自分の意思でこんな所へ来たのだとしたら、自分が本当に自分なのかを疑いたくなる。それほどまでに…あのデュエルは恐ろしかった…。
「梨沙ちゃん?大丈夫?」
はっと我に返るとアリスさんが心配そうにこちらの顔を覗き込んでいた。
「あ、だ、大丈夫です」
「やっぱり複雑だよね…。梨沙ちゃんとデュエルした私が報酬貰ってるなんて…」
「え?あ、いや…」
「全部は否定できないけど、梨沙ちゃんを心配した気持ちは本当だよ。今までも…ひどい事されてきた子はいたから…」
そう言いながらアリスさんはつらそうにしながら右手で自分の包帯が巻かれた左腕をぎゅっと握っている。
「…アリスさんが私を心配してくれた事なんて疑う余地ないですよ。そして、心配してくれる人が居た事で私がどれだけ救われたか…」
この人が居なかったら私は立ち直れていなかっただろう。死にかけ、殺されかけた環境で手を差し伸べてくれた。
それがどれほど私にとって救いとなっただろうか。
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「アリスさんには本当に感謝してますよ!アリスさんが居なかったら私、怖くておかしくなってたと思いますから」
にこやかに笑いながらアリスさんへと感謝を告げた。それを受けてアリスさんもにこやかに笑いながら返してくれる。
「えへへ…そうまで感謝されると…照れちゃうよ?」
「ふふふ」
出会ってまだ数十分の関係だが、優しさ溢れるアリスさんとは強い信頼が生まれているように感じた。もしアリスさんが困っている時には全力で手助けをしたいと心からそう思えた。
「梨沙ちゃんの報酬は、チュートリアルが終わった時にまとめて貰えると思うから」
「あ、私も貰えるんですね」
「うん、額までは憶えてないけど…そこそこ貰えたはず…?」
「アリスさんは、何かお金使いたい事ってあるんですか?」
「私は………特に、ないかな」
妙に寂しそうな笑顔を彼女は見せた。
「よし、それじゃそろそろ私は行くね」
「あ、行っちゃうんですか?」
彼女がいなくなることでどうしても不安は大きくなる。
自然と彼女を惜しむ言葉が口から漏れ出す。
「私も梨沙ちゃんとはもっと一緒に居てあげたいけど、そうも言ってられないのよね…」
「そうだ。チュートリアルは確かあと1回ですよね?もう一度アリスさんとデュエルするのは無理なんですか…?」
「チュートリアルの相手を出来るのは1人1回までなの。
だから、申し訳ないんだけど私がもう一度デュエルすることは出来ないわ…」
「そうですか…」
「梨沙ちゃん…大丈夫。
チュートリアルデュエルでは衝撃があるくらいだったでしょ?
最初にここへあなたとデュエルしに来た奴以外でチュートリアルのシステムに干渉できるやつはいないはずよ。
だから、デュエル自体は勝っても負けても誰かが傷ついたりはしないわ」
「確かに、今回のデュエルはほとんど痛いとかはなかったですね…」
「そ、誰が来るかは分からないから、おかしな奴が来るかもしれないけど、デュエル自体のダメージはほとんどないから次のチュートリアルは怖がらなくても大丈夫だからね」
「はい」
「チュートリアルが終わったら全体でアナウンスが流れると思うし、その時にあなたへこの場所の説明が簡単にされると思うわ。
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「はい、ありがとうございます」
私の不安を少しでも和らげようとしてくれているのだろう。アリスさんは私に様々なアドバイスと私を安心させるように優しく話しかけてくれる。
「うん!ここではどれだけデュエルにのめり込めるかが鍵よ。辛くて苦しい事も、デュエルの楽しみを思い出せれば耐えられるはずだから…!」
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「そう、ですね」
「頑張ってね!お姉さんとしては梨沙ちゃんは妹みたいなものだからね」
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