18話　強者への道、煌めいて　作：コングの施し

ついに始まった光妖中vs東雲中団体戦最終試合。東雲中、デュアルモンスターやエクシーズ召喚を扱う樋本遊大、そして立ち塞がるは光妖中、一家相伝の忍者デッキを巧みに操る斬隠輝久。デュエルの研究や仲間達の協力を得て進化する遊大は、輝久の「才能」のデュエルによって劣勢へと追い込まれる。守りの要のエクシーズモンスターを除外された遊大は…。

遊大
モンスター:0
セット:0
魔法罠(表側):金剛真力、一点着地
手札:2

輝久
モンスター:黒竜の忍者
セット:0
魔法罠(表側):忍法変化の術
手札:3

ターン3

遊大と輝久のデュエルは、ターン3にして既に佳境に入っていた。遊大は後攻1ターン目にランク4の《No.54 ダイヤモンド・クラブ・キング》をX召喚し守りを固めた上で輝久に攻撃を挑むが、《忍法 変化の術》と《黒竜の忍者》の効果により、あっけなく除去されてしまう。

輝久「ふぅ…エクシーズモンスターを除去されたらそのザマか。拍子抜けだよ。」

輝久は呆れたように遊大を見つめる。
遊大は言葉を返そうと思ったが、自らが事実として厳しい状況に立っていることを感じ取り、黙ってこくってしまった。

遊大「…っ！」

輝久「まあいいさ。君の才能はその程度、君のデッキもその程度。それだけわかっただけ安心できる。」

律歌「…安心？」

輝久「そうだね。これで大会で彼と当たることがあってもほぼ確定でそこは通過できるから。」

遊大は悔しくて仕方がなかった。絶対にこの男のことを許さないと心に誓った。たとえこのデュエルに負けることになったとしても。

輝久「じゃあ僕のターン。僕は手札から《黄色い忍者》を召喚！さらに、黄色い忍者が召喚に成功したとき、手札から忍者モンスター1体を特殊召喚する！《機甲忍者エアー》を特殊召喚！」


黄色い忍者
☆4
風属性・戦士族/効果
1900/1800


機甲忍者エアー
☆4
風属性・戦士族/効果
1400/1400


阿原「レベル4モンスターが2体！きやがるか！」

輝久「外野の方ご名答。」

輝久がそういうと、彼のエクストラデッキケースがガチャっと開き、1枚のカードが手に渡る。

輝久「僕はレベル4の黄色い忍者と機甲忍者エアーでオーバーレイ！2体の戦士族モンスターで、オーバーレイネットワークを構築！」

2体の忍者は光の塊となって1点に収束していく。

輝久「エクシーズ召喚くらい、誰だって行えるものさ。エクシーズ召喚！現れよ！《機甲忍者ブレード・ハート》！」

立ち込める暗雲と共に、その赤い鎧の忍者は姿を表した。

遊大(上級の忍者に加えてエクシーズモンスター…！！)

2体のモンスターの威圧に、遊大は冷や汗を垂らした。

輝久「ははっ！漫画みたいに青ざめたね。じゃあ、ダメ押し行こうか！ブレードハートの効果を発動！」

ブレードハートのオーバーレイユニットが鎧の胸部に吸い込まれ、懐の刀が青緑色に輝く。

キャンデ「ブレードハートの効果、本当にダメ押しだな。もう壁のモンスターもいねえってのに…。」

輝久「ブレードハートはオーバーレイユニットを取り除くことで、このターン2回の攻撃を可能にする！」

ブレードハートの刀が光と共に歪み、瞬く間にもう一本の刀が出現する。


輝久「さあバトルだ！ブレードハートでダイレクトアタック！」

慈悲なき忍びの刀が遊大のライフを切り裂いた。壁となるモンスターのいない遊大は防ぐ術もなく後ろ側に吹き飛ばされる。

遊大：LP4000→1800
「かはっ…！…だがダメージ受けた瞬間！手札の《パーリィナイツ》の効果を発動！戦闘ダメージを受けた場合に手札から特殊召喚し、その後に受けたダメージ以下の攻撃力を持つモンスターを手札から特殊召喚する…！来てくれ！《パーリィナイツ》！《フェデライザー》！」


パーリィナイツ
☆6
2300/2100
地属性・戦士族/効果
守備表示


フェデライザー
☆2
700/1100
風属性・魔法使い族/効果
攻撃表示


遊大「パーリィナイツの効果は２体同時の特殊召喚じゃない！よって一点着地の効果で１枚ドロー！」

ブレードハートからの2回の攻撃に耐えるべく２体のモンスターを展開した遊大だったが、ここでドローしたカードに目をやった。
一瞬和らいだ苦悶の表情に、また雲がかかる。

遊大（…《融合》…！ここでこのカードが…！融合のカードを使うには少なくとも３枚以上の手札・盤面が必要だっていうのに！）

輝久「なるほど？攻撃を受けきれるだけの力はまだあったらしい。さあ！2回目の攻撃だ！ブレードハート！抜刀霞斬り！二連撃！」

二振りの強烈な斬撃が、フェデライザーをなますのごとく斬り倒す。

遊大「すまないっ！破壊されたフェデライザーの効果を発動！デッキから『ダークストーム・ドラゴン』を墓地に送り、カードを一枚ドローするっ！」

輝久「ははっ！苦し紛れの抵抗ってやつだね！じゃあ僕は黒竜の忍者でパーリィナイツを攻撃！」

黒竜の忍者の爪が、怯える2人の男女を引き裂いた。さらに遊大の表情に雲がかかる。

遊大（ターンは回ってきても、手札は『融合』、そして『エヴォルテクター・エヴェック』の２枚…。ここを挽回するには！！）

輝久「…じゃあここで、黒竜の忍者の効果を発動。コストとして僕のフィールドのブレードハートと手札の『機甲忍法ラスト・ミスト』を墓地に送り、フィールドのモンスター1体を除外する！」

遊大「なっ…! だが対象は！」

輝久が効果の発動を宣言した。しかしフィールドのモンスターはもう黒竜の忍者しかおらず、遊大は動揺が隠せなかった。
困惑する遊大を見て、輝久は笑みを漏らす。

輝久「…ははは！対象は黒竜の忍者自身だよ！」

阿原「コイツ！パーリィナイツを除外することだってできたってのによ。…何するつもりだ！！」

輝久「安心しなよ！ちゃんと潰してやるからさ！除外された黒竜の忍者を発動！フィールドを離れたときに、除外ゾーンにこのカードの効果で除外したモンスターを全て特殊召喚する！」

黒い霧が立ち込め、黒竜の忍者は黒い獣となって再び姿を現した。同時に遊大のフィールドにダイヤモンドクラブキングもひきづり出された。

遊大「ダイヤモンドクラブキング…攻撃表示かよ…!」

輝久「バトルフェイズ中に特殊召喚されたモンスターは続けて攻撃できる。さあ、終わりだよ。黒竜の忍者で、攻撃表示のダイヤモンドクラブキングに攻撃。」

獰猛な獣の牙が水晶を粉砕した。キラキラとした破片がそこら中に飛散する。

遊大 LP: 1800→0

Winner: 斬隠輝久

あまりに一方的な侵攻、そうして勝敗は決した。遊大は俯き、手を床についたまま動かない。

輝久「ふぅ…。樋本遊大くん、だったよね。覚えておくよ。二週間後に当たってもとりあえず安心だからね。」

そう言って輝久は振り返り、決闘場をあとにした。

ましろ「勝者は…光妖中…。」

嬢「遊大くん…。」

決闘場を包む重苦しい沈黙の中に、軽やかな拍手が響き渡る。

決闘場2回のギャラリー、眩しい西日の中にその男は立っていた。

???「いいデュエルだ。樋本とか言ったな。」

腕まくりのワイシャツに赤く緩いネクタイ、大柄の男は2回のギャラリーのフェンスをひょいと飛び越え、ズドンと鈍い音を立てて決闘場一階フロアに着地した。

ましろは呆れた目で男に言う。

ましろ「お前、もうガキじゃねえんだから生徒の前でそういうことするのよした方がいいぞ。」

???「お節介が多いのは昔からだな、ましろ。」

男は生徒たちの前にどっしりと構えて立つと、親指を自分の方に向けて叫ぶように言った。

「俺は光妖中決闘部顧問！天音(あまね)煌(こう)！樋本遊大！お前！デッキの急激な強化にお前自身がついてこれてないな！！」

そう言うと煌はズンズン遊大の方へ詰め寄ってくる。
俯いたままの遊大は上に顔を向けると、真っ直ぐな視線がそこに向けられていることに気づいた。
上を向く遊大は悔しそうに膝から立ち上がった。

遊大「だって、強くなるためにはデッキの強化だってしなくちゃ…！」

そこまで言ったとき、煌が遊大を強く指さす。

煌「当たり前だ！だがそれにプレイヤーの強化が追いついていないと言うことだ！」

遊大「だったら！！」

遊大は涙ぐんだ目を隠すように俯いていたが、煌の言葉に反応してしまい顔を上げた。

ましろ「簡単だ。デッキを使いこなすまで二週間で集中的に鍛錬を積む。」

煌やましろの助言があってなのか、東雲のメンバーも光妖のメンバーも柔らかい表情で微笑んでいる。

律歌「まあ、いつでも手は貸すよ。悔しんでしょ？」

キャンデ「ああ。俺からも、お前にはちょっと勝ってほしいというか…」

キャンデがそう言うとツァンはムスッとした顔で続けた。

ツァン「まあ、『デュエルが才能だけ』なんて戯言抜かされてるまま調子乗ってるのも困るしね。」

レイン「…同じく…。」

煌「ってなわけで俺たち光妖中は、東雲中と大々的に協力してデュエルの鍛錬を行うことにする。異論はねえよな？ましろ。」

煌はそう言ってましろの方へ目を向ける。
ましろは一瞬キョトンとしたが、笑顔になって答えた。

ましろ「ああ。」


こうして、東雲中vs光妖中の練習試合は幕を閉じた。

決闘者たちはお互いを知り、打ち破ることで際限なく進化する。彼らの闘志が燃え尽きぬ限り、物語は続いていく。


続く