36話　予選大会Ⅰ　作：ヒラーズ

あの事件からだいぶ経った。
通信手段も改善され、おかげさまでホログラム会話も可能になり、環境改善はより良い成果となった。

「ソルに与えるデータチップもだいぶ増えてきたな…その分すごい科学力という事でもあるが…」
『お褒めいただきありがとうございます。今後ともサポートを務めさせてもらいます』

あの事件で多くの社員たちが逮捕され、ましてや生物兵器の大量生産、この情報をリークさせたのはソルたちだ。本当に有能すぎる。敵に回せば、勝つのは難しいだろうな。

『今日のスケジュールでは、遊音氏が訪ねてくるとのことです』
「確か、近々大会があるんだったな」

この地区のデュエル大会。普段は別の会社が行っているんだが、どうやら今年の大会はあの有名な大企業「海馬コーポレーション」が関わってるらしい。

そうとなれば数多くのデュエリストが立ち上がり、挑戦を目指すだろう。
予選もあり、それに勝ち上がればの話だがな。

「しかし、これはこれで特異点がまた厄介ごとを持ってきそうだな」

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ！

話を続けようとした際、ドアのチャイムが鳴る。
噂をすればなんとやらだ。

「ココノエちゃーん！遊びに来たよ！」
「ワタシもいるのデース！」
「……」

遊音が来たのは知っていたが、他が来るのは全くもって知らん。
厄介ごとが増えたではないか。

＊

「みなまで言わずとも分かってる。近頃開催される大会の件だろう？」
「そうそう！そこでココノエちゃんも参加してほしいって！」

本来なら断りたいのだが、特異点が持ってくる厄介ごとを片付けない限り、帰還する希望が薄いままだ。ここはあえて参加するのがいい方だろう。

「それで、アルターエゴとコルモグループはどうするんだ？」
「そりゃあ、参加するさ」
「……むしろ参加しない理由がない」

何だろうか、たぶん無理やり参加させられているんだろう。
これが特異点たちの強制力か…恐ろしいものだ。

「予選は各自別の場所で行われるらしい」
「予選の参加が決定した際の対戦相手の情報は割れているのか？」
「…うん、最初の相手は各々その主催者の派遣社員が相手になるらしい」

ほう？てっきり自信のあるデュエリストが相手になると思っていたが、趣向を変えたという事か？あの会社はゲーム会社とはいえ、社員もデュエリストとしての実力は手練れだ。勝てなければ参加も不可能…面白い予選だな。

「予選はいつ頃だ？その前に事を進めなければならん」
「予選は明後日だよ☆」

……何だと？
参ったな。予想以上に早すぎる。
できるとすればデッキの構築ぐらいだ。

「……わかった。早速準備を始めよう」
「やったー！」
「本格的な大会になったら、お互い敵チームデース！」
「今年こそ優勝する」

今はバチバチすることはないが、せいぜい落ちないことを祈っているか…。

＊

「さて、どうしたものか」
『どうかなさいましたか？』

どうしたもこうしたも予選大会での準備が整っていない。
デッキ構築はできても、できるだけこの世界のルールに従わなければならん。
その為、追放世界のカードは控えるべきだ。

「今までのデータを見てきたが、現環境で暴れまわってるカテゴリが多い。「メメント」「原石青眼」「天盃龍」「M∀LICE」「ヤミー」「ドラゴンテイル」、未だ抗い続ける「オルフェゴール」「ライゼオル」「ユベル」。どれも強者ばかりだな」

『「クシャトリラ」や「メタファイズ」、「デモンスミス」「スネークアイ」「センチュリオン」も見かけます』

予選とはいえ、ここまでの強者揃い。
これは突破が難しそうだな…。