5話　仕方なき事、スカウト受諾　作：ヒラーズ

休憩してから20分後。ブーストモードで建築を再開し、建築してから40分で私の家が完成した。
家自体はそんなに時間がかからないが、問題は家具によるものだった。
流石に全て作るのは骨が折れたからな……。

「は、ははは……噓でしょ……でっかい家が…たったの40分で完成したよ」

〈すげぇ……〉
〈田舎って言ってる割にはすげぇ建築力だ…〉
〈これは笑うしかねぇ…〉
〈これ下手したら城も建てれるんじゃねぇのか……？〉

「ざっとこんな感じか」
『Excellent（素晴らしい）、流石です。家具の制作もばっちり、全ての建材を使用して完成しました』

後は父たちからの支援物資が届くだけだ。確か、このあたりに落とすという事だったからな。

「……中を見ていくか？」
「え、いいの！？」

〈まさかのハウスチェック！〉
〈しかもこれ全部手抜き工事ではないという〉
〈欠陥住宅でもないから、シロアリすら来ないぞ…〉
〈ちゃんと水道や電気は通ってるのか心配である〉

驚きを隠せてないコメントがやたらと流れてるが、気にせずに遊音を家に入れる。
中は一般住宅部屋よりは少し広い感じとなっており、2階建てにした。

「すごい……もう水道や電気が通ってる！？」
「建てるついでに通した。これで税を納めれば完了だ」

色々中を見て回る個室は全部で5つ。地下もあるが、そこはあえて見せない。私の研究室になるからな。

〈個室が5つも……大規模な客が来るのを想定してるのか？〉
〈掃除が大変そう…〉
〈風呂場もそこそこ広いぞ！？〉
〈豪邸かよ…〉

「すごい……最早豪邸だよ…」
「そうか？豪邸ならこれよりもっと大きいのだが…？」

……そう言えばここは異世界かつ地球だ。この大きさは異常だな。
もっとよく考えて建てるべきだったか？

「今後の予定とかはあるの？」
「今のところはないな……それがどうかしたのか？」
「じゃあ、スカウトの話を……」

まだ諦めてなかったのか……。

「それは断ると言ったはｚ」
『九重さん。ここは私に任せても？』

再交渉にソルが口を挟む、何か策があるのか？

「…何かあるのか？」
『こちらから条件を叩きつけるのです。それ次第で相手が引き下がる可能性も上がります。その条件を私に任せてもよろしいですか？』

条件か……一理あるな。ただ、ソルに任せてもいいのか……

「……変な条件にするんじゃないぞ？」
『ご安心を、自由を縛る内容は私も反対です。自由を縛らない範囲で交渉します』
「頼むぞ」

＊

「え、条件を呑むならスカウトを受諾！？」
「ああ、それなら構わない」

〈え〉
〈まさかのリトルシグマに加入の予感！？〉
〈美人が増えるのは視聴者として嬉しい話だが……〉
〈ただ、条件って……〉

私はその条件の書かれた紙を取り出し、それを遊音に手渡す。

「それを事務所の所長に渡せ、呑めぬようでは加入はできないと伝えてくれるとありがたい」
「……あれ？でもそんなに条件は厳しくない？」

〈あれ？〉
〈条件が意外と軽いぞ？〉
〈てっきり収入面を突いてきたと思ったけど、そんなことなかった〉
〈条件の数もそんなに多くないな……〉

「……あれでよかったのか？」
『無問題（モウマンタイ）。あれは今後についての事も書きましたので、あれを受けるかは所長次第です』

「わかった。所長に渡してみるよ！」

すんなり引き受けてくれたが、嫌な予感がするのは気のせいか？

「じゃあ最後に！」
「ん？何だいきなり？」

遊音が私の後ろに回り込み、手を伸ばす。

「ていや～！」
「！？」

遊音に胸を触られたのであった。

「やっぱり大きい！」
「おい、何の真似を…！？」

〈ヤッター！ボーナスタイムだー！〉
〈出た！ユウネちゃんのご定番！〉
〈イイナァ〉

1分後、配信を終え、遊音は帰っていった。

「ひどい目に遭ったな……」
『そうでしたか？楽しそうに見えましたが？』
「それはおかしいだろう！？」

ソルと喧嘩したが、その後に拠点の隣に支援物資が届いた。
少し大きい落下物が落ちた音と同時に。

「届いたか！」
『確認しましょう』

外に出てて落ちて来た支援物資を確認する。
戦争じゃないから武器は入ってないが、予備のデュエルディスク。
特殊な機械、Dホイールの各パーツ。沢山のカード。
デッキメイクも困らなくなったな。

「……？　何だこのデータチップは？」
『これは…私の強化アプリですね』
「強化アプリ？」
『一言でいうなら私の性能を上げるためのデータチップです』

更に強化されるというのか……

『これは「自立行動」のデータが入っており、私の内部に特殊な構造が追加されます』
「自立行動……背負い鞄の状態から何かに変形するのか？」
『単純で言えばそうなります』

都合がいいな。変に喋る鞄と一緒に行動すると目線が痛くなるから、これは導入すべきだろう。

「流石と言うべきか……だが、父たちができるのはこれしかないだろう。早速導入するぞ」
『了解、今日の全てのタスクを終えると同時に、アプリのアップロードを行います。今日のお仕事、お疲れさまでした』

さて、後はスカウトの件の結果だな。