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20話 招かれざる客人 作:ヒラーズ
あの配信から翌日、私は拠点で研究を続けていた。
事務所の整備はとっくに終わらせてあり、あの調子なら5t以上の榴爆弾が降ってこない限りは倒壊はありえないほど頑丈に作り変えてやった。
と言っても見えない場所で錬成術を放って丈夫にしただけだがな…。
『ようやく完成しましたね』
「ああ……「異次元アンテナG(グレート)5」だ。これでノイズを気にせずに会話ができる。わざわざ遠くのスクラップエリアに赴いてガラクタを漁った事が功を奏したな」
ようやく通信設備の改善がまともになった事に私は喜びを感じていた。このグレートなら時空磁場の嵐を気にせずに通信が行え、通信時間が30分から3時間に延長したのだからな。
「父や海理様も、こうやってガラクタから物を作り上げて地盤を固めていたと聞いたが、ここまで大変だったとはな……サバイバル技術とリサイクル技術も学んでおくべきだったな…」
やや過去を振り返る。今思えば、研究所に籠る以外にも学ぶべきものはあった。
追放世界は死の概念が存在せず、老いもしない為、ずっと若い姿のままだからな。
「クソ…引き籠りが仇になるとはな……」
『九重氏、過ぎたことを責めても解決にはなりません。それは元の世界に帰還した後に取り入れるべきでしょう』
そうだな。今悔やんでも仕方がない。
「通信設備の改善は完了した。日に日に支援物資も届いているから、開発は特に大丈夫だ。ただ、時々物資に手紙が混じる意図がよくわからんな…恐らく通信の傍受を気にしていたのかもしれないが……」
そう、物資の中に時々手紙が混じっている時があった。
手紙を書いたのは……母や姉たちが特に多い。そこまで私を心配していたのは予想外だったが、内容的には言葉にできない。涙が止まらないからな。
しかし、一部の手紙には父からの手紙もあった。
その内容に一つ父らしくない言葉があった。
‐その世界で、研究以外の青春を取り戻してもいいんじゃないか?‐
「私の青春、か。真面目かつ仕事人間の父らしくもないな……いや、父だからこその心配を視野にしてるのだろうか…」
『陸也氏は不器用そうに見えて、自分の周りをよく見ているという情報が私にはあります』
「ふふ……父も元は人の子。それゆえの感情と言う訳か…」
そんな感じでソルと話している最中だった。
突然センサーが反応し、警告のアラートが鳴る。
「何事だ!」
『緊急アラート 危険コード:レッド 相手は我々と同じく能力者です。設備に異常はありませんが、サポートAIを引き連れ、セキュリティの突波を試みたようです』
随分と計画性のない泥棒が入ったな。しかし、能力者か……しかも同じと言ったな。
「まさか、同じ追放世界の住人か!?」
『次はゲートをこじ開けようとしています。ダメージはありませんが、いつまで持つかは不明です』
「打って出るぞ。そこまでして私に会いたいとはな」
いつもの外出用の白衣を着て、玄関に立つ。隣の機械のセキュリティを解除して玄関の扉を開けた瞬間に鋭い蹴りを放った。
「ぐはっ……!」
直撃した対象の正体は男だった。見た目は明るい緑色の短髪、ワイシャツの上に白衣を着ているが、黒い長ズボンに、白衣に描かれている方眼鏡をかけた一角獣の紋章は私も知っている。
「……「レアル帝国」の独立魔法化学集団の首魁、「黒泉秀成」か……!」
「ゲホッ、ゲホッ……凄まじい蹴りだ。流石、白皇家のご子孫だね。そう、僕がその首魁さ。知っていて光栄だよ」
お互いに正面を向いて立つ。さっきのは挨拶代わりだったが、あれを喰らっても立っていられるのは奴も化け物と言う事だ。
「殺意を向ける前に質問をしたい。構わないかい?」
「……いいだろう」
「簡単な質問さ。この世界は現状幾つかの国が覇権を奪い合ってる中での最前線で、レクス公国はその奪い合いを諦めたという情報はあった。が、何故レクス公国の開発主任の君がこの世界にいるのが気になってね。何しに来たのかを聞きたかったんだよ」
やはり、茜と同じ意見を出してきたか。だが私の目的は変わらない。
「……ある機械の起動実験の影響でこの世界に飛ばされただけだ。現に目的は元の世界に帰る事、今は時空磁場の嵐で帰れない」
「ふぅん?嘘はついていないようだね?じゃあ、この世界を取りに来たわけじゃないと…」
取りに来てたら大部隊よこして武装制圧すれば早いだろうに……まぁそれだと侵略と変わらんか…。
「ああ、僕の目的だったね。簡単さ……君の実力を試しに来た」
「私の実力だと?動画などで拡散されてるとは思っていたのだが……」
「ああ、茜君との戦いの動画は拝見させてもらったよ。けどね、それだけじゃあ分からないものがあるのさ。それを確かめるために来た。少々手荒に訪れたのは謝るよ」
手荒に、か。私にとっては喧嘩を吹っかけてきたチンピラの類かと思ったが、話が通じる時点で違うだろう。
「では聞くが、お前の方にも「特異点」がいるのか?」
「おや、鋭いね。勿論いるさ。丁度、今日はある事務所と商談する日で、僕は自由散策って訳さ」
やはりいるのか…!となると、この世界にいる追放世界の住人はすでに特異点と行動を共にしてると考えた方がいいという事か……また面倒になったな。
事務所の整備はとっくに終わらせてあり、あの調子なら5t以上の榴爆弾が降ってこない限りは倒壊はありえないほど頑丈に作り変えてやった。
と言っても見えない場所で錬成術を放って丈夫にしただけだがな…。
『ようやく完成しましたね』
「ああ……「異次元アンテナG(グレート)5」だ。これでノイズを気にせずに会話ができる。わざわざ遠くのスクラップエリアに赴いてガラクタを漁った事が功を奏したな」
ようやく通信設備の改善がまともになった事に私は喜びを感じていた。このグレートなら時空磁場の嵐を気にせずに通信が行え、通信時間が30分から3時間に延長したのだからな。
「父や海理様も、こうやってガラクタから物を作り上げて地盤を固めていたと聞いたが、ここまで大変だったとはな……サバイバル技術とリサイクル技術も学んでおくべきだったな…」
やや過去を振り返る。今思えば、研究所に籠る以外にも学ぶべきものはあった。
追放世界は死の概念が存在せず、老いもしない為、ずっと若い姿のままだからな。
「クソ…引き籠りが仇になるとはな……」
『九重氏、過ぎたことを責めても解決にはなりません。それは元の世界に帰還した後に取り入れるべきでしょう』
そうだな。今悔やんでも仕方がない。
「通信設備の改善は完了した。日に日に支援物資も届いているから、開発は特に大丈夫だ。ただ、時々物資に手紙が混じる意図がよくわからんな…恐らく通信の傍受を気にしていたのかもしれないが……」
そう、物資の中に時々手紙が混じっている時があった。
手紙を書いたのは……母や姉たちが特に多い。そこまで私を心配していたのは予想外だったが、内容的には言葉にできない。涙が止まらないからな。
しかし、一部の手紙には父からの手紙もあった。
その内容に一つ父らしくない言葉があった。
‐その世界で、研究以外の青春を取り戻してもいいんじゃないか?‐
「私の青春、か。真面目かつ仕事人間の父らしくもないな……いや、父だからこその心配を視野にしてるのだろうか…」
『陸也氏は不器用そうに見えて、自分の周りをよく見ているという情報が私にはあります』
「ふふ……父も元は人の子。それゆえの感情と言う訳か…」
そんな感じでソルと話している最中だった。
突然センサーが反応し、警告のアラートが鳴る。
「何事だ!」
『緊急アラート 危険コード:レッド 相手は我々と同じく能力者です。設備に異常はありませんが、サポートAIを引き連れ、セキュリティの突波を試みたようです』
随分と計画性のない泥棒が入ったな。しかし、能力者か……しかも同じと言ったな。
「まさか、同じ追放世界の住人か!?」
『次はゲートをこじ開けようとしています。ダメージはありませんが、いつまで持つかは不明です』
「打って出るぞ。そこまでして私に会いたいとはな」
いつもの外出用の白衣を着て、玄関に立つ。隣の機械のセキュリティを解除して玄関の扉を開けた瞬間に鋭い蹴りを放った。
「ぐはっ……!」
直撃した対象の正体は男だった。見た目は明るい緑色の短髪、ワイシャツの上に白衣を着ているが、黒い長ズボンに、白衣に描かれている方眼鏡をかけた一角獣の紋章は私も知っている。
「……「レアル帝国」の独立魔法化学集団の首魁、「黒泉秀成」か……!」
「ゲホッ、ゲホッ……凄まじい蹴りだ。流石、白皇家のご子孫だね。そう、僕がその首魁さ。知っていて光栄だよ」
お互いに正面を向いて立つ。さっきのは挨拶代わりだったが、あれを喰らっても立っていられるのは奴も化け物と言う事だ。
「殺意を向ける前に質問をしたい。構わないかい?」
「……いいだろう」
「簡単な質問さ。この世界は現状幾つかの国が覇権を奪い合ってる中での最前線で、レクス公国はその奪い合いを諦めたという情報はあった。が、何故レクス公国の開発主任の君がこの世界にいるのが気になってね。何しに来たのかを聞きたかったんだよ」
やはり、茜と同じ意見を出してきたか。だが私の目的は変わらない。
「……ある機械の起動実験の影響でこの世界に飛ばされただけだ。現に目的は元の世界に帰る事、今は時空磁場の嵐で帰れない」
「ふぅん?嘘はついていないようだね?じゃあ、この世界を取りに来たわけじゃないと…」
取りに来てたら大部隊よこして武装制圧すれば早いだろうに……まぁそれだと侵略と変わらんか…。
「ああ、僕の目的だったね。簡単さ……君の実力を試しに来た」
「私の実力だと?動画などで拡散されてるとは思っていたのだが……」
「ああ、茜君との戦いの動画は拝見させてもらったよ。けどね、それだけじゃあ分からないものがあるのさ。それを確かめるために来た。少々手荒に訪れたのは謝るよ」
手荒に、か。私にとっては喧嘩を吹っかけてきたチンピラの類かと思ったが、話が通じる時点で違うだろう。
「では聞くが、お前の方にも「特異点」がいるのか?」
「おや、鋭いね。勿論いるさ。丁度、今日はある事務所と商談する日で、僕は自由散策って訳さ」
やはりいるのか…!となると、この世界にいる追放世界の住人はすでに特異点と行動を共にしてると考えた方がいいという事か……また面倒になったな。
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