第３話　ＥＭＳ入門　前編　作：にしん

「その前に、我がサーカスのとっておきのカードをもちろん知っているよね、虹くん」

「ＥＭＳカードですか？」

「そうそう。そこのローラさんが作った、とっておきのスペシャルカードなんだ」

「へへー」


俺にお茶とお菓子を置いた調弦の魔術師の格好をした少女・・・ローラさんは団長の誉め言葉で照れる。その時、ローラさんの服の形状が変わり、よく見かけるセーラー服姿になった。


「！？」

「驚いたかい？これがＥＭＳカードのシステムだよ。詳しい話やセッティングはローラさんの作業室で行うから、案内とセッティングお願いするよ」

「了解っす！さあ虹くん。こっちだよ」


俺はローラさんについていく。しばらくすると今までの廊下とは違う雰囲気の、まるでサーカスの舞台裏のような場所に出た。いろいろな機械が上下左右びっしりと詰まっている宇宙船の中のような感じに俺はまた唖然とした。


「すげー・・・」

「どう？一部分だけど全部ソリッドビジョンをサーカスとデュエルに応用したシステムなんだよ。実は全部わたしがつくったんだー。すごいっしょ！」

「す、すげえ・・・」


もはや「すげえ」しか言えない俺だった。

機械の廊下をしばらく歩くと大きな扉がある場所に着く。その扉には「作業室」と書かれていた。その横に「ローラ以外立ち入り禁止」も書かれていた。ローラさんは扉の横にある機械にカードを通すと、扉が重い音をたてながらゆっくりと開いた。そこにはデュエルができる大きいスペースと端っこにパソコンやら本棚やらが置かれた小さいスペースがあった。


「今から虹くんのＥＭＳカードを作ります。の前にＥＭＳとはなんぞやって感じだし、説明しなきゃだね」


そう言ってローラさんは俺にデュエルディスクを渡してきた。


「キミのデュエルを見てＥＭＳカードの色々を考えたり教えるから、まずはわたしとデュエルをお願いね！」

「デュエル！？よ、よーし！」

「あっ、このデュエルはあくまでも確認みたいなものだから、普段通りのデュエルでお願いね！気楽に気楽に」

「はっ、はい！よろしくお願いします！」


俺はデュエルディスクにデッキをセットする。このデュエルディスクは市販されている量産の物とは少し形状が違うようだ。とりあえずサーカス団での初デュエルだ。気楽にとはいえ気合が入る。


「「デュエル！！」」


＜ガチデュエル＞
ルール：８０００ＬＰ
虹　遊飛　ＶＳ　ローラ＝ロロ

☆デュエル前にTips
この作品では基本的に二つのデュエルがあります。アクションマジックがない普通にデュエルをするガチデュエルと、アクションマジックとフィールド魔法を駆使して演技を交えるエンタメデュエルです。このサーカス所属デュエリストによるデュエルでは複数人による点数評価があり、ガチデュエルでは基本的に勝敗と展開で評価され、エンタメデュエルではそれに加え、演出と演技によって評価されます。エンタメデュエルではエンタメに重きを置いているので、デュエルには負けても総合的に勝つことがあったりなかったり。

【ターン１：ローラのターン】
「先攻はわたし！手札を１枚捨てて、手札から＜幻想の見習い魔導士＞を特殊召喚！」

ローラ：手札５枚→３枚
「あなたに力を与えます」
＞幻想の見習い魔導士：星６：攻２０００（守１７００）

「＜幻想の見習い魔導士＞の召喚、特殊召喚時の効果を発動！デッキから手札に加えるのはわたしのエース！＜ブラック・マジシャン＞！」
ローラ：手札３枚→４枚

「ブラック・マジシャン！？」


かの有名なデュエリストが愛用していたといわれるブラック・マジシャン。現在でもこの黒魔導士に惹かれてブラック・マジシャンをエースとして使うデュエリストは多い。ローラさんもさっき魔術師の格好をしていた通りのブラマジデッキのようだ。大会でも対戦したことのあるブラマジデッキ。これは強敵だぞ。


「さーて、ここからがＥＭＳカードの説明！といってもテレビでサーカス見ていたならある程度は知っているはずだけど、どうかな？」

「うーん・・・いや、覚えてないです。カードの存在だけなら・・・」


思い出そうにもサーカス団たちや所属デュエリストたちの演出がすごすぎて、肝心のデュエルの内容は覚えていなかったようだ。デュエリストがそのＥＭＳカードで専用の衣装を着るシステムって思っていて、デュエルには関係ないと思っていた。


「じゃあ見せてあげる。エンタメデュエルを更に盛り上げる、わたしの最高傑作のエンタメシステム！！」


ローラさんは手札から１枚のカードをモンスターゾーンに置く。すると、デュエルディスクとデュエルフィールドが輝きだす。そしてローラさんはフィールドにジャンプして幻想の見習い魔導士の横に並んだその瞬間、ローラさんの衣装が輝き、ブラック・マジシャンのような、だけど魔導士ではなく「ブラマジっぽい魔術師」の格好になった。


「なっ、なんだ！？ローラさんがフィールドに！？」

「これがＥＭＳカードだよ、虹くん。簡単に言えば、自分のモンスターたちと“共演”できるカード。ちなみに衣装はソリッドビジョンを応用したものなんだー。ということでわたし、＜ＥＭＳ　エクスマジシャン・ローラ＞を通常召喚！」

ローラ：手札４枚→３枚
＞ＥＭＳ　エクスマジシャン・ローラ：星４：攻１４００（守１５００）
【魔法使い族/効果】
このカード名のカードはフィールドに１体しか存在できない。このカード名の①、②の効果は１ターンに１度、どちらかしか使用できない。
①：このカードが召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「ブラック・マジシャン」１体を手札に加える。この効果で手札に加えたカードはこのターン、召喚、特殊召喚できず、効果を発動できない。
②：手札を１枚捨てて発動できる。手札から「ブラック・マジシャン」１体を特殊召喚する。
③：このカードがフィールドから離れる場合、元々の持ち主のデッキに戻す。

「すげえ！衣装もそれっぽい！万能カードすぎる・・・！」

「でしょでしょ～！効果を使う前に・・・ＥＭＳの説明！！」


ローラさんはデュエル中にも関わらず、壁際にあるボードに文字を書きだした。その動きに合わせて特殊召喚した幻想の見習い魔導士もジェスチャーする。


「ＥＭＳとは「エンタメスター」と読みます。エンタメのスターカードということ。まるでデュエルの主役は俺だ！！と言わんばかりの効果と演出ができるので、このサーカスでのエンタメデュエルにおいては通常演技以上の高評価を得られます！」

「ほ、ほほー・・・」

「虹くんのデュエルディスクに実はもう虹くん専用のＥＭＳカードが入っているんだけど、あなたのエースモンスターやプレイスタイルがわからないからまだ白紙なの。だから、できれば次のターンでエースモンスターを出してね！ちなみにＥＭＳカードの効果はある程度は共通だけど人によって内容が変わるから、虹くんのはどんなのになるのかな？わたしのは見た通り、ブラマジだよ」


ＥＭＳカードによって生成された衣装はどうやら実体を持つようで、ローラさんは自慢するようにひらひらさせていた。そしてターンエンドを宣言しようとして、何かを思い出したかのようにぴたりと止まった。


「っとと、忘れてたよ。わたしの効果発動！ブラマジ以外の手札を１枚捨てて、手札のブラマジを共演特殊召喚！！」

ローラ：手札３枚→１枚
「私の出番か。いいだろう！」
＞ブラック・マジシャン：星７：攻２５００（守２１００）


ブラック・マジシャンがローラと共演するかのようにセリフを放ちながら真横に華麗に登場した。相変わらずかっこいいブラマジが、デュエリストと共演することで更にかっこよく見えた。しかもしゃべる。


「そして永続魔法カード＜黒の魔導陣＞を発動！発動時処理でわたしはデッキの上を３枚めくり、その中にあった＜黒・爆・裂・破・魔・導＞を手札に加え、”あえて”セットします！それ以外は好きな順番で戻すけど、まぁはずれとだけ言っておこうかな？」
ローラ：手札１枚→０枚→１枚→０枚

「全て攻撃表示で伏せカードは今はただの魔法カード！だから、虹くんのエースモンスターとデュエル・・・わたしに見せてね！ターンエンド！」


ローラ
ＬＰ：８０００
手札：０枚
モンスター：ブラック・マジシャン、幻想の見習い魔導士、ＥＭＳ　エクスマジシャン・ローラ
魔法・罠：黒の魔導陣、伏せカード１枚
Ｐスケール：未設定

　　　ＶＳ

遊飛
ＬＰ：８０００
手札：５枚
モンスター：なし
魔法・罠：なし
Ｐスケール：未設定