第１話　第一歩　作：にしん

　この街は昔、とあるエンタメデュエリストの活躍によってエンタメデュエルで活気づいた街。必ずどこかのカードショップやスタジアム、果てには公園や学校でエンタメを交えたデュエルが行われている。もちろんガチデュエルも行われているが、エンタメ派が多いらしい。俺たちは放課後いつものように、いつものカードショップへと足を運ぶ。だけど今回の目的はデュエルではなく、少し違う。


「遊飛、掃除終わったか？早くカードショップ行こうぜ！」

「ああ今終わった。今日はあれの発表日だったな」

「当選してるといいなぁ・・・メルティオールサーカス団デュエル招待」

「俺はこれのためにデュエルをやっているようなものだしな。いつかはアクションデュエルでエンタメデュエルをやりたいぜ」


この俺「虹　遊飛」はみんなを楽しませるエンタメデュエルが大好きだ。昔から「メルティオールサーカス団」という、エンタメデュエリストによるサーカスとデュエルを見るのが大好きで、いつしか自分も参加して楽しませたいという気持ちが芽生え、憧れるようになった。今日は月一で発表されている、そのサーカス団新規デュエリスト抽選の発表日だ。


「遊飛くんは周りを楽しませることが上手だから、きっと当選してるよ」

「でも抽選だしなー。デステニードローで当たってくれないかなー」

「くっそ強ええけど、超楽しいからなー。遊飛とのデュエル」


カードショップに到着する。このカードショップは放課後にこの二人の友人と一緒によく行く。今では常連で店長や他のデュエリストに覚えられているぐらいだ。小さいカードショップなものの、カードの品ぞろえやデュエルスペースは大きいショップと変わらないぐらいに充実している。


「いらっしゃい」

「店長ー！サーカス団抽選の結果！」

「どこー！？」


店長はデュエルスペースの方を指差した。そこに、一冊の雑誌と一通の封筒が置いてあった。三人で一斉に机にのしかかるようにしてそれらを覗くように見る。雑誌の方はサーカス団が定期的に発行している情報雑誌。そして封筒の方は・・・


＊メルティオールサーカス団所属新規デュエリスト抽選結果のお知らせ＊


「おおーーーっ！！」

「開封はまだしていないよ。今日は他にも応募した子や大人のデュエリストたちがもうすぐ来るから、みんなが集まった時に開けましょう」


店長は発表の準備をするためか、デュエルスペースの机や椅子を動かし始めた。内容が気になる俺たち。デュエルどころではなかった。


「は、早く見たい・・・」

「気になる・・・」

「つい最近リミットレギュレーションの発表もあったし、適用前にデッキ調整でもしたらどうかな？」



　応募者が全員揃う。このカードショップからは俺と友人二人を含む、合計八人が応募した。カードショップやデュエル塾ごとに枠が決められており、毎回かなりの倍率で当選確率は非常に低いことで有名だが、俺を含め、毎回応募する人は多い。


「では開封と発表は私が行います。えーっと、はさみはー・・・」


店長はレジの引き出しからはさみを取り出し、封筒の頭を切る。そこから白と青の二枚の紙を取り出した。店長は一枚目の白い紙を見て読み上げ始める。


「この度、メルティオールサーカス団所属デュエリスト参加に応募していただきありがとうございます。厳選なる抽選の結果、貴店からは一人のデュエリストに運命を感じ、挑戦権を与えることにしました」


この結果に俺を含む応募者はもちろん、結果を見に来た常連さんたちが驚く。一人は当選しているということだ。店長は俺たちが結果を待ちわびていてわくわくそわそわしているのを確認して、その名前を読み上げた。


「虹　遊飛」


俺！？


「マジかよ遊飛！！すげーー！」

「おめでとうー」

「おめでとー！」「やるなぁ」「うらやま～」


俺が、サーカス団のデュエリストとして当選したんだ・・・！いや、正確には挑戦権。多分あそこでデュエルするのだろう。そう思うと、むしろわくわくしてきた。

俺の当選に他の応募者や結果を見に来たみんなが「おめでとう」と称えられた。そしてもちろん俺も・・・


「よっしゃあああーーーーー！！！」


こうして俺は、憧れだったサーカス団へ・・・そして、一人のエンタメデュエリストとしての夢の第一歩を踏み出したのだった。