５話　♯１０「ラストドロー」　作：tres

赤石はドローしたカードを見る。



ドローカード《ロスト》

（くっ、違ったか…！）

「スタンバイ、メイン」

「カードセット」

（どっちだ…！？）

柳沢は赤石を注視する。

（多分柳沢は気が気じゃないだろうナ。だが引いたカードが不意打ち又佐だったとしても同じサ）



（オレがセットしてるカードの１つは落とし穴だからナ。むしろ引いてもらった方が勝ちの目を潰せていいかもネ）

「もう１枚セット」

（ふぅ、違ったか…！）

柳沢は胸を撫で下ろす。

（フフ、まだデッキに眠ってるカ）

「ターンエンドだ」





柳沢手札２枚　　ヘズ手札０枚
ＬＰ９００　　　ＬＰ４０００
◇　◇　◇　　　裏　裏　◇
◇　◇　◇　　　◇　裏　◇
　　　　赤石→柳沢
あ＝《ダンディライオン》トークン表側守備　い＝《ダンディライオン》トークン表側守備　う＝《サイバー・ドラゴン》攻撃表示
え＝《自律行動ユニット》
◇　◇　◇　　　あ　い　う
◇　裏　裏　　　◇　え　◇
ＬＰ４０００　　ＬＰ１５００
赤石手札０枚　　彼女手札３枚





「ドロー、スタンバイ、メイン」

（お？悪くねぇな）

「《ハーピィの羽根帚》発動、対象は赤石」

「それにチェーン発動して、さらにチェーン発動だ」《サイクロン》発動、《ロスト》発動

赤石は待ってましたというような反応で２枚のカードをチェーン発動する。

（ちっ、無駄打ちか）

「まず《ロスト》の効果、対象は柳沢さんの《サイバー・ドラゴン》だ」《ロスト》効果、柳沢の《サイバー・ドラゴン》除外

「続いて《サイクロン》の効果、対象はヘズさんの真ん中のカードだ」《サイクロン》効果、セットカード《聖なるバリア －ミラーフォース－》破壊、《ハーピィの羽根帚》効果、《サイクロン》《ロスト》破壊

（これは仕方ないカ。ハーピィの羽根帚、引いたのが遅かったナ）

「《サンダー・ボルト》発動、対象は麗梨」《サンダー・ボルト》効果、彼女の《サイバー・ドラゴン》《ダンディライオン》トークン２体《自律行動ユニット》破壊

（フィールド一掃されたか…）

「カードセット」

（さすがにセットせずにエンドはもうできねぇからな…！？）

柳沢は心の中で一応ヘズに断りを入れた。ヘズからのサインは無い。

「ターンエンド」




柳沢手札０枚　　ヘズ手札０枚
ＬＰ９００　　　ＬＰ４０００
裏　◇　◇　　　裏　◇　◇
◇　◇　◇　　　◇　裏　◇
　　　　柳沢→彼女
◇　◇　◇　　　◇　◇　◇
◇　◇　◇　　　◇　◇　◇
ＬＰ４０００　　ＬＰ１５００
赤石手札０枚　　彼女手札３枚





「ドロー、スタンバイ、メイン」ドローカード《リーフ・フェアリー》

（これで鈴瀬さんの手札は４枚、さすがに怖いネ。オレたちが負けるとすれば、手札に温存していた装備魔法で一気にドカンと来られるパターンだからナ）

確かにヘズの考えている通り、負けるとすればそのパターンだ。だが、裏を返せばそれ以外に赤石と彼女が勝つ方法はもうほぼ残っていないということでもある。

「《リーフ・フェアリー》召喚」

（攻撃力９００、落とし穴は発動できないネ。でも柳沢は送り込んだカードをセットしてるし問題なイ）

「バトルフェイズ、《リーフ・フェアリー》で柳沢さんに攻撃します」

「罠発動」《次元幽閉》発動、《次元幽閉》効果、《リーフ・フェアリー》除外

（冷や冷やするぜぇ本当…《リーフ・フェアリー》なんかに使うのは癪だが、しゃあねぇ）

この《次元幽閉》こそが柳沢が１ターンセットするのを待ったヘズが送り込んだカードである。

そして《リーフ・フェアリー》が除外されたことにより、赤石と彼女合わせてデッキに眠るモンスターは《速攻のかかし》と《不意打ち又佐》の２枚となる。
そのうち攻撃力０の《速攻のかかし》を除けば相手にダメージを与えられるモンスターは実質《不意打ち又佐》１枚のみとなった。

「カードセット、ターンエンド」





柳沢手札０枚　　ヘズ手札０枚
ＬＰ９００　　　ＬＰ４０００
◇　◇　◇　　　裏　◇　◇
◇　◇　◇　　　◇　裏　◇
　　　　彼女→ヘズ
◇　◇　◇　　　◇　◇　◇
◇　◇　◇　　　◇　◇　裏
ＬＰ４０００　　ＬＰ１５００
赤石手札０枚　　彼女手札２枚





「draw standby main」

（ここでこれは良い引きだナ）

「《首領・ザルーグ》召喚」

（ここで首領・ザルーグだと！？）

赤石のデッキは残り３枚、《首領・ザルーグ》の効果で２枚墓地に送られるとなると残るデッキは１枚。さらにその２枚の中に《不意打ち又佐》があれば、その時点で赤石と彼女の勝ちの目は消えてしまう。

「battle。《首領・ザルーグ》で赤石君に攻撃」赤石ＬＰ４０００－１４００＝２６００

「《首領・ザルーグ》の相手のデッキの上からカードを２枚墓地へ送る効果を発動するヨ」

（ぐっ…頼む！）

赤石はおそるおそるデッキをめくっていく。

まず１枚目。





《成金ゴブリン》デッキ→墓地

１枚目はセーフ、

（もう１枚…！）

そして２枚目。





《強制転移》デッキ→墓地

２枚目もセーフ。

赤石は寸前で生き延びる。

（生き残ったか…！）

赤石はふう、と一息ついた。

（赤石の奴、ついてやがんなぁ）

（ついてるネ。不意打ち又佐はデッキの一番下だったカ）

「turn end」





柳沢手札０枚　　ヘズ手札０枚
ＬＰ９００　　　ＬＰ４０００
◇　◇　◇　　　裏　◇　◇
◇　◇　◇　　　ウ　裏　◇
ウ＝《首領・ザルーグ》攻撃表示
　　　　ヘズ→赤石
◇　◇　◇　　　◇　◇　◇
◇　◇　◇　　　◇　◇　裏
ＬＰ２６００　　ＬＰ１５００
赤石手札０枚　　彼女手札２枚

《首領・ザルーグ》星４/闇属性/戦士族/攻1400/守1500
このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、以下の効果から１つを選択して発動する事ができる。
●相手の手札をランダムに１枚捨てる。●相手のデッキの上からカードを２枚墓地へ送る。





（このターンで不意打ち又佐の攻撃を食らって俺のＬＰは０か。だが返しのヘズのターンで不意打ち又佐を倒せる。思ったより縺れたが、もう終わりだ！）

赤石、ラストドロー。

「ドロー…」

（！？こいつは…！）

赤石は呆気にとられたようにドローしたカードを見つめる。

（…赤石君の様子が変だナ？）





『ーーー』

「！…」

突如、彼女の足が赤石にそっと触れた。それをきっかけに赤石は「はっ」と我に返る。

「スタンバイ、メイン」

そして今手にしているカードの意味を考える。

（…なるほど、そういうことか）

意味を理解した瞬間、赤石の口角がわずかに上がった。





「カードセット」

（何！？魔法罠にゾーンにセットだぁ！？）

（どういうことダ？不意打ち又佐じゃないのカ…！？）

疑問と驚きの表情を浮かべる柳沢とヘズに対し、赤石は

「ターンエンドだ」

平然と最後のターンを終了した。なお、デッキ残り枚数が０になったので赤石のターンはもう来ない。





柳沢手札０枚　　ヘズ手札０枚
ＬＰ９００　　　ＬＰ４０００
◇　◇　◇　　　裏　◇　◇
◇　◇　◇　　　ウ　裏　◇
ウ＝《首領・ザルーグ》攻撃表示
　　　　赤石→柳沢
◇　◇　◇　　　◇　◇　◇
◇　◇　裏　　　◇　◇　裏
ＬＰ２６００　　ＬＰ１５００
赤石手札０枚　　彼女手札２枚