１話　♯８「運命の３回戦」　作：tres

「ドロー、スタンバイ、メイン」

若者手札【スピア・ドラゴン】【地割れ】【神の宣告】【疾風の暗黒騎士ガイア】

（ふん、悪くねぇな）



彼女手札【地割れ】【神の宣告】【激流葬】

（モンスターが無い…ドローで引けるかな）



「カードセット」

「【スピア・ドラゴン】召喚。ターンエンド」



若者手札２枚
攻撃表示【スピア・ドラゴン】
魔法罠セット１枚【神の宣告】

彼女手札３枚、場０枚



「ドロー…」

ドローしたカードを見た彼女の手が止まる。

（う…そんな、モンスターじゃない…）

「おい、どうした？手が止まってるぞ」



（…だめ。まだ勝負はわからない）

「スタンバイ、メイン」

（伏せカードが１枚…）

「【地割れ】発動」

「おう」若者の攻撃表示【スピア・ドラゴン】破壊

「カードをセット、もう１枚セット」

「…ターンエンド」

「ハハ、何だぁ？モンスターいねぇのか？」

彼女はじっと若者を見つめている。

「けっ、あんな小細工するから運が落ちるのさ」

（こりゃ思いがけないチャンスだぜ）



若者手札２枚
魔法罠セット１枚【神の宣告】

彼女手札１枚
魔法罠セット２枚【神の宣告】【激流葬】



「ドロー、スタンバイ、メイン」ドローカード【激流葬】

（伏せカードは２枚か。…ちっ、スリーブに傷一つありゃしねぇぜ）

（まあ、ここはガイア召喚するしかねぇな）

「カードセット、もう１枚セット」

「【疾風の暗黒騎士ガイア】召喚」

（…ガイアは破壊しないとまずいかな）

「召喚時に【激流葬】発動します」

（破壊されてたまるか！）

「【神の宣告】発動。【激流葬】は無効だ」若者のＬＰ２０００－１０００＝１０００

（１０００ぐらいどうってことねぇぜ）



（だめ、絶対に止める）

「通しません。さらにチェーンして【神の宣告】発動します」彼女のＬＰ２０００－１０００＝１０００

「くそっ、てめぇも伏せてやがったか」若者の攻撃表示【疾風の暗黒騎士ガイア】破壊

「ちっ、ターンエンドだ」



若者手札０枚
魔法罠セット２枚【激流葬】【地割れ】

彼女手札１枚、場０枚



「ドロー、スタンバイ、メイン」

（…大丈夫、迷わずに）

「カードをセット」

「ターンエンド」



若者手札０枚
魔法罠セット２枚【激流葬】【地割れ】

彼女手札１枚
魔法罠セット１枚



（引いたカードをそのまま伏せたか。激流葬、神の宣告は既に発動してるっつーことは魔法の筒かミラフォか。めんどくせぇな）

「ドロー、スタンバイ、メイン」ドローカード【首領・ザルーグ】

（モンスターを引いたが危険を冒してまで今攻める必要はねぇな。ここは様子見だ）

（伏せカードを警戒させるためにもな）

「ターンエンド」



若者手札１枚
魔法罠セット２枚【激流葬】【地割れ】

彼女手札１枚
魔法罠セット１枚



（何もしてこなかった…モンスター引かなかった？もしくは伏せカードに自信があるってこと…？）

「ドロー、スタンバイ、メイン」ドローカード【ヂェミナイ・エルフ】

（激流葬の可能性もあるけれど…もうひとつの伏せが魔法の筒かミラフォならたぶん同じこと）

「【ヂェミナイ・エルフ】召喚」

（ぐっ、モンスター引きやがったか！激流葬を発動しないとやばい！）

若者の手がセットカードの方へと一瞬手が伸びるが、すぐさま手を引く。

（いや待て落ち着け、前のターン俺が様子見をしたことであいつは魔法の筒かミラーフォースがセットされてると思い込んでるはずだ！ここは賭けだ！）

若者だけでなく彼女も同様に動かない。

「…おう、別に何もねぇよ」

若者が動いても彼女は動かないままだ。

（何もせず固まってる、ってことはあいつ魔法の筒が伏せられると読んでるのか？）



（あの伏せカードのどっちかが魔法の筒のはず。攻撃したら負ける…！）

「…ターンエンド」



若者手札１枚
魔法罠セット２枚【激流葬】【地割れ】

彼女手札１枚
攻撃表示【ヂェミナイ・エルフ】
魔法罠セット１枚




（よし思った通りだ！あいつはどっちかが魔法の筒だと思ってやがる。賭けに勝った！）

（ここでサイクロンを引けば勝ち…！）

「ドロー！」ドローカード【聖なるバリア －ミラーフォース－】

（ちっ、ミラフォか。まぁいい）

「スタンバイ、メイン」

「【地割れ】発動だ」

（その伏せカードは地割れ…！？う…読みが外れた）

「はい」彼女の攻撃表示【ヂェミナイ・エルフ】破壊

「カードセット」

「ターンエンド」

（今度はブラフじゃないぜ？）



若者手札１枚
魔法罠セット２枚【激流葬】【聖なるバリア －ミラーフォース－】

彼女手札１枚
魔法罠セット１枚



（あの残ってる手札は何だろう。罠なら伏せるしモンスターなら召喚するはず…じゃあ魔法カードってことになるけど…）

（！…待って、前のわたしのターンをよく思い出して。あの時確か…）

思考の途中、彼女は唐突に閃いた。

（わたしがヂェミナイ・エルフを召喚した時、一瞬彼の手が反射的に動いたように見えた）

（あれは…伏せカード発動しようとしたけど思いとどまったような、そんな動き）

（あのタイミングで発動できるカードといえば…）

（激流葬、もしくは月の書…！）

（でも月の書は無い。バトルフェイズでも発動できる月の書なら、あんな反射的な手の動き方はしないはず…！）

（ということは激流葬…って）

ここで彼女はあの時点でセットされていたもう１枚のカードを思い出す。

（じゃああの２枚って、激流葬と地割れ…！わたしがヂェミナイ・エルフで攻撃してたら勝ってた…！？）

（でもそれなら何故激流葬を発動しなかったの…！？）

（！…そっか、魔法の筒！そのカードの存在を少しでもわたしに匂わせるため…！）

（彼は賭けたんだ…わたしが攻撃しないことに）

（つまり彼のあの手札は魔法じゃなくてモンスター…！だって魔法なら伏せるはず…）

（２枚より３枚セットした方が、次のターンわたしが攻撃する可能性は減るのだから）

彼女は思考の末確信した。そしてその確信を元に次なる思考を巡らせる。

（モンスターだとすると…召喚しなかった理由も見えてくる）

（わたしと同じだ。魔法の筒を警戒してる）

（それなら召喚しても攻撃さえしなければ問題無さそうって思えるけど、できないよね）

（だって自分の場に激流葬が伏せられているのだから…攻撃できないなら、結果は同じ）

（だから今、彼が欲しいのはわたしの魔法の筒を破壊できるサイクロン…！）

（引かれた瞬間、わたしの負けが決まっちゃう…！）

（だからお願い来て…！もう時間が無いの！）



「ドロー」

（！…）

「おいおい、ドローまでどれだけ時間かけてんだよ。何考えてんのか知らんけど引いてから考えろよ」

若者は苛立ちを込めた声をぶつける。

「あ…ごめんなさい。続けます」

思考に夢中になっていた彼女もここは素直に謝罪した。

「スタンバイ、メイン」



（…もう１枚の伏せカード、今度はたぶん本物の罠）

「カードをセット」

「【疾風の暗黒騎士ガイア】召喚します」

「【激流葬】発動だ」

「はい」彼女の攻撃表示【疾風の暗黒騎士ガイア】破壊

（…大丈夫、信じよう）

「…ターンエンド」



若者手札１枚
魔法罠セット１枚【聖なるバリア －ミラーフォース－】

彼女手札０枚
魔法罠セット２枚



（ターンエンドしてきやがったか。ってことはここで引ければ）

「ドロー！」ドローカード【サイクロン】

（来たか！）

若者はドローしたカード見てニヤリと笑った。