1.『名前のわりに』　作：お野菜のデーモン

「サイレント・ソードマンでダイレクトアタック、〈沈黙の剣Lv7〉！」

『決まった〜〜〜〜〜！！！さすが『パーフェクトデュエリスト』！今日も切り札サイレント・ソードマンで見事勝利を納めました〜！！！』

《いいぞー！》《こっち見てー！》
《いよっ、最強デュエリストー！》

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『…っと、そろそろお時間ですね。では遊理選手！カメラに向かって最後の一言、お願いします！！』

『…皆さん、努力はしていますか？勉強でも、仕事でも、何でも…たとえそれが傍から見た時にくだらないと感じられることでも、貴方にとってそれが大事ならそれでいい。それがいいんです。その道を疑わず、真っ直ぐに進んでください。私はそうやってここまで来ました。だから皆さんも─』

「………チッ、何が努力だ。阿笠遊理…消えちまえばいいんだ、こんなヤツ」
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『名前のわりに』
それは俺がこの世で最も嫌いな言葉。

彼の名前は阿笠遊理。
8年前、マイナーリーグ出身ながら急激に頭角を現しメジャーリーグにまで進出した始めた稀代のデュエリスト。

『マイナーリーグ出身者は大成しない』というジンクスを打ち破り、たった数年でチャンピオンの座を奪い取った天才。勝率はなんと脅威の9割。『パーフェクトデュエリスト』と世間から呼ばれている。



俺の名前も阿笠遊理。
ここ数年、ずっとマイナーリーグで燻ってるド底辺デュエリスト。

何戦やっても芽が出ない。
そのくせ名前はスターと同じ。
いつしか俺が対戦する試合では、こんな野次が飛び交うようになった。

『名前のわりにゃ大したことないなぁ』『名前のわりに見掛け倒しなヤツ』『名前だけだなアイツは』

同じ名前で、同じ出身。
アイツと俺の、一体何が違う？

「今に見てろ…すぐにこんなとこ抜け出して、ボッコボコにしてやる…！」

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そう意気込んで応募した、何回目かもわからないメジャーリーグ昇進をかけたデュエルテスト。だが…

「…以上、A組！他のものは全員B組だ！
各々組ごとに別れてデュエルを始めろ！」

…A組ってのはメジャーリーグ昇進に王手をかけた有望株で…B組は昇進するに値するほどの実力がないヤツ。一応一通りデュエルはさせて貰えるがよーするに見込み無しのヤツらの集まりだ。当然俺はA組…と言いたいが残念ながらB組だ…チクショウめ。

「B組でもなんでもいいや、十分金貰えるしな！」

「プロってだけで勝ち組よねー」

（……焦げカスが）

今のマイナーリーグはあんな奴らばかり。
自分に負け、骨の髄まで欲に侵され、それを正そうともしない腑抜けた負け犬共。
あんなヤツらは鍋のそこにへばり付いてるカスと何も変わらない。食うか食われるかの世界に身を置く気概のない焦げカス共だ。

だが俺は違う。俺の目標はアイツを、『阿笠遊理』をあそこから引き摺り落としてやることだ。