蓮華VSダニエル 武装侍女VS斬閃帝！③　作：はにわ改

　
「あれがプロの戦術かー！
俺が言うと生意気だけどさ、無駄がなくて何より、動きが早いよな！」

「まぁ、ダニーはプロはプロでも１０年以上プレイしてるベテランだしねー。
あらゆるパターンを想定してるんだと思うよ？」

透矢に久遠が答える。
まだ互いに１ターン目を終えたところだから、形勢の良し悪しなどについては特に語らない。

「なあなあ、刹那？
蓮華さんとダニエルさんって古い知り合いなんだよな？」

「うん」

「ずっっっと気になってたんだけど、蓮華さんって年、いくつなんだ？」

「あはは、透矢くん。
女の人に歳を訊ねるなんて、野暮よ？」

小声で聞く透矢に苦笑いの刹那。

「いやだってさ、１０年前にプロで活躍してた、って割に蓮華さんって凄く若いじゃん？」

「うーん、そうだなぁ……。
じゃはっきり歳は教えてあげられないけど、ヒントは教えてあげる」

「ヒント？」

「えっとね、蓮華さんは１５歳の時にその才能を見出だされて、単身アメリカに飛んで、プロ機関に入ったのよ」

「じゅ、じゅうごぉっ！？
俺たちより年下の時か？」

「うん。
日本が生んだ天才プレイヤーとして、世界中から大きく注目を浴びたみたいだよ？」

「ふえー、そりゃすげぇや！
水花といい、世の中天才って本当にいるんだなー！」

感心しきりの透矢を横でつまらなさそうに久遠が見ている。

「それに蓮華さんっていつも凛々しくて、カッコいい女の人って感じだよな。
お前もそう思うだろ、久遠」

「なぁに～？
透矢くんって、ああいうのが好み？」

「久遠、お前なぁ。
お世話になってる人に『ああいうの』はないだろ」

「別にいいじゃない？
あの人だって雇われて私たちの面倒見てるだけでしょ？
高いお給料もらってさー」

「久遠！」

「ふんっ」

あからさまに気にくわない、という表情を見せる久遠に透矢が呆れる。

「久遠、お前よーく考えてみろ？
金で雇われてるだけって人が、あそこまでお前たちのために命を張ると思うのかよ？」

「え……？」

蓮華を養護するように、自然と口からでたその言葉。
久遠が驚いたように聞き返す。

「あ、いや、なんでもない。

何、言ってんだ、俺……」

「透矢くん？」

「んー、何だろ、今の感覚。
気のせいかな……」

ーーそれは透矢の頭に一瞬過った『ビジョン』。
それが透矢に『蓮華が二人のために命を張る』とまで言わせたのだが、そのすぐ後になぜそんな事が言えたのか、混乱に襲われたように口籠る。

「（まさか……『記憶』がーー？）」

刹那と久遠が目を合わせる。

「ま、とにかくだ。
俺が言うことじゃねぇけど、お世話になってる人を蔑ろにしたら罰が当たるぜ？」

「う、うん……ごめんなさい」

「何だよ、急に素直になったな」

ややあって我を取り戻した透矢が話をまとめてしまう。
だが刹那も久遠もしばらく透矢の様子を窺うようにしていたのだった。




「ーー私のターンです、ドロー」

ーー蓮華の２ターン目、カードをドローして手札を３枚にする。

「メインフェイズ。
手札から『トレード・イン』を発動。
『銃装侍女（ガトリング・メイド・アームズ） アリス』を墓地へ送り、カードを２枚ドロー」

レベル８モンスターをコストにして２枚ドローする『トレード・イン』。
これにより新たなカードを２枚引き入れた。

「そして墓地の『剛斧侍女（アックス・メイド・アームズ） フレデリカ』の効果を発動。
このカードが墓地に存在する状態で、名前の違う『侍女（メイド・アームズ）』モンスターが墓地へ送られた場合、このカードを除外してそのモンスターを特殊召喚致します」

「ほう、無駄がない動きだね」

「『銃装侍女 アリス』を特殊召喚！」

『トレード・イン』のコストにされたはずの『アリス』が復活。
大きなリボンが可愛らしい、トランプのカードが刺繍されたドレスを着る少女。
だがその両腕には背丈を超える機関銃を持ち、狂騒の笑い声を上げる危険な性格の持ち主。

レベルは８、攻撃力２８００。
蓮華の召喚するモンスターはやはり高ステータスである事が多い。

「ーー『アリス』の効果は少々厄介だねぇ。
ーーならば、リバース・カード、オープン！
ーー『斬空閃（ざんくうせん）』！」

「……罠カード、ですか」

「僕のモンスターゾーンに、『斬閃帝』モンスターが１体のみの時に発動可能！
相手フィールド上に存在するカードを２枚まで破壊する！

ーー『アリス』、そして『侍女の務め』を破壊！」

罠カード『斬空閃』が発動。
ダニエルの場にいる『フローゼス』が手に持つレイピアを２度、袈裟掛けに振るうと、
そこから起きた空気の刃が蓮華のフィールドを襲い、『アリス』と永続魔法『侍女の務め』を粉砕する。

「どうだい、レンゲ？
『侍女の務め』が無ければ、高レベルの『侍女（メイド・アームズ）』はそう易々とは呼べんよ？」

「ーー御心配無用です。

私は墓地の『侍女の務め』を除外して、永続魔法『ロイヤル・セレクション』を手札から発動致します」

２枚のカードを１度に失った蓮華だが、想定内とばかりに手札から新たなカードを繰り出す。

「『ロイヤル・セレクション』は墓地の『侍女の務め』を除外する事で発動出来ます。
通常召喚の権利と引き換えに、デッキから『侍女』モンスターを特殊召喚出来ます」

「ＳＨＩＴ！

ーーおっと、汚い言葉を口走って済まない」

「どうぞ、お気兼ねなく。

ーー私はデッキより『守護侍女（ロイヤル・メイド・アームズ） オーレリア』を特殊召喚致します」

『アリス』に代わって蓮華のフィールドに現れたのは、金色の『オーラ』を発する気迫を全面に打ち出した『侍女』。
巨大な大剣を振りかざすと風圧が巻き起こり、一喝と共に相手を鋭く威嚇する。

レベル８、攻撃力３０００。
どことなくその雰囲気は、使い手である蓮華を彷彿とさせるかのようだ。

「バトル。
『オーレリア』で『フローゼス』を攻撃致します！」

手に持つ大剣を地面を擦りながら下から振り上げると、その一閃は地を這うエネルギーの塊となって『フローゼス』を襲う。

「ーー罠カード、『ブレイブ・フォース』、発動！」

だがダニエルも２枚目のリバース・カードを発動し、簡単にはその攻撃を通さない。

「相手攻撃モンスターの攻撃を無効！
その後、攻撃モンスターの半分の攻撃力を場の『斬閃帝』に加える！」

ダニエルのフィールドに瞬間的に展開された白い『壁』が、『オーレリア』の攻撃を阻止。
更に『オーレリア』の攻撃力の半分・１５００ポイントを『フローゼス』が吸収し、攻撃力を３２００ポイントにアップさせる。

「……カードを１枚伏せて、ターンを終了致します」

蓮華は攻撃が通らなかった事に、悔しさなどは見せずターンを終了。

「レンゲ、今日君に再会出来たこの機会を無駄にはしないよ。
僕の心には常に君の存在があったんだからね」

「……」

「僕は今日、屈辱・雪辱を晴らし、必ずもう一度君を振り向かせてみせる！
伊達に１０年もプロをやってないからね！」

内にある渇望を思わず剥き出しにしたダニエル。

だがその熱い思いを聞いてなお、蓮華の表情はーー動かない。