蓮華VSダニエル 武装侍女VS斬閃帝！　作：はにわ改

　
ーー場所は移って、ホテル地下に設けられた遊技場。
子供から大人まで様々なジャンルの遊戯が楽しめるその場所には、デュエル・スペースも用意されている。
二組まで対戦が可能で、四方をガラスの壁で取り囲み、ギャラリーたちはその外から観戦が出来る。

だが今回はダニエル・刹那によってホテル側と交渉し、普段は賑わうギャラリーを完全にシャットアウト。
プロデュエリストとして名を馳せ、エンターテイナーでもあるダニエルが、ギャラリーをシャットアウトするという行いは、彼のこのデュエルに対する真剣さの表れだ。

許されたギャラリーは透矢・刹那に加えて、久遠の三人のみ。
久遠は刹那に呼ばれて姿を現したわけだが、あまり乗り気ではない様子だ。

「蓮華さんとダニーがデュエルねぇ……」

部屋でくつろいでいたのだろうか、薄手のＴシャツに短パンの久遠。
オレンジソーダをストローですすりながら、遠い目をしている。

「ほら、蓮華さんとダニーの事はあなたもちょっとは知ってるでしょ？」

「さあねぇ、子供の時に聞いた事だから覚えてないなー。

私は……」

興味なさそうに肩を竦めたと思えば、次の瞬間には透矢の腕に自分の腕を絡めた。

「透矢くんがいるっていうから、来ただけだもーん！」

「お、おい、久遠……」

「あ、こら、久遠！
また透矢くんにちょっかい出すつもりっ！？」

「いいじゃない、ちょっとぐらい。

ねぇねぇ、透矢くん？
私から良い匂いしない？」

「へ？

うーん……そういえばいつもと違う……な？」

「あー！分かるんだ！
さすが、透矢くん！
今日初めて試してみたんだけど、フレッドなんてなーんにも言わないのよ？」

「そ、そうなのか？」

「あーもう、久遠！
透矢くんから離れてっ！」

「何よ、お姉様！
いつも透矢くんを独り占めしてるくせに！
本当にお姉様ったら、強欲！」

「何ですって、久遠！？
もう一篇言ってご覧なさい！」

「だーっ！！
お前ら喧嘩すんなっ！！」

姉妹のやり取りに巻き込まれる透矢。
そんな３人をよそに、ガラス張り内のデュエルスペースでは、二人が準備を整えていた。

「ーー君とのデュエルは、大体１０年振りぐらいか。
最後に戦ったのはーー」

「ワールドカップ決勝。
私にとって最も充実していた時期、と言えるかもしれません」

「そして君は僕を破って優勝。
その一週間後に、いきなり引退を発表したんだったな」

「……懐かしい思い出です」

「始めは何かの冗談かドッキリか、と疑ったものだ。
頂点に立ってこれから、という君が引退するなんて、誰も考えもしなかっただろう」

「我が儘を言って……皆様にはご迷惑をお掛けしたと、申し訳なく思っております」

「まったくだよ。
君には勝ち逃げされるし、僕は繰り上げで優勝者扱いされてね。
君が居なくなった寂しさよりも、屈辱が大きかったよ」

当時の事を語る二人。
ダニエルは今は良き思い出と笑顔で語るが、
対称に蓮華は沈んだ面持ちだ。

「意地悪を言ってしまったな、済まない。
だが今日、君とデュエルが出来る事となって嬉しいよ」

「……」

「お互い全力でデュエルを楽しむとしよう。
勝ち負け関係なく、ね」

「……。

ーー丸くなられましたね」

「丸く？」

「あの頃はもっと、気迫と自信を前面に出していたと記憶しています」

「ははは、そうだったか。
ま、こう見えてこの１０年色々と苦楽を経験してきたからね。
感情に身を任せるだけではままならないと言うことを学んだのかもしれないな」

「そう、ですか」

「ま、とにかく始めようじゃないか。
一言、強がらせてもらうなら、昔のようにはいかないからな、レンゲ」

デュエルディスクを構えるダニエル。
ディスクに刻まれた刹那の両親の会社を始めとする数々のスポンサー名。
それは彼が積み重ねてきた実績の証明でもあった。

合わせてレンゲも構える。
１０年以上の時を経て今、再び相対する旧友に対して何を思うのか。

『ーーデュエル！』

蓮華VSダニエル。

透矢、刹那・久遠のみという限られた面子が見守る中、そのデュエルが開始する。