ワシントン校中堅・フレッド出陣！　作：はにわ改

　
ーーワシントン校、２回戦。
相手はオーストラリアにあるアカデミア。
ワシントン校、先鋒に躍り出たのはシェリル。
あまり感情を表情に出さず、常に冷めた雰囲気の長身の女子生徒。
１回戦では中堅としての出場だった。

彼女が操るデッキは『ガンナー』と呼ばれる西部劇をモチーフとしたかのようなキャラクター像であり、
非常に戦闘スキルに優れたモンスター群である。
またサポートもその能力に合わせた性能となっており、序盤からごっそりとライフを奪いにかかるその姿はまさに銃弾のごとき『高速』。

「ーーチェックメイト、だ」

この先鋒戦も先の１回戦・中堅戦と同様の速攻。
１ターン目からモンスターを複数展開させる高機動を見せ、やや立ち遅れた相手をそのまま押し倒した。

大将の器にも相応しいその実力は、相手に手合い違いと思わせる程の敗北感を与える。
そしてクールな彼女は、勝利を得ても笑顔の１つも浮かべない。
若いながら貫禄にも満ちたその姿勢は、観客たちをも圧倒した。

ーーワシントン校、１勝。
まず２回戦突破へ向けて王手を掛けて、次の中堅戦へ繋ぐ。
先鋒・シェリルと入れ替わり、中堅として名乗りを上げたのはーー。

「次、頼むぞ、フレッド」

「ああ、全力を尽くすよ」

「ヘイッ、フレッド！
頑張ってね！」

ーーアルフレッド。
１回戦は出ていなかったが、この２回戦でその姿を見せる。
シェリル、そしてメリッサに見送られ、今大会初のデュエルを披露しようとしている。

「ーー行ってきます、クリス先生」

「ああ。
お前なら大丈夫だ。
自信を持って臨んでこい」

「はい！」

引率にしてワシントン校の実技担当最高責任者であるクリスに声を掛ける。
力強い言葉を貰いフレッドも声高い返事で気合いを見せる。

「ーー久遠、きっと俺で決めるからな」

「……」

最後にチームリーダーである久遠にも声を掛けるが、その久遠は無言。
フレッドと久遠は、姉の刹那を含めた３人の関係でぎくしゃくとしたものを抱えており、
久遠のこの反応はフレッドも予想していた。

だが今はチームメイトとして全力を尽くそうと、雑念は消し去る。
彼もまたシェリル同様、大将として出ても全く不自然ではない実力者だ。

対するオーストラリア副将の男子生徒。
彼もまた母校にて選りすぐられ、期待を背負った実力者の一員。
前回優勝国であるワシントン校を相手に気後れした様子はなく、何とかこの中堅戦を制して、次の大将戦へと繋げたい思いである。

ーー二人がＭＣの声に従ってデュエル・フィールドの上で向かい合うと、観客席から声が上がる。
特にフレッドは引き締まった端正な顔立ちが主に女性を中心に興味を集めており、彼を個人的に応援する者も少なくはない。

そうしてデュエル・ディスクにデッキをセットし、オート・シャッフル。
デュエルをするための環境・準備が整い、後は開始を告げるその瞬間を待つのみ。

「（ーー刹那、見ててくれ。
俺は負けない……っ！
君たちと戦う決勝の舞台まで、俺は負けるわけにはいかない！）」

始まる正にその直前。
きっと控え室で見てくれているであろう、想い人に対して今一度強い思いを気迫として宿らせる。

ーー今、この瞬間だけは彼女も自分を見てくれているはず。
ならば無様な姿は絶対に見せられない。

加えてもう１人。
彼が自分の最大のライバルになるであろうと目する、遊戦名透矢。
彼に対しても弱いところは絶対に見せたくはない。

フレッドは表情こそ済ましてはいるものの、その内に燃える闘志は益々その高まりを上げていった。

『でぇえは、用意はいいかぁああっ？！

２回戦中堅戦、デュエル開始だぁあああっ！！』

『ーーデュエル！』

中堅・フレッド。
様々な思いを胸に彼は戦う。
その彼のデッキもまた、そんな思いに応えようとその力を発揮させるのだ。