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HOME > 遊戯王SS一覧 > 59Turn 繁栄の竜 定の竜

59Turn 繁栄の竜 定の竜 作:ジェム貯めナイト

 遊陽達が常盤家での修行を始めてから一週間が経過した。

 今日も日吾と一嘉から課された修行を終え、就寝時間となったが、遊陽はカズとと
もに寝泊まりしている客室で椅子に座り、机に自らのデッキを広げていた。


 「……これなら勝てるはずだ」


 新たに組み上げたデッキの上から1枚のカードをめくり、手に入れたばかりのその
カードを眺めつつ、デッキに戻すとようやく床についた。

 そして数日後の早朝。遊陽はカズや日吾とともに最早日課となった清掃を終えると
、朝食班を勤める遊無や留音、一嘉と合流し、修行道場で食事を摂っていた。


 「そろそろ言おうと思っていたんだ。ここ数日、遊陽君の勝率は目を見張るものが
ある」

 「確か俺達との実技で10戦中9勝だっけ? 修行の成果出てるよな」


 日吾からここ最近の遊陽について、より真面目に取り組み、結果を出していると頑
張りを賞賛されると、カズも遊陽の成長に言及する。


 「デッキ調整してからだな。新カードでデッキを強化したばかりなんだ」

 「ならそろそろ本気の僕とデュエルしないか? デッキを強化したのは君だけじゃ
ないってことを教えてあげるよ」


 好戦的な態度を見せる日吾がD・フェースを見せつけてくると、遊陽もデッキを取
り出しそれに応じる。


 「そう言うて、お兄はんも新デッキ試したいだけなんよね~」

 「早速始めよう。今の遊陽君がどれほど僕に通じるか――試させてもらうよ?」


 そして一同は食事を終えると屋敷の中庭に移動し、D・フェースを構えるとしばし
の静寂ののち、ししおどしがカコン――。と音を鳴らすのを合図に、5枚の手札を引
いた。


 『デュエル……!』


 遊陽LP4000 日吾LP4000


 Turn1 遊陽手札5


 「先行を取るといい。君の全力を上回って僕が勝つ!」

 「勝つのは俺だ。俺のターン! 手札から《ワッショイ・神座曳手》を《ワッショ
イ・昇竜鯉》とともに墓地へ送ることで効果発動!」


 遊陽が手札から2枚のカードを日吾へと見せ、それを墓地へ送ることで、端午の空
に舞い上がる鯉が市中で祭神が座する山を曳き回す氏子とともに、墓地へと送られる



 ワッショイ・神座曳手(かむくらひきて)
 効果モンスター
 /レベル4/地/戦士/攻撃力1100。
 このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 (1):このカードを含む自分の手札・フィールドの「ワッショイ」モンスター2体
 を墓地へ送って発動できる。墓地へ送ったモンスターの属性の数まで自分はドロー
 する。


 「この効果で俺は風と地属性を墓地へ送った。よって2枚をドロー!」

 「早速手に入れたばかりのカードが来たみてぇだな」


 長年付き合いがあるカズが遊陽の新カードに言及すると、新たにカードを引いた遊
陽は更にモンスターを召喚した。


 「そして俺は《ワッショイ関捩・ランD・ホイールシップ》を召喚。そして召喚し
た時に効果発動! 自身を対象にデッキから下級“ワッショイ関捩”1体を搭乗させ
る。《ワッショイ関捩・デリバティー》をランD・ホイールシップに装備!」


 召喚され現れた陸舟車が発進すると、同時に現れたお盆を持つ和風メイド姿の茶運
人形がブーツ裏のローラーで瞬く間に加速し並走する。

 そして宙にジャンプすると、注がれたカップのお茶をこぼすことなく陸舟車へと優
雅に降り立ち、踵の歯車を荷台と結合させた。


 ランD・ホイールシップ
 (1):このカードが召喚・特殊召喚した場合、自分フィールドの「ワッショイ」機
 械族モンスター1体を対象として発動できる。
 デッキからレベル4以下の「ワッショイ」機械族モンスター1体を選び、装備魔法
 カード扱いとしてそのモンスターに装備する。
 その後このカードの表示形式を変更する。


 ランD・ホイールシップ攻撃力1800→守備力600。


 「続けて俺は手札の《関捩全旋・ワッショイアイスバーグ・シェーバー》の効果発
動! 場のランD・ホイールシップを動力源とすることで手札から特殊召喚だ……!



 そして茶運人形が操縦し、陸舟車は氏子達に曳かれて現れた巨大なかき氷機の関捩
仕掛けの元へと疾走すると、茶運人形ごとその中心部に取り込まれ接続された。


 関捩全旋(かんれいぜんせん)・ワッショイアイスバーグ・シェーバー
 (1):自分フィールドの「ワッショイ」機械族モンスター1体を対象として発動で
 きる。このカードを手札から特殊召喚し、そのモンスターを装備魔法カード扱いと
 してこのカードに装備する。


 アイスバーグ・シェーバー攻撃力2300。


 「来ましたか。遊陽の主力の1体――」


 遊無は機構内部から冷気を放出する関捩仕掛けを見上げつつ、寒さに身震いしなが
ら呟いた。


 「装備状態のデリバティーが墓地へ送られたことで1枚ドロー。カードを2枚伏せ
てターン終了だ」


 デリバティー
 (2):モンスターに装備されているこのカードが墓地へ送られた場合に発動できる
 。自分は1枚ドローする。


 遊陽手札2

 フィールド:アイスバーグ・シェーバー攻撃力2300。

 魔法・罠:伏せ2


 「まずまずな滑り出しだ。だが僕の“梵定竜王(サマーディナーガ)”も、展開力
には自信があるんでね。僕のターン!」


 日吾はカードを引くと、手札から定の境地に住まう竜王の1体を場に呼び出す。


 Turn2 日吾手札6


 「僕は《梵定竜王(サマーディナーガ)ナンダ》を召喚。更に“循環型”永続魔法
の1枚――《シッカートラヤ・シーラ》を発動する!」


 第一の竜王であるコブラが異空間からスルリと場に抜け落ちるとともに、彼が発動
した“戒学”のカードは、3本の線が描かれた定の境地へと通じる結界を日吾を中心
として発生させた。


 ナンダ攻撃力400。


 「この結界は……?」

 「“三勝学(さんしょうがく)”は“定の境地”に至るための道標となる。ナンダを対象に効果発動! ナンダを除外し、幻竜族のため1枚ドローする」


 シッカートラヤ・シーラ 永続魔法
 (1):「シッカートラヤ・シーラ」は自分フィールドに1枚しか表側表示で存在で
 きない。
 (2):1ターンに1度、自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる
 。そのモンスターを除外する。そのモンスターが幻竜族モンスターだった場合、更
 に自分は1枚ドローできる。
 (3):このカードの(2)の効果が適用されたターンのエンドフェイズに発動できる。
 このカードを墓地へ送り、デッキ・墓地から「シッカートラヤ・サマーディ」1枚
 を自分の魔法&罠ゾーンに表側表示で置く。


 「そして場から除外されたナンダの効果発動だ! デッキから上級以下の“梵定竜
王”1体を呼び出す。《梵定竜王アナヴァタプタ》を特殊召喚……!」


 第一の竜王は霞の中に溶け込んで消滅すると、入れ替わりに第六の竜王が朧げな影
から現出し、巨大な胴体を引きずって場に這い出た。


 ナンダ
 (2):自分フィールドのこのカードが除外された場合に発動できる。
 デッキからレベル6以下の「梵定竜王」モンスター1体を特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに除外される。


 アナヴァタプタ
 (1):このカードの攻撃力・守備力は、除外状態の自分の「梵定竜王」モンスター
 の数×100アップする。
 (2):除外状態の自分の「梵定竜王」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターをデッキに戻し、デッキからそのモンスターとはカード名が異なる
 レベル4以下の「梵定竜王」モンスター1体を特殊召喚する。


 アナヴァタプタ攻撃力2400→2500。


 「まだだ! 続けて除外状態のナンダをデッキに戻してアナヴァタプタの効果――
転輪因果! デッキの《梵定竜王ウパナンダ》へと昇華させる……!」


 第六の竜王が自身を中心とした曼荼羅を地面に開いていくと、金色の眼で見つめる
前方に第二の竜王が現出された。


 ウパナンダ攻撃力800。


 「2体の梵定竜王を並べたか」

 「これで発動できる。僕は儀式魔法《梵定竜王阿羅漢(サマーディナーガ・アルハ
ット)》を発動。場のレベル2と6のナンダとアナヴァタプタをリリースの代わりに
除外することで、“儀式召喚”を執り行う……!」


 発動とともに2体の竜王を中心とした曼荼羅が開いていく。

 やがて2体は消滅し、その中央に8つの燭台が現れると、それぞれの燭台に炎が灯
ってその中心部へと光が差し込み、衝撃で燭台が吹き飛んだ。


 「もう呼び出さはるん……!?」
 
 「ナーガローカより地上世界を支えし竜王! “儀式召喚”。《梵定竜王(サマー
ディナーガ)アナンタ》……!」


 一嘉も驚愕する中、光の中から無数の頭を持ち、五色で彩られた胴体を複数の腕釧
で飾り立てたコブラが日吾の場に降臨した。


 梵定竜王阿羅漢
 「梵定竜王」儀式モンスターの降臨に必要。
 (1):レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように、自分の
 手札・フィールドのモンスターをリリース、またはリリースの代わりに自分フィー
 ルドの「梵定竜王」モンスター(表側表示)を除外し、手札から「梵定竜王」儀式
 モンスター1体を儀式召喚する。


 アナンタ攻撃力3000。


 「くっ……本気を出すに嘘偽りは無かったな」

 「君へと課されたこの試練において、手抜きなど失礼極まりないからね。僕の全力
を以って君を倒す! 場から除外されたウパナンダの効果で1枚ドロー!」


 ウパナンダ
 (2):自分フィールドのこのカードが除外された場合に発動できる。
 自分は1枚ドローする。


 「来た。魔法カード《梵定竜王伝承(サマーディナーガ・アーガマ)》を発動! 
僕の場に“梵定竜王”がいるため、デッキから《梵定竜王ムチャリンダ》を手札に加
える代わりに除外する」


 日吾がデッキを触り、選び出したカードを遊陽へと見せて除外した。


 梵定竜王伝承
 (1):自分のデッキから「梵定竜王」モンスター1体を手札に加える。
 自分フィールドに「梵定竜王」モンスターが存在する場合、手札に加える代わりに
 除外することもできる。


 「ムチャリンダ……!」

 「ご期待に応えて、すぐにその姿、拝ませてあげるよ。更に魔法カード《梵定竜王
再(サマーディナーガ・プナーバヴァ)》によって、除外状態の“梵定竜王”が3体
以上の時、その内の1体を降臨させる……!」

 「日吾君の除外されている“梵定竜王”は、ウパナンダ、アナヴァタプタ、ムチャ
リンダの3体――」


 留音がデュエル開始からの流れを回想し、指を曲げて除外された数を確認する。


 梵定竜王再
 (1):除外状態の自分の「梵定竜王」モンスターが3体以上存在する場合に発動で
 きる。除外状態の「梵定竜王」モンスター1体を特殊召喚する。


 「僕が呼び出すのは“このモンスター”だ! 櫛風沐雨より世尊を守護せよ! 《
梵定竜王ムチャリンダ》……!」


 空間に裂け目が生じ、その中から日吾が切り札とする白いコブラはスルリと抜け落
ちると、白い胴体を起こして蓮の花の意匠をした頸部を大きく広げた。


 ムチャリンダ攻撃力3000。


 「ムチャリンダとアナンタ――お兄はんの切り札が並ばはったわぁ……」


 僅か1ターンで2体の大型“梵定竜王”を場に揃えた兄の技量に、一嘉も感嘆の声
を上げた。


 「まだだ。万全を期すにはまだ足りない。更なる魔法カード《梵定竜王輪廻(サマ
ーディナーガ・サンサーラ)》によって、除外状態のアナヴァタプタとデッキのタク
シャカを入れ替える」


 梵定竜王輪廻(サマーディナーガ・サンサーラ) 通常魔法
 このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 (1):除外状態の自分の「梵定竜王」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターをデッキに戻し、自分のデッキから「梵定竜王」モンスター1体を
 除外する。レベル4以下のモンスターを除外する場合、代わりに2体を除外できる
 。
 (2):幻竜族モンスターが同時に3体以上除外されたターンに発動できる。
 墓地のこのカードを除外し、自分は1枚ドローする。


 「そしてアナンタの効果発動。除外状態のタクシャカをデッキに戻し、その攻撃力
と効果を得る」


 アナンタ
 (3):自分の除外状態の「梵定竜王」モンスター1体をデッキに戻して発動できる
 。ターン終了時までこのカードの攻撃力はそのモンスターの攻撃力分アップし、そ
 のモンスターと同じ効果を得る。


 タクシャカ
 攻撃力2000。
 (2):除外状態の自分の「梵定竜王」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターをデッキに戻し、相手フィールドの魔法、罠カード1枚を破壊する
 。


 アナンタ攻撃力3000→5000。


 「チョイとまずいか……? タクシャカの効果は確か――」

 「御明察だね。僕はタクシャカの効果を得たアナンタの効果発動! 除外状態のナ
ンダをデッキに戻す事で君の魔法、罠カード1枚を破壊する! ――選ぶのは右だ!



 日吾が指差した遊陽の伏せカードは、同胞の効果を得たアナンタによって吐かれた
霧で覆い尽くされ、場から消滅してしまった。


 「《神輿奉戴》――“ワッショイ”モンスターへの攻撃・効果の対象を無効にする
カード」

 「防御手段を剥がされちまった! これで決まるのか……!?」


 早くも危機的状況を迎えた遊陽に、カズと留音はこのデュエルに決着が訪れるかど
うかを固唾を飲んで見守っている。


 「バトルだ! アナンタの攻撃――サマーディ・シャマタ……!」


 日吾の指示で、多頭のコブラが宙に無数の曼荼羅を開いていくと、蓄えた力をその
全てに行き渡らせ、曼荼羅から無数の光線を発射した。

 そしてそれを浴びた氷塊をすりおろす関捩仕掛けは、崩壊を始める。


 「ぐっ……あああっ……!?」


 遊陽LP4000→1300。


 「いきなりLPを大きく削られた……」

 「くっ――まだだ! 装備状態のランD・ホイールシップが墓地へ送られたため効
果発動! 再び現れろ! デリバティー……!」


 崩壊しつつある関捩仕掛けから茶運人形が脱出し、再び遊陽の場に降り立った。


 ランD・ホイールシップ
 (2):モンスターに装備されているこのカードが墓地に送られた場合、「ワッショ
 イ関捩・ランD・ホイールシップ」以外の自分の墓地の「ワッショイ」機械族モン
 スター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。


 デリバティー攻撃力0。


 『ここで攻撃表示……?』

 「……ただのミスか、それとも何らかの思惑か……まあすぐに分かることさ。この
攻撃で! ムチャリンダでデリバティーを攻撃! サマーディ・チッタイカーグラタ
ー……!」


 そして日吾は続けざまに、自らがパートナーとする精霊ムチャリンダでこのデュエ
ルに引導を渡そうとする。


 「決まるか……!?」

 「俺は罠カード《関捩捻力》を発動! デリバティーを対象に、表示形式を変更す
る……!」


 関捩捻力(かんれいねんりき) 通常罠
 このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
 (1):自分フィールドの「ワッショイ」機械族モンスター1体を対象として発動で
 きる。そのモンスターの表示形式を変更し、そのモンスターの表示形式によって
 以下の効果を適用する。
 ●攻撃表示:攻撃力を500アップする。
 ●守備表示:このターンに1度だけ戦闘・効果では破壊されない。


 「そして守備表示となったため、デリバティーは1度だけ破壊を免れる」


 ムチャリンダが開いた曼荼羅から光線を発射するも、内部の機構を構成する関捩子
を強く巻き直した茶運人形は強靭さを増し、直撃した光線を耐えきった。


 「更に駆動を切り替えたためデリバティーの効果発動。1枚ドロー」


 続けて遊陽は茶運人形が運んできたカップを手に取ると、手にしたカップが光とな
って消滅し、デッキの一番上のカードを輝かせる。

 そして遊陽はそのカードをドローした。


 デリバティー
 (1):1ターンに1度、このカードの表示形式が変更された場合に発動できる。
 自分は1枚ドローする。


 「早々決着とはならなかったか。僕はカード1枚を伏せ、エンドフェイズにこのタ
ーン効果を発動した《シッカートラヤ・シーラ》を“定学”の段階へと移行させる!
 デッキから《シッカートラヤ・サマーディ》を発動だ!」


 日吾が発動している循環型永続魔法は、展開している結界の三重線の内、外側に加
え中央の線まで発光し、定の境地へと更に歩みを進めた。


 シッカートラヤ・サマーディ 永続魔法
 このカードは自分の魔法&罠ゾーンの「シッカートラヤ・シーラ」(表側表示)1
 枚を墓地へ送ることで発動できる。
 (1):「シッカートラヤ・サマーディ」は自分フィールドに1枚しか表側表示で存
 在できない。
 (2):1ターンに1度、手札のモンスター1体を見せて発動できる。
 そのモンスターを除外する。そのモンスターが幻竜族モンスターだった場合、更に
 自分は1枚ドローできる。
 (3):このカードの(2)の効果が適用されたターンのエンドフェイズに発動できる。
 このカードを墓地へ送り、デッキ・墓地から「シッカートラヤ・プラジュニャー」
 1枚を自分の魔法&罠ゾーンに表側表示で置く。


 「これでターン終了。アナンタの攻撃力は元に戻る」


 日吾手札0

 フィールド:アナンタ攻撃力5000→3000。ムチャリンダ攻撃力3000。

 魔法・罠:シッカートラヤ・サマーディ。伏せ1


 フィールド:デリバティー守備力500。

 魔法・罠:


 Turn3 遊陽手札4


 「俺のターン! デリバティーの表示形式を変更し、再び効果発動! 1枚ドロー
!」


 茶運人形の給茶により、1枚ドローする権利を得た遊陽は、5枚の手札を揃え準備
万端と言わんばかりに動き出した。


 「揃ったぜ。俺は魔法カード《降舞-延年》を発動! 手札から《ワッショイ・ヨ
リマシ》をその身に氏神を憑依させ呼び出すぜ!」


 魔法カードの発動により、遊陽の場に彼のパートナーである精霊――ヨリマシが額
に竜の角を携え、神格を得た状態で御出ました。


 降舞-延年(おろしまい えんねん)
 (1):自分の手札・墓地から「ワッショイ・ヨリマシ」1体を特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターの種族は幻竜族になる。


 ――来たよ遊陽――。

 「早速その力借りさせてもらうぜ。続けて魔法カード《神輿渡御》を発動。デッキ
から“ワッショイ”幻竜族1体を手札に加え、更に最上級モンスターを召喚できる!



 神輿渡御(みこしとぎょ) 通常魔法
 このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
 (1):デッキから「ワッショイ」幻竜族モンスター1体を手札に加える。
 その後、以下の効果を適用できる。
 ●レベル7以上の「ワッショイ」モンスターの召喚を行う。


 「ヨリマシが場にいることで、最上級“ワッショイ”モンスターのアドバンス召喚
の際のリリースを1体軽減できる!」

 ――任せてよ。祭神とは僕が交信する――。


 氏神の宿り身であるヨリマシの導きにより、茶運人形は光を纏って場から消滅し、
繁栄の力宿す“祭りの竜”が場に降臨した。


 「俺はデリバティー1体をリリース! “アドバンス召喚”!  掛け声響く祭り
の竜――《ワッショイフェスタ・ドラゴン》……!」


 ヨリマシ
 (1):このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、レベル7以上の「ワッ
 ショイ」モンスターを召喚する場合に必要なリリースを1体少なくできる。


 ワッショイフェスタ攻撃力2500。


 「来たか! ワッショイフェスタ……!」

 「更に《ワッショイ・幇間太夫》を召喚し、デッキの上からカード2枚を墓地へ送
って効果発動! 自身のレベルを墓地へ送った枚数だけ下げる」


 新たに遊陽の場には、お座敷にて笑いを提供する上裸でふくよかな体つきをした男
芸者が現れた。

 そして男芸者は踊りながら腹に力を込め、胸から腹にかけて墨と赤の染料で描かれ
た顔を自由自在に動かし、表情を生み出す。


 ワッショイ・幇間太夫(ほうかんだゆう)
 効果モンスター
 /地/レベル3/魔法使い/攻撃力600。
 このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 (1):自分のデッキの上からカードを2枚まで墓地へ送って発動できる。
 ターン終了時までこのカードのレベルを墓地へ送ったカードの枚数だけ下げる。


 幇間太夫墓地送り (Noh.Gaクリボー ワッショイ・トーチャー) レベル
3→1


 「……これで2体のモンスターが揃った。まさか――」


 日吾は遊陽が見せたカードが墓地へ送られるのを確認すると、遊陽の場に並んだ2
体のモンスターのステータスを見て、“あのカード”の召喚を予測する。


 「俺は“ワッショイ”幻竜族となったヨリマシと、レベル1“ワッショイ”魔法使
い族となった幇間太夫をリリース! 氏神宿りし依巫よ! その身に神威を移し“繁
栄”をもたらせ……!」


 腹芸を披露する男芸者とともに、ヨリマシは光の粒子となり消滅していく。

 やがて2体が残した光の粒子が渦巻いて合わさり、ヨリマシは額に竜の角を有し、
瞳孔を竜のように縦に長くした宿り子の姿で再び現れた。


 「現れろ――氏神を使役せし宿り子! 《ワッショイフェスタ・ヨリマシポゼスト
》……!」


 ヨリマシポゼスト攻撃力2500。


 『す……凄い!』

 「遊陽も日吾さんと同じく、2体の切り札を並べた……!」


 日吾に続いて自らの切り札2体を1ターンで揃えた遊陽に、遊無達は驚愕する。

 そして祭りの竜と宿り子となったヨリマシは、日吾の場でとぐろを巻く2体の白と
多頭のコブラを相手に双方視線を交わして対峙する。


 「自身の効果で場に現れたヨリマシポゼストは、このターン攻撃力を2500アッ
プする。チューティラリィ・ブレス!」


 ヨリマシポゼスト
 (1):自分フィールドの「ワッショイ」幻竜族モンスターとレベル1「ワッショイ
 」魔法使い族モンスターを1体ずつリリースして発動できる。
 手札のこのカードを特殊召喚する。
 (2):このカードが(1)の効果で特殊召喚に成功した場合に発動できる。
 このカードの攻撃力はターン終了時まで2500アップする。


 ヨリマシポゼスト攻撃力2500→5000。


 「続けてワッショイフェスタの効果発動! 自身の攻撃力と日吾の場の上級以上の
モンスターの攻撃力を、俺の墓地のモンスターの属性と種族の数だけ500アップし
、200ダウンさせる! リバイタライズ・カーニバル……!」


 ワッショイフェスタ
 (1):自分のメインフェイズに発動できる。このカードの攻撃力はターン終了時ま
 で、自分の墓地のモンスターの属性の数×500アップする。
 その後、相手フィールドのレベル5以上のモンスターの攻撃力はターン終了時まで
 、自分の墓地のモンスターの種族の数×200ダウンする。


 ワッショイフェスタ効果(地、風、炎、闇、光)(戦士、海竜、機械、魔法使い、
悪魔)

 ワッショイフェスタ攻撃力2500→5000。アナンタ、ムチャリンダ攻撃力3000→2000



 「今度は俺が勝利への王手を宣言する時だ。バトル! 俺はヨリマシポゼストでア
ナンタを攻撃! 興盛のプロスペリティ・ブレイザー……!」

 「通さない! 罠カード《梵定竜王量(サマーディナーガ・プラマーナ)》を発動
。その攻撃を無効にする……!」


 氏神の宿り子たるヨリマシの指示で、祭りの竜は口から光線を発射する。

 しかし狙い定めていた多頭のコブラは、突如発生した霧に紛れてその姿を消失させ
、ヨリマシの攻撃は空振りとなった。


 梵定竜王量
 (1):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にする。
 その後、自分の除外状態の「梵定竜王」モンスター2体に付き1枚、自分はドロー
 できる。


 除外状態:0枚 ドローは無し。


 「止められるのだって了承済みだ。続けてワッショイフェスタでアナンタを攻撃―
―隆盛のプロスペリティ・バースト……!」


 だが霧の中から多頭のコブラが再び現れると同時に、追撃に放った祭りの竜の光線
が直撃し消滅した。


 「ぐっ……!?」


 日吾LP4000→1000。


 「俺はターン終了――そしてこのターンに墓地へ送られた《ワッショイ・トーチャ
ー》の効果が発動する! デッキから“こいつ”を墓地へ送るぜ」


 場にうっすらと現れた祖霊を迎える案内人が提灯を掲げ、火が灯るとともに、遊陽
はデッキから選び出したモンスター1体を墓地へと導く。


 ワッショイ・トーチャー
 効果モンスター
 /炎/レベル4/戦士/攻撃力1700。
 このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 (1):このカードが召喚した時に発動できる。手札からレベル4以下の「ワッショ
 イ」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚した炎属性モンスター以
 外のモンスターの効果は無効化される。
 (2):このカードが墓地に送られたターンのエンドフェイズに発動できる。
 自分のデッキから「ワッショイ」モンスター1体を墓地へ送る。
 この効果で墓地へ送られた炎属性以外のモンスターは、次のターン終了時まで効果
 を発動できない。


 「《ワッショイ華景・ロッキー》か。そのモンスターは戦闘時に墓地から除外し、
戦闘ダメージを0にする――」

 「加えてお互いに500ダメージを与える効果も持つ。高攻撃力でのゴリ押しは通
じにくくなったな」


 ワッショイ華景・ロッキー
 (2):モンスターが戦闘を行うダメージ計算時、墓地のこのカードを除外して発動
 できる。その戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になる。その後、お互いに
 500ダメージを受ける。


  遊陽手札0

 フィールド:ヨリマシポゼスト攻撃力5000→2500。ワッショイフェスタ攻撃力5000
→2500。

 魔法・罠:


 フィールド:ムチャリンダ攻撃力3000。

 魔法・罠:シッカートラヤ・サマーディ


 Turn4 日吾手札1


 「僕の……ターン! ――まだ繋がれる! 手札の《梵定竜王(サマーディナーガ
)ウパラガ》を除外して《シッカートラヤ・サマーディ》の効果発動。幻竜族のため
1枚ドロー!」


 発動中の永続魔法によって手札交換を行った日吾は、引いたカードを見て即座に発
動させた。


 「そして僕は、《シッカートラヤ・サマーディ》を墓地へ送り、“慧学”への道を
開く! 永続魔法《シッカートラヤ・プラジュニャー》を発動……!」


 すると場に張られた結界は、三重線全てが発光し、溢れ出る力が結界内の敷地の地
面から無数の緑を芽吹かせた。


 シッカートラヤ・プラジュニャー 永続魔法
 このカードは自分の魔法&罠ゾーンの「シッカートラヤ・サマーディ」(表側表示
 )1枚を墓地へ送ることで発動できる。
 (1):「シッカートラヤ・プラジュニャー」は自分フィールドに1枚しか表側表示
 で存在できない。
 (2):1ターンに1度、自分の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを除外する。そのモンスターが幻竜族モンスターだった場合、更に
 自分は1枚ドローできる。
 (3):このカードの(2)の効果が適用されたターンのエンドフェイズに発動できる。
 このカードを墓地へ送り、自分のデッキ・墓地から「シッカートラヤ・シーラ」1
 枚を自分の魔法&罠ゾーンに表側表示で置く。その後、自分のデッキから「梵定竜
 王」モンスターを除外できる(同名カードは1枚まで)。


 「3枚目の三勝学のカード……!」

 「そして墓地のアナンタを除外し、プラジュニャーの効果発動。幻竜族のため1枚
ドロー。――来た!」


 引いたカードを見るなり、日吾の白群色の瞳には一瞬煌々とした光が灯った。


 「何を引いた……?」

 「僕は装備魔法《ラージャ・ムクターハーラ》をムチャリンダに装備し、ムチャリ
ンダの効果発動――定の境地より異類中行せよ! 四門出遊……! 除外状態の“梵
定竜王”1体――ウパラガを帰還し、再び除外する」


 白いコブラの首に、菩薩の首元を飾り立てる“王族の瓔珞”が巻かれていく。

 気品ある金色の装身具を着けたムチャリンダは、自らの力で第8の竜王を定の境地
から導くが、呼び出された竜王はすぐさま元の世界へと帰って行った。


 「お兄はんの選択……一見意味は無さそうやけど――」

 「この時《ラージャ・ムクターハーラ》の効果が発動する! あらゆる領域から“
梵定竜王”が除外されるたびに、装備したムチャリンダの攻撃力はその数×100ア
ップする!」


 ラージャ・ムクターハーラ 装備魔法
 「梵定竜王」モンスターにのみ装備可能。
 (1):装備モンスターが相手モンスターに攻撃したダメージステップ終了時に、除
 外状態の「梵定竜王」モンスター1体をデッキに戻して発動できる。装備モンスタ
 ーは続けて攻撃できる。
 (2):「梵定竜王」モンスターが除外される度に発動する。装備モンスターの攻撃
 力は除外されたモンスターの数×100アップする。


 ムチャリンダ攻撃力3000→3100。


 「とはいえ上昇値は微弱な数値だ」

 「無論、この効果“だけ”が目当てじゃないさ。バトル! 僕はムチャリンダでヨ
リマシポゼストを攻撃――サマーディ・チッタイカーグラター……!」


 日吾がバトル開始を宣言すると、攻撃を命じられたムチャリンダは首元の瓔珞をひ
と際輝かせ、空中に開いた曼荼羅から光線を発射し、直撃した宿り子のヨリマシを瞬
時に消し去った。


 「くっ――」


 遊陽LP1300→700。


 「そしてこれが“本命”さ。装備したムチャリンダの攻撃終了時に《ラージャ・ム
クターハーラ》の更なる効果発動! 除外状態のウパラガをデッキに戻し、続けて攻
撃できる!」

 『連続攻撃だと……!?』


 ムチャリンダが瓔珞によって得た能力を目の当たりにし、カズ達は驚愕する。


 「この効果は除外状態の“梵定竜王”を戻し続けられる限り発動できる。続けてヨ
リマシポゼストを攻撃! サマーディ・チッタイカーグラター……!」


 新たに開かれた曼荼羅から光線が発射され、祭りの竜もたちまち光線に飲まれて消
え去った。


 遊陽LP700→100。


 「まずい! 日吾にはまだ、除外状態のアナンタが残ってる……!」

 「アナンタをデッキに戻し再び効果発動。モンスター同士の戦闘で受けるダメージ
を0にする“ワッショイ華景”だけでは、このムチャリンダの連続攻撃は止められな
い……!」


 日吾がこの攻撃を防ぐ手立てはない――。と、勝利を確信し遊陽へと宣言する。


 「遊陽君……君はよく戦った。だが実力不足だった。しかし安心するといい。この
敗北が君を更に強くするのだから――ムチャリンダ! サマーディ・チッタイカーグ
ラター……!」


 3度目の攻撃によって、ムチャリンダは空中に展開した3つの曼荼羅全てから光線を射出する。

 やがて3つの光線は一つに合わさり、遊陽へと直撃し舞い上がった土埃が彼の姿を
視界から消失させた。


 「――決まった。……何っ!?」


 しかし土煙が晴れると、遊陽の場には能面を掛けた小さな悪魔が出現していた。


 「俺への攻撃時に墓地の《ワッショイ・Noh.Gaクリボー》は蘇生できる。し
かも俺の墓地に光属性がいるため、1度だけ光属性モンスターとの戦闘による破壊は
免れるぜ!」


 Noh.Gaクリボー
 このカードが墓地に存在する場合、相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる
 。このカードを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは以下の効果を
 得る。
 ●このカードは1ターンに1度だけ、自分の墓地に存在する「ワッショイ」モンス
 ターと同じ属性のモンスターとの戦闘では破壊されない。


 「遊陽! 耐えきりましたね……!」


 決着を先伸ばしにされ、悔しがる日吾をよそに、遊無は敗北を回避した遊陽の姿に
ホッと胸を撫で下ろす。


 「……先程の発言は撤回しよう。でも遊陽君、君の不利に変わりはないよ? ター
ン終了時に効果を発動した“慧学”は、再び“戒学”へと回帰する。そしてこの時、
アナンタと“八大竜王”を定の境地へと昇華させる……!」


 定の境地へと達した事で、三勝学の結界は輝きを消失させる。

 やがて三重線の一番外側にのみ光が灯ると、日吾はデッキを手に取り、投入してい
る全ての“梵定竜王”をD・フェースの除外ゾーンへと投入した。


 9体を除外。(ナンダ、ウパナンダ、サーガラ、ヴァスキ、タクシャカ、アナヴァ
タプタ、マナスヴィン、ウパラガ、アナンタ)


 「するとどうなるか。《ラージャ・ムクターハーラ》により、9体を除外したため
ムチャリンダの攻撃力は900アップする……!」


 ムチャリンダ攻撃力3100→4000。


 「攻撃力4000――」

 「プラジュニャーとのコンボで攻撃力が大台に届いたわね」

 「さあ、このムチャリンダを超えられるものなら超えてみるんだ……!」


 三勝学の“慧学”と、“王族の瓔珞”を組み合わせた戦術に、留音は感嘆する。

 そして自信を見せる日吾に同調し、瓔珞を装備したムチャリンダも上体を起こして
シューッ――。と空気を吐き出す音を発し、遊陽へと圧をかけた。


 日吾手札0

 フィールド:ムチャリンダ攻撃力4000。

 魔法・罠:シッカートラヤ・シーラ。ラージャ・ムクターハーラ(装備 ムチャリン
ダ)


 フィールド:。Noh.Gaクリボー守備力200。

 魔法・罠:


 「――やっぱ日吾は強え。だがユーメイを倒すため、まだ諦めるわけにはいかない
!」


 Turn5 遊陽手札1


 「俺のターン! スタンバイフェイズに墓地の《神輿奉戴》を除外し効果発動だ。
墓地のワッショイフェスタをデッキに戻し、再び現れろ! ヨリマシ……!」


 カードを引くとともに、遊陽の墓地から平安貴族風の出で立ちをした氏神の宿り子
――ヨリマシが再び場に舞い戻って来た。


 神輿奉戴
 (2):自分のスタンバイフェイズに自分の墓地のレベル7以上の「ワッショイ」モ
 ンスター1体を対象として発動できる。墓地のこのカードを除外し、そのモンスタ
 ーをデッキに戻す。その後、自分の墓地からレベル1「ワッショイ」魔法使い族モ
 ンスター1体を特殊召喚できる。


 ヨリマシ攻撃力300。


 「更にレベル1“ワッショイ”魔法使い族がいるため、墓地の昇竜鯉は自身の効果
で手札に戻せる」


 場に現れた童男の存在によって、端午の空を泳ぐ鯉も墓地から遊陽の手札に加わっ
た。


 昇竜鯉
 (2):自分フィールドにレベル1「ワッショイ」魔法使い族モンスターが存在する
 場合に発動できる。墓地のこのカードを手札に加える。


 「……準備は整えた。後はこの引きに賭けるぜ。魔法カード《祭場祝儀》を発動!
 俺の墓地から“ワッショイ”モンスター5体をデッキに戻し、2枚をドローだ!」


 祭場祝儀
 (1):自分の墓地の「ワッショイ」モンスター5体を対象として発動できる。
 そのモンスターをデッキに戻し、自分は2枚ドローする。この効果で対象としたモ
 ンスターの属性が全て異なる場合、ドローする枚数は3枚になる。


 デッキに戻す(デリバティー ランD・ホイールシップ 幇間太夫 アイスバーグ
・シェーバー ヨリマシポゼスト)


 「ドロー! ――日吾、見せてやる。これが俺の“新たな力”だ……!」

 「――手に入れたと言っていた“アレ”か……」

 「俺は儀式魔法《祭場昇儀》を発動だ……!」

 『遊陽(君)が儀式を……!?』


 新たに手に入れた特殊な召喚方を行う魔法カードによって、面を掛けた小さな悪魔
と端午の空を泳ぐ鯉を中心に、7つの提灯がそれぞれ灯っていく。


 「このカードによって俺の場のレベル1Noh.Gaクリボーと、手札のレベル6昇竜鯉をリリースする!――政を遂行するは1人で無し。民と為し祭事を“賑やか”せよ……!」


 そして提灯の灯りが全て同時に消えると、取り囲んだ中心から光の柱が伸びて天と
地を繋ぎ、その光の中から祭礼服に身を包んだ祭りを取り仕切る“大宮司”がその姿
を現した。


 「“儀式召喚”! レベル7――《ワッショイ・ダイグージ》……!」


 祭場昇儀
 このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 「ワッショイ」儀式モンスターの降臨に必要。
 (1):レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように、自分の
 手札・フィールドのモンスターをリリースし、手札から「ワッショイ」儀式モンス
 ター1体を儀式召喚する。
 (2):このカードが墓地へ送られていないターンに自分の墓地のレベル7以上の「
 ワッショイ」光属性モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをデ
 ッキに戻し、墓地のこのカードを手札に加える。
 

 ダイグージ攻撃力2300。


 「遂に儀式召喚まで会得したんだな」

 「だが僕のムチャリンダの攻撃力4000には及ばない」

 「ダイグージが儀式召喚したため効果発動! デッキから祭事を司る“ワッショイ
”モンスター1体を呼び出す。現れろ! 《ワッショイ・グージ》……!」


 両手に持つ扇子を開き、祭りの大宮司が儀礼的な舞いを披露するとともに、新たに
祭りを取り仕切る“宮司”が遊陽の場へと馳せ参じた。


 ワッショイ・ダイグージ
 効果モンスター
 /光/レベル7/魔法使い/攻撃力2300。
 「祭場昇儀」により降臨。
 このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 (1):このカードが儀式召喚に成功した場合に発動できる。デッキからレベル6以
 下の「ワッショイ」魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターがフィールドに存在する限り、このカードの攻
 撃力はこの効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力分アップする。


 「そしてそのモンスターがいる限りその攻撃力を得る! 更にグージは俺の場の魔
法使い族1体に付き、攻撃力を200アップする。よってグージの攻撃力2700を
ダイグージに加えるぜ!」


 グージ
 (2):このカードの攻撃力は、自分フィールドの他の魔法使い族モンスターの数×
 200アップする。


 魔法使い族(ヨリマシ ダイグージ)グージ攻撃力2300→2700。ダイグージ攻撃力2300→5000。


 「攻撃力で上回ったか。見事だ――」

 「バトル! ダイグージでムチャリンダを攻撃――フィーンド・イレージング!」


 ムチャリンダとの攻撃力差は1000――。自らの敗北を悟った日吾が悔し気なが
らも静かな笑みを見せると、遊陽の成長に拍手を送った。

 そして大宮司が発した退魔の光線を浴び、消滅するムチャリンダの余波で吹き飛ば
されるのであった。


 日吾LP1000→0。


 「遊陽が勝った……!」


 新たな切り札を駆使しての勝利を見届けた遊無が真っ先に声を上げると、集中が解
けた遊陽が遅れて歓声の声を上げた。


 「やった! 日吾! これで修行は――」

 「ああ、もう十分やっていけるだろう」


 再び起き上がった日吾が改めて遊陽を称えると、双方ともに歩み寄り握手を交わす



 「本当か……!?」

 「後は自己鍛錬だけで僕やサバスさん、マノンさんにだって届けるさ。――そうい
やその2人とは連絡を続けているのかい?」


 日吾から投げかけられた疑問に、遊陽も思わずD・フェースを操作する。


 「確かに一旦報告するか。……ん? 2人とも忙しいのか?」


 遊陽はサバスとマノンの2人が数日間オフラインのままD・フェースを触っていな
いことに気付く。


 「何かあったのか?」


 遊陽が訝しむ姿にカズ達も遊陽の元に集まって来ると、日吾も自らのD・フェース
で2人の安否を確認する。


 「どうしたんだ? ――なるほど、こんなに長くログインしていないのは珍しいな


 「せわしなく働いとるんちゃう? サバスさん達なら心配あらへんてぇ」


 一嘉は彼らなら大丈夫だろうと楽観しているが、遊陽と日吾は不穏な考えが頭の中
から離れないままだった。

 そしてその予感は的中する。


 「あっ! マルチェッロさん……!」


 その日の修行を終えた一行が夕方のお勤めのため常盤家に戻ると、修行道場から離
れた談話室にイーサ教会本部の者の一人――運転手を務めるマルチェッロがソファで
D・フェースを食い入るように眺めていた。


 「ああ……お久しぶりッスね――」


 遊陽達が彼に呼びかけると、マルチェッロはD・フェースを一旦閉じて立ち上がり
、浮かない顔で遊陽達へと歩み寄った。


 「どうかしたのですか?」


 留音が元気なさげなマルチェッロへと問いかけると、彼は無言で再びD・フェース
の画面を付け、それを遊陽達に見せてきた。


 ――以上を持ちまして、イーサ教会本部からの中継は終了いたします。改めてお伝
えします。この度イーサ教会本部直属の神父であるサバス・バジャダレス氏は、この
度神父を辞任することとなりました――。


 イーサ教会の公式アカウントで中継されているサバスの辞任会見を知った遊陽達は
、突然の報道を目の当たりにして一瞬硬直した。


 「――どうして……? はっ!? マノンさんは……!?」


 最初に我に返った遊無がマノンについて問いただすと、マルチェッロはますます俯
き、しばしの沈黙ののち、何とか言葉を絞り出す。


 「……マノンちゃんなら、何とか連れてきたッスよ。まあ、個室で塞ぎこんだまま
なんスけどね……」


 マルチェッロからマノンの状態を聞いた一同は更に絶句する。

 あの底抜けの明るさをした彼女が後見人であるサバスと離れ離れになり、一人孤独を抱え塞ぎこんだのだと――。


 「……これも私のせいで――マノンさん……」


 それを聞いた遊無は悲しみと同時に決意する。

 何としてでも彼女を立ち直らせるのが自分の責任だと――。拳を握りしめ、口を真
一文字に結んでそう誓ったのであった。





 「僕、日吾と遊陽君が送る――」


 『ビナリウス回顧録!』


日吾「定の境地に住まう竜王に対するは、氏神を信仰し祭りを“賑やか”せる氏子達
――」

遊陽「今回の“幻竜対決”は俺が制することとなった。楽しかったぜ日吾!」

日吾「イーサ教会ヒノモト支部の面々に鍛えられた僕を超えるとはね。だが次は負け
ないよ?」

遊陽「ああ。……それにしてもサバスさん――“元神父”になってこれからどうしよ
うとしているんだ……?」

日吾「……なんとなくだけど分かるんだ。責任感の強いあの人ならきっと――そして
次回は、決起した遊無さんが心を閉ざしたマノンさんの元に向かう――」


 『次回! 遊戯王Binarius(ビナリウス) -冷然の雪娘-』


遊陽「――傷心のマノンに寄り添おうとする遊無だが、一方で“記憶を取り戻す”時
は刻々と近付いていた。次回、遊無とマノンのデュエルが始まる」
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