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HOME > 遊戯王SS一覧 > 46Turn 跳躍-精霊世界へ

46Turn 跳躍-精霊世界へ 作:ジェム貯めナイト

 マグナ ヌメンにて、マノンが育った孤児院を訪れた遊陽は、突如来訪したイー
サ教会に属する男――ディオゴとのデュエルを続けていた。

 遊陽はカードを引き確認するとともに、更に手札を増強させ流れを一気に自らへ
と傾かせるべく動き始める。


 Turn3 遊陽手札4


 「まずはデリバティーの表示形式を攻撃表示に。この時デリバティーの効果発動
! 1ターンに1度、表示形式を変更したことでカード1枚をドロー!」


 デッキに手を掛け、追加で1枚のカードを引いた遊陽は、そのカードを手札に加
えるとともに、発動中の永続魔法が和風メイドを模した関捩人形の巻き鍵を回す。


 「そして《関捩廻旋》の効果で、攻撃表示となった“ワッショイ関捩”の攻撃力は500アップ……!」


 デリバティー守備力500→攻撃力0→500。


 「続けて手札の《ワッショイ・諷経風車》と《ワッショイ・ヨリマシ》を墓地へ
送り、魔法カード《祭場巡行》を発動! 墓地に送った“ワッショイ”の属性の数
だけカードをドロー!」

 「その後、遊陽は墓地へ送ったのとは属性が異なる“ワッショイ”を呼び出すこ
とができる――」

 「俺は手札からこのモンスターを特殊召喚! 彩りの造詣深き魔術師の調合によ
り、千紫万紅の華よ咲き誇れ! 《ワッショイ・ハナビダマジシャン》……!」


 手札2枚を交換した遊陽は、既に引き込んでいた化合物を調合し、夜空に大輪の華
を咲かす魔術師を場に呼び寄せた。


 ハナビダマジシャン攻撃力2500。


 「ほう……ヒノモトの風情感じるモンスターか」

 「それだけじゃないぜ! 更に魔法カード《降舞-延年》が魅せる舞いは、宿り
子たるヨリマシに氏神を宿らせ呼び寄せる……!」


 魔法カードが発動されるとともに、舞い上がる光の粒子がやがて氏神たる祭りの
竜を形取り、朧げな祭りの竜は対峙する2人の上空で咆哮を上げた。

 やがて中心には、祭りの竜をその身に取り込んだヨリマシが額から枝分かれした
竜の角を生やし、瞳孔を縦に細くした竜人の姿で場に現れる。


 降舞-延年 通常魔法
 このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
 (1):自分の手札・墓地から「ワッショイ・ヨリマシ」1体を特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターの種族は幻竜族になる。


 ヨリマシ守備力200。種族 魔法使い→幻竜


 ――へえ……おじさんが僕と遊陽の相手ってわけ……?

 「――成程。その精霊こそ、君が心を通わせるパートナーか……」


 ヨリマシから発する気配を感じ、ディオゴは片手で左目を覆い再び離すと、サバ
スやマノンと同じくイーサに由来する“光の精霊の力”でヨリマシを視た。


 「――確かにサバスやイーサ様が目を付けるだけはある」

 「そしてヨリマシがいる限り、最上級“ワッショイ”はリリース1体で召喚でき
る! 俺はヨリマシをリリース――」


 そして遊陽がヨリマシのカードを液晶盤から離し、新たなモンスターを呼び出し
たことで、ヨリマシへと宿った祭りの竜が彼の身体から離れ、実体を持ち現れる。


 「現れろ――掛け声響く祭りの竜! “アドバンス召喚”だ! 《ワッショイフ
ェスタ・ドラゴン》……!」


 ワッショイフェスタ攻撃力2500。


 「来た――」

 「ユーヒの切り札! ワッショイフェスタ……!」


 上空を見上げる遊無とマノンや、2人が両手で繋いでいる子供達が歓声を上げる
様子を見守るディオゴは、自身も化合物の魔術師とともに佇む祭りの竜を見上げつ
つ呟く。


 「呼び出した2体とも、君が切り札とするモンスター達というわけだな」

 「2体が並び立つのも、マルチェッロさんとの特訓の成果あってのもの! まず
は手札の《ワッショイ華景・ロッキー》を墓地へ送り効果発動! ハナビダマジシ
ャンを対象に攻撃力500アップ! 更にディオゴさんへ500ダメージだ……!



 遊陽が最後の手札を墓地へ送るとともに、化合物の魔術師は宙から降ってきた筒
状の打ち上げ花火のモンスターを手で掴み、両手首に火花を生じさせ点火させたこ
とで、飛び出した炸薬がディオゴへと襲い掛かる。


 「……ふっ」 ディオゴLP4000→3500。ハナビダマジシャン攻撃力2500→3000。


 「続けてワッショイフェスタの効果発動だ! 俺の墓地に眠るモンスターが持つ
属性の数だけ攻撃力を500アップし、種族の数だけ相手の上級モンスターの攻撃
力を200ダウンさせる! リバイタライズ・カーニバル……!」


 祭りの竜が周囲に赤、緑、黄――そして白の光の球を浮かばせるとともに、4つ
の球から発せられた光が波及して祭りの竜に力を与え、ディオゴの炉を内包した合
成獣から力を取り込んだ。


 ワッショイフェスタ効果(地 風 炎 光) (機械 炎 魔法使い)
 ワッショイフェスタ攻撃力2500→4500。グリフォン攻撃力2400→1800。


 「それぞれを強化したところで、バトル! まずはハナビダマジシャンでビジー
・ビーを攻撃! コンパウンド・マジック……!」

 「吾輩はこの攻撃時にビジー・ビーをリリースして効果発動。その攻撃は無効と
なり、ビジー・ビーが“秘炉”の効果でリリースされたため最後のビジー・ビーを
デッキから特殊召喚……!」


 拳に火花を纏わせ、接近する化合物の魔術師の攻撃は、鋼鉄の蜂が自ら溶解し溶け落ちたことで空振りに終わる。

 そしてディオゴはデッキを触り、3体目の鋼鉄の蜂を呼び出すことで、再びグリフォンの効果が誘発する。


 「そして新たな“秘炉”が現れた事でグリフォンの効果――スクリーム・インテ
ィミデイト……!」


 ビジー・ビー守備力500。 ワッショイフェスタ攻撃力4500→4200。ハナビダマ
ジシャン攻撃力3000→2700。


 「ならばワッショイフェスタでグリフォンを攻撃! “賑やか”せ! 隆盛のプ
ロスペリティ・バースト……!」


 守備表示で呼び出された鋼鉄の蜂から目標を切り替え、祭りの竜が放ったエネル
ギー波がディオゴの合成獣を飲み込み消し去る。


 ディオゴLP3500→1700。


 「そして俺は《関捩廻旋》の効果でデリバティーを守備表示に戻す。これでター
ン終了だ」


 ワッショイフェスタ攻撃力4200→2200。


 「――中々良い攻撃だったが、吾輩を仕留めきれなかった代償は大きい。吾輩へ
とターンが移る前に、罠カード《秘炉選任(ヴェリーバー・コンクラーヴェ)》を
発動する……!」


 ディオゴが伏せていた罠カードを開示すると、発動された効果が炉を内包する合
成獣を墓地から再任させるとともに、灼熱の炎が渦巻いて化合物の魔術師を包み込
んだ。


 「何っ……!?」

 「この罠は、吾輩の墓地から上級以上の“秘炉”が場に戻ることを承認する。更
にそのモンスターの攻撃力分、対象のハナビダマジシャンの攻撃力は格下げしても
らう」


 秘炉選任(ヴェリーバー・コンクラーヴェ) 通常罠
 このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
 (1):自分の墓地からレベル5以上の「秘炉」モンスターと、相手フィールドのレ
 ベル5以上のモンスターを1体ずつ対象として発動できる。対象とした自分の墓地
 のモンスターを特殊召喚し、そのモンスターの攻撃力分対象の相手モンスターの攻
 撃力をダウンする。


 グリフォン攻撃力2400。 ハナビダマジシャン攻撃力2700→300。


 「あっ……せっかく倒したディオゴ卿のモンスターが……!?」

 「吾輩とて、イーサ様よりこの力を賜った身――余興は終わりだ。客人よ、吾輩
に認められたくば、この雷の炎を耐えてみるがいい……!」


 蘇った合成獣と力を消耗した化合物の魔術師を見比べながら、遊陽は次のターン
をやり過ごす策を練る一方、ディオゴはこのターンで戦局を切り返せると確信した
表情のまま、カードをドローする。


 Turn4 ディオゴ手札3


 「吾輩のターン――再びラムを召喚。そしてグリフォンの効果――スクリーム・
インティミデイト……!」


 ワッショイフェスタ攻撃力2200→1900。 ハナビダマジシャン攻撃力300→0。


 「遂に攻撃力が0に――」

 「吾輩はラムの効果により、手札のラムをリリースして魔法カード《秘炉秘跡
洗礼(ヴェリーバーサクラメントゥム・バプタイズ)》を発動。よってカード2
枚をドロー! ――来たか」


 ドローしたカードに視線を移したディオゴは、それが目的のカードであったこと
でそれまでの落ち着きぶりとは一転し、声を弾ませ喜びを露わにする。


 「フフ――まず吾輩は、グリフォンに対して装備魔法《コンバスチョン・コーク
ス》を装備! 装備モンスターは吾輩の墓地へ積もった“秘炉”1体に付き、燃焼
効率を200アップさせる……!」


 墓地の秘炉(ラム×2 ビジー・ビー×2) グリフォン攻撃力2400→3200。


 「これでグリフォンの攻撃力は3000を超えた……!」

 「そう……サバスと同じく、ディオゴ卿も――」

 「吾輩は手札の“このカード”の効果により、攻撃力3000以上のグリフォン
をリリース! その一振りは轟雷をもたらす。灼熱の炉に宿りて大気を蒸発させよ
……!」


 合成獣が瞬く間に溶解し溶け落ちると、ディオゴがモンスターを召喚したことで
雷鳴が鳴り響き、一基の炉が頭部となり鋼板が胴体を形作って行く。


 『来る――』

 「現れよ! 《秘炉枢機卿(ヴェリーバー カーディナル)キュクロプス》……
!」


 そして頭部に稼働する炉を埋め込んだ巨大な機械人形が、地響きとともに子供達
の遊び場へと着地した。


 秘炉枢機卿(ヴェリーバー カーディナル)キュクロプス
 効果モンスター
 /炎/レベル8/機械/攻撃力3000。
 このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 (1):攻撃力の合計が3000以上になるように、自分フィールドの「秘炉」モ
 ンスターをリリースして発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
 (2):自分フィールドのレベル4以下の「秘炉」モンスターを任意の数だけリリ
 ースして発動できる。ターン終了時までリリースしたモンスターの攻撃力の合計
 分、相手フィールドのモンスターの攻撃力をダウンする。
 この効果でモンスターを3体以上リリースした場合、ターン終了時までダウンし
 た数値分このカードの攻撃力をアップする。


 「わっ! おっきい~!」

 「そうだね……あれがディオゴ様の――」


 子供達とともにベサニーとイーサンが現れた巨大な機械人形を見上げる中、ディ
オゴは機械人形を背に遊陽へと勝敗は決したと告げる。


 「君の残りLPは1000――最早吾輩の攻撃を受けきる余力も無し! 吾輩は
装備された《コンバスチョン・コークス》が墓地へ送られたため、墓地の“秘炉”
1体に付き100LPを回復する」


 墓地の秘炉(ラム×2 ビジー・ビー×2 グリフォン)

 ディオゴLP1700→2200。


 「更に墓地のビジー・ビーをデッキに戻す事で、罠カード《製銑術-4Fe+3
CO2》を発動する。これによりビジー・ビーとレベルが同じ墓地のビジー・ビー
を蘇生。これで3体――」


 ディオゴがモンスターをデッキに戻すことで、巨大な機械人形が頭部の炉からこ
ぼれた溶鉄が凝固し、たちまち鋼鉄の蜂を形作る。


 ビジー・ビー攻撃力1000。


 「吾輩はラムとビジー・ビー2体をリリースすることで、キュクロプスの効果発
動! リリースした下級“秘炉”の攻撃力の合計2000を、君のモンスターの攻
撃力から差し引かせてもらう……!」

 「また攻撃力ダウン……!」

 「三灯火 雷火……! 更に3体以上リリースすれば、このターンダウンさせた
攻撃力1900をキュクロプス自身に加える……!」


 激しい雷とともに、3体の炉を内包する鋼鉄の生物が瞬時に溶解し、機械人形の
頭部の炉に取り込まれると、遊陽のモンスター達は落雷に打たれて力を奪われる。


 ワッショイフェスタ攻撃力1900→0。 キュクロプス攻撃力3000→4900。


 「しかもビジー・ビーがリリースされたってことは――」

 「ビジー・ビーの効果により、デッキに戻した3体目のビジー・ビーを特殊召喚
! 分かっているね? この2体の攻撃を防げなければ君の負け――」


 そしてディオゴはバトル開始を宣言すると、まずは羽音を立て鋼鉄の蜂が化合物
の魔術師へと接近してきた。


 「吾輩はビジー・ビーでハナビダマジシャンを攻撃――」

 「俺のモンスターが戦闘するダメージ計算時に、墓地のロッキーを除外して効果
発動! この戦闘で俺が受けるダメージは0となる!」


 再び現れた筒状の打ち上げ花火が点火とともに炸裂し、迫る鋼鉄の蜂を退けると
ともに、巻き起こった火花が2人のLPへと飛び火する。


 「そしてお互いに、500ダメージを受ける――ぐっ!?」


 遊陽LP1000→500。 ディオゴLP2200→1700。


 「……ハナビダマジシャンは撃破。伏せカードもないのにまだ粘るか。吾輩はキ
ュクロプスで残るワッショイフェスタを攻撃だ……!」

 「まだだ! バトルフェイズに墓地の《ワッショイ・諷経風車》は効果を発動で
きる! 俺の場の“ワッショイ”1体をリリースすることで墓地より蘇らせる! 
俺はワッショイフェスタをリリース……!」


 祭りの竜が粒子となり消滅していくと、経を読む声が響き、1本の風車が回りな
がら場に現れる。


 諷経風車守備力1500。


 「自らワッショイフェスタを手放しますか――」

 「ユーヒは切り札を失ってでも、次に繋げる気だ……!」

 「構わぬ。ならばデリバティーを攻撃――巨神の雷槌(キュクロプス・ケラウノ
ス)……!」


 巨大な機械人形は、手のひらに雷を収束させてたちまち巨大な槌を生み出すと、
両目を閉じて身を竦ませる和風メイド姿の関捩人形へと、雷を纏った槌が振り下ろ
す。


 「くっ――」


 叩きつけた衝撃で雷が迸り、集まった全員が視界を覆う中、機械人形が槌を振る
った後の円状に陥没した地面には、関捩仕掛けの和装メイドが僅かな残骸を残して
跡形もなく消し飛んでいた。


 「見事防ぎ切ったか。吾輩はこれでターン終了。だが戦況は依然、吾輩の有利に
変わりない」


 ターンを終え、上昇していた機械人形の攻撃力が元に戻るとともに、1体の風車
を残してターンを迎えた遊陽は自らのデッキを見つめながら、やがてデッキに手を
掛けた。


 キュクロプス攻撃力4900→3000。


 「――遊陽なら、先の特訓を経た貴方ならきっと超えられる」


 遊無は頭部の炉から炎を噴き出している巨大な機械人形を見上げつつ、続いてカ
ードを引いた遊陽を見ながら呟く。


 Turn5 遊陽手札1


 「器であり伸びしろの少ない私よりも遠くに、遊陽なら辿り着ける。そうでしょ
……?」

 「――ああ。氏子達の繋がりは、俺に新たなカードをもたらしたぜ……!」


 引いたカードを見て、勝利を確信した遊陽は風に吹かれ回る風車のモンスターを
墓地へと送ることで、新たに彼のデッキへと投入したモンスターを呼び出す。


 「俺は諷経風車をリリース! 夜空を彩る魔術師には、一子相伝の技量受け継ぎ
し“弟子”がいる!」


 そして色とりどりの花火玉が炸裂するとともに、煙が晴れると火薬の調合に用い
る鉢と棒を掴み、鉢巻きを締め、さらしの上から法被を羽織った若手職人である化
合物の魔女が姿を現した。


 「“アドバンス召喚”! 次代を担う化合物の魔女――《ワッショイ・ハナビダ
マジガール》……!」


 ワッショイ・ハナビダマジガール
 効果モンスター
 /炎/レベル5/炎/攻撃力2000。
 このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 (1):このカードが手札に存在する場合、自分フィールドの「ワッショイ」炎属
 性モンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターを破壊しこのカー
 ドを手札から特殊召喚する。
 (2):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、自分の墓地の「ワッショイ
 」炎族モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターが「ワッショイ・ハナビダマジシャン」だっ
 た場合、そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで2000アップする。


 「ユーヒの新たなモンスターが来たーっ……!」

 「ハナビダマジガールが現れた事で、効果発動! 墓地から“ワッショイ”炎族
1体を蘇らせる……!」


 調合中の試薬をマニキュアのように爪に付着させ、手首から火花を放つとともに
燃え上がった指先で宙に円を描くことで、縁を彩られた円の中から化合物の魔術師
が再び場に戻って来た。


 「コンバステッド・パウダー……! 蘇れハナビダマジシャン……!」


 ハナビダマジシャン攻撃力2500→4500。


 「攻撃力が――キュクロプスを超えた……?」

 「ハナビダマジガールの効果で蘇生したハナビダマジシャンは、このターン弟子
との合作でドでかい花火をぶちかますぜ! バトルだ!」


 遊陽の指示により、先んじて飛び出した化合物の魔女は、立ちはだかる鋼鉄の蜂
へと手に纏った火花を放つ。


 「ハナビダマジガールの攻撃――コンパウンド・バウンダリ……!」

 「ビジー・ビーをリリースすることで、その攻撃は無効となる」

 「これで障害は消えた! ハナビダマジシャン――コンパウンド・マジック……!



 2体の化合物の調合師は巨大な機械人形へと共同で迫り、腕を振るい追い払おう
とする機械人形を華麗な動きで翻弄する。

 そして2体は右の拳に炎を纏わせ、同時に機械人形を殴打することによって鋼板
を凹ませ、貫くとともに機械人形の炉が暴走を始める。

 「ぐぅぅ――」 ディオゴLP1700→200。


 「そしてハナビダマジシャンが戦闘で勝ったため、破壊したキュクロプスのレベ
ル×300ダメージを受けてもらうぜ……!」


 土手っ腹に風穴を開けた機械人形が自壊していく中、やがて暴走した炉は大爆発
を起こし、爆風がディオゴを飲み込んだ。


 ディオゴLP200→0。


 「ユーヒが勝った……!」


 決着とともにマノン達が歓声を上げると、遊無もホッと胸を撫で下ろす中、遊陽
は爆風で押し倒されたディオゴを眺めながら呆然と立ち尽くす。


 「勝った――俺がディオゴさんに……?」


 未だ勝利の実感が沸かぬまま、再び立ち上がったディオゴが遊陽の元へと歩み寄るとともに、彼が差し出した右手を遊陽はジッと見つめた。


 「“合格”だ。さあ、イーサ様がお待ちしている」

 「……? あの……サバスさんは夜まで時間がかかると――」


 まだ陽が沈みかけのままにも関わらず、イーサの元へと案内しようとするディオ
ゴに遊無は疑問を浮かべて返事するが、ディオゴは首を横に振って自らの目的を明
かした。


 「いいや、イーサ様はこの先数日は君達のため、丸一日時間を割いている」

 「えーっ? サバスから何も聞いてないけど……?」

 「……当初イーサ様は、君達を精霊世界へと連れていこうとは考えていなかった
。しかしサバスの説得により、君達があの世界でも対応できる実力を兼ね備えてい
るならば、精霊世界への同行を了承すると取り決めた」


 そのためにイーサに近い自らが、マグナ ヌメンへと訪れた遊陽達を見定めると
3人が美術館に向かったその時から目を付けていたことを白状する。


 「つまり――ディオゴさんは遊陽の実力を見極める審査員……」

 「君達に関しては、精霊世界で十分に対応できると判断した。残る彼も吾輩直々に実力を測ったが、君達に見劣りすることなく十分にやれるだろう」


 そしてディオゴは遊陽達に背を向け、教会本部へ向かうよう3人へと促す。


 「本当にいけるのか……精霊世界に――」

 「付いてくるがいい。既に跳躍する準備は整えている」


 そして3人は、決着とともに子供達を孤児院へと戻し始めたベサニーとイーサン
に別れを告げると、歩き出したディオゴの背を追いかけていく。


 「――今戻った。イーサ様は……?」


 ディオゴとともに教会本部へと訪れた3人は、彼が秘書と思われるスーツ姿の男
に声掛けるとともに、秘書の案内によってイーサが待つ執務室へと訪れる。


 「イーサ様、そしてベテルギウス様――ただいま戻りました」


 ディオゴが扉を開け、3人を連れ中に入ると、そこにはサバスと並んだ白い司祭
平服に身を包んだ壮年の男。そして丸裸の頭頂部に、白い口髭と顎髭を蓄えた老人
が彼らの到着を歓迎した。


 「ディオゴ卿といるってことは――勝ったのか……!?」

 「そうだ。イーサ様、彼らは例え精霊世界で何があろうとも、この世界に戻って
これる。私自らそう判断いたしました」


 ディオゴはイーサへと一礼するとともに、遊陽達に精霊世界へと旅立つ資格があ
ることを告げたのち、先程の秘書が扉を開けるとともに執務室から去ろうとする。


 「ディオゴさん……!」

 「吾輩は公務に戻る。君達の旅立ちに祝福があらんことを――」


 そしてディオゴが退室するとともに扉が閉まると、再びイーサへと振り返った3
人の元に、サバスが部屋の隅に用意していた4人分のリュックを持ってきた。


 「それは……?」

 「今からイーサ様が説明する」


 サバスに促され、再び3人が視線をイーサへと戻すと、サバスとイーサ教会の教
皇であるベテルギウスも注目する中、イーサは一同へと話し始めた。


 「ウォッホン! 儂がこのベテルギウスを教皇に添え、この教会の主として君臨
する精霊の血を引く唯一の人間――イーサである!」


 威厳を示すかのように尊大な態度で自己紹介を終えたイーサは、やがて態度をや
わらげ気さくな口調で遊陽達へと話を続けた。


 「――というわけで、儂がイーサじゃ。君達がサバスから聞いたユーヒにユーム
かの?」

 『はい――』

 「儂が宿し、一部の信徒へと分け与えた“光の精霊の力”――その力に匹敵する
“所縁(ゆかり)の精霊の力”を宿す者こそ、君達で合っているね……?」


 イーサが問いかけるとともに、遊陽の側に現れたヨリマシも2人とともに、イー
サからの問いに答えた。


 「はい――所縁の精霊の力は“本来の私”が発現し、このヨリマシと遊陽に分け
与えた力です」

 ――僕は精霊として生まれ変わる前、本来の遊無ちゃんの友人だったようです。
この精霊の力は天寿を全うした前世の僕を、子孫である遊陽や起源たる遊無ちゃん
の元に引き寄せるほどの力を持つ――。

 「そのようじゃの。そして君達が精霊世界へ向かうには、その力の助けが不可欠
となる――」


 イーサが目配せすると、側で控えるベテルギウスが取り出したリモコンを操作す
ることでプロジェクターが起動し、壁一面に今回の旅の計画が記された映像が映写
された。


 「まず精霊世界とは、この世界とは別の次元に存在するデュエルモンスターズの
精霊が住む世界である」

 ――そう、僕達が普段暮らす世界だ――。

 「そして精霊世界は、この世界とは異なる素粒子で構成されておるようじゃ。そ
のため精霊の血が流れない者は、その世界とは往復できない――」

 「……でも光の精霊の力で、マリアさんは精霊世界に辿り着けたのでは……?」

 「――確かに我が母マリアは精霊世界へと辿り付き、そこで精霊遊明との間に儂
を儲けた。しかし彼女は辿り着きこそすれど、この世界への帰還は叶わなかったと
、あの世界での友人から聞いたのじゃ」


 唯一精霊世界に辿り着いたマリアですら、一方通行の旅でしかなかった。

 表情を引きつらせ戸惑いを見せる遊陽達に、イーサは続けて彼女が帰還出来なかっ
た原因を話し出す。


 「これは儂の推論でしかないが、理由としてまず1つは時間――あの世界に長く
留まると、身体があの世界に馴染んで精霊の力での帰還が叶わなくなる」

 「…………」

 「そして2つ。あの世界で水や食べ物を口にすると、身体の中にあの世界の食物
を取り入れた事で身体が馴染み、帰れなくなる。その問題はここに用意した数日分
の水と食料で、多少は延命できる」

 「それが切れたら、帰ってこれなくなるか――」

 「そして3つ目は、光の精霊の力は人々を正しき道へ導く力――故に儂やマリア
はこの精霊の力を応用し、次元を超えることができた」

 「イーサ様の考えだが、オレ達が宿す光の精霊の力は導きこそすれど、振り返る
ことはできない。つまり一方通行でしか次元を超えられない力という説だ」


 光の精霊の力は人々に正しき道を示す。未来を切り開く力だとすれば、過去に戻
る――即ち移動前の世界に戻る力は無いとイーサは解説する。


 「――それで俺達に宿る力が必要だというわけか」

 「儂の考えでは、君達に宿る所縁の精霊の力は人と人を惹きつけあう力――君達
が築き上げた縁が、2つの世界の架け橋になるとの持論じゃ」

 「……えーっと、それじゃアタシやサバスは帰ってこれなくなる……?」


 マノンが疑問を発すると、遊無はゆっくりと目を閉じるとともに、再び開いた彼
女の目は鮮やかな血色へと変わり、本来の人格を表在化させる。


 「案ずるな。吾の力は深く関わった者とも縁を繋ぎ、力の一部を分け与えられる


 「もう一人の遊無――」

 「おお、君が所縁の精霊の力の発現者かね? それは真か……?」


 もう一人の遊無の出現に、イーサは心を躍らせ彼女へと歩み寄ると、もう一人の
遊無は頷いてイーサに応える。


 「吾が力は絆を強く結んだ者にも作用する。遊陽や遊無と信頼関係にある其処許
達なら、問題なく帰還できると保障しよう」

 「じゃあサバスやアタシも行けるんだね……!」

 「――だがその前に、其処許達よ。吾と遊陽の手を握りしめよ」


 もう一人の遊無に言われるがまま、サバスとマノンは遊陽と遊無の2人とそれぞ
れ両手を繋ぐとともに、もう一人の遊無が目を閉じて念じ終わるのを静かに待つ。


 「……これで確実に、所縁の精霊の力の一部は其処許達にも受け継がれた」

 「オー モン デュー(驚いた)! まさかこれでアタシも精霊に転生を……!?


 「否……この短時間では精々一週間程度だろう。遊壱には長期にわたり、本気の
力を注ぎこんだからな」

 「これで懸念はある程度和らいだようじゃの。では19時となったら精霊世界へ
と向かうとしよう」


 旅立ちまで残り30分の猶予を得た遊陽達は、旅立ち前にと配膳されていた軽食
に手を付け、完全に準備を整えたところで時刻は19時となる。


 「――ではイーサ様。無事の帰還をお祈りします」


 ベテルギウスがイーサへと一礼し執務室を離れるとともに、サバスにマノン、遊
陽ともう一人の遊無は水と食料が入ったリュックを背負い、腕にD・フェースを着
けデッキをしまうと、部屋の中心でイーサを含めた全員で手を取り合った。


 「ではこれより、精霊世界への跳躍を始める。先に今回の旅の目的を振り返ろう
かの?」

 「……今回オレ達は、秘号(エンクレーブ)を名乗る怪物がこの世界に脅威をも
たらしたことを、精霊世界を収める精霊長に報告するともに対策を立て、それぞれ
の世界を守る意思を固める」

 「そうじゃ。じゃが今の精霊世界は、過去の出来事から儂を除く人間を脅威とみ
なしておる。そこでまずは精霊世界の最下層――“マースの森”へと飛び、儂が単
身で精霊長――アラウンへと事情を伝える」


 順を追ってこの旅の目的を再確認したところで、イーサはこの旅を成功させる鍵
であるもう一人の遊無へと、力の行使を促した。


 「もう一人のユームさん。準備はできたかの?」

 「問題ない。吾と老人が同時に3つ数え、いいと言うまで其処許達は手を繋ぎ、
目を開けてはならない」


 最終確認を終え、全員が目を閉じると、遊陽は自らの中に流れ込む二人の力を感
じ取り、握る手に力を込めて必ず帰還するとの意思を固めた。


 『では始める。1、2……3――』


 2人が同時に3つ数え、自らの力を発現させたことで遊陽達は眩い光に包まれた


 そして光が止むと、執務室から全員の姿は消失し、彼らはかつて精霊世界へと向
かったマリアと同様に、精霊世界を目指し次元を超えるのであった。





 「俺と遊無――」

 「そしてアタシ、マノンが送る――」


 『ビナリウス回顧録!』


遊無「遊陽は新たな仲間を呼び出してディオゴさんに勝利をおさめ、その実力を彼
やイーサお爺さまに認めさせることができました」

マノン「ディオゴ卿の切り札を倒すなんてね~。ユーヒもアタシ達のレベルに近付
いて来たんじゃない?」

遊陽「見てろよー。いずれ遊無やマノンを超えてやるさ! 今回俺が使った化合物
の魔術師の弟子――ハナビダマジガールは、場の“ワッショイ華景”を起爆させつ
つ特殊召喚できる他、墓地から“ワッショイ”炎族を蘇らせる能力を持つぜ」

遊無「宿す効果はコンバステッド・パウダー。そして攻撃名は2種類の試薬を混ぜ
合わせ、爆発を巻き起こすコンパウンド・バウンダリです」

マノン「それじゃ、ア ラ プロシェヌ フォワ~!(次回は) アタシ達が精霊世
界へと移動した頃、カズトとルイネはデュエルで強くなるため奔走し、同じ頃精霊
世界では、移動するアタシたちの動きを察知していた――」


 『次回! 遊戯王Binarius(ビナリウス) -幕間 強化訓練と異界の住人-』


遊陽「カズと塰里はきっと強くなれる。俺達とともに戦えるほどに! 次回、新た
な登場人物が俺達を待ち受ける」
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