27枚目 暗黒の狂犬　作：紅瑠璃

～オードレアン～

誰もいない…何もない。あるのは瓦礫と静寂。この場所だけ時間が止まっているかのよう。３人はこのオードレアンに足をつき辺りを見回す。

「酷いわね…。」

第一声はアスナ・キルディムのその一言。アスナは歩き出すので蜜柑、真保も歩き出す。

「ふーっふーっ…。」
「蜜柑さん。血の臭い…するの？」
「うん…。にしてもここがグルメの町だったにゃんてねぇ」

私たちはさらに歩き、中心街をめざした。真保のデュエルディスクにもなるディスクマグナムには生命サーチ機能があるが…反応がない。ディスクマグナムと言うネーミングはどうだか？本人の意思に任せている。銃の形をしているし、弾丸を撃てるし、多機能だし…便利だな。

「ん！？アスナさん。蜜柑さん。ここに１つ熱反応ありますよ…しかも動いてる…生命反応ですよ！」
「とりあえずその人に会いましょ。」

こんなとこに観光に来るわけない。工事なら一人なわけない。よほど変わり者の生存者か…。しかし、そこに付くとそんな予想は大きく外れていたことに気づく。

「フシャッ！お前はクユリル！」
「ぁ…やっほ。」

クユリル…アスナはどこかでそんな名前を聞いたこと…いや、見たことがある。思い出した！宿屋の名簿に書いてあった名前だ。

「今度はにゃんだ！」
「…里帰りみたいなものよ。」
「この人が…蜜柑さんと戦った闇の一員。」

クユリルは面倒なのに巻き込まれたかのような目で私たちを見ると後ろを向き、歩き出す。

「今、倒せば…。」

隙をつこうと蜜柑が動くが地震が起きる。いや、地震と言うよりも何か近づく音だ。

「アスナさん。蜜柑さん。急激な熱反応…多いっ！」

レーダーを見ると何か近づいてくる。数十と反応があるがそのうち一番早く私たちに近づいてきたものは…

「はぁ…はぁ…来るなっ！」

クユリルだった。銃で弾丸を放ちながらやって来る。と言うよりは逃げてきた…後ろに数十匹何か連れてきている。

「妖精物語－ウルフ召喚！妖精鍵物－空飛ぶ魔法の絨毯発動！真保っ乗って！」

私はサイコデュエリストの能力を使い真保と共に妖精物語－ウルフに乗る。蜜柑は妖精鍵物－空飛ぶ魔法の絨毯にのせ、謎の大群から逃げる。

「待ちな…さいっ！」

必死に走り、クユリルは絨毯に乗ってきた。

「あんたら…酷いな…。はぁ…はぁ…。あぁん…クラヌゥ…。」
「…。あの建物に入るわよ！」

目に見えたのは破壊された時計塔らしき場所だ。その中に入り、先程の大群を巻いた。クユリルの話によるとあの大群は犬だと言う。しかもどこか見たことある犬だと言う。

「そう…私たちはもうここを出るから良いけど…あなた。クラヌについて知ってること言いなさい。」

アスナはレイピアを抜き出し、クユリルを脅す。なぜ、そんなことを聞くのかわからない真保、蜜柑、クユリル。言い返えそうにもアスナ・キルディムの威圧で言い返せなかったのかクラヌについて喋った

「新入りでね…良い男よ。」
「…よく読む本は…。素顔は！本名は！あなたたちの仲間になった理由は！あなたの、のろけ話を聴くためじゃない。」
「知らないわよっ！いつも自分のことは話さない。聞いても無視。」
「っち！」

クユリルは壁に闇をたたせ、落ちるかのようにその場を離れた。

「待ちなさい！…クソッ！」
「ア、アスナさん…そのクラヌって」
「…何でもない。さ、あの犬が来る前にここを出ましょ。」

私たちはこのオードレアンを抜けようとしたがそうはいかなかった。何せ犬だ。私たちの臭いを嗅ぎ付け襲ってきた。

「なにこいつら！狂犬がぁ！妖精鍵物－七人のドワーフ発動！」
「きゃっ！」
「真保！大丈夫？この手の犬はどんにゃ病気持ってるかわからにゃいよ。」

回り込まれてしまった。逃げ道を防がれた。この犬たちは異彩な気配がする上、狂犬だ。どんな病気を持ってるかわからないので攻撃を受けるわけにいかないが…これは難しそうだ。私たちは背中を合わせどうするか考えた。