16枚目 サベージ・コロシアム　作：紅瑠璃

「力…？」
「あぁそうよ。お前が望めば力を与えることは出来る」

力…それは人に与えることが出来るのか。仮に受けとることが出来たとして、それは紛い物の…偽物の力だろう。俺は当然ながら断った。

「まぁ、コロシアムが終わるまでに言えば貸してやる。考えとけ。」

奴は…ラギルはそう俺の肩を叩くと部屋を出た。力を求める理由を俺は思い出した。

～決勝戦開始～

決勝の時間となった。コロシアムの戦場に蜜柑、ラギル、ホッグス…。少々遅れてサーチェスが入ってきた。この四人で勝者を決めるのだ。他の皆よりも蜜柑は軽装ですぐに負けそうだが決勝までのぼったのと見た目が可愛いと言うのもあって既に人気がある。

「蜜柑…だったな。お前面白いな」
「そうかにゃ…。」

私は相手に「面白い」と言われたがあまり嬉しくない。ゴツい男に言われたからだ。いや、面白いという感想は素直に受け止めておくべきだったか。しかし何が面白いのかがわからない限り受け止めることができない。かといって「どこが？」とは言えない。話終えると既に試合開始してるから当たり前だがホッグスが私に攻撃してきた。不意打ちと言うわけではないが私は避けることが出来なかった。理由…１つだ。「相手の動きが人間の動きではない。」ただそれだけだ。

「ふごっ！」
「コレが…力だぁっ！」
「なんだ…あの力。」

俺が見ても人間が出来るような動きではない。それどころか蜜柑を端から端まで投げ飛ばした。先程見た動きではない。

「サーチェス。あれが力だ…今ならアイツよりも強い力を与えてやるが…どうする？」
「あれはお前がやったのか。」

紛い物の力…しかしその力があればこの試合に勝てるのか…。メルススを…。

「ふーっふーっ…。」

相手がまた人ではない素早さで駆け寄ってくる。よく見ても避けれそうにない…並ば避けないっ！

「うぐぅぅっ！」

そりゃもちろん食らうわけだから痛い。だが、お陰で相手の動きを封じた。そして私は相手に一殴りする。相手を吹き飛ばすことに成功した。

「あぁ…ありゃお終いだな。んで、最後に聞いてやる。力が欲しいか？欲しくないか？」
「俺は…そんなものに頼らず…メルススを救う！」
「メルススってのが誰だが知らねぇが…残念だ。」

奴は力が入った拳で俺に攻撃をする。メルスス…俺の妹。大きな病でシリングが必要だった。宝玉には何にも興味がない。興味があるのは同時に手にはいるシリングのみ。

「ふーっがっ！」

高速で人が投げられてくる。投げた本人は蜜柑。投げられてるのはホッグスだ。ラギルはそのホッグスに当たり吹き飛ぶ。

「ふしーっふしーっ…グルゥゥゥ」

～観客席～

「ま、真保…この試合…変よ。」
「うん…。見て、蜜柑さん。野性の肉食動物みたいになってる。」
「野性…ちゃんと蜜柑のことを知らないからどうなってるのかわからないけど…。」

私と真保がこの試合の事を話していたが近くで大きな地響きが起きた。それはコロシアム内の皆にも伝わった。しかもそれが一回のみならず4回ほど地響きが起きた。

「何…何が起きたの…。」

5回目の地響きが起きた。地響きと言うよりは爆発だ。皆が聞きたいのは何処で起きたかだろう…。このコロシアムには東出入り口と西出入り口があるがその東側で爆発が起きた。