91 天音ＶＳ平留！浮上せし氷山の一角獣　作：ギガプラント

天音「先攻は私です！私のターン！」


天音（アインヘリアル……彼女が本当にその一員なら、一筋縄ではいかない筈…！）


天音（ここは慎重に行きましょう。）


天音「私は永続魔法『祝福のエンジェルラダー』を発動！」


雲の切れ間からスポットライトのように光が差し込む。


天音「そして手札から『テルテル・エンゼル』を通常召喚！」星２・ＡＴＫ５００


天音「更にこの瞬間、祝福のエンジェルラダーの効果が発動します。」


天音「このカードがフィールドに存在する場合にモンスターが召喚・特殊召喚された時、１度だけそのモンスターのレベル分、このカードにラダーカウンターを置きます。」カウンター０→２

光の降りた箇所から、二段分の光の階段が現れる。


天音（一先ずこれで様子を見ましょう。）


天音「私はこれでターンエンドです。」


平留「伏せカードも無しか、やはり低能な女のやる事などそんなものか。」


天音「…先程から女女って、何故そんなに女性が嫌いなのですか？」


平留「そんなもの、女が醜くてふてぶてしい生き物に決まっているからだろう！！」



平留「私のターン！！ドロー！」


平留「遊んでいる時間は無い。とっとと永久凍土の下に沈めてくれる！」


平留「私は永続魔法『アイスバーグ・サモンゲート』を発動！」


平留「このカードが存在する場合、自分の水族モンスターがカードの効果で破壊された時、デッキからそのモンスターより１つ高いレベルの水族モンスター１体を攻撃力守備力を０にして特殊召喚できる！」


平留「そして！私は『グレイシャーマン』を召喚する！」星４・ＡＴＫ１０００


平留「更に！グレイシャーマンのモンスター効果を発動！手札よりレベル４以下の水属性モンスター１体を特殊召喚する！」


平留「私は手札より、２体目の『グレイシャーマン』を特殊召喚。」星４・ＤＥＦ１０００


平留「その後、効果を使用したグレイシャーマンは破壊される。」


天音「効果による破壊……ということは…！」


平留「この瞬間！永続魔法アイスバーグ・サモンゲートの効果発動！デッキからレベル５の水族モンスターを攻守０で特殊召喚できる！」


平留「現れよ！『氷餓鬼（アイスバーグ・オーガ）』！」星５・ＡＴＫ１３００→０


平留「そして２体目のグレイシャーマンの効果も発動！手札から３体目のグレイシャーマンを特殊召喚！」星４・ＤＥＦ１０００


平留「その後グレイシャーマンは破壊される！」


平留「アイスバーグ・サモンゲートの効果発動！２体目の『氷餓鬼』を特殊召喚！」星５・ＡＴＫ１３００→０


天音「また…！これでレベル５モンスターが２体に…！」


平留「まだだ！私は魔法カード『トランスターン』を発動！」


平留「自分フィールドに表側で存在するモンスター１体を墓地へ送り、そのモンスターと同じ種族・属性でレベルが１つ高いモンスター１体をデッキから特殊召喚する！」


平留「私は水族・水属性のグレイシャーマンを墓地へ送り、デッキから３体目の『氷餓鬼』を特殊召喚！」星５・ＡＴＫ１３００


天音「３体目！？」


平留「私は！レベル５の氷餓鬼３体でオーバーレイ！！」




暗く冷たき氷河に響くは、深く静かな胎動、浮上せよ！



エクシーズ召喚！



現れよ！『氷山の一角獣』！ランク５・ＡＴＫ０



罅割れたクレヴァスより氷でできた巨大なトドのような生物が顔を出す。その額には体躯に比べやたらと長い角がそそり立っている。



天音「これが平留さんのエクシーズモンスター…！？」


平留「氷山の一角獣の攻撃力は、自身のオーバーレイユニットの数×１０００ポイントアップする！」ＡＴＫ０→３０００


平留「沈んでもらうぞ！私は氷山の一角獣でテルテル・エンゼルを攻撃！！」


天音「テルテル・エンゼルのモンスター効果発動！」


天音「このカードをリリースし、『テルテルトークン』２体を特殊召喚できる！」


天音「テルテルトークン２体を守備表示で特殊召喚！」星１・ＤＥＦ０


平留「忌々しい！蹴散らせ！！」


一角獣の角に、トークンの１体が軽く薙ぎ払われる。


平留「フン！逃げ回って時間を稼ぐか！憎たらしい！」


平留「エンドフェイズ！氷山の一角獣の効果発動！」


平留「オーバーレイユニットを１つ使う事で、デッキの上から２枚をこのカードのオーバーレイユニットとする！」


天音（上から２枚をオーバーレイユニットにするという事は…結果的に１枚増える事になる。つまり…。）


平留「オーバーレイユニットの数が増えたことにより、攻撃力は更に１０００ポイントアップ！」ＡＴＫ３０００→４０００


一角獣の身体がクレヴァスより浮上する。


天音「攻撃力…４０００。」


平留「怖気づいたか！だったら早くサレンダーしろ！！」


平留「カードを１枚セット！ターンエンドだ！」



天音「私のターン！ドロー！」


天音（攻撃力４０００…それに早くしないと更に強化されてしまう。）


天音（なら、このカードで…！）


平留「女風情が忌々しい……スタンバイフェイズ、私は速攻魔法『ヴァイオレント・ブリザード』を発動！」


平留「お互いのプレイヤーはそのプレイヤー自身の次のエンドフェイズまで魔法カードを発動できない！」


天音（魔法封じ……このターンは大きく動けませんね。）


平留「足掻かなくていい、どうせ女の力では何もできはしない。」


天音「…どうでしょうかね。」



天音「私は、テルテルトークンをリリース！」


天音「そして『スプリット・スノーマン』をアドバンス召喚！」星６・ＡＴＫ１８００
ぴょんぴょんと上下運動を繰り返す２段重ねの雪だるま。跳ね上がるたびに頭部分と胴体部分が外れては戻る。


平留「たかだか攻撃力１８００で何ができる！」


天音「スプリット・スノーマンの効果発動！このカードをリリースする事で、デッキから『ハーフ・スノーマン』２体を特殊召喚する！」


天音「現れよ！『ハーフ・スノーマン』！」星３・ＤＥＦ８００



天音「そして永続魔法『祝福のエンジェルラダー』の更なる効果発動！」


天音「このカードに乗っているラダーカウンターの数より、１つ高いレベルのモンスターを召喚・特殊召喚した時、このカードにラダーカウンターを１つ乗せ、デッキからカードを１枚ドローする！」

三段目の光の階段が現れる。


天音「魔法カードの発動はできなくても魔法カードの効果は使えます！よって、１枚ドロー！」


平留「ちっ……女の癖に！！」


天音「私はレベル３のハーフ・スノーマン２体でオーバーレイ！！」





無垢なる可憐な乙女よ、そぼ降る雨と共に謡え！



エクシーズ召喚！



現れよ！『プラム・レイニー』！ランク３・ＡＴＫ１６００




大きな傘を持った精霊の女の子。やや大人びた印象を受ける


天音「プラム・レイニーの効果発動！」


天音「オーバーレイユニットを１つ使う事で、自分フィールド上のモンスター１体の攻撃力を８００アップさせる！」


天音「この効果で、プラム・レイニーの攻撃力をアップさせます！レイン・トラスト！」ＡＴＫ１６００→２４００


平留「だが一角獣の攻撃力は４０００、焼け石に水だな女！」


天音「…私はカードを１枚伏せてターン終了です。」



平留「私のターン！ドロー！」


平留「弱小モンスターでは私の一角獣は超えられない！バトルフェイズ！」


平留「氷山の一角獣でプラム・レイニーを攻撃！」

一角獣が再び角を振りかざす。



天音「今です！速攻魔法発動！『逆転層』！」


天音「攻撃力が元々の数値より高い相手モンスター１体の攻撃力を元々の数値に戻し、更にターン終了時までその数値分、自分のモンスターの攻撃力をアップさせる！」


天音（氷山の一角獣の元々の攻撃力は０。そこを突けば…！）


平留「そんな浅はかな作戦で私を倒せると思うな！氷山の一角獣の更なる効果発動！」


天音「っ！？」


平留「相手がカードの効果を発動した時、オーバーレイユニットを１つ使う事で、このターンこのカードはそのカードの効果を受けない！」


平留「女の下手な小細工など通用しない！蹴散らせ！」ＡＴＫ４０００→３０００


素材を消費した一角獣は少しだけクレヴァスの中に沈んでいく。


天音「くうっ…！」ＬＰ４０００→３４００



天音「プラム・レイニーの効果発動…！」


天音「オーバーレイユニットを持ったこのカードが墓地へ送られた時、エクストラデッキから『アプリコット・レイニー』を特殊召喚できる。」


天音「私は『アプリコット・レイニー』を守備表示で特殊召喚！」ランク３・ＤＥＦ１２００


平留「エクシーズ召喚せずにエクシーズモンスターを召喚しただと…！」


平留「だがオーバーレイユニットを持たないエクシーズモンスターでは何もできまい！」


平留「エンドフェイズ！一角獣の効果発動！オーバーレイユニットを１つ使い、デッキの上から２枚を新たにオーバーレイユニットとする！」ＡＴＫ３０００→４０００


天音「また攻撃力が…！」


平留「貴様のような女が私を倒そうなどと…あぁ忌々しい！」


平留「無意味に足掻くな女！どうせ消えるんだ…とっとと諦めろ！」


天音「お断りします！親から貰った大切な命です、そう簡単に諦めたりしません！」


平留「親だと……！！」



平留「何が親か…！！」













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（香織の家）


ベッドで横になろうとした１０歳の平留香織の部屋に、怒りを抑えきれない様子の母親がノックもせずに入り込んでくる。


母「香織！！」


香織「お母さん…？」


母「貴女お父さんの大事な本を！！ホントにもうどうしてくれるの！！」
水にでも浸されたのか皺くちゃで殆どボロボロになった本を眼前に差し出す。


香織「え…？」


香織「私じゃない！私何も知らないよ！」


母「またそんな嘘ついて！お父さんの部屋には二度と入るなと言ったでしょう！！」


香織「入ってないよ！本にも触ってない！」


母「言い訳にもなってない！貴女以外誰がこんな事するの！！あぁもうお父さんになんて言えばいいの…今日は久しぶりに帰ってくる日なのに…。」


私が「お父さんの部屋には二度と入るな」と言われている理由は、前にも似たような事があったからである。確か前は大事な腕時計が壊れていた……だったか。


私と母がそんな問答を繰り返している内に、玄関の扉が開いた。


父「ただいま……ってどうしたんだいお母さん？」


母「お父さん…香織が大切な本を。ごめんなさい私もしっかり見張っていれば良かったんだわ…。」


香織「私じゃない！私はホントにやってないんだってば！！」


父「香織……。」


香織「お父さん！ホントだよ！？私時計にも本も何もしてないの！！」


父「香織……本当にやってないんだな？」


香織「本当！絶対にやってない！」


母「もういい！！子供は早く寝なさい！！！」


勢いよく部屋のドアを閉める。


香織「ぐす…どうして信じてくれないの？お母さん。」


母は昔からあのような…物語に出てくる継母のような人ではなかった。
私がもっと小さい頃は普通に優しいお母さんだったし、怒る事さえ稀だったくらいだ。

因みに当然私は本や時計に何もしていないし、父親の部屋にも入っていない。
そもそも父は仕事でよく出張に行くことが多く、部屋にいる事自体極度に少ない。
そんな父の仕事場に、子供の目を引くようなものも無く、壊れた時計が見つかる前にも殆ど入った事は無い。

私は意味もなくこんなことをする子じゃない。そう信じていたのか父は現状どうも半信半疑といったところだが、何度も続けばきっと私の事も信じてくれなくなるのだろう。






香織「誰があんな事したの…？どうしてお母さんは信じてくれないの…？」





眠れない日々がまた始まりそうだった。






香織「…トイレ」





母親に見つかりはしないかと恐怖心が襲ってきたが、己の生理現象には抗えずゆっくりとドアを開けた。
幸い母はリビングの方に居る様だ。父との会話が微かに聞こえてくる。


トイレを済ませた私は、リビングがら聞こえてくる声に妙な違和感を覚えた。
息を殺してほんの少しだけリビングを覗くと、父に寄り添う母の姿が見えた。

私には見せたことのない……不思議で、ちょっと大人な感じの、幸せそうな顏だったのを覚えている。










今になって思えば、あれが所謂「雌の顔」というやつなのだろう。















―――父の物を壊し、それを私のせいにしていたのは他でもない母その人だった。
近年家を空けている事が多くなり、たまにしか父と逢えなくなっていた寂しさと、たまに帰った時にも自分より娘の私にばかり構っているように見えた事が動機。
その事に気づいたのは二人が離婚する直前くらいだったが、何故その事を知ったのかは今もよく覚えていない。
まさかそんな理由で娘を「悪い子」に仕立て上げるなんて、当時の私には想像もできなかった。

いや、今だって分からない。分かりたくもない。


離婚話が出た時のこれ以上無くヒステリックに泣き叫んでいた母は、母親とも大人とも……人間とも思いたくなかった。




終









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（次回予告）


天音「浮上して強くなる氷山……一体どう攻略すれば…。」


夏武斗「そんなの簡単だ！全部かき氷にして食っちまえばいいんだ！」


天音「氷山クラスの大きさのかき氷ですか…お腹を壊すどころの話ではすまなさそうですね…。」


夏武斗「あ、そうそう知ってるか？かき氷食って頭がキーン！ってなった時は、器をおでこに充てて冷やせばいいんだぜ。」


天音「そ、そうなんですか。初めて知りました。」


天音「次回！『平留香織の凍てつく日々』」


夏武斗「あぁ～かき氷食いたくなってきた。」


天音「こっちが大変な時に…もぉ。」
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・相変わらずの詰め込みとか言わない