54 グレイシア再び　作：ギガプラント

茶ノ畑「き…」


茶ノ畑「決まったあああ！！！なんと珍しい事が！！両者同時にライフ０！引き分けです！！」



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初「引き分け…。」


竜太「マジかよ…。」


楯山「…こんなことになるなんてな。」

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ロバート「あれま……いけたかと思ったんだがな。」


仁「…最後の隠し玉を持っていたか。」


天音「上原さんもただでは負けないという事ですね。本当に凄いデュエルでした。」

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大駕「全く……ひやひやさせよって。」


奏「………」


大駕「どうじゃ？奴は惜しくも勝てなかったようじゃが。」


奏「………」


奏「…負けなかったから。今回は許してあげるわよ。」


大駕「………フッ。」


奏「…何よ？」



大駕「がっはっは！なんでもないわい！」



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カード効果によって跳ね飛ばされ、地面に跳ね飛ばされている夏武斗と光輝。

夏武斗「………」


光輝「………」


夏武斗「……」


光輝「……」





二人「はっはっはっはっは！！！」


夏武斗「うひゃー！！あーすっげぇ楽しかったぜ！！」


光輝「僕の方こそ、こんなに楽しめたのは久しぶりだよ。」


夏武斗「最後の最後であんな罠仕掛けてたとはなぁ。まさか引き分けになるなんて思わなかったぜ。」


光輝「できればしっかりと勝ってデュエルを終わらせたかったけど、すっかり君に出し抜かれてそれが叶わなくなりそうだったからね。」


夏武斗「あーやっぱ攻撃しといて良かったぜ。」


光輝「というと…攻撃しない手段もあったということかい？」


夏武斗「ああ。まぁ一応な。」


手札に残った１枚のカードを見せる。


光輝「魔法カード『アドバンス・ドロー』か。」


夏武斗「こいつは自分フィールド上に表側表示で存在するレベル８以上のモンスター１体をリリースして、デッキからカードを２枚ドローするカード。」


光輝「ヴィクトリー・ビートルをリリースして新たな２枚のカードに替える事もできたという事か。」


光輝「ただし逆転のカードを引けるかどうかは運次第か…でもあそこで攻撃に踏み込んだ勇気は本当に素晴らしいと思う。」


夏武斗「勇気って、そんな大したもんじゃねーって。」


夏武斗「ただなんとなくヴィクトリー・ビートルが戦いたがってるような気がしてさ。」


夏武斗「少しでも可能性があんならそっちに賭けてみたくなったんだよ。」


光輝「モンスターが戦いたがっている…か。」


光輝「僕のゴールド・ヴィクトリーもちゃんと戦闘で白黒つけたかったかも知れないね。」


夏武斗「まぁいいじゃん！引き分けって事はもう一回できんだろ？今度こそ俺が……」


光輝「残念ながら、それはもう少し後になりそうだ。」


夏武斗「え？」


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パンフレットの大会ルール説明を読み上げる天音。

天音「トーナメント中引き分けとなった場合、その回の全試合終了後に引き分けとなったプレイヤー全員でトーナメントを組みなおす…」


ロバート「あん？どういうこっちゃ？」


仁「この二回戦中に引き分けがもう一組出た場合、そのどちらかと闘う事になる。」


天音「出なかった場合は上原さんと再度デュエルという事になりますね。」


ロバート「なんだか面倒なルールだな。どちらにせよ二回戦が全部終わるまではお預けって事か。」


ロバート「っていっても引き分けなんて滅多に無いし、ほぼ再戦で決まりか。」


天音「はい。恐らくは…」


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夏武斗「えーっと…とにかく暫く勝負はお預けって事か？」


光輝「そうだね。早くとも二回戦の試合が全て終わってからだね。」


夏武斗「ちぇー折角燃えて来たとこだったのに。」


光輝「まぁこういった手合いの方がワクワクしてくるものさ…夏武斗君。」



光輝「次は絶対僕が勝たせてもらう。またお互い最高のデュエルをしよう！」


夏武斗「望むところだ！今度こそ絶対勝ってやるぜ！」


握手を交わす二人。


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（ジェネシックスタジアム・控え室）


平留「………」


dPhoneの通知を確認する平留。

画面内には『花田天音』と表示されている。


通信機器を作動させる。


平留「…こちら平留、全体周知です。対戦の通知が来ました。」


マヘル「来たか…。」


平留「試合開始時刻はただ今より３０分後。各員準備をお願いします。」


アリス「やーっと動けるってわけね。」


ヴァルト「承知しました。」


双葉「ホントに二人だけで大丈夫…？やっぱり私も…」


アリス「あーもー大丈夫だっての！」
双葉「でも…！」
アリス「大体あんたに一々心配される筋合いなんて…」


平留「報告中に騒がないで喧しい。」


双葉「あ、ごめん香織…。」


アリス「ちぇ…！」


マヘル「双葉、いざという時の為に動きやすい人員が必要なのだ。気持ちは分かるが作戦通りの立ち位置で頼む。」


マヘル「ラーナも…それを望むだろう。」


双葉「お姉ちゃんが……うん。わかった。」


平留「報告は以上、では……」


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光輝「あ……」


控え室で鉢合わせする光輝と奏。


奏「光輝……。」


光輝「奏、ただいま。…試合見ててくれたのかい？」


奏「うん……まぁね。」


光輝「そうか、勝ち星を持ち帰れなくて申し訳ない。あとで必ず……あ、」

しまったといった様子で口を閉ざす。


奏「何よ…？」


光輝「いや、その……」


奏「だぁ～も～！大駕もアンタも変に気を回し過ぎなのよ。」


奏「そうですよ！私は負けました！あ～悔しい！」


光輝「ごめん。ちょっと無神経だっ……」
奏「だからそういうのいいんだってば！」


奏「変に気を使われると調子狂うじゃないの！私だっていつまでもへこんじゃいないわよ！」


光輝「奏………」


くるりと光輝に背を向け淡々と話し始める。

奏「負けたのは私の実力不足！光輝はなにも関係ないでしょ？」


奏「私は別に……その、嫌味ったらしいなんてこれっぽっちも思ってないから！」


奏「だから…とにかく今は勝つ事だけ考えなさい。私の事なんか放っておくの！」


光輝「奏………うん分かった。逆に気を使わせてしまったみたいでごめん。」


奏「あんたは謝んなくていーの。」

振り返り光輝の唇に指を当てる。


光輝「ふふ。それじゃあ、ありがとう奏。」


奏「な、何よ急にお礼なんて…気持ち悪い。私ちょっと散歩してくる！」

部屋を出ていく。


奏「あ、あと！！」


光輝「えっ？」



奏「良いデュエルだったわ。か、かか格好良かったわよ！」


奏「今度こそ勝ってきにゃしゃい！！」


速足で立ち去る。



光輝「奏………ありがとう。」




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天音「夏武斗君、おかえりなさい。」


夏武斗「ただいま天姉！」


天音「引き分けだなんてなんだか凄いですね。一先ずはお疲れ様です。」


夏武斗「はは、せっかくなら勝ちたかったけどな。」


天音「相手はＭ.Ｃ.Ｃスタッフでもトップクラスの強さを持つ上原さんですから。引き分けに持ち込んだだけでも上々ですよ。」


天音「まだ負けたわけじゃありませんから。頑張ってください。」


夏武斗「おう！ありがとな！」


ロバート「あれま呑気だねぇ…姉ちゃん他人の心配してる場合じゃないだろうに。」


夏武斗「ん？どういうことだ？」


天音「私、次の試合通知が来たんですよ。」


天音「対戦相手はあのグレイシア平留さんです。」


夏武斗「グレイシアってあの時の…！」



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平留「大声での揉め事はおやめなさい。」



左右田「あぁ？誰だてめ…なっ！？」


平留「他者への迷惑を考えなさい。まだ試合中の方々もいるのですよ。」


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平留「氷餓鬼で、クラフトゥリーズ・フォートレントを攻撃。」


平留「氷餓鬼が相手モンスターに攻撃する時、その攻撃力はダメージステップの間だけ二倍になる…。」


左右田「なっ！！？二倍だと！！」


平留「………」ＡＴＫ２８００→５６００


少年「攻撃力…５６００ゥ！！？」


左右田「マ、マジかっ…うがあああぁぁぁ！！！」ＬＰ４０００→０


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平留「その子の行動に責任を持ちなさい…！」


平留「確かに先ほどの輩は禄でもない人だったかもしれません。ですがその子が彼らに危害を加えたのは事実でしょう…！」


平留「その子が逃げ出してしまったのなら、その責任を問われるのはあなたではないのですか？」


香子「あ……」

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ロバート「あんたらも知ってるだろうに…あのスター様の実力は。」


天音「確かに間違いなく強敵でしょうね。でも…」


夏武斗「今更気にしたって仕方ない。だろ？」


天音「はい！」


夏武斗「へぇ～でもあの強い姉ちゃんと闘えんのか。いいな～天姉。」


天音「こればかりは運ですからね。今から楽しみです。」


夏武斗「だよなぁ！俺の分まで思いっきり暴れて来てくれよな！」


天音「ふふ、そうですね。頑張ってきます！」



ロバート「あれまこれ以上なく前向きですこと…。」


仁「…いつものことだ。」



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（ジェネシックスタジアム・客席）


楯山「よし！席確保！」


竜太「大会見に来ただけでどうしてこんなに疲れなきゃなんねんだよ…。」


初「はぁはぁ…。」


楯山「こらこらお前達、芸能界でもトップクラスの実力を持つと言われるグレイシア平留のデュエルだぞ？この機会にじっくり観なくてどうする！」


竜太「どーせお前の目当てはそっちじゃねーだろ！」


初「あ、でも確かにあの人テレビで見たことある。」


楯山「アストベリーカップの影響か最近はテレビで引っ張りだこだ。まさか優勝候補の一人を倒す程の実力とは誰も思っていなかったろうしな。」


竜太「おいおいそんなに強ぇのかよ…。こりゃ勝敗は決まったような……」
楯山「馬鹿な事を言うな！」

急な大声に耳を塞ぐ二人。


楯山「彼女がどれだけ強かろうと相手はあの天音さん！本大会の好調ぶりとこの僕の魂の声援があれば優勝も夢じゃない！」


楯山「お前達も全身全霊で天音さんを応援するように！いいな！」


竜太「…そもそもなんで俺等こいつと一緒になってんだ？」


初「な、なんでだっけ？ははは…！」



楯山「天音さーーーん！！ファイトでーーーす！！！」



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（ジェネシックスタジアム）


ほぼ同じタイミングでデュエルフィールドに到着する二人。


天音（グレイシアさん……たった１度見ただけですが彼女の強さは相当なもの。）


天音（気を抜かずに行かねばなりませんね。）


茶ノ畑「はいはい皆さんこんにちはあああ！！あ、ヘリのカメラさん見えてます～？こっちですよ～こっちこっち～」


茶ノ畑「皆さんお待ちかねのデュエルの開始時刻となりました～！！」


茶ノ畑「もはや説明するまでもないでしょう！こちらに居りますは、かのトレジャー歌劇団のトップスター、グレイシアこと平留香織選手でっす！！」


「キャー！！」
「グレイシア様ー！！」
「こっち向いてー！！」


天音「す、凄い歓声ですね…。」


茶ノ畑「そのシャープで繊細な美貌は美青年よりも美青年と絶大な人気！！ファンクラブ加入者もうなぎ登りで増えているそうです！！」


「イェーイ！」
「私も入ったー！」
「私会員Ｎｏ三桁代でしてよ！！」


平留「………」



平留（スタジアム全体を包み込むほどの女性ファンの歓声……。）


平留（本当に…これ以上無いほど腹立たしい……！）




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アリス「ヴァルト、そっちは？」


ヴァルト「いつでも取り掛かれます。」


アリス「ふふん、了解。」


アリス「さてと………」

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茶ノ畑「それではあああ！！早速初めて頂きましょおおお！！！」


天音「あ、宜しくお願いします！」


平留「………」


天音「……？」


表情を変えずdPhoneを構える。


天音（えーっと……気を取り直して行きます！）






dPhoneモードチェンジ！Ｄパッドモード！



ターゲットロックＯＫ！



ビジョンリンクＯＫ！



ファーストディールＯＫ！



デュエル！！






終










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（次回予告）


天音「これがトップスターのデュエル……凄い盛り上がりですね。」


夏武斗「へぇ～あの男みたいな姉ちゃん大人気なんだな。」


天音「気押される訳にはいきません！こちらも………な、何！？」


夏武斗「うわああ！！なんだこれ！？台風か！？竜巻か！？嵐か！？」


天音「そんな…さっきまであんなに良いお天気だったのに……きゃ！！？」


夏武斗「天姉！？」


夏武斗「次回！『大会中止！？吹き荒ぶ陰謀の風！』」


夏武斗「なんだよ…何が起きてんだよ！！？」
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・場面転換多すぎて自分で泣きそう…。