30 ウサギ大捜索　作：ギガプラント

（デュエルスペース・Ｃブロック）



連行されていく二人


天音「ところで…どうして故障が嘘だと？」


ロバート「あぁ…なんかよく分かんねえけど。あの後急に話しかけられたんだよ。」


夏武斗「話しかけられたって…誰に？」


ロバート「さぁ？なんか固そうな姉ちゃんだったな。そいつがさ、話聞いてたのか知らねえけど『エクストラのみの故障など９９％ありえません』とかなんとか言ってきて…。」


ロバート「胡散臭えとは思ったけど…もしかしたらって事もあるからな。一応あのスタッフとっ捕まえて軽くシメたってとこだ。あとはさっきの通り。」


夏武斗「…いきなりシメたのかよ。」


天音「成程…あ、そういえば…仁君のdPhoneからかかってきたみたいですけど…。」


ロバート「あぁ。あんたの番号知らなかったしな。近場に仁の奴が居たんでちょっと借りたのよ。」
仁のdPhoneを取り出すロバート。




仁「…無理やり奪っていくことを借りるとは言わない。」


ロバート「よぉ仁！遅かったじゃねえか！もういざこざは解決しちまったぜ？もうちょっと早く来れば俺の雄姿を拝めたのになぁ。」


仁「…強引に物を奪って人込みに消える奴があるか。」


ロバート「あぁ、運悪くグレイシアファンの行列にぶつかったなぁ。ったくツイてねえわ。」


夏武斗「ぐれいしあ…？どっかで聞いたような…。」


天音「トレジャー歌劇団の女優さんですね。今回アストベリー杯に出場されるという事で、物凄い数のファンが集まってるそうですよ。」


夏武斗「そういえばテレビでそんなん見たような…成程なぁ。」


仁「…いいから早くそれを返せ。要件は済んだろう。」


ロバート「そういや借りっぱだったな、悪ぃ。」


ロバート「ま、仲間のピンチだったんだ。ちょっとは多めに見てくれよ。」


仁「…フン。」
dPhoneを取り返す仁。



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（Ｍ.Ｃ.Ｃデュエルセンター・ロビー）



夏武斗「ん……？」



猛スピードでロビーを横切る小さな影。

まばらに散らばる人々の足元をすり抜けていく。

ロビーを抜け奥の通路側と一気に走り抜け直ぐに見えなくなる。



夏武斗「！！？」


天音「今のって…。」


夏武斗「………兎？」


天音「兎…でしたよね。やっぱり…。」


ロバート「あれま…アストベリー杯ってなぁ人間以外も参加すんのか…？」


仁「…そんな訳があるか。」


天音「一応ケージに入っているなら動物の持ち込みは大丈夫だったような気がしますが…。」


夏武斗「いや…超自由に走ってたぞあいつ…。」




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電話を掛けるユニ。


ユニ「…はい。特に問題はありませんでした。」


ユニ「恐らく出場者が霍乱の為に流したデマでしょう。…それでも負けていたようですが。」


ユニ「…その時の対戦相手ですが、どうも例の少年だったようです。」


ユニ「特別目立った数値は記録しておりません…こう言っては難ですが、並みのデュエリストと大差ないかと。」


ユニ「はい。…はい承知致しました。」





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外からロビーに入ってくる女の子。


女の子「ミミ～！！どこいったの～？」


老人「これ…そんなに慌てるでない…。」


女の子「そんなこと言ったって…もう何処行ったのよ！」


女の子「次の試合始まっちゃうよ…。」

軽くロビーを見渡しそのまま一気に走り出す。


天音「えっ！？」
女の子「きゃっ！！」

余所見をした拍子に天音と衝突する。


夏武斗「！！大丈夫か！？」


天音「はい…。すいません…大丈夫ですか？」


女の子「あ、はい…こちらこそごめんなさい…。怪我とかしてませんか？」


天音「こっちは大丈夫です。そちらは…」


女の子「ピンピンしてます。…ホントにごめんなさい。急いでたもので。」

後ろから歩いてくる老人。


老人「…ほれ言わんこっちゃない。娘さん、すまぬの。少々お転婆な孫娘での。」


女の子「お爺ちゃん…。」


天音「いえホントに大丈夫ですから。」


ロバート「まぁこんだけ人がごった返してんだ…走ったりすると危ねえぜ嬢ちゃん？」


女の子「…はい。」


夏武斗「にしても…何をそんなに急いでんだ？」


女の子「えっと…実は…。」



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伊世「…つまり、逃げ出した兎を探して欲しいと。」


天音「すいません伊世さん。お願いできませんか？」


伊世「一段落したと思ったら……な～んであんたは今日に限って厄介事運んでくんのよ。ったく。」


女の子「っ！す、すいません！」


夏武斗「あー…伊世姉ちゃんは毎度こんなんだから、そんな気にしなくていいぜ？」


伊世「…どーゆー意味よ。」


伊世「まぁ小動物が一匹走り回ってるって聞いてほっとく訳にはいかないしね…。」


伊世「んじゃ、そいつの特徴教えてくれる？」


女の子「えっと…名前はミミ。色は薄めの茶色で、大きさはこのくらい。後は…兎に角すばしっこくて…。」


伊世「…はぁ、光と闇の竜の処理くらい骨が折れそう。」


夏武斗「よっし！みんな次の試合までまだ時間あるみたいだし、俺達も探しにいくか！」


ロバート「あー悪ぃ俺はパス。実は結構暇じゃないんだわ。」


夏武斗「えー！マジかよぉ！？」


ロバート「次の試合までに調べときたい事があんだよ…まぁ途中で見っけたら連絡はすっから、勘弁してくれ。な？」


夏武斗「じゃあ仁！お前は手伝ってくれるよな！？」


仁「俺には関係のない事……」
天音「でも仁君、大会前日に凄く混みあってた時、大変そうだから自分も手伝うって言ってくれましたよね？」


仁「………」


天音「今はもう気が変わってしまいましたか？」（ﾆｺｯ）


仁「……手伝えばいいんだろう手伝えば。」


天音「ありがとうございます！…ごめんなさいちょっと意地悪でしたね。」


仁「…フン。」


夏武斗「よし！それじゃ手分けして探してみっか！」




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（デュエルスペース・Ａブロック）


天音（とりあえず虱潰しに探すしかなさそうですね。）


天音（兎が居たりしたら目立つでしょうし…スタッフの方が見ているかも…。）


天音「！…あれは。」





奏「これで最後！騎楽極士（プレインスター）ヴィヴァーチェでダイレクトアタック！！」


少年「ちっくしょおおお！！」ＬＰ１５００→０



奏「ふぅ…。」


天音「お疲れ様です奏さん。」


奏「あら天音ちゃんじゃない。調子はどう？」


天音「なんとか勝ち残ってますよ。奏さんは……」


奏「一応今ので本戦出場決定ね。ま、当然だけど。」


天音「おめでとうございます。私もあと一戦、頑張らなきゃですね。」


奏「私もあなたなら大丈夫だと思うわ。…ただし本戦で当たった時は、前みたいに行くと思わない事ね。」


天音「はい。そのときはお互い全力で！」


奏「ふふ。ところで試合はまだみたいだけど、偵察かしら？」


天音「えーと…今はちょっと別件でして。」


奏「？」


天音「あの、ここらへんで兎さんを見ませんでした？」


奏「兎？兎ってあの兎よね？…そんなのがうろついてたら流石に見つけてると思うけど。少なくとも私は見てないわね。」


天音「そうですか。ありがとうございます。」


天音（ここではなさそうですね。）




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（デュエルスペース・Ｂブロック）


仁（……兎、か。）


仁（昔、亜三が飼いたいとごねた事があったか…。）



仁（…亜三）





大駕「おおう！見た顔と思ったら夜見原仁！奇遇じゃのう！」


光輝「お、こんにちは。」


仁「八取…大駕。」


大駕「覚えとったかこりゃ光栄じゃ！！」


仁「…闇討ちするような奴は中々居ないからな。」


大駕「がっはっは！！それもそうか！！」


光輝「まったく…笑い事じゃないよ大駕。セキュリティ沙汰にならなかったから良かったけど…。」


大駕「して夜見原よ。お前もアストベリー杯に出場したと聞いたが…まさかお前負けたりしておらんじゃろうな？」


光輝「また唐突だね…。」


仁「…あと一勝で本戦出場だ。」


大駕「ふむ！それでこそ儂が認めた漢！」


大駕「本戦に出て！お前が望んだ漢同士の本気の勝負をしようぞ！！」


仁「そんなものを望んだ覚えはない。」


大駕「なぬっ！？儂との闘いで漢同士の本気の勝負に目覚め出場を決めたのではないのか！！？」


光輝「…大駕、流石に都合よく考えすぎだと思うよ。」


大駕「むぅ…ならば何故出場を決めたのだ？ギリギリまでそのつもりは無かったのだろう？」


仁「俺は……」


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ロバート「アストベリー杯に来い仁。そこで俺に『勝てたら』教えてやる。

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光輝「まあまあ、無理に聞き出すことじゃないよ。仁君にも色々心境の変化があったという事じゃないか？」


大駕「うむ！確かに重要なのはそこではないか！！何はともあれお前と再び闘う事楽しみにしておるぞ！」


大駕「儂等は一足先に本戦出場を決めてきた！お前も負けるでないぞ！」


仁「………」


光輝「それじゃ僕等はここで…」


仁「…一つ訊きたい。」


光輝「ん？」










大駕「兎…？」




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（Ｍ.Ｃ.Ｃデュエルセンター・ロビー）


夏武斗「う～ん…やっぱり奥の方行っちまったのかなぁ？さっきはここに居たからもしかしたらって思ったんだけど。」


老人「すまぬな。巻き込んでしまって。」


夏武斗「いやぁ暇だったし別に大丈夫だぜ？試合が始まるまでどうせ暇だしな。」



老人「あの兎…ミミはな。森の忘れ形見なんじゃよ。」


夏武斗「わすれがたみ…？」


老人「少し前の話じゃ…上波町の名が広く知れ渡った頃、森林開発の業者が近場の小さな山に目を付けたようでな…。」


老人「森を切り開いて…なんじゃったか…よう分からんが大きなビルかなんかを建てようとしたんじゃよ。」


夏武斗「俺の故郷にもあったなそんな話…なんちゃらリゾートを作る…だったか。」


老人「ほう…お前さん何処の生まれじゃ？」


夏武斗「ん？大天島ってとこ。」


老人「成程のぅ…あそこなら納得じゃ。」


夏武斗「えっ？大天島の事知ってんのか？」


老人「ほっほっほ…昔よく足を運んだものじゃ。あそこは大層立派な自然に溢れとるからの。あの手の連中が考えそうなもんじゃわい。」


夏武斗「へえ…。んで忘れ形見ってのは？」


老人「あぁ、あの山は小さくはあるが沢山の動植物が生態系を築いておった…当然開発に反対するものもおったんじゃが…。」


老人「たった数百人の反対など奴等にはなんの障害にもならん。抵抗も虚しく山は切り崩されていった…。」


老人「当然…そこにいた動植物も含めて…な。」


夏武斗「………」


老人「工事が始まり、動物という動物が逃げ回っていた頃じゃ。どこか高台から落ちたのか脚を怪我した兎を孫娘…香子の奴が見つけてきてな。」


老人「もう山は助けられないがこの子だけでも…と。」


夏武斗「なんだか…やりきれないな。」


老人「生物の生き死にを自分らの都合だけで簡単に狂わせる…長い時を経て進化を重ねる内に、それが当たり前になっている気がしてならんのじゃ…。」


夏武斗「そっか…。便利になるってのは良い事だと思ってたけど…結局それは人間にとってだけなんだよな。」


夏武斗「他の動物たちからすれば…人間は脅威そのものなのかも。」


老人「…そう感じる事すらできなくなった大人は多い。…想像以上に。」


老人「すまぬ…長くなったな。早く見つけてやらんとな、少々手間のかかる…あの子の家族を…。」


夏武斗のdPhoneが鳴り出す。


夏武斗「おっと…！天姉だ。」


天音「夏武斗君！香子さんが見つけました！Ｃブロックです！」


夏武斗「そっか！良かった！」


天音「それはそうなんですけど…とりあえず来てください！」


夏武斗「え！？あぁ分かった！！」


夏武斗「爺ちゃん！Ｃブロックだ！」


老人「うむ。先に行っとくれ。」




終











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（次回予告）


左右田「っくしょお！ひでえ目にあったぜ！！」


少年「あああぁ…俺トラウマになったかもしんねえっス…。」


左右田「あぁもう気晴らしだ！あっちのデュエルでも見に行くぞ！」


少年「了解っス！…のわあ！」


左右田「おいどうし……うわぁ！」


左右田「なんだいきなり！…って俺のカードがバラバラにぃ！！？」


少年「なっ！兄貴こいつウサギっスよ！」


左右田「ウサギだぁ！？んだよこんな時に！」


少年「このウサ公タダじゃおかねえっス！！」


左右田「次回！『氷結のグレイシア』！」



ロバート「あれは……面白れぇ事になってんじゃんか…！」

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・本話にて勝ってる方々が三戦目で最初の時間帯の組となります。