94 天音の選択　作：ギガプラント

天音「私は……『幻日の神子』を召喚！」星３・ＡＴＫ４００


天音「そのまま幻日の神子の効果発動！」


天音「このカードのレベルを、フィールド上に存在するレベルが変化しているモンスター１体と同じにする！」


天音「私はこの効果で、幻日の神子のレベルをサーマル・ギアエンジェルと同じ９にします！」星３→９


平留「………」


天音「私はレベル９の幻日の神子とサーマル・ギアエンジェルでオーバーレイ！」



大海を割り雲海を貫け、万象を吹き飛ばす龍神の舞に刮目せよ！


エクシーズ召喚！！


現れよ！ランク９！疾風怒濤の龍神！！『シュトゥルム・ウント・ドラグーン』！！ランク９・ＡＴＫ３０００



平留「ランク９の大型エクシーズモンスター……だがそんナモンスターに何ガできル！？ニヴリア・フォッグは相手のアらゆる効果を受けナい無敵のモンスター！ドんな小細工も通用しない！」


平留「一角獣は超エられたとこロで、貴様ニ勝ち目ハ無い！！！」


天音「…ですが攻撃力は同じ３０００ポイントです。」


平留「はっ！ならバ攻撃してみレばイイ！！」


平留「ニヴリア・フォッグが破壊サれタ時、フィールド上の全てのカードを破壊シ、その枚数×２００ポイントのダメージを互イニ与えル！」


平留「今フィールドに残ってイるニヴリア・フォッグ以外のカードは４枚！ツマり互いに与エられルダメージは８００ポイント！」


平留「ライフ１２００の私ハ生き残リ、ライフ１００ノ貴様は終わリだ！！」



平留「ラーナかラ……女カら押し付けラレたカードなんて本当は使いタく無カっタ！！！」


平留「だが貴様のヨうな不快な女ヲ始末スる為だ！！手段は選んでいられナい！！」


平留「こノ力で完膚ナきマで叩キ潰す！」



平留「愚かナ雌餓鬼よ！自ら破滅の道ニ脚を踏ミイレるがイイ！！！」


天音「………」




天音（私の墓地には、魔法カード『ブレイブ・レイン』がある。）


天音（このカードは自分の墓地から攻撃力１０００以下の水属性モンスター１体をゲームから除外する事で、ターン終了時まで自分のモンスター１体の攻撃力をそのモンスターの攻撃力分アップし、更にその数値分自分のライフを回復できる。）


天音（そしてこのカードは……墓地から除外する事で、除外された攻撃力１０００以下の水属性モンスターを手札に戻し、『もう一度』使う事ができるカード。）


天音（除外したハーフスノーマンを手札に戻して効果を使えば、シュトゥルム・ウント・ドラグーンの攻撃力は３８００、私のライフは９００に。）


天音（その後シュトゥルム・ウント・ドラグーンでニヴリア・フォッグに攻撃すれば、攻撃力の差分８００のダメージで平留さんのライフは４００。）


天音（最後にニヴリア・フォッグの効果でお互いに８００ポイントのダメージ……私のライフは１００残り平留さんのライフは……。）





天音（………でも）





天音（本当にもう倒すしかないの…？）


天音（デュエルを受けた以上負けるつもりはありませんが……なんとか平留さんを止められないでしょうか。）


天音（だって…）




平留「くっフふフ、フハハははハ！！！消えロ！！女なんテ全テ朽チ果テてしマえ！！」




天音（あの人泣いている……もう見ていられないくらい…。）


天音（あんなに…。）






天音「平留さん！本当は……本当はこんな事したくないんでしょう！？」


天音「不幸が重なって……絶望したのかも知れません！それでも…！」


天音「女性を消して何になるって言うんですか！！そんな事をしたら人間全体の終わりです！！もう何も残らないじゃないですか！」


平留「はっ！結構ジャなイか！そモソも男女に別れテ生まれテ来たコトが人間の欠陥ダったノヨ！！」


平留「一度全部失くシテしまエばいい。神様トやらガ居るなラ次はもっと高等な生物を作っテクレルだロウさ！！」


平留「人間ノ女に滅ぼさレたンだ、如何に女が癌細部だッたかにも気づクだロウよ！！」


平留「女がイナければ成立シナイ世界なんテ腐ってル！！神様ノ次回作にご期待あれさ！はっはっハ！！！」


天音「貴女が愛したものも…全部無くなってしまうんですよ！」


平留「私ガ愛しタものナんてもう何処ニも無い！！！」


平留「あの人は………モう居ないのよ……。」



平留「さぁ！！終わリにしタいなら攻撃すルがいい！！そうデないならターンエンドしロ！！」


天音「平留さん…。」


天音「私は……私は……。」








天音（駄目！まだ諦めたくない…！！）








天音「バトルフェイズ！シュトゥルム・ウント・ドラグーンで氷山の一角獣を攻撃！インディグネイト・ストーム！」



先程まで圧倒的な存在感を放っていた一角獣があっさりと竜巻の餌食となる。


平留「数を減らしニ来タの？悪あがキにもならンな。」


平留「貴様のライフは１００、火の粉程度ノダメージで終ワる。焼け石に水ネ。」



天音「カードを１枚セット！ターンエンド！」


平留「私ノターン！！ドロー！！！」



平留「終ワりだ女！！こんな場所に踏み込ンだ己の行イを嘆キながら逝きナさい！！」





天音「平留さん！！！」




平留「っ！？」


天音「信じています。貴女はまだやりなおせる。自分自身でその選択ができる筈です！！」


天音の瞳に曇りは無く、ただ一点平留の顔をじっと見据えている。


平留「まだそんな戯言を言うカ！！！」



平留「私は全て失ったんだ……モう何も無いんだ！何も！！」


平留「この憎しミで女共を滅ぼす以外！！私が生きる意味は無いノよおおお！！！」


天音「失うものが無いなら！！やり直す事だってできます！！」


天音「貴女にそんなつもりが無くても、貴女は沢山の人を喜ばせる力があるじゃないですか！！」


平留「力……！」





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「本日は最後までご覧いただき……」


「「「ありがとうございましたあああ！！！」」」


一気に歓声が沸き上がる。
もう何度目のカーテンコールか覚えていないくらいだが、挨拶の度に観客は最大のボルテージで声援を送り、拍手の海を作り出す。
心を閉ざしたままでは絶対に味わえなかった快感。
感動を与え、幸せを返してもらう。
こんな素晴らしい瞬間に私の胸は今までにないほど高鳴っていた。


香織（舞台って…こんなにも素敵なんだ…！）


香織「はあぁ……！」


感動が身体中を駆け巡り口から漏れたと同時に、香織は満面の笑みを浮かべた。




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天音「平留さん。もう止めましょう？」


天音「女性を許す事は出来ないかもしれません、好きになれないかもしれません。」


天音「きっとそう簡単に憎しみは消えない……いつまでも残り続けてしまうかもしれない…！」


天音「でも！全部壊して消えてしまおうなんて、絶対駄目です！！」





天音「どんなどん底からだって………きっと貴女自身の事は！きっと好きになれる筈だから！！」











平留「………」













平留「はは……。」















平留「おかしな娘………」
















平留「凄いわね…」




















平留「でも…！！」






人差し指を伸ばし、高く腕を伸ばす。


天音「平留さん！！！」




























平留「モう遅スぎルのヨ。」













平留「凍界精ニヴリア・フォッグでシュトゥルム・ウント・ドラグーンを攻撃！！！」


天音「っ！！！？？」


天音（平留さん………）













天音「シュトゥルム・ウント・ドラグーンの効果発動！！」


天音「オーバーレイユニットを１つ使い、フィールドのモンスター１体を次のスタンバイフェイズまでゲームから除外する！！」


天音「私はシュトゥルム・ウント・ドラグーン自身を選択！アージ・メソサイクロン！！！」


上昇気流に乗り、竜は天空へと消える。





平留「無駄よ！！！コれデ本当ニ最後！！ダイレクトアタック！！！」














天音「……罠カード発動。『女神の抱擁』」





聖母の如き神々しい女神がゆっくりと降臨する。
女神は優しい微笑みを浮かべつつ、平留の下へ向かっていく。



平留「な、なんだ……なんなんだお前はあああ！！！」


平留「来るな……来るな来るなあああ！！！」


平留「女なんて嫌だ女なんて嫌だ女なんて嫌だ女なんて女なんて女なんて女女女おん……嫌だ嫌だ嫌だあああ！！！」


半透明の女神はそのまま平留の身体をそっと抱きしめる。


平留「あ………あああ……ｱｱｱ…！！」



天音「発動ターン、お互いが受ける全てのダメージは０となり、代わりにその数値の半分のライフをお互いに回復します。」天音ＬＰ１００→１６００　平留ＬＰ１２００→２７００


平留「ｱｱｱ…」


天音「自身の戦闘・効果によるダメージを与えられなかったターンのエンドフェイズ時、ニヴリア・フォッグは破壊される。」


白魔女は耳を切り裂くような甲高い声を上げて破裂する。


天音「ニヴリア・フォッグが破壊された時、フィールドの全てのカードを破壊し、その枚数×２００ポイントのダメージを互いに与える。」

祝福のエンジェル・ラダーとアイスバーグ・サモンゲートの２枚が凍り付き砕ける。


天音「ですがそのダメージも女神の抱擁の効果により、その半分の数値を互いに回復する。」天音ＬＰ１６００→２０００　平留ＬＰ２７００→３１００


平留「ｱ………ｱ……」



天音「私のターン…ドロー…。」


天音「スタンバイフェイズ、シュトゥルム・ウント・ドラグーンは再びフィールドに帰ってきます…。」ランク９・ＡＴＫ３０００


天音「私は墓地の魔法カード『ブレイブ・レイン』の効果を発動…。」


天音「このカードを墓地から除外する事で、除外されている攻撃力１０００以下の水属性モンスター１体を手札に加える。」


天音「そして、その攻撃力分だけモンスター１体の攻撃力はアップし、更に自分のライフを回復する。」


天音「除外されている『ハーフ・スノーマン』を手札に…。」ＡＴＫ３０００→３８００　ＬＰ２０００→２８００


天音「バトルフェイズ………」


平留「や…………」


天音（平留さん…。）






天音「ごめんなさい。」







天音「シュトゥルム・ウント・ドラグーンで平留さんにダイレクトアタック。」


















平留「嫌あああアあああぁぁぁ！！！」ＬＰ３１００→０





ＷＩＮ・天音












平留「あああ……ああ…。」


天音「平留さん！」

倒れこんだ平留に駆け寄る。


平留「ぐふっ……気安く触るな…女……。」


天音「平留さん……待ってて下さい今…」


平留「触るなと…言っぐううっ！！！」


天音「！？」


平留「な、なんだこれは……頭の中に…何かが………ぐうううう！！！」


天音「平留さん！！」


平留「な、これは……どうい…う……ﾝﾝﾝｯ!!」















平留「はは……そういう………ことか…。」

平留の瞳から涙の粒が零れる。
目頭から頬を伝って落ちていき……形の良い顎から地面に向かっていく。




そしてその一滴は地面に着く事なく光となって消えた。




天音「これって……」


平留の身体も全身が煌びやかな光となる。



平留「女………最期に１つだけ言っておく…。」


幾度となく舞台を駆けた脚が消える。


天音「最後って…！？」


平留「私は………やっぱ、り……女が……大っ嫌い………よ。」


いつの日か人を殺めた腕が消える。


平留「最期……まで、馬鹿にして……くれ……て…………呪っ……てやる…………わ。」


平留「ラー…………ナ……。」




天音の腕の中で、一人のトップスターが完全にこの世から姿を消した。




天音「こ、こんな……一体……。」


天音「平留さん……平留さん！！」





天音「平留さん………どうして…！」


天音（一体……何が起こっているんですか…。）















天音（夏武斗君……貴方もこんな、こんな悲しい光景を見たんですか…？）


天音（こんな…。）


今度は天音の瞳から、一滴零れ落ちる。




終










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（次回予告）


夏武斗「あれ？天姉なんでこんなとこに！？おわっ！仁まで！？」


仁「…ここは関係者以外立ち入り禁止なんだがな。といっても他人の事を言えた立場じゃないか。」


夏武斗「一体何が…ってアイツは！アインヘリアルの！！」


仁「まだ忍び込んでいるのがいたか…今度は逃がさん！」


夏武斗「あ、待てって！俺も行く！！」


夏武斗「次回！『追跡！アインヘリアル！』」


双葉「そんな……香織まで…。」
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・勝利時にＬＰが２８００も残っている…過去最高記録かもしれない…。