第四十六話　本当の名前　作：くちなし

・クルトと有希以外は皆就寝した後の部屋。有希とクルトは会話を交わして寝室へ行く。すると有希が名前のはなしをしてきた⋯⋯


～翌日～
「起きて⋯⋯起きて⋯⋯」
クルトの耳に声が入る。

ク「う～ん⋯⋯？」
目覚めると眼鏡を付けた有希が居た。

有「起きて⋯⋯」
クルトの方を撫でて言う。

ク「有希⋯⋯？顔⋯⋯赤いよ？」
クルトが聞く。

有「そんな⋯⋯事ない⋯⋯」

ク「ほら」
そう言うと鏡を出した。確かにほんのり頬が赤くなっている。

有「⋯⋯もう、いいから早く起きる！」

ク「ハイハイ⋯⋯」

～３０分後～
咲「みなさんちょっと良いですか？」
咲夜は言った。亜蓮は自室にいるらしい。

イ「どうしたの？」

咲「クルトの事について話しておこうと思いまして⋯⋯」
有希は少し表情が曇る。クルトも察しが付いたようだった。

咲「クルト、名前の事、言うからね⋯？」
咲夜は言った。

ク「僕は席を外すよ。いろいろ気持ちが収まらない。」
そう言うと寝室へ戻った。

咲「仕方がないので４人だけで⋯⋯」

イ「クルトの名前の事⋯⋯ってどういう事なの？」

有「私が言うわ⋯⋯」
有希が言う。

有「イリアさん、ルカナさんが呼んでいる『クルト』という名前⋯⋯それはあくまで仮初めの
　　名前⋯⋯つまり、あれは本当の名前ではない⋯⋯という事⋯⋯」

ル「じゃあ、ほんとの名前は何なんだ？」

有「今、目の前にいます⋯⋯」

イ「え⋯⋯？」
イリア、ルカナは混乱気味。

咲「僕の事です⋯」
咲夜が静かに言った。

有「彼が名乗っている『水無月咲夜』はクルトの本当の名前⋯⋯という事⋯」

イ「何でそんな事をする必要があったの？」

咲「前に言った通り、クルトは命を狙われていたんです。だから、僕自身が総合管理　　局にいた時にコードネームの、『クルト』という仮の名前を入れてその時の記憶を
　　消しました。その本当の名前を自分が名乗り、代わりに相手になった⋯⋯
　　と言ったら宜しいでしょうか？」

イ「確かにそれなら納得がいくわね。それで咲夜、いや、あなたの名前は⋯⋯？」

咲「『初空月　蓮』⋯⋯それが本当の名前です。」
咲夜は言った。

イ「そしたら蓮君はクルト⋯⋯いや、咲夜を庇うために本当の名前をつかったと？」

咲夜➡蓮「そういう事です」
咲夜は静かに言った。

蓮「今まではクルトの身の為に黙ってましたが、もうクルトも自分の運命を受け入れ
　　なくてはならない⋯だから話したんです。黙っててすいません」

有「⋯⋯」
有希はどこかへ行く

蓮「どこ行くの？」

有「咲夜のところ⋯⋯」
そう言った。


有「クルト⋯⋯いる⋯⋯？」
そう言って開けても誰も居ない。置手紙があった。

有「『思い出のあの場所へ⋯⋯』⋯⋯たぶんあそこ⋯⋯」
そう言って有希は外に出た。その場所までは一本道が続いている。

ク➡咲「⋯⋯⋯」
その場で何か考え込むクルト⋯⋯いや、咲夜。

有「⋯⋯何してるの⋯」
そっという。

咲「僕は⋯⋯自分の運命を受け止められる自信がない⋯⋯」

有「⋯⋯」

咲「ここに来ると、なんか落ち着く⋯⋯」

有「この海原に⋯⋯？」

咲「全部⋯⋯話しちゃったの？」

有「⋯⋯」

咲「そっか⋯⋯」
そう言うと有希を通り過ぎて一本道を歩く。有希には分らなかった。



亜「⋯⋯⋯１月、６月、７月⋯⋯か⋯⋯」


第四十七話へ続く