第113話　彼女の望んだこと　作：くちなし

☆★☆★

咲夜達は波止場に居る。ハルヒは優勝トロフィーを片手に大はしゃぎし、それをなだめるイリアとルカナ。無言で
本を読む咲。船に乗り込む無花果。全く、疲れたよ。ゆっくり寝たいな。

？「ちょっと待ちなさいよ」
咲「、、！早苗、、」

船に乗った咲夜に声をかけたのは紛れも無い、早苗だった。

咲「、、」
早「その、、これ、受け取りなさいっ！」
咲「、、！」
早「、」

早苗から受け取った物は「幽鬼うさぎ」のカード。礼を言おうとしたら、そこには早苗の姿は無かった。

ハ「早くしなさいよっ！」

★☆★☆

島がどんどん小さくなってゆく。たった数日間とはいえ、退屈じゃなかったな。有希と蓮はどうなのだろう。
ハルヒは頭に包帯、腕に何個か絆創膏を張っているだけでピンピンしてやがる。何処から気力が湧いてくるのか。

咲「大丈夫なのか？」
ハ「これ？こんなの、全然へっちゃらよ。最初に練習した時よりはね」

どんな練習をしていたのか。まさか、初っ端からドリフトなんて、そんな事は無いよな。しかし一応聞いてみよう。

ハ「違うわよ。ダイダロスブリッジを走りまくってたのよ」

マジか。あの伝説のDホイーラーが飛んだというあの橋か。何故なんだ。

ハ「だって、飛んでみたいじゃん。わくわくするでしょ！？」

そんな理由でかよっ！生きててよかったな。

咲「ちょっと外出てくる」

部屋を出て、見た海原は一面真っ青の海に白い雲が流れている。穏やかだ。海風は少し寒い位だがな。

咲「なあ」
無「、？なんでしょう？」
咲「出発前に行った事覚えてるか？」
無「はて、、何の事でしょう？」
咲「お前もタダ者じゃないだろ、という事」
無「ああ、その件ですか」

やけに落ち着いて話してきやがる。こっちは地球外生命体が既に2人も隣に居るのによ。

無「さて、何から説明しましょうか、、私の事でも話しておきますか」
咲「なるべく簡潔にまとめてくれ」
無「まず、貴方の予想通り、私は人間ではありません。表すなら、、そうですね、エスパー、と仮定しましょうか。」
咲「もしそうなら、此処で証明してほしい物だがね」
無「ただ、ごく普通のマジシャンの様にいつでも使えるわけでは無いのですよ。限られた所でないと、、」

マジシャンと一緒にしていいのかよ。全国のマジシャン、メンタリストに謝れ。今すぐに！

咲「限られた場所てのは何処なんだ？人気の居ない場所か？」
無「半分正解です。貴方が人気の居ない場所、と答えたのは、他人に見られてはまずいという事でしょう。確かにそうです。しかし、それだけではないのです」
咲「他にも何かあるのか？」
無「それはいずれお話ししましょう。聞くより見て貰う方が早いと思いますので」
咲「そうかい。期待しないで待ってるよ」

少しの間沈黙が流れる。

無「ところで、貴方は早柿さんの事をどこまで知っていますか？」
咲「まあ、『アイツがタダの人間じゃ無い』、『ハルヒには無自覚だが考えたこと、思った事を想像通りに実行
できる能力がある』そして、ハルヒにとって僕がパートナー的存在だと思われている』っていうこと位だな」
無「そこまで聞いていたんですか。すべてその通りです。ただの人間ではない私、西荻白桃、朝比奈みかん、
音梨咲が一同に揃うという事は早柿さんが望んだからです。ただの人間には興味が無いから宇宙人、未来人、
超能力者が近くに居て欲しいと望んだ。だから私達がココに居る。そうでなければ、私は此処にいません」
咲「朝比奈さんもそうなのか？」
無「おや、まだ聞かれていなかったのですか。でも後に聞くことになると思いますよ」
咲「そうか」

そう言って部屋に戻ろうとする。

無「兎に角、これからもよろしくお願いします」

バタン。ドアを静かに閉めた。
ああそうかい。全員なのか。ま、お願いしたくないと言っても滞在するつもりなんだろうけどな。

☆★☆★

部屋に戻る途中。やけに静かだなぁ、と思っていたら、皆寝ていた。荷物を探ると、中から何かが出てきた。

『105号の個室で待ってます　朝比奈みかん』


第113話へ続く