第51話終　締めの一言の先へ　作：トマトところてん

きなこの家のきなこの部屋にて

　きなこは高慢ちきで傲慢でプライドが高く、病弱だったが故に人一倍、力への羨望の眼差しが強かった。ここら辺は闇マリク系女子、鬼滅の無惨様のような女の子として物語が始まったわけだが、思っていたより闇堕ちしなかった
　最初の方こそきなこにできた彼氏君に対して
　彼氏君、いい人だ。あたしに相応しいねぇ
　と、思っていたり
　圧倒的な力、デュエルの実力こそがあたしの魅力になるんだ。実際、強いやつはモテているんだねぇ
　とか
　あたしの力や実力を出し抜いて地位や名誉を手に入れて恋人も手に入れるなんてリア充を爆殺して弱いやつを地獄の底に叩き落とすのが快感なんだねぇ。その為に絶対的な力、永久不変の力を手にするんだ
　と、ぬかしていたがそうはならなかった。きなこは色々と詰めが甘く、圧倒的な有利のチャンスをピンチに変えてしまう女の子、サラマングレイトやエルドリッチなどのリソースデッキを使うわりには残念な人だった。よく言えば優しかった
　だんだんと彼氏君の聖人ぶりを引け目に感じるようになってしまい
　まさと君、あたしに相応しいのかな？　いや、本当か？
　きなこは今日も夢を見た。きなこの前で彼氏君のまさととれんげが楽しそうに遊戯王の話をしている。だんだんときなこから遠ざかっていき、れんげが白い煙に包まれて、ばふん、と音がなるとネコになる。きなこは
　泥棒猫ー！
　と、叫び目を覚ますのだが案外冷静だった。親友は自分から彼氏君を奪ってしまうようなやつだったとへこんでしまうところ、きなこは自分の本当の気持ちを考えていた。彼氏君が自分といるときより楽しそうに笑っている。それはその相手に嫉妬することもあるし、自己嫌悪にもなるが、なんとなくきなこは彼氏君を愛していて、どんな形であれ幸せになってほしかったから、遠くから見守る。いや、本当に欲しいものを前にして動揺しない自分の愛は本物ではないかなんて考えていた
　しばらくして、れんげがやってきた。新しいタクティカルトライデッキを持ってきていた。きなこに話しかける
　きなこちゃん、今日はタクティカルトライデッキで対戦するよ。って前にもこんなことあったね
　うん
　れんげは少し振り返って
　たしか、永遠とは人の思いで、たとえ道が別れても、亡くなっても、私たちが分かち合った思いはそれぞれ残っていて、永遠のように誰かと繋がっている、って話だったっけ。私は誰かに思いや考えを継いで欲しくなかったのに、結局後輩ちゃんができて、あとは後輩ちゃんに全てまかせることになってしまったね。なんか嫌なんだよね。後輩ちゃんには適当にぶらぶらして生きてて欲しかったな
　永久不変のものを求めたきなこも、永遠を嫌っていたれんげも結局、うまくはいかなかったのだった。とくに何かをしたわけでもないが。
　きなこはれんげをみつめてふと考えていた。あたしに足りなくてれんげちゃんにあるもの、なんとなくデュエルの実力だけではないことがわかっていて、あたしが嫉妬するような何か、苛立ちをおぼえる何か。全然ケンカしないねぇ。本当に仲のよい親友なんだろうか？　ケンカするほど仲がよいって言うしねぇ
　れんげはみつめられていたので
　どうしたの？　なんか顔についてる？
　と、つぶやく
　いや、これかられんげちゃんは夏休みがあって秋の文化祭のライブの練習が待ってるって言ってたっけ？
　うん、きなこちゃんは夏休みはまた病院に行かなくちゃいけないんだっけ？
　うん、まあ忙しくなって会えなくなっても仕方ないねぇ。あ、あと数行で締めなくちゃいけないんだねぇ。それじゃ

　デュエ以下略！

　デュエルして遊んで終わりじゃい
　と、きなこが言うと、
　あのさ、それじゃ、またねで締めて終わりにしようと思ったけどこの作品、2024年大河ドラマ光る君へとウルトラマンと番組改編で終了になったラジオ番組が元ネタの話が多かったね。ほぼ毎回記念作品みたいな感じだね。ってことで、道長様、嵐が来るわ。をパクった台詞で締めようよ
　と、れんげが言う。ターミネーターの、これは一雨来るぞ、や、ムーミンシリーズの、灯台の明かりが灯っていたのです、のような未来を予感させる台詞。遊戯王で例えると、
レベル4のモンスターが二体。来るぞ、遊馬
　で、話が終わる感じだ。それからきなこはしばらく考えて、れんげが合図をする
　準備はできた？　それじゃ一言どうぞ
　では、短歌いきます
　備蓄米　手に入らない　困ったな　記念に食べる　一人焼肉
　肉とライスは最高だね
　バイバイ！
　あじゃじゃした
　それじゃ肉食うぞー！
　おー！
　二人はこぶしを突き上げた

終わり

あとがき

　52話を予定してたけどやめました。きなことれんげが本音でぶつかり合うのもやめました。きなこの日頃の素行の悪さやれんげの貧乏など腹がたって殴りあいとか、自分の求めてる優しさと相手の求めてる優しさの不一致とか。でも偶然、週刊誌を立ち読みして打ちきりの漫画をみたら焼肉エンドだったみたいなそんな感じにしました。次回作は知らんけど、知らんのかいっ！　次にやってみたいのは、ダサくて熱い音楽、簡単で気持ちいいゴルフ、色気のあるうまそうな食事シーンとかそんなのです