第１６話　目標　作：BLUE忍者

手頃な水辺で僕らは食事をとり、夜明けを待つことにした。

ひょうすべ「ここまでで新しく手に入れたカードは7枚か」

カイ夫「そうですね。　その中でもマザーさんのカードは強力ですね……」

ひょうすべ「伏せカード除去できるのは強いよな！　魔法カードのサルベージも使えそうだ」

カイ夫「なぜマザーさんは僕たちに力を貸してくれたのでしょうか……。　僕が海皇の一味である可能性もあるのに……」

ひょうすべ「考えたって仕方ないだろ！　とにかく今は氷結界の力を借りて、海皇軍からサイコ・カッパーを助け出して、海竜神様のお告げ通りアトランティスに向かって！　考えてる暇もないくらいにやる事尽くしだ！」

　おぼろげな月あかりに照らされて、笑顔を浮かべるひょうすべさんの顔がやけに明るく見えた。

カイ夫「ひょうすべさん、ありがとうございます」

ひょうすべ「それにしてもオタマジャクシのカード……これは使えないよな？　カエルとのコンボ前提のカードだしよお……」

カイ夫「そんなことないですよ！　例えばこのマザーブレインの効果。　発動するのに水属性を捨てる必要があるのですが、そのコストを補ってくれます！」

ひょうすべ「ふむ……確かにそうだな。　カイ夫お前いつの間にか一人前のデュエリストになってるな！」

カイ夫「いえいえそんな……！　みんなの支えがあって何とかやれているところですよ」

ひょうすべ「お前の成長が俺も嬉しいよ。　ついでに俺の融合の使い道も考えてくれ！」

カイ夫「難しいですね……。　ひょうすべさん融合モンスターは持っていないんですもんね？」

ひょうすべ「持ってないな。　でも俺が出したカードが融合ってことは必ず使い道があると思うんだがなあ」

カイ夫「ですよね……。　僕が持っている融合モンスターもガエル・サンデスだけですし」

ひょうすべ「カイ夫……笑わないで聞いてくれるか？」

　ひょうすべさんが神妙な面持ちで言った。

ひょうすべ「俺も話半分にしか信じていないんだが、融合にまつわる言い伝えがあってな」

　ゴホンと咳払いして続けた。

ひょうすべ「『カッパの親分が魔法のランプを擦りし時、嵐を起こす大海蛇となりて大津波を起こしすべてを飲み込む』といわれているんだ」

カイ夫「カッパの親分って……もしかしてひょうすべさんのこと？」

ひょうすべ「いや、それは分からない。　今までにそれっぽいランプを見つけては擦ったり融合を試みたりしてきたが上手くいかなかった。　だがそれは、俺にカッパの親分としての素質が無いからなんじゃないかと思うんだよな……」

　ひょうすべさんは自信なさげにうつむいた。

カイ夫「そんなことないですよ！　きっと、ひょうすべさんが力を付けた時……カードに素質を認められた時に、カードは応えてくれるはずです」

ひょうすべ「ふっ……そうかもな」

　星空を見上げたひょうすべさんの目はどこかうるんでいるように見えた。

ひょうすべ「ありがとうカイ夫。　この話を笑わずに聞いてくれたのはお前が初めてだ」

カイ夫「笑わないですよ！　そういう何か目標を持っているのってかっこいいです。　僕なんかは自分が誰なのか……どこへ進めばいいのか。　それすらわからないので」

ひょうすべ「よし！　そしたらここからの旅は俺たちの目標を達成するってのも目指していこうぜ！」

カイ夫「え、でも僕は目標なんて……」

ひょうすべ「まずは記憶を取り戻すのが目標！　それでいいだろ」

カイ夫「……そうですね！」

ひょうすべ「じゃあこの話はここで終わり！　デッキも出来たことだし、今日はもう休もうぜ」

カイ夫「はい！　……あれ、ひょうすべさん。　なんだか地響きのような音が聞こえませんか？」

ひょうすべ「確かに……って、だんだん大きくなってないか？」

　次第に大きくなる地響きに合わせて心臓の鼓動が早くなった。