第９話　水は炎に強いけど　作：BLUE忍者

え……？　どう見てもひょうすべさんの圧勝だったのに。

ひょうすべ「どこに目つけてんだ？　俺が負けるような戦況だったか！？」

マザー「ふう……。　あなたはもう少し自分の力を知るべきです。　このあと大きな仕事を任されるかもしれないというのに……」

カイ夫「え？　それって、どういうこと？」

＊「それはわしから話そう」

マザー「シーラカンスさま！　こんな上海に来て大丈夫なのですか！？」

シーラ「うむ。　そんなことより、話を続けようじゃないか」

　シーラカンスさんはマザーブレインさんを押しのけ、僕たちの前にずしりと音を立てて居座った。

シーラ「ふむ。　話というのはの……今この海が大きな危機にさらされているということじゃ」

カイ夫「え……危機って？」

シーラ「今この海は戦争寸前の状態なのじゃ……。　誰かがちょっと揺らすだけで爆発してしまうほどにの」

ひょうすべ「そうなのか？　そんなふうには感じないけどな……」

シーラ「うむ。　今のところはギリギリで膠着状態を保っておる。　その一つには氷結界の影響が大きいのじゃ」

カイ夫「氷結界……？」

マザー「過去に海で暴れていたドラゴンを封印し、それを守り続けている一族です」

シーラ「左様。　氷結界に封印されることを恐れ、その他の海竜たちはむやみに悪さをできない状態なのじゃ」

ひょうすべ「じゃあ大丈夫じゃん！」

シーラ「それがそうもいかんのじゃ……。　氷結界が何者かに襲撃される事態が相次いで起こっていて、その力が弱まっていることをいいことに暴れ出してる輩が多々出てきているのじゃ」

　フライングフィッシュさんを狙ったならず者たちもその一人なのかな……。

シーラ「その中でも二つの勢力が特に力を増しておってな……」

　マザーさんが神妙な顔で深く頷いた。

シーラ「一方は海の暴れ龍。　巨体ながらも大いなる知性を持ち、大軍を率いて海の中を駆け巡る」

ひょうすべ（暴れ龍か……。　海竜神さまとどっちが強いんかな）

シーラ「もう一方は炎を纏う獣。　その爆発的な力でこの海を制圧しようとしておる。　こっちも大軍を率いておる」

ひょうすべ「炎？　ハッ！　そいつがどんなに強いっても、海の大水を前にしたら手も足も出ないだろ」

シーラ「本当にそうならいいのじゃが……」

カイ夫「でも、そんなことをなんで僕たちに話したの？」

シーラ「ああ、それはのう。　……少し頼みがあるのじゃよ」

　シーラカンスさんは大きく間を取ってからこう言った。

シーラ「この対策を考えたのじゃが、それを実行できる者がなかなか現れなくての……。　お主らに龍の力を借りてきて欲しいのじゃ」

ひょうすべ「龍の力？　どうすりゃいいんだよ？」

シーラ「氷結界に行って来てもらいたいのじゃ。　そこになら龍の力があると思うからのう」

ひょうすべ「龍の力って……封印を解くってことかよ！？」

マザー「まさにその通りです。　今パワーバランス崩れかけているこの海には大きな力が必要なのです。　たとえそれが、長年封印されてきた龍だとしても……」

カイ夫「封印されてる龍って悪いことしたから封印されてるんですよね？　それを解いても味方してくれるか分からないですよね？」

シーラ「それを味方にできないようではどのみちこの海はおしまいじゃ……。　その力を得たらまたここに戻ってこい。　その時にはワシの力授けよう……」

　そういうとシーラカンスさんは海の中へと消えていった……。