朝霧地影 ９歳の冬　作：はにわ改

　
朝霧 地影（あさぎり ちかげ）
９月２８日生まれ 天秤座

本編（遊戯王トライフォース）では主人公透矢が転入してきたデュエル・アカデミアの、生徒会書記にして四天王の１人。
真面目実直、生徒会に於ける仕事の大半を一手に受け持ちながら、アカデミア内・トップデュエリストとして、皆が納得する実力の持ち主。

そんな彼女のデュエルを一言で表現するなら『受け』。
豊富なカウンター罠カードで相手の行動を潰し、じわじわと差を拡げていくスタイル。
優勢になってからも決して急がず、自分から転ぶという事は決してない。
真綿で首を締めるような彼女のデュエルを『冷血』と言う者や、『二度と戦いたくない』と口にする者もいる。

だが彼女が『受け』を主体とするデッキを使用するのは、知られざる理由があった。
その理由とは彼女がデュエル・アカデミア初等部だった頃にまで、話が遡ることになるーー。




ーー時は８年前。
朝霧地影・９歳。
当時はトレードマークである眼鏡もかけておらず、性格も現在を知る者からは想像出来ない程の明るく活発な女の子であった。

そんな地影がデュエル・モンスターズと出会ったのはそこから更に遡ること１年前の８歳。

「ーーねー、ねー？
二人で何してるの？」

ーー学校のお昼休み。
同級生の男の子二人がカードを拡げあって、楽しそうにしながら、周りの注目を集めている。
地影も当時はそんな外野の１人に過ぎなかった。

『えー、知らないのー？
“デュエル・モンスターズ”っていうゲームだよ』

「でゅえる、もんすたー……ず？」

『ほらほら、見てみろよ？
色んなカードを集めてさ、二人で戦うんだよ』

『そーそー、今、めっちゃ流行ってんだぜ、これ！』

地影は渡されたカードをまじまじと見る。
カード全体のおよそ６割を使った絵柄と、下側に何やら文章が書かれている。
当然、初めて見る地影にはさっぱり分からない。
だが絵柄には男の子が喜びそうな、かっこいいドラゴンや戦士が描かれているかと思えば、可愛らしい女の子や動物なども見られ、非常に多種多様。

地影はそんな二人のデュエルを見る内に興味を持ち、
貯めたお小遣いでカードを買い、初めての『デッキ』を作り上げる。
そして初めてのデュエルーー。
負けはしたものの、面白さを見出だした地影は、どんどんその魅力に溺れていった。

数ヶ月経つ頃には、地影がクラスで１番、というまで強くなっており、
攻撃力の高いモンスターで勝つという爽快感が病みつきになり、タイプは正に『攻め一辺倒』。
時折放映されるプロアマのデュエルにも釘付けになり、手に汗握る展開が子供心に感動を覚えさせ、益々のめり込んでいくのだった。

ーー転機は小学校３年生に上がったばかりの春。
都内に当時はまだまだ小規模の運営だったデュエル・アカデミアが創設。
生徒募集の触れ込みを見た地影は、両親に自身の熱い気持ちを訴え、最後は両親が折れる形で無事にアカデミア入学を果たす。
デュエル・モンスターズは様々な企業と連携して急成長を遂げているのは、それに興味が無い者でも知られた話であり、将来に活かせたらという両親の思いもあった。

そこに集まった同年代の子たちは皆、自分と同じゲームを心から楽しむ仲間たち。
そんな仲間たちとこれから共に学べる事に期待と嬉しさはあれど、不安などあろうはずがなかった。

ーーそう。
念願のこのデュエル・アカデミアで大きな『挫折』を味わうなどーー想像もしていなかったのである。