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HOME > 遊戯王SS一覧 > 朝霧地影 受けに目覚める

朝霧地影 受けに目覚める 作:はにわ改

 
「ーーフィニッシュ!
リバース・カード、『岩投げアタック』を発動!」

『ーーうわぁああああああ!』

膝を付いた対戦相手を、地影が眼鏡を直しながら見下ろす。

勝負、決す。
今まで使っていたデッキをリセットし、0から作り上げた地影の新しいデッキ。
初陣でありながら、彼女の構想通りに相手の動きを完封した上で、同時に相手のライフを削りきった。

ーーそれを見守っていた生徒、そして教諭すらも思わず地影に駆け寄る。
何しろこれが地影がアカデミアに入学して、初めての勝利。
皆が皆、地影を一同に祝福してくれたのだ。

ーーが、地影の笑顔はぎこちない。
心から喜んではいない。

それは当然だ。
何故ならば、この新しいデッキは自分が本当に『やりたいこと』の調整でしかないからである。

ともあれ、入学二年目にしての初勝利。
そして地影はここから今までの鬱憤を晴らすかのように勝ち出すのである。

『攻め』から『受け』へと180度切り替えたデッキ。
それは地影本来の『スタイル』と合致したかのように、鉄壁の守備を作り上げた。

『これでどうだ!
モンスター1体をリリースして、“サイコ・ショッカー”を召か……』

「ーー抜かりなく!
リバース・カウンター、『神の宣告』!」

ーー潰す。
さながら相手の動きを読んでいるかのように、『相手が最もしたいこと』、『相手がしなければならないこと』を見極め、それをシャットアウトする。

『く、くそ……何も通らねぇ』

「私はカードを1枚セットして、ターンを終了」

『せ、攻めないのか?
こっちのモンスターゾーンはがら空きだぜ!?』

地影は攻めない。
自分からは決して動かない。
さながら、巨大な一枚岩のように。
相手は懸命にそれを切り崩そうとするが、まるで揺るがすことは出来ない。
次第に疲弊する相手。
だがそれでも地影は『攻めない』。
完全に盤面を制圧したとしても、地影は攻めない。
じわじわ、じわじわと効果ダメージで追い詰めていき、最後は完封勝利を果たす。
地味だが堅実に堅実を重ねたその地影の守備を破れる者は誰一人としていなかった。

ーーそして、それから半年。
勝ちという勝ちを積み重ねた地影は、遂にオベリスク・ブルーへと駆け上がる。
元々、学科で優秀な成績を修めていた地影が、実技試験においても結果を出したのだから、名実共に相応しいクラスになったと言えた。

ーーしかし。

その頃から地影の表情には起伏が少なくなっていた。
オベリスク・ブルーに上がっても。
デュエルに勝ち続けても。
そしてトップデュエリストと名指される事になっても。

ーー地影の表情に笑顔はなかった。

確かに勝てるのは嬉しい。

けれどこれは『自分のやりたい』デュエルではない。

今の『受け』のデッキはあくまでそこにある善悪を学び、ひいては『攻め』に活かすためのもの。
だから地影は頃合いを見て、また『攻め』を主体とするデッキを作るつもりでいた。

だがーー。

「駄目……こんなデッキではーー」

組み立てたばかりの『攻め』のデッキを崩す地影。
自分の中で結論付けてしまったのだ。
もしこの『攻め』のデッキと今使っている『受け』のデッキを戦わせたなら、間違いなく『受け』が勝つことを。
それは言い過ぎにしても、勝つビジョンが見えてこない。

更に言えば『自信』が持てなかったのだ。

今まで負け続けてきた『攻め』主体のデッキ。
そして未だ負け知らずの『受け』主体のデッキ。

自信の持てない『攻め』のデッキを使うぐらいなら、『受け』のデッキを使うべきなのではないか。

「でも……私は……」

ーー攻めたい。

高い攻撃力を持つモンスターで、豪快に相手のライフを削り、気持ちよく勝利したい。

けれどーー。

地影は人知れず悩み続けた。
だがそうしながらも地影は勝ち続けるのである。
納得のいかない、調整でしかないはずの『受け』のデッキでーー。
淡々と、作業をこなすかのように。
地影は勝ち続けたーー。



「私がーー代表、ですか?」

入学3年目。
初等部卒業を数ヶ月先に控えた地影にある話が舞い込む。

それはまだ数は少ないが、国内アカデミアによるトーナメント戦。
その代表選手として地影が選抜されたのであった。

無論断る理由はないから、地影はその場で出場を決める。
かくして地影は国内対抗デュエルトーナメントに名を連ねたのだった。

そこにある自分とは別の、1つの名前ーー。

ーー『神楽坂 刹那』。

後に目標する人物として名を挙げるまでになる、刹那との出会い。
そしてその出会いこそが、彼女の後々の波乱に満ちた未来を決定付けるとは、この時は地影も想像だにしていなかった。
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