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24:7つの国、7人の王、7つの宝具 作:天
「なんであんたがここにいる!?」
セリナと出会った翌日の朝、レッド寮の玄関でユーイは目を見開いていた。
目の前にいるのは、そのセリナである。
「おはよう、ユーイ。そんなの迎えに来たに決まってるじゃない」
彼女は春の陽気さながらの晴れやかな笑顔。
対してユーイはバツの悪げな表情だ。
「迎えなんて頼んじゃあいない・・・」
セリナは当然このレッド寮に住んでいるわけではない。
女子の寮生はまとめて女子寮へ入寮することになっている。貴族出身の男子生徒は寮へ入ることを嫌う傾向にあるらしいが、女子は逆にほとんどが女子寮に入ることを選ぶらしい。それはセキュリティの面がしっかりしていることと、アカデミア三女神がみんな女子寮に入っていることが理由。女神達は女子からの人気も高い。
「授業初日から女の子同伴なんて、意外と隅におけないね」
ユーイの隣ではルームメイトの丸藤カケルがニヒヒと悪戯げに笑っている。
「そんなんじゃ・・・」と弁明しようとするが、カケルは聞く耳持たず「じゃあボク先に出るから」と足早に登校していった。
そう、今日からついにデュエル・アカデミアの授業が開始となり、いわゆる学園生活というやつが始まるのだ。
ユーイも期待に胸を膨らませていたというのに、冒頭からそれに釘を刺された気分だ。
「で、本当に何でいるんだい?」
げんなりした表情で靴を履きながらユーイが問う。
「イヤだな、深読みしすぎだよ。本当にただ一緒に登校したくて迎えに来ただけ。言ったろ、キミに興味があるんだって。できるだけ一緒にいてキミを観察したいんだ」
あっけらかんと答えるセリナ。その表情からは邪気は感じられない。
しかし『観察』されるのはあまり良い気分ではないのは確かだ。
仕方なくユーイは息を吐く。
「分かったよ。ただ普通に友達ってことで接してもらっていいか?」
「もちろん!」
セリナは嬉しそうに笑む。その笑顔に邪気はない。
最初に会った時は彼女が何者なのかよく分からなかったせいで得体の知れない人物に見えたが、こうしていれば普通の女の子だ。妖艶な態度も演出だったのか、多少男っぽいが昨日よりかなり歳相応といった感じに軟化している。
(彼女達の組織が何を画策しているのかまだ分からないが、彼女自身は悪い人間じゃあなさそうだし、変な動きをしなければ問題ないだろう)
ユーイはそう自分を納得させ、セリナを伴って寮を出た。
ー ー ー ー ー ー ー ー
二人でしばらく歩いていると、見知った人達に会った。
「あ、あら奇遇ね。ご、ご機嫌はいかが?」
生徒会長の影丸ユウリと副会長の十六夜アキラだ。
朝の光の中、木陰に立ち並ぶ美少女二人。さすがに絵になる。
しかしレッド寮は学園の敷地では端に位置する。対して彼女達の女子寮は学園から目と鼻の先。セリナのようにわざわざレッド寮まで来る用事がなければ、登校するのにこんなところを通る必要はない。しかも誰かを待っていたかのように二人共立ち止まっていたようだが。
「二人共、こんなところで何を?」
「べ、別にあなたを待っていたわけではないのよッ!?た、ただ何となく今日はこちらを通ってみたくなっただけで・・・!」
何故かしどろもどろのユウリ。心なしか顔も赤い気がする。生徒会の仕事が忙しく、きちんと睡眠が取れていないのかもしれない。心配だ。
ユーイがユウリに近付き、顔色を確かめようと覗き込む。
「大丈夫か?体調が悪いようなら、きちんと休んだ方がいい」
「だ、大丈夫、大丈夫ですわ!だ、だからそんなに近付いては・・・!」
ユウリの顔はますます赤くなる。
しかし心配されるのを本気で嫌がっているわけでもなさそう。
そんな二人のやり取りを、アキラはため息をつきながら、セリナは獲物を見据える猫のように鋭い視線で見ている。
おもむろに口を開いたのはセリナだった。
「・・・で、まさかお二人共、我々と一緒に登校なさるおつもりで?」
気のせいかその声はずいぶんと冷えているように思える。さっきまで不思議なくらい上機嫌だったのに。
その冷気はユウリに向けられたものだったが、それを遮るようにアキラが割って入った。
「キミは?」
長身のアキラにはセリナも見下ろされる形になる。妙な威圧感。
「オシリス・レッド1年、セリナ・ムーク」
挑むような目付きでセリナが答える。
ユーイとはずいぶん打ち解けたように見えたが、彼女は勝ち気な性格なのかどうやら他者に対しては突き放した物言いが目立つ。
「ああ、キミがムーク家の―――」
「お二人で!ご一緒に!ご登校とは!あなた、武藤くんとは入学以前からの『お友達』かしら!?」
情報はすでに入っていたらしいアキラの言葉を、今度はユウリが遮って前に出る。
彼女の言葉に含まれたトゲと目から放たれる火花が見えた気がするのは、《捕食植物キメラフレシア》や《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の印象が強く残るユーイの気のせいだろう。
その視線を正面から受け止めて、セリナは恭しく礼をする。
「いえ、武藤ユーイくんと知り合ったのはつい昨日で御座います、王女殿下。しかし奇妙にもよく馬が合いまして、本日からこうして一緒に登校する仲となった次第です」
その態度に目を丸くしたのはユーイだった。
「王女殿下!?」
ユーイはユウリがこの国の王女だということなど知るよしもなかった。それをセリナが暴露した形だ。
ユウリは「してやられた」と顔を歪め、セリナは「してやったり」と口の端を上げる。そして白々しくも続けた。
「なんだ、知らなかったのか、ユーイ。この影丸ユウリ様は我がデュエル・アカデミア生徒会長にして、我が国の第八王女殿下であらせられる。本来ならば我々とは『住む世界の違う』お方なんだ」
「くッ・・・、貴様・・・!」
あからさまに『自分達とは違う』ということを強調して話すセリナに、ユウリは苦々しげな目を向ける。
ユーイからすれば『七星候』の一員であるセリナも充分身分の違う相手なのだが、しかし王族となればまた別格。おいそれと近付いて良いはずもない。それをセリナはユーイに印象付けたのだ。
「確かに会長は王女であらせられるが、今は同じ学生だ、そう敬遠せずとも良い。それに過分な礼も必要ない」
これは分が悪いと感じたのか、アキラが助け船を出す。が、自分の身分をユーイに知られたユウリのダメージはすでにキャパを超えていた。
「学友としての・・・お二人の・・・お邪魔をしては・・・申し訳ないわ・・・。い、行きましょう・・・アキラ」
ユウリはどこかフラフラと歩き出す。
「え、あ・・・学園はそちらではありませんよ、会長!」
慌ててアキラもその後を追った。
「何だったんだ、一体・・・。大丈夫かよ」
残されたユーイは戸惑い、セリナは小さく「勝った!」とガッツポーズをしていた。
ー ー ー ー ー ー ー ー
「何なのッ、あの子はッ!?」
ユウリは苛立ちをぶつけるように乱暴にカバンをソファーに投げつけた。
ここは生徒会長室。登校したユウリとアキラは教室に直行せず、ここに立ち寄っていた。理由は必要な書類を取りにきただけなのだが、周りの目を気にして取り繕うことなく二人が本音で話せる数少ない場所であることから、ユウリの怒りが爆発していた。
「わざとらしく私の素性を武藤くんに明かすことで、私達の間に心理的な距離を作ろうとしたんだわッ!なんて陰険なやり口なのッ!」
目当ての書類を棚から取り出しながら、アキラは呆れ顔。
「相手は1年生だぞ、あの程度可愛いものじゃないか。恋する乙女でもあるまいし・・・」
その瞬間、キーキーと地団駄を踏んでいたユウリの声がピタリと止まった。
「ん・・・?」とアキラがそちらを振り向くと、ユウリは視線を逸らす。その顔は茹で蛸のように真っ赤。
その様子にアキラはある疑念を覚えた。
「ユウリ・・・あなた、まさか・・・」
ユウリはヒューヒューと鳴らない口笛を吹く。しかしもちろん顔は真っ赤なまま。何も誤魔化すことができていない。
アキラは盛大にため息をついて額に手をやる。
「あなた、自分の立場を本当に分かってる?あなたには王女としての責任がある。軽率な行動は慎まなければならない」
王女だから恋をしてはいけないというわけではない。だが王女が自分の恋心を他より優先することは許されない。
諭すようなアキラの言葉に、ユウリはなおも視線は合わせず、しかし少し冷静さは取り戻したのか「そんなこと、分かってるわ」と小さく返す。
「私は私にできることをする。その決意は変わらないわ」
「・・・あなたが何をしようとしているのか、それは訊かない方がいいの?」
そう訊かれると、ユウリは申し訳なさそうに眉を下げた。
「アキラ、あなたはいずれ自分の国に帰る人。背負わなくていい荷物は背負わない方がいいわ。でなければ、荷物の重みに足をとられて自分の家に帰れなくなるから」
そう言うユウリの顔には悲壮な決意が見受けられた。たった今まで恋に舞い上がっていたのと同一人物には思えない変わり様だ。
(あなたは一体、何を考えているの・・・?)
アキラはこの2年間、親友として接してきたユウリの心が分からず悩む。
(ユウリ・・・あなたが気付いているかどうか分からないけれど、あなたはその決意を『荷物』と言った。『荷物』とは『負担』だということ。私には背負わなくていいと言うけれど、ではあなたは?あなたはその『荷物』を背負って、自分の家に帰れるの?)
自由奔放に見えるユウリが、ずっと何かと一人で闘い続けているのは、何となく分かっている。そしてそれにアキラを巻き込まないようにしていることも知っている。
それでもアキラはユウリを親友だと思っている。親友を心配することしかできない自分に、アキラは心を痛めているのだ。
ー ー ー ー ー ー ー ー
「え~、このデュエル・アカデミアに見事入学した皆さんなら~、当然ご存知だと思いますが~、この世界は7つの国で~、構成されております」
ユーイ達が席についた講義室の教壇で、壮年の男性教師がそう話し始めた。
着ている制服の色は黄色。ラー・イエローの担当教諭である証だ。確か名前は『樺山』だったか。小柄で妙に存在感の薄い男だが、近寄ると何故かふわりとスパイスの香りがするらしい。担当教科は歴史。そして今まさにその講義中だ。
アカデミアの授業は午前中が一般教養とデュエル講座の座学、午後が実技という風に分けられている。今はその四限目。これが終われば昼休みということもあり、生徒諸君の集中力も切れかけている。
「1つの大きな大陸に6つの国~、それと1つの島国ですね~」
それに拍車をかけるような樺山先生の間延びした口調が相まって、ユーイも「ふわぁ」と大あくび。
「これらの国を~まとめているのが~大陸の中央に位置し~偉大なる決闘王が治める『錘の国』~。それを取り囲むように~我が国を含む~5ヶ国が位置します~。北から時計回りに~『輪の国』~『首飾りの国』~『秤の国』~『杖の国』~『鍵の国』~。そして我が『秤の国』と『首飾りの国』の遠洋に~唯一の島国~『眼の国』ですね~。これらの国には~それぞれ王がいらっしゃり~これらを治められていらっしゃるんですね~」
彼が話しているのは、この世界の構図の話。
この世界には7つの国がある。
『錘の国』
『輪の国』
『首飾りの国』
『秤の国』
『杖の国』
『鍵の国』
『眼の国』
1つの巨大な大陸に前の6つの国があり、最後の1つが島国だ。
『錘の国』以外の国はそれぞれの国王が治めているが、それらは言わば『錘の国』の従属国であり、世界の全権は『錘の国』の国王=決闘王が握っている。
それがこの世界の構図ということらしい。
「へぇ」とユーイは小さく呟く。
この国の内、ユーイが知っているのは『首飾りの国』とこの『秤の国』だけだ。他の国には(記憶がある限りは)行ったことがない。
「俺は親父と一緒に『鍵の国』と『眼の国』以外には行ったことがあるドン」
隣の席のケンザンが小声で言う。
ケンザンは考古学者の親父さんと一緒にこれまで様々な国を旅をしてきたのだろう。
その経験はユーイにとって羨ましいものだ。ユーイもいつかはこの目で世界を見てみたいと思う。
「おいら達の故郷の『杖の国』も良いところジャン!いつかユーイも来てくれよ!」
『杖の国』出身のリュウアとリュウカも後ろの席からニュッと顔を出す。
「正確には『良いところになった』だけどね。私達の国に王様が立ったのは数年前だから」
リュウカが補足してにこりと笑む。
「王様が立った?それまではどうしてたんだ?」
ユーイが訊くと彼女の顔が少し曇る。
セリナが説明してくれる。
「『杖の国』はね、数年前まで内戦をしていたの。上流階級と下流階級との間でね。今の王はその内戦を治めた英雄王だって話よ」
セリナがそう説明するとリュウカは黙って頷いた。彼女の暗い表情が少し気にはなったが、それを訊くのは詮索になる気がしてユーイは相づちを打つだけに留める。
「お~い、な~にを話しているのかな~?授業中は私語厳禁ですよ~。そんなにしゃべりたいなら~剣山くん~各国の国名がこんな風に付けられているのは何故か~答えてみなさ~い」
「えっ、俺ザウルス!?」
樺山に指名されたケンザンが慌てて立ち上がる。
指名されたのがケンザンで助かった。正直、ユーイにも答えは分からない。
「う・・・あ・・・分かりません」
なんとか頭を捻って絞り出そうとするが、ケンザンは素直に白旗を上げた。
それを見越していたかのように樺山は頷き、「では~え~リュウカさん~」と今度はリュウカに矛先を向ける。
リュウカは返事をし、すっと立ち上がって答えた。
「各国の名前はそれぞれに伝わる『宝具』に由来して名付けられています」
彼女が苦もなく答えると、またも予期していたように樺山は「よろしい」と頷く。
「いま~説明した7つの国には~それぞれに1つずつ~『宝具』と呼ばれる存在が~あります~。『宝具』は~国を守る~象徴的な存在であり~その最大の役目は~『王を選ぶ』こと~」
「王を選ぶ・・・?」
「はい~。『王』には~誰でもなれるというわけでは~ありません~。『王』になる者の条件とは~魔力の多さや~デュエルの強さ~ましてや王の子として生まれることなどではなく~ただ『資格』があるかないか~『王器』があるかないかだけなのです~。そして~その有無を見定めるのが~『宝具』なのです~」
樺山はそう言ってその話を締めくくったが、ユーイは目を見開いて頭を抱えた。
ー ー ー ー ー ー ー ー
授業が終わってもユーイは頭を抱えたままだった。
「なぁ、さっきのってつまり『宝具』に選ばれなきゃ、どんなに強くても決闘王にはなれないってことだよな?」
ユーイの夢は決闘王になること。そして決闘王とは『錘の国』の王のことだ。
ユーイは決闘王になるという夢に近付くためにこのデュエル・アカデミアに入学した。それはつまり決闘王になるには、もっとデュエルの腕を磨かなくてはならないと考えたからだ。しかしそのアカデミアで教鞭を取る樺山が王になるのにデュエルの腕は関係ないと言う。
「さすがにそれは常識ザウルス」
問われたケンザンが事もなげに答える。
どうやらユーイはとんでもない思い違いをしていたらしい。
(そういや最初にシクス・タイタンと出会ったとき、この話をして笑われたっけな・・・。あの時、どうしてもっと真剣に話を聞かなかったのか)
しかしいつまでも済んでしまったことを嘆いていても始まらない。
それにデュエルの腕を磨くことは決闘王の絶対条件ではないというだけで、それを目指すためにプラスにこそなれマイナスにはなるまい。
「決闘王――――つまり『錘の国』の王になるには、その国の『宝具』である『錘の宝具』に認められなければならないザウルス。でも今は決闘王も在位中だドン。『錘の宝具』が他の人間を選ぶとは思えないザウルス」
「そういうことは絶対にないのか?」
続けるケンザンにユーイが問う。
訊いているのは、王がいるのに『宝具』が他の王に相応しい人物を見定めることはないのかということ。
「なくはないわよ」と、それに答えたのはセリナ。
「あるのか?」
「稀なケースではあるけどね」
セリナはそう前置きして窓の外を見る。
そこからは王都の町並みがよく見えた。
「『宝具』は王に相応しい『王器』を持った人物を見つけて王にする。でも王となった人物が、いつまでも清廉潔白で心優しく政治に長けた人物とは限らない。心に邪心があっても『王器』があれば『宝具』はその人を王にするし、初めは正しい王様でも年月とともに人は変わるもの、やがて暗君となることもある。そうして王が民を苦しめ国を省みないようになると、王は『宝具』の信頼を失い、『宝具』は次の王を探してその王の元を去ってしまうと言われている。これを『道を失う』と言うらしいわ」
「『道を失う』・・・」
初めて聞いた話だが、ユーイはどこかでその言葉を聞いたような気がした。しかし、どこで聞いたのかは思い出せない。
そんなユーイに目を向けながらセリナはさらに続ける。
「王の元を『宝具』が去ると、例外なくその国は荒れる。まるで病を患ったように。ちょうど・・・そうね・・・今のこの国のように」
「おいッ!」
ケンザンがセリナの言葉を怒鳴り声で遮る。
「滅多なことを言うもんじゃないザウルス。『七星候』の一族のあんたがそんなことを言ってるのを聞いたら、他の生徒が動揺するドン」
周りを見回すと確かにまだ少なくない数の生徒が残っていた。
ケンザンにしてはよく気がついたものだ。それだけ今のこの国にとってこの話がデリケートな問題だということか。
ユーイが感心していると、そのケンザンの腹がグゥーと不平を主張した。
確かにもう昼休みの時間だ。もう少し詳しい話を聞きたいが、昼食を算段しなければならない。
「とにかくここじゃなんだドン。昼飯ついでに場所を移すザウルス。お前ら、昼飯のあてはあるザウルス?」
ユーイが首を振ると、ケンザンはにんまり笑う。
「実は面白い話を聞いたドン。なんでもここの購買にどんな具が当たるか分からないドローパンとかいうパンが売ってるらしいザウルス。幻の大当たりと言われている黄金パンは絶品という噂だドン。みんなで買ってみるザウルス!」
そいつは確かに面白そうだ。ドローに全てを賭ける決闘者にとっては運試しにもなる。
昼休みに予定を入れているというリュウアとリュウカと別れ、ユーイ・ケンザン・セリナの三人は購買に行ってみることにした。
ー ー ー ー ー ー ー ー
セリナと出会った翌日の朝、レッド寮の玄関でユーイは目を見開いていた。
目の前にいるのは、そのセリナである。
「おはよう、ユーイ。そんなの迎えに来たに決まってるじゃない」
彼女は春の陽気さながらの晴れやかな笑顔。
対してユーイはバツの悪げな表情だ。
「迎えなんて頼んじゃあいない・・・」
セリナは当然このレッド寮に住んでいるわけではない。
女子の寮生はまとめて女子寮へ入寮することになっている。貴族出身の男子生徒は寮へ入ることを嫌う傾向にあるらしいが、女子は逆にほとんどが女子寮に入ることを選ぶらしい。それはセキュリティの面がしっかりしていることと、アカデミア三女神がみんな女子寮に入っていることが理由。女神達は女子からの人気も高い。
「授業初日から女の子同伴なんて、意外と隅におけないね」
ユーイの隣ではルームメイトの丸藤カケルがニヒヒと悪戯げに笑っている。
「そんなんじゃ・・・」と弁明しようとするが、カケルは聞く耳持たず「じゃあボク先に出るから」と足早に登校していった。
そう、今日からついにデュエル・アカデミアの授業が開始となり、いわゆる学園生活というやつが始まるのだ。
ユーイも期待に胸を膨らませていたというのに、冒頭からそれに釘を刺された気分だ。
「で、本当に何でいるんだい?」
げんなりした表情で靴を履きながらユーイが問う。
「イヤだな、深読みしすぎだよ。本当にただ一緒に登校したくて迎えに来ただけ。言ったろ、キミに興味があるんだって。できるだけ一緒にいてキミを観察したいんだ」
あっけらかんと答えるセリナ。その表情からは邪気は感じられない。
しかし『観察』されるのはあまり良い気分ではないのは確かだ。
仕方なくユーイは息を吐く。
「分かったよ。ただ普通に友達ってことで接してもらっていいか?」
「もちろん!」
セリナは嬉しそうに笑む。その笑顔に邪気はない。
最初に会った時は彼女が何者なのかよく分からなかったせいで得体の知れない人物に見えたが、こうしていれば普通の女の子だ。妖艶な態度も演出だったのか、多少男っぽいが昨日よりかなり歳相応といった感じに軟化している。
(彼女達の組織が何を画策しているのかまだ分からないが、彼女自身は悪い人間じゃあなさそうだし、変な動きをしなければ問題ないだろう)
ユーイはそう自分を納得させ、セリナを伴って寮を出た。
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二人でしばらく歩いていると、見知った人達に会った。
「あ、あら奇遇ね。ご、ご機嫌はいかが?」
生徒会長の影丸ユウリと副会長の十六夜アキラだ。
朝の光の中、木陰に立ち並ぶ美少女二人。さすがに絵になる。
しかしレッド寮は学園の敷地では端に位置する。対して彼女達の女子寮は学園から目と鼻の先。セリナのようにわざわざレッド寮まで来る用事がなければ、登校するのにこんなところを通る必要はない。しかも誰かを待っていたかのように二人共立ち止まっていたようだが。
「二人共、こんなところで何を?」
「べ、別にあなたを待っていたわけではないのよッ!?た、ただ何となく今日はこちらを通ってみたくなっただけで・・・!」
何故かしどろもどろのユウリ。心なしか顔も赤い気がする。生徒会の仕事が忙しく、きちんと睡眠が取れていないのかもしれない。心配だ。
ユーイがユウリに近付き、顔色を確かめようと覗き込む。
「大丈夫か?体調が悪いようなら、きちんと休んだ方がいい」
「だ、大丈夫、大丈夫ですわ!だ、だからそんなに近付いては・・・!」
ユウリの顔はますます赤くなる。
しかし心配されるのを本気で嫌がっているわけでもなさそう。
そんな二人のやり取りを、アキラはため息をつきながら、セリナは獲物を見据える猫のように鋭い視線で見ている。
おもむろに口を開いたのはセリナだった。
「・・・で、まさかお二人共、我々と一緒に登校なさるおつもりで?」
気のせいかその声はずいぶんと冷えているように思える。さっきまで不思議なくらい上機嫌だったのに。
その冷気はユウリに向けられたものだったが、それを遮るようにアキラが割って入った。
「キミは?」
長身のアキラにはセリナも見下ろされる形になる。妙な威圧感。
「オシリス・レッド1年、セリナ・ムーク」
挑むような目付きでセリナが答える。
ユーイとはずいぶん打ち解けたように見えたが、彼女は勝ち気な性格なのかどうやら他者に対しては突き放した物言いが目立つ。
「ああ、キミがムーク家の―――」
「お二人で!ご一緒に!ご登校とは!あなた、武藤くんとは入学以前からの『お友達』かしら!?」
情報はすでに入っていたらしいアキラの言葉を、今度はユウリが遮って前に出る。
彼女の言葉に含まれたトゲと目から放たれる火花が見えた気がするのは、《捕食植物キメラフレシア》や《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の印象が強く残るユーイの気のせいだろう。
その視線を正面から受け止めて、セリナは恭しく礼をする。
「いえ、武藤ユーイくんと知り合ったのはつい昨日で御座います、王女殿下。しかし奇妙にもよく馬が合いまして、本日からこうして一緒に登校する仲となった次第です」
その態度に目を丸くしたのはユーイだった。
「王女殿下!?」
ユーイはユウリがこの国の王女だということなど知るよしもなかった。それをセリナが暴露した形だ。
ユウリは「してやられた」と顔を歪め、セリナは「してやったり」と口の端を上げる。そして白々しくも続けた。
「なんだ、知らなかったのか、ユーイ。この影丸ユウリ様は我がデュエル・アカデミア生徒会長にして、我が国の第八王女殿下であらせられる。本来ならば我々とは『住む世界の違う』お方なんだ」
「くッ・・・、貴様・・・!」
あからさまに『自分達とは違う』ということを強調して話すセリナに、ユウリは苦々しげな目を向ける。
ユーイからすれば『七星候』の一員であるセリナも充分身分の違う相手なのだが、しかし王族となればまた別格。おいそれと近付いて良いはずもない。それをセリナはユーイに印象付けたのだ。
「確かに会長は王女であらせられるが、今は同じ学生だ、そう敬遠せずとも良い。それに過分な礼も必要ない」
これは分が悪いと感じたのか、アキラが助け船を出す。が、自分の身分をユーイに知られたユウリのダメージはすでにキャパを超えていた。
「学友としての・・・お二人の・・・お邪魔をしては・・・申し訳ないわ・・・。い、行きましょう・・・アキラ」
ユウリはどこかフラフラと歩き出す。
「え、あ・・・学園はそちらではありませんよ、会長!」
慌ててアキラもその後を追った。
「何だったんだ、一体・・・。大丈夫かよ」
残されたユーイは戸惑い、セリナは小さく「勝った!」とガッツポーズをしていた。
ー ー ー ー ー ー ー ー
「何なのッ、あの子はッ!?」
ユウリは苛立ちをぶつけるように乱暴にカバンをソファーに投げつけた。
ここは生徒会長室。登校したユウリとアキラは教室に直行せず、ここに立ち寄っていた。理由は必要な書類を取りにきただけなのだが、周りの目を気にして取り繕うことなく二人が本音で話せる数少ない場所であることから、ユウリの怒りが爆発していた。
「わざとらしく私の素性を武藤くんに明かすことで、私達の間に心理的な距離を作ろうとしたんだわッ!なんて陰険なやり口なのッ!」
目当ての書類を棚から取り出しながら、アキラは呆れ顔。
「相手は1年生だぞ、あの程度可愛いものじゃないか。恋する乙女でもあるまいし・・・」
その瞬間、キーキーと地団駄を踏んでいたユウリの声がピタリと止まった。
「ん・・・?」とアキラがそちらを振り向くと、ユウリは視線を逸らす。その顔は茹で蛸のように真っ赤。
その様子にアキラはある疑念を覚えた。
「ユウリ・・・あなた、まさか・・・」
ユウリはヒューヒューと鳴らない口笛を吹く。しかしもちろん顔は真っ赤なまま。何も誤魔化すことができていない。
アキラは盛大にため息をついて額に手をやる。
「あなた、自分の立場を本当に分かってる?あなたには王女としての責任がある。軽率な行動は慎まなければならない」
王女だから恋をしてはいけないというわけではない。だが王女が自分の恋心を他より優先することは許されない。
諭すようなアキラの言葉に、ユウリはなおも視線は合わせず、しかし少し冷静さは取り戻したのか「そんなこと、分かってるわ」と小さく返す。
「私は私にできることをする。その決意は変わらないわ」
「・・・あなたが何をしようとしているのか、それは訊かない方がいいの?」
そう訊かれると、ユウリは申し訳なさそうに眉を下げた。
「アキラ、あなたはいずれ自分の国に帰る人。背負わなくていい荷物は背負わない方がいいわ。でなければ、荷物の重みに足をとられて自分の家に帰れなくなるから」
そう言うユウリの顔には悲壮な決意が見受けられた。たった今まで恋に舞い上がっていたのと同一人物には思えない変わり様だ。
(あなたは一体、何を考えているの・・・?)
アキラはこの2年間、親友として接してきたユウリの心が分からず悩む。
(ユウリ・・・あなたが気付いているかどうか分からないけれど、あなたはその決意を『荷物』と言った。『荷物』とは『負担』だということ。私には背負わなくていいと言うけれど、ではあなたは?あなたはその『荷物』を背負って、自分の家に帰れるの?)
自由奔放に見えるユウリが、ずっと何かと一人で闘い続けているのは、何となく分かっている。そしてそれにアキラを巻き込まないようにしていることも知っている。
それでもアキラはユウリを親友だと思っている。親友を心配することしかできない自分に、アキラは心を痛めているのだ。
ー ー ー ー ー ー ー ー
「え~、このデュエル・アカデミアに見事入学した皆さんなら~、当然ご存知だと思いますが~、この世界は7つの国で~、構成されております」
ユーイ達が席についた講義室の教壇で、壮年の男性教師がそう話し始めた。
着ている制服の色は黄色。ラー・イエローの担当教諭である証だ。確か名前は『樺山』だったか。小柄で妙に存在感の薄い男だが、近寄ると何故かふわりとスパイスの香りがするらしい。担当教科は歴史。そして今まさにその講義中だ。
アカデミアの授業は午前中が一般教養とデュエル講座の座学、午後が実技という風に分けられている。今はその四限目。これが終われば昼休みということもあり、生徒諸君の集中力も切れかけている。
「1つの大きな大陸に6つの国~、それと1つの島国ですね~」
それに拍車をかけるような樺山先生の間延びした口調が相まって、ユーイも「ふわぁ」と大あくび。
「これらの国を~まとめているのが~大陸の中央に位置し~偉大なる決闘王が治める『錘の国』~。それを取り囲むように~我が国を含む~5ヶ国が位置します~。北から時計回りに~『輪の国』~『首飾りの国』~『秤の国』~『杖の国』~『鍵の国』~。そして我が『秤の国』と『首飾りの国』の遠洋に~唯一の島国~『眼の国』ですね~。これらの国には~それぞれ王がいらっしゃり~これらを治められていらっしゃるんですね~」
彼が話しているのは、この世界の構図の話。
この世界には7つの国がある。
『錘の国』
『輪の国』
『首飾りの国』
『秤の国』
『杖の国』
『鍵の国』
『眼の国』
1つの巨大な大陸に前の6つの国があり、最後の1つが島国だ。
『錘の国』以外の国はそれぞれの国王が治めているが、それらは言わば『錘の国』の従属国であり、世界の全権は『錘の国』の国王=決闘王が握っている。
それがこの世界の構図ということらしい。
「へぇ」とユーイは小さく呟く。
この国の内、ユーイが知っているのは『首飾りの国』とこの『秤の国』だけだ。他の国には(記憶がある限りは)行ったことがない。
「俺は親父と一緒に『鍵の国』と『眼の国』以外には行ったことがあるドン」
隣の席のケンザンが小声で言う。
ケンザンは考古学者の親父さんと一緒にこれまで様々な国を旅をしてきたのだろう。
その経験はユーイにとって羨ましいものだ。ユーイもいつかはこの目で世界を見てみたいと思う。
「おいら達の故郷の『杖の国』も良いところジャン!いつかユーイも来てくれよ!」
『杖の国』出身のリュウアとリュウカも後ろの席からニュッと顔を出す。
「正確には『良いところになった』だけどね。私達の国に王様が立ったのは数年前だから」
リュウカが補足してにこりと笑む。
「王様が立った?それまではどうしてたんだ?」
ユーイが訊くと彼女の顔が少し曇る。
セリナが説明してくれる。
「『杖の国』はね、数年前まで内戦をしていたの。上流階級と下流階級との間でね。今の王はその内戦を治めた英雄王だって話よ」
セリナがそう説明するとリュウカは黙って頷いた。彼女の暗い表情が少し気にはなったが、それを訊くのは詮索になる気がしてユーイは相づちを打つだけに留める。
「お~い、な~にを話しているのかな~?授業中は私語厳禁ですよ~。そんなにしゃべりたいなら~剣山くん~各国の国名がこんな風に付けられているのは何故か~答えてみなさ~い」
「えっ、俺ザウルス!?」
樺山に指名されたケンザンが慌てて立ち上がる。
指名されたのがケンザンで助かった。正直、ユーイにも答えは分からない。
「う・・・あ・・・分かりません」
なんとか頭を捻って絞り出そうとするが、ケンザンは素直に白旗を上げた。
それを見越していたかのように樺山は頷き、「では~え~リュウカさん~」と今度はリュウカに矛先を向ける。
リュウカは返事をし、すっと立ち上がって答えた。
「各国の名前はそれぞれに伝わる『宝具』に由来して名付けられています」
彼女が苦もなく答えると、またも予期していたように樺山は「よろしい」と頷く。
「いま~説明した7つの国には~それぞれに1つずつ~『宝具』と呼ばれる存在が~あります~。『宝具』は~国を守る~象徴的な存在であり~その最大の役目は~『王を選ぶ』こと~」
「王を選ぶ・・・?」
「はい~。『王』には~誰でもなれるというわけでは~ありません~。『王』になる者の条件とは~魔力の多さや~デュエルの強さ~ましてや王の子として生まれることなどではなく~ただ『資格』があるかないか~『王器』があるかないかだけなのです~。そして~その有無を見定めるのが~『宝具』なのです~」
樺山はそう言ってその話を締めくくったが、ユーイは目を見開いて頭を抱えた。
ー ー ー ー ー ー ー ー
授業が終わってもユーイは頭を抱えたままだった。
「なぁ、さっきのってつまり『宝具』に選ばれなきゃ、どんなに強くても決闘王にはなれないってことだよな?」
ユーイの夢は決闘王になること。そして決闘王とは『錘の国』の王のことだ。
ユーイは決闘王になるという夢に近付くためにこのデュエル・アカデミアに入学した。それはつまり決闘王になるには、もっとデュエルの腕を磨かなくてはならないと考えたからだ。しかしそのアカデミアで教鞭を取る樺山が王になるのにデュエルの腕は関係ないと言う。
「さすがにそれは常識ザウルス」
問われたケンザンが事もなげに答える。
どうやらユーイはとんでもない思い違いをしていたらしい。
(そういや最初にシクス・タイタンと出会ったとき、この話をして笑われたっけな・・・。あの時、どうしてもっと真剣に話を聞かなかったのか)
しかしいつまでも済んでしまったことを嘆いていても始まらない。
それにデュエルの腕を磨くことは決闘王の絶対条件ではないというだけで、それを目指すためにプラスにこそなれマイナスにはなるまい。
「決闘王――――つまり『錘の国』の王になるには、その国の『宝具』である『錘の宝具』に認められなければならないザウルス。でも今は決闘王も在位中だドン。『錘の宝具』が他の人間を選ぶとは思えないザウルス」
「そういうことは絶対にないのか?」
続けるケンザンにユーイが問う。
訊いているのは、王がいるのに『宝具』が他の王に相応しい人物を見定めることはないのかということ。
「なくはないわよ」と、それに答えたのはセリナ。
「あるのか?」
「稀なケースではあるけどね」
セリナはそう前置きして窓の外を見る。
そこからは王都の町並みがよく見えた。
「『宝具』は王に相応しい『王器』を持った人物を見つけて王にする。でも王となった人物が、いつまでも清廉潔白で心優しく政治に長けた人物とは限らない。心に邪心があっても『王器』があれば『宝具』はその人を王にするし、初めは正しい王様でも年月とともに人は変わるもの、やがて暗君となることもある。そうして王が民を苦しめ国を省みないようになると、王は『宝具』の信頼を失い、『宝具』は次の王を探してその王の元を去ってしまうと言われている。これを『道を失う』と言うらしいわ」
「『道を失う』・・・」
初めて聞いた話だが、ユーイはどこかでその言葉を聞いたような気がした。しかし、どこで聞いたのかは思い出せない。
そんなユーイに目を向けながらセリナはさらに続ける。
「王の元を『宝具』が去ると、例外なくその国は荒れる。まるで病を患ったように。ちょうど・・・そうね・・・今のこの国のように」
「おいッ!」
ケンザンがセリナの言葉を怒鳴り声で遮る。
「滅多なことを言うもんじゃないザウルス。『七星候』の一族のあんたがそんなことを言ってるのを聞いたら、他の生徒が動揺するドン」
周りを見回すと確かにまだ少なくない数の生徒が残っていた。
ケンザンにしてはよく気がついたものだ。それだけ今のこの国にとってこの話がデリケートな問題だということか。
ユーイが感心していると、そのケンザンの腹がグゥーと不平を主張した。
確かにもう昼休みの時間だ。もう少し詳しい話を聞きたいが、昼食を算段しなければならない。
「とにかくここじゃなんだドン。昼飯ついでに場所を移すザウルス。お前ら、昼飯のあてはあるザウルス?」
ユーイが首を振ると、ケンザンはにんまり笑う。
「実は面白い話を聞いたドン。なんでもここの購買にどんな具が当たるか分からないドローパンとかいうパンが売ってるらしいザウルス。幻の大当たりと言われている黄金パンは絶品という噂だドン。みんなで買ってみるザウルス!」
そいつは確かに面白そうだ。ドローに全てを賭ける決闘者にとっては運試しにもなる。
昼休みに予定を入れているというリュウアとリュウカと別れ、ユーイ・ケンザン・セリナの三人は購買に行ってみることにした。
ー ー ー ー ー ー ー ー
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