EP31　事件解決！おかえり遊季都　作：ター坊

聖愛との激闘を経てバジルを仲間に加えた遊路達は遊季都が拘留されている警察署にやって来た。


遊季都そっくりの人物を引き連れて。

「あのすいません」
「何ですか？」
「ＷＤＯ日本支部特別顧問の風峰 遊路と申します」
遊路はＷＤＯの手帳を入り口前に立つ警官に見せる。
「はっ！御苦労様です！」
警官はピシッと敬礼する。ＷＤＯの顔は広いのだ。
「今日はどういったご用件でしょうか？」
「この前のコンビニ強盗の一件で真犯人を連れて来ました」

遊路の助力で梓と盛雄は遊季都との対面を果たした。別れていた時間はたかだか１日半程度だが、心配していた分、何週間も離れ離れだったような感覚さえしていた。
「赤崎さん！」
「大丈夫かぁ？」
「…白朧院さん、黒田さん。それに風峰プロまで…」
刑事に連れられた遊季都は疲れ果てた様子である。訳も分からぬまま捕まって馴れない環境に一人放り出されたら、誰でもそうなるであろう。
「…あの、その人は…え？僕…？」
遊季都は遊路達が連れている自分と瓜二つの人間に目を丸くする。そんな遊季都に遊路は説明を始める。
「ああ。コイツは花田 遊斗。お前の生き別れの双子のお兄さんだ」
「ええっ！？僕の兄…！？」
「驚くのも無理はないな。俺が調べたところ、お前のご両親は二人を産んだ当時生活苦で一人を養子に出さざる得なかったんだ。その後、養子に出された遊斗は色々あって家を追い出され、今回こんな強盗じみたことをしたんだ」
「そんな…」
「…すまなかった」
突如、遊斗が口を開く。
「俺もコイツらに会うまで俺に弟がいるとは思わなかったさ。だが、俺がやらかしたせいで弟が酷い目に巻き込まれたとコイツらに聞かされて、いてもたってもいられなくてな…。初めて会ったけど、申し訳なくてな…」
「そう…ですか…」
「…なんて言うと思ったか！」
遊斗はそう言って遊路を突き飛ばし、廊下を走った。
「くっ！お前！」
「やっぱり捕まるのはごめんだね！あばよ！」
「こら、待て！」
走り去る遊斗を追って刑事は疾走するが、遊斗は非常階段の入り口に逃げ込んだ。
しばらくして、決死の追跡も虚しく遊斗は行方をくらましたそうだ。
「それではお騒がせしました」
「いえいえ、御苦労様です。風峰特別顧問がお連れした花田遊斗容疑者、必ず逮捕してみせます！」
署長が遊路に深々と頭を下げる。
「よろしくお願いします。ところで彼はもういいですか？」
「はい！どうぞお連れ下さい！」
遊季都は誤認逮捕だったということで解放され、遊路達に連れられて警察署を出た。
「それにしても災難だったな、遊季都」
「はい。…それよりも風峰プロ、それに白朧院さん、黒田さん。迷惑掛けてすみません」
「いいえ。チームメイトとして仲間を助けるのは当然ですわ」
「そうだぁ」
「ありがとう…ございます」
俯く遊季都は梓と盛雄の言葉を聞いて顔を上げ、少し微笑んだ。
「遊季都くん」
「ラズベリー…」
「おかえり♪」
「うん…」





所変わってここは車内。遊季都達チャレンジャーＺは遊路が手配した小型バスに乗っていた。
「それにしても驚きました。僕に双子の兄がいたなんて…」
「ああ、あれな







嘘に決まってるだろ」
「ええっ！？」
遊路の一言に遊季都は目を丸くする。
「でも、あんなそっくりな人…一体誰なんですか？」
「あれはな…梓。見せてやれ」
「はい。〔贋作の陶芸家（フェイク・アーティスト）〕」
梓が手を翳してそう唱えると何もない空間に黒い塊が現れると、それは粘土を捏ねるようにウネウネと動いて色付きの人の形となっていき、遊季都そっくりの人間になった。
「これってまさか悪魔の力ですか！？」
「はい。実は今回の事件は…」
梓は今回の事件について振り返っていく。

発端は聖愛の負けることへの恐怖心だった事。

事件を起こしたのは想像した人物を作り出す悪魔の力―〔贋作の陶芸家〕によって生み出された遊季都の偽者だった事。
「それでアタシ達とあずにゃんが奮戦して犯人をとっちめて逆に利用したってわけ♪」
「そうだったんだ…」
ラズベリーが得意気に締めくくった。
「それでどうして白朧院さんが悪魔の力を？」
「それは俺が勧めたんだ。カードとしてお前達の戦力になるし、まさか悪用もしないだろ？」
「はい」
「もちろんですわ」
遊季都と梓は力強く返す。
「…それじゃあ、それを見込んでひとつ、お前達に面倒事を良いか？」
「何ですか？」
「俺は今回のデュエル甲子園にはまだ悪魔のカードが潜んでいると睨んでいる」
「そう…ですね」
遊季都達と聖愛、悪魔のカードを持つ人間同士が初戦でぶつかるのは偶然と言えばそれまでだが、悪魔のカードが多ければその遭遇率も偶然では片付けられないレベルになる。
「大抵のトラブルはルナ達で充分対応できるが、人智を越えた悪魔のカードとそれがもたらす能力相手ではどうしようもない。そこでお前達にその手のトラブルの解決を手伝って欲しいんだ。俺一人では限界もあるしな」
「なるほど…僕なんかで良ければ…」
「お力添え致しますわ」
餅は餅屋、悪魔のカードが相手ならば、同じく悪魔のカードを持つ自分達が適役だろうと思った遊季都と梓は遊路の申し出を受けることにした。