第１６話　狡猾なハイエナ　作：提馬風

クロ「……おい、お前ギルドで待ってろって言ったよな？」

セン「クロさんがテント吹き飛ばしたのが悪いんです。
　　　どのみちギルドは移動なんで、全部畳んで運んでる最中ですよ」

センはそう言って荷台を指す。
畳まれた白い布の下から、シルがひょっこりと顔を出した。

シル「兄さん、まだあのハイエナ野郎は見えるところにいる。
　　　追いかけてデュエルで潰すのはいいとして……これはD-ホイールじゃない。
　　　誰かを荷台に乗っけてデュエルすることになるね。誰がやる？」

セン「そういうのは言い出しっぺがやるものだ、シル」

シル「やだね。そんな危ないマネするわけないじゃん」

セン「そんなの誰だってそうだ。シルがやらなきゃ誰が……」

遊陽「……私、やります」

シル「ええっ！？ だって、危ないよ！？」

遊陽「ゲームみたいなものだから。それに、センさんの運転ならきっと大丈夫……」

セン「そう無条件で信用されるのは初めてだな。なら乗れ、遊陽ちゃん！」

遊陽「はいっ！」ﾊﾞｯ

シル「じゃ、頼んだよ。遊陽」ﾊﾞｯ

パンッ

入れ替わり際に、遊陽とシルはハイタッチした。

セン「掴まるところはない。スピードは出すが、うまいこと立ってろ！」ﾄﾞﾙﾙﾝ……

―――

万罪「ヘッ、怖気づいて誰も追って来ねぇか……」ﾋｭｵｵ

ブロロ……

万罪「……っ！？」

セン「ハイエナめ、この俺達から逃れられると思うな……！！」

万罪「チッ、D-ホイールを持ったハンターがいたとはな」

セン「……いや、これはD-ホイールではない。お前の相手は後ろだ」

遊陽「……っ」ｼﾞｬｷｯ

万罪「ヘッ、荷台からデュエルか。せいぜい吹っ飛ばされて死なねぇようにな！」ｼﾞｬｷｯ

万罪が、銀に鈍く輝く頑丈そうなディスクを構える。

万罪・遊陽「デュエル！！」

BANZAI LP4000
YUHI LP4000

万罪「俺の先攻！
　　　俺は手札から『ハイエナ』を召喚！」

ハイエナ「グァウッ！」☆3 ATK1000

召喚された『ハイエナ』は、センのバイクの前方を駆ける。

万罪「俺はカードを１枚セットして、ターンエンド！」

遊陽「私のターン！」ﾋﾞｼｯ

遊陽（この灰になって平になった森が、どこまで続くかは分からない。
　　　相手モンスターはただの戦闘リクルーター、早く決着がつけばいいけど……）

セン「どうだ、すぐ片付くか？」

遊陽「そんなに時間はかからないと思います。
　　　私は手札から、エルフの櫓を発動！ 発動時の効果処理により、デッキからフルエルフを手札に加える！」

遊陽「そして、異怪の妖精 エルフォビアを召喚！」

エルフォビア「フフフ……」☆3 ATK900→1100 DEF500→700

遊陽「さらに手札から――」

万罪「この瞬間、永続トラップ『挑発』を発動！
　　　自分フィールドに攻撃表示モンスターが存在し、相手モンスターが召喚に成功した時に
　　　この効果を発動することで、強制的にバトルフェイズを開始する！」

挑発　永続罠
①：相手のメインフェイズ１に、自分フィールドにモンスターが攻撃表示で存在し、相手がモンスターを召喚した時に効果を発動できる。このターンのバトルフェイズになる。このターンのバトルフェイズ、相手は可能ならモンスター１体以上で攻撃しなければならない。

万罪「そしてこのバトルフェイズ、テメェはモンスターで攻撃しなきゃならねぇ。
　　　さあ、高らかに攻撃宣言しなァ！」

遊陽「くっ……私は異怪の妖精 エルフォビアでハイエナを攻撃！」

ハイエナ「グアッ！」ﾊﾞﾘﾝ

BANZAI LP3900

万罪「クク……この瞬間、ハイエナの効果が発動！ 俺がデッキから特殊召喚するのは……さぁて、どいつにしようかなぁ？」

遊陽「……ハイエナの効果でリクルートできるのは、同名のハイエナだけ。早く特殊召喚しなさい！」

万罪「ヘッ……、決めたぜ。
　　　俺はデッキから、『素早いハイエナ』を特殊召喚！」

素早いハイエナ「グァ！」☆2 ATK1000

素早いハイエナ　レベル3　地
獣族／効果
①：自分が「ハイエナ」モンスターの効果でデッキからモンスターを特殊召喚する場合、代わりにデッキからこのカードを特殊召喚できる。②：このカードを特殊召喚する場合、同時に２体以上のモンスターを特殊召喚できない。③：このカードが相手によって墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「素早い」モンスターを２体まで特殊召喚する。
攻撃力 1000　守備力 100

遊陽「ハイエナじゃない……！？」

万罪「素早いハイエナは、ハイエナモンスターによるリクルートを代行できんだよ。
　　　その代わり、１体のハイエナから複数のハイエナを呼ぶことはできなくなるがな」

遊陽「くっ……」

遊陽「私は……カードを2枚セットして、ターンエンド！」

BANZAI LP3600 手札3
YUHI LP4000 手札3

万罪「俺のターン。ドローッ！」ﾋﾞｼｲｯ

万罪「俺は手札から『一族の結束』を発動！ これで俺の獣族モンスターの攻撃力は800アップする！」

素早いハイエナ ATK1800

万罪「ヘッ……エルストロームから作ったデュエルディスクを使うとどうなるか、お前らも知ってるよなァ？」ﾆﾔ

遊陽「……センさん」

セン「モンスターが実体化する。もっとも、君のはまだ違うけどね」

万罪「バトルだ。素早いハイエナで、異怪の妖精 エルフォビアを攻撃！」

遊陽「この瞬間、エルフの櫓の効果発動！ エルフォビアを手札に戻し、再び自身を守備表示で特殊召喚！」

エルフォビア「フフフ……」☆3 DEF500→700 ATK900→1100

『素早いハイエナ』が『ハイエナ』のオーラを纏い、『異怪の妖精 エルフォビア』に食らいつく。

遊陽「この瞬間、リバースカード・オープン！ エルフ・テレパシー！
　　　デッキからエルフ・ソーサラーを特殊召喚する！」

エルフ・ソーサラー「ハァッ！」☆7 ATK2500→2700 DEF1800→2000

万罪「チッ……特殊召喚はキツイな。
　　　俺は手札を１枚セットし、さらにモンスターを1体守備表示で召喚。これでターンエンドだ！」

万罪「このターンはモンスターに防がれたが……このハイエナ軍団は実体化しているからな。
　　　ダイレクトアタックが決まれば、お前の身体……そうでなきゃそのバイクがやられるだろうなァ？
　　　言っとくが、バイクで轢いてもそいつは破壊できねぇぜ」

万罪「ヘッ……精々モンスターを枯らさねぇことだな」ﾆﾔ