第１０話　頂のデッキ？　作：提馬風

エルヴィラ「ん……、あ？」ﾊﾟﾁ

何かに揺られていることに気付き、エルヴィラは目を覚ました。

ヒロ「よぉ、起きたか」

エルヴィラ「うむ、おはよう……って貴様！ なぜ私をおぶっている！？ 降ろせっ！！」ｶﾞﾊﾞｯ

ヒロ「うるせぇ、俺の背中で暴れんな！ 首絞めんのもダメだ！ 大人しくしてろ！」

エルヴィラ「くっ……。敗者に情けをかけられるとは、なんたる屈辱……！」


エルヴィラ「屈辱といえば……！ おい、私のティーガーをやった化け物はどうした！？
　　　それに、一緒にいた遊陽も……！ あいつは無事なのか！？」

ヒロ「だーかーら！ 俺の背中で暴れんなっつってんだよ！ 俺だってなにがあったかさっぱりなんだ……」

ヒロ「テレビで遊陽とあんたのデュエルを観ててさ、そしたらいきなり気持ち悪ぃのが映って……。
　　　それから試合が映らなくなって、CMがずっと流れてて、遊陽が危ないと思って急いでフィールドに向かったんだが……」

エルヴィラ「そこに残っていたのが私だけだった、ということか……」

ヒロ「ああ。一度拳を交わした仲だからな、放っとくことなんてできなかった。
　　　まあ、俺もあんたみたいなデュエリストだから、屈辱ってのもわからなくはないぜ」


ヒロ「……さて、目的地に到着だ」

『社長室』

エルヴィラ「シンバ・プライド社の社長室か。だが、何の用だ？」

ヒロ「決まってんだろ、あの化け物のことを聞き出すんだよ」ｺﾝｺﾝ

神馬「……誰だ？」
ドアの向こうから、神馬の声がする。

ヒロ「プライドタワー杯の参加者、ヒロとエルヴィラだ」

神馬「わかった、入っていいぞ。奈良、開けてやってくれ」

奈良「は〜い」ｶﾞﾁｬ

神馬「やあヒロ、君のことを聞いたぞ。
　　　遊陽が危険な目に遭ってるんだろって、警備員を先行ワンキルして強引に屋上へ入ったらしいな」

ヒロ「ああ、だが遊陽はいなかった。一体何があった？」

奈良「おや、私も助けに行こうと思ったんだけど、君が早かったか。ところで、屋上で何があったかは大橋が知っていそうだよ」

ヒロ「大橋……って誰なんです？」

奈良「神馬の秘書さ。まだ今はモニタールームにいるはずだよ」

ヒロ「わかりました。では俺はそこに」
神馬「待て」

ヒロ「……はい？」

神馬「大橋が1人でモニタールームにいる時は、絶対にそこへ行ってはいけない。
　　　そういう時は、大橋しか閲覧できないデータが溢れているからな」

ガチャリ

大橋「失礼いたします。先程のモンスターの解析が完了したしました。
　　　結論から申し上げますと、あれはエルストロームで間違いありません。
　　　わたくしの推測ですが、奴らの目的は大いなる記憶の樹のカード。もしかすると、遊陽は既に囚われているかもしれません」

ヒロ「っ……！」

大橋「しかし、あの場には狒々木もいたはずでしょう？ なぜあれもいなくなったのか……」

神馬「それは……僕もわからない。あの人もあの人で謎が多いからな」

大橋「と、なると……やはり我々も次元を超えるほかありませんな」

奈良「次元を、超える？」

大橋「初代様の残したデータの中に、エルストローム狩りのギルドが多く存在する次元の記述があるのです。
　　　エルストロームは触れたものの力を奪い、灰とする凶悪な化け物。
　　　その脅威を排除するためには、根源を潰すほかないのです」

エルヴィラ「だが……どうやって潰す？ ギルドと手を組むのか？」

大橋「その必要はございません。その次元には、あらゆる脅威を討ち払うという『頂のデッキ』が存在すると、
　　　別の記録にありました。
　　　つまりは、我々はそのデッキを探せばよいのです」

大橋「次元を超えるというと、難しいように思えますが、
　　　ここにはデュエルディスクに次元渡りの機能を追加するプログラムがございます。
　　　それでは、皆様を第四プログラムルームにご案内しましょう……」