6月8日──火炎の闘志　作：コンドル

快晴の空の下、デュエルアカデミア一年生生徒達は一学期大会のサバイバル形式による予選にて意気揚々と対戦相手を探し回っていた。

｢よぉし...行くか！」

この男、鶴咲輪廻はそう言ってアカデミア本島の土を踏みながら歩き始めた。現在朝10時である。
周りを見渡してみると、すでに決闘を始めている人間が散見されている。

(俺もはやく相手を見つけねぇとな...！)

とりあえずは人がたむろする場所へ行った方が相手も見つかりやすいだろう。そう輪廻は黙考し、自らの考えに適当な場所へ向かった。


(人が多く集まる場所つったら、ここか)

輪廻がやって来た場所は、アカデミア本館の授業で使うデュエルスペース。そして輪廻の予想通り、既に数十人かの生徒達がこの場所にやって来ていた。

(よし...次は相手を探さなきゃな)

冷静に心の中で自分がすべき事をメモ帳に記すように言葉にして呟く。しかしその表情はこれから始まる様々なデュエリストとの対戦する喜びを表すかのように緩み、名状し難いくらいに不気味になっていた。
そして、これから戦う新しいデュエリストを探しに、輪廻は特に人が多くいる場所へ歩いていった。

その途中、何者かが真っ直ぐ輪廻の方向に走ってきた。その男は輪廻の存在に気付かずに突っ込んでくる。
(やっべ！)
危険を感じた輪廻が右へ避けると、その存在は輪廻の存在に気づき急ブレーキをかけた。

｢おお！少年！すまぬ！大会が始まり少し浮かれていてな！」

アカデミア全体に響き渡るような大声で、かっぷくの良いマグマのような深紅の色をしたオールバックの髪型の男は、輪廻と対面するように向きを変えた。

｢いや、その気持ち、分かるぜ。アンタ、名前は？俺は鶴咲輪廻、クラスは6だ」
輪廻はデュエルディスクを構えながら名乗る。樋山はその行動を見て嬉しそうに口を大きく開けた。
｢挨拶恐縮の至り！ならば、名乗らせていただこう！俺は樋山伴弾(ひやま　ばんだん)！7組だ！」

樋山も同じようにデュエルディスクを展開し、互いに刀を出した侍のようにデュエルディスクを構える。二人の熱い闘志がデュエルフィールド全体を包み込んでいく。そして二人の口から決闘の言葉が飛び出すその瞬間だった。

辺りに大きな腹の虫が鳴く音が響いた。

｢う...すまぬ！朝飯を抜いてしもうてな...」
｢おいおい......なら、何か食ってからにしようぜ。腹が減っては戦は出来ぬって言うしな」



食堂

両手一杯に、購買で買ったパンやおにぎりを、伴弾は一気に飲み込むように食し始めた。その光景を見て喉に食べ物が詰まらないか心配になったのか、輪廻が注意し、それを伴弾はうんうんと何度も頷く。

｢鶴咲も食べたらどうだ？もしかしたら戦いの最中に先程の俺のように腹が鳴ってしまうかもしれん」

そう言って伴弾が輪廻に数個のおにぎりを渡してくる。
輪廻も目の前で背の高いがっしりとした男が一心不乱に食べているのを見て、少し空腹を感じていたため、ありがたく頂戴する。

｢そういや、樋山はこの大会で目標とかあるのか？」

コミニュケーションを取り二人ともリラックスした状態となっていた時、ふと輪廻が伴弾に質問してみる。

｢目標か...特に無いが、強いて言えば、強い者と一戦交えたいな」
伴弾はそう口のまわりに付いた米粒を取り口に入れながら言った。
｢そう言う鶴咲はどうなのだ？」
｢俺？俺はな...」

輪廻の目標は今大会での優勝である。しかしそれだけではなく、ライバルに勝つという目標も存在する。そして最大の目標は、彼のデュエルスタイルである楽しいデュエルをすることだ。

｢優勝もするしアイツにも勝つ...ま、つまりは勝って勝って勝ちまくる！そして全部のデュエルを楽しむ！これが、俺の目標だ」

それを聞いて伴弾は感嘆の声を上げた。

｢ほう！随分と巨大な目標だな！ならば勝ち負けは拘らぬのか？」
｢いや、大会なら勝ちたいさ。けど、それよりも俺は純粋にデュエルを楽しみたい。変か？」
｢･･･いや」

さて、と伴弾は立ち上がった。
｢俺はいつ始めても問題ではないが、鶴咲よ、そちらはどうだ？」

輪廻の口角が上がり、目付きが一変する。
｢いつでも。･･･どこでやる？」
｢外の方が良いな。出来るだけ火山の近くなら、なおよいのだが」

風変わりな場所のチョイスに輪廻は首をかしげながら、二人は火山の近くへ向かうことにした。



｢うむ、ここならあの山がよく見える」

アカデミアにある森を越えて行くと、火力発電所にもなっている火山がある。近付く事は危険なため封鎖されているが、許可された教師や関係者はこの山に入ることができるらしい。
その近くの森の入り口、火山を一望できる場所で、二人の戦士は研ぎ澄まされた剣を同時に構えた。

｢よし、じゃあ始めようか！」
｢応！」

｢デュエル！」
｢デュエル！！」

輪廻LP4000　手札5
伴弾LP4000　手札5

先攻は伴弾がとった。
｢俺のターン！･･･俺は手札を1枚捨て、手札から『THE･トリッキー』を特殊召喚！」

顔にハテナマークがある奇妙な風貌をした上級モンスターが服についてあるマントを靡かせ登場する。

THE･トリッキーLV5　ATK2000DEF1200

｢そしてこのモンスターをリリース！アドバンス召喚！ 現れろ！『ヴォルカニック･ハンマー』！」

ヴォルカニック･ハンマーLV5ATK2400DEF1200

その名が表すように、ハンマーのような頭部をしたモンスターが現れる。

｢ヴォルカニック･ハンマーの効果発動！1ターンに一度、自分の墓地の『ヴォルカニック』と名の付くモンスターの数1体につき200のダメージを相手に与える！俺の墓地にはトリッキーの効果で墓地へ行った『ヴォルカニック･バレット』1体がある。よって鶴咲に200のダメージだ！」

ハンマーの口からメラメラと燃える火球が発射され、相手に直撃させる。

｢へっ...先制パンチか」輪廻LP4000→3800

｢そして墓地の『ヴォルカニック･バレット』の効果発動！自分メインフェイズに一度、500LPを払い、デッキからバレット1体を手札に加える。そしてカードを1枚セットしてターンエンド」伴弾LP4000→3500

伴弾　LP3500　手札3　場ヴォルカニック･ハンマー1伏1　墓地ヴォルカニック･バレット1THE･トリッキー1除外無
輪廻　LP3800　手札5　場、墓地、除外無

｢俺のターン！ドロー！」

手札を確認し戦術を練ったのか、よしと呟く。

｢俺は手札から『幻装騎士ブレイブ』を召喚！」

幻装騎士ブレイブ　LV2ATK1000DEF500

黄金の鎧に一本の何の飾りもない剣を持ち、輪廻のエースは現れた。

｢見てろよ！俺達の幻装合着を！」