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時の空間 謎の世界 作:コンドル
「・・・」
藤玄遊駆が周りを見渡すと空間には『時計』が不自然に動いていた。
ある時計は11時を指しているのに別の時計は2時を指している。時計回りに動いたり急に反時計回りに動いたり、時計としての役割が出来ていない。
不思議そうな表情をしながら正面を見ると今まで会った事の無い美少女がいた。
黄緑色の腰まで伸びた髪。白いワンピース。そして豊満にも程があるだろうと言いたくなるほどの胸。
「・・・」
「遊駆。」
空中に浮いている17、18くらいの少女は藤玄遊駆の名を呼んだ。
「・・・ここは...?」
周りを見ながら遊駆は情報を得ようと目の前にいる少女に光の無い、無感情の眼で質問をする。
「いきなり質問?まぁいいわ。・・・ここは私の『ナカ』。フィールドみたいなものよ。貴方には『夢』という状態で認識されているようね。良かったわ。」
「・・・夢か」
呟いた後落ち込んだように遊駆は溜め息をつく。頬を引っ張って痛みを感じるが、特に気にしていない。
「・・・初めて見る夢だったから...、いや、もしかして忘れているだけで本当は何度も見たのかな・・・?」
少女は首を横に振り、「いいえ」と遊駆を見て優しく訂正する。
「この空間は貴方には『夢』として認識されているけれど『夢』じゃない。・・・て言っても、分からないわよね。」
「・・・?」
「一つだけ確かな事がある。貴方が今見ている夢のようなこの状況、貴方は『初めて』経験しているわ。」
「・・・!」
遊駆の眼が少しだけ輝きを取り戻す。
「・・・待った」
少ししたら遊駆はこの状況を整理するために考え始める。
暫くして考えを纏め目の前にいる少女を見る。
「聞きたい事がある。答えてくれないか?」
「・・・手短にね。」
「・・・一つ。ここは俺には『夢』として認識されていると言ったが、それなら今の俺はどんな状態なんだ?」
「貴方は今精神だけの状態よ。本体、というか肉体は学校のベッドでぐっすり眠っているわ。」
「・・・二つ。君は今俺はこの状況を『初めて』経験していると言ったが、何故今『夢』に現れたんだ?」
「・・・私はすぐにでも貴方に逢いたかった。けど、どうしても出来なかった。逢おうとしても...出来なかった。今はそれだけ言っておくわ。」
うつむき悲しい表情をする少女。
遊駆は「そうか」と言って次の質問に移る。
「・・・三つ。・・・君は誰だ?」
遊駆の鋭い眼が少女をキッと睨むように少女を見る。
周りの静寂さが増し、周りの時計は針を刻む。
カチッ カチッ
時間の流れを感じず、どれ程の時間が経ったのか、少女は口を開く。
「・・・もう、何度も会ってるからわかるはずよ?・・・あ・・・いえ、分からないわよね。」
「・・・?」
「私は貴方の全てを知っているモノよ」
瞬間。遊駆の表情が驚きが隠せない状態になる。
「俺の・・・全て・・・だと...?」
「全てと言っても貴方が生まれてから息を引き取るまでの全てじゃないわ。具体的に言えば貴方が4月10日のデュエルアカデミアに入学してからの一年間くらいかしら。」
ますます驚きが隠せない。遊駆は思う。
(一年間俺が何をするか、何をしたか知っているだと?そんな...。)
「なら俺は4月の14日に誰とデュエルした?」
試すように質問するが、少女は溜め息をつき答える。
「貴方と同じクラスの『小込 綾羽』で使用デッキは『薔薇花嫁』。デュエルの結果は貴方が発動した速攻魔法『宝石発射』でのダメージで小込綾羽が敗北。それ以降貴方に接近しますます貴方を好きになっている。なんならその後の話もしましょうか?」
(合っている。なら....。)
「・・・ま、もう貴方はこの話を終えているから、知っているわよね。」
「・・・」
遊駆がまだ納得していない顔をしているため少女は遊駆に絶対に納得させる事実を話し始める。
話し始めた時、遊駆の表情は信じられないという顔をしながら眼を見開き少女をじっと見ながら後ずさりする。
そんな遊駆を見ながら少女は話し続けた。
話し終えて遊駆は少女を見ながら膝の震えが止まらないでいた。
「・・・何故それらを知っているんだ。君は一体...何者なんだ!?」
遊駆が少女に向かって走って胸ぐらを掴もうとするも少女は空中に浮いているため近づけない。
少女は人差し指を前に出して遊駆を抑える。
「・・・私は貴方の全てを知っているモノ。そう言ったでしょ。貴方のこの一年間何が起こったか、全て、知っている。だから貴方の今の気持ちも全て分かる。だから貴方の前に現れた時無表情の貴方を見て『心』が痛んだわ。けど私は貴方に可哀想ねって言いにきた訳じゃない。」
「じゃあ何のために...!」
「それは...」
ピシッ
「・・・まずい!」
少女は焦り始める。周りの時計の針が折れ始め二人は伏せる。
「もう時間がないわ。遊駆、いつかまた逢えたらこの空間で逢いましょう。貴方はもう目覚める。だからまたいつか。」
焦りながら遊駆に背中を向ける。そのまま真っ直ぐ歩くが、遊駆がそれを呼び止める。
「な、待ってくれ!せめて何のために来たかだけでいい。教えてくれ!何かあるんだろ!?俺の全てを知っているのなら今、何が起こっているか分かるはずだ!何か今の俺のこの状況を打開する何かがあるんだろ!?頼む!教えてくれ!もう...こんなのはたくさんだ!」
遊駆の後ろを向き歩いていく少女に懇願する。
だが少女は何も言わない。
「いつか逢ったら!今はもう話せる状況じゃないわ!だけど一つだけ!貴方に!『運命』を──!」
最後の言葉は周りの音でかき消された。
巨大な時計が落ちてくる。遊駆の身体が薄く光り、足から少しずつ消えていく。しかしそんな事は気にも止めず遊駆は少女に向かって叫ぶ。
「・・・『運命』が...『運命』がなんなんだぁ!答えてくれ...!答えてくれよ...!」
「答えろーッ!!」
ガバッ
遊駆は目を覚ました。ベッドを見ると汗でシーツが滲んでいる。
「・・・何だったんだ。」
朝、輪廻達と朝食を食べながら遊駆はあの夢のような何かについて早口で考える。
(・・・夢じゃない。あの子はそう言っていた。じゃああそこは一体何だったんだ?あの子は俺しか知らない事を知っていた。)
黙々と食べ、暫くして食べ終わる。
自室に戻り独りになった遊駆は目をつむり考える。
(・・・分からない。あの子は俺に何を言おうとしたんだ?運命...か。俺の嫌いな言葉だ。・・・もし、またあの子に逢えるなら・・・。この世界の運命は変わるんじゃないか?・・・一体これからどうなるんだ...?この一年間...。)
目を開き遊駆は無表情のまま窓の外を見る。
無の感情で見る太陽は輝きを放たず、ただモノクロの光を放つ。
遊駆の眼にはこのアカデミアがどう見えているのだろう?
それは遊駆にしか分からないが、今の遊駆は、謎の少女との出逢いが何かの運命を変えているように思えた。
(・・・これから様々な出来事がある。それすらも彼女は知っている。そして俺もその様々な出来事を経験していくんだ...。)
ガチャ
「遊駆!暇だからデュエルしようぜ!」
「・・・ああ。」
考えても一切の事は分からなかった。だが少女はいつかまた逢おうと言っていた。遊駆は逢える事に淡い期待を抱き少し笑顔になりながら輪廻に返事をする。
輪廻には、遊駆の顔は無表情に見えていた。
遊駆──。
どこか分からない空間で少女は遊駆の名を呼ぶ──。
藤玄遊駆が周りを見渡すと空間には『時計』が不自然に動いていた。
ある時計は11時を指しているのに別の時計は2時を指している。時計回りに動いたり急に反時計回りに動いたり、時計としての役割が出来ていない。
不思議そうな表情をしながら正面を見ると今まで会った事の無い美少女がいた。
黄緑色の腰まで伸びた髪。白いワンピース。そして豊満にも程があるだろうと言いたくなるほどの胸。
「・・・」
「遊駆。」
空中に浮いている17、18くらいの少女は藤玄遊駆の名を呼んだ。
「・・・ここは...?」
周りを見ながら遊駆は情報を得ようと目の前にいる少女に光の無い、無感情の眼で質問をする。
「いきなり質問?まぁいいわ。・・・ここは私の『ナカ』。フィールドみたいなものよ。貴方には『夢』という状態で認識されているようね。良かったわ。」
「・・・夢か」
呟いた後落ち込んだように遊駆は溜め息をつく。頬を引っ張って痛みを感じるが、特に気にしていない。
「・・・初めて見る夢だったから...、いや、もしかして忘れているだけで本当は何度も見たのかな・・・?」
少女は首を横に振り、「いいえ」と遊駆を見て優しく訂正する。
「この空間は貴方には『夢』として認識されているけれど『夢』じゃない。・・・て言っても、分からないわよね。」
「・・・?」
「一つだけ確かな事がある。貴方が今見ている夢のようなこの状況、貴方は『初めて』経験しているわ。」
「・・・!」
遊駆の眼が少しだけ輝きを取り戻す。
「・・・待った」
少ししたら遊駆はこの状況を整理するために考え始める。
暫くして考えを纏め目の前にいる少女を見る。
「聞きたい事がある。答えてくれないか?」
「・・・手短にね。」
「・・・一つ。ここは俺には『夢』として認識されていると言ったが、それなら今の俺はどんな状態なんだ?」
「貴方は今精神だけの状態よ。本体、というか肉体は学校のベッドでぐっすり眠っているわ。」
「・・・二つ。君は今俺はこの状況を『初めて』経験していると言ったが、何故今『夢』に現れたんだ?」
「・・・私はすぐにでも貴方に逢いたかった。けど、どうしても出来なかった。逢おうとしても...出来なかった。今はそれだけ言っておくわ。」
うつむき悲しい表情をする少女。
遊駆は「そうか」と言って次の質問に移る。
「・・・三つ。・・・君は誰だ?」
遊駆の鋭い眼が少女をキッと睨むように少女を見る。
周りの静寂さが増し、周りの時計は針を刻む。
カチッ カチッ
時間の流れを感じず、どれ程の時間が経ったのか、少女は口を開く。
「・・・もう、何度も会ってるからわかるはずよ?・・・あ・・・いえ、分からないわよね。」
「・・・?」
「私は貴方の全てを知っているモノよ」
瞬間。遊駆の表情が驚きが隠せない状態になる。
「俺の・・・全て・・・だと...?」
「全てと言っても貴方が生まれてから息を引き取るまでの全てじゃないわ。具体的に言えば貴方が4月10日のデュエルアカデミアに入学してからの一年間くらいかしら。」
ますます驚きが隠せない。遊駆は思う。
(一年間俺が何をするか、何をしたか知っているだと?そんな...。)
「なら俺は4月の14日に誰とデュエルした?」
試すように質問するが、少女は溜め息をつき答える。
「貴方と同じクラスの『小込 綾羽』で使用デッキは『薔薇花嫁』。デュエルの結果は貴方が発動した速攻魔法『宝石発射』でのダメージで小込綾羽が敗北。それ以降貴方に接近しますます貴方を好きになっている。なんならその後の話もしましょうか?」
(合っている。なら....。)
「・・・ま、もう貴方はこの話を終えているから、知っているわよね。」
「・・・」
遊駆がまだ納得していない顔をしているため少女は遊駆に絶対に納得させる事実を話し始める。
話し始めた時、遊駆の表情は信じられないという顔をしながら眼を見開き少女をじっと見ながら後ずさりする。
そんな遊駆を見ながら少女は話し続けた。
話し終えて遊駆は少女を見ながら膝の震えが止まらないでいた。
「・・・何故それらを知っているんだ。君は一体...何者なんだ!?」
遊駆が少女に向かって走って胸ぐらを掴もうとするも少女は空中に浮いているため近づけない。
少女は人差し指を前に出して遊駆を抑える。
「・・・私は貴方の全てを知っているモノ。そう言ったでしょ。貴方のこの一年間何が起こったか、全て、知っている。だから貴方の今の気持ちも全て分かる。だから貴方の前に現れた時無表情の貴方を見て『心』が痛んだわ。けど私は貴方に可哀想ねって言いにきた訳じゃない。」
「じゃあ何のために...!」
「それは...」
ピシッ
「・・・まずい!」
少女は焦り始める。周りの時計の針が折れ始め二人は伏せる。
「もう時間がないわ。遊駆、いつかまた逢えたらこの空間で逢いましょう。貴方はもう目覚める。だからまたいつか。」
焦りながら遊駆に背中を向ける。そのまま真っ直ぐ歩くが、遊駆がそれを呼び止める。
「な、待ってくれ!せめて何のために来たかだけでいい。教えてくれ!何かあるんだろ!?俺の全てを知っているのなら今、何が起こっているか分かるはずだ!何か今の俺のこの状況を打開する何かがあるんだろ!?頼む!教えてくれ!もう...こんなのはたくさんだ!」
遊駆の後ろを向き歩いていく少女に懇願する。
だが少女は何も言わない。
「いつか逢ったら!今はもう話せる状況じゃないわ!だけど一つだけ!貴方に!『運命』を──!」
最後の言葉は周りの音でかき消された。
巨大な時計が落ちてくる。遊駆の身体が薄く光り、足から少しずつ消えていく。しかしそんな事は気にも止めず遊駆は少女に向かって叫ぶ。
「・・・『運命』が...『運命』がなんなんだぁ!答えてくれ...!答えてくれよ...!」
「答えろーッ!!」
ガバッ
遊駆は目を覚ました。ベッドを見ると汗でシーツが滲んでいる。
「・・・何だったんだ。」
朝、輪廻達と朝食を食べながら遊駆はあの夢のような何かについて早口で考える。
(・・・夢じゃない。あの子はそう言っていた。じゃああそこは一体何だったんだ?あの子は俺しか知らない事を知っていた。)
黙々と食べ、暫くして食べ終わる。
自室に戻り独りになった遊駆は目をつむり考える。
(・・・分からない。あの子は俺に何を言おうとしたんだ?運命...か。俺の嫌いな言葉だ。・・・もし、またあの子に逢えるなら・・・。この世界の運命は変わるんじゃないか?・・・一体これからどうなるんだ...?この一年間...。)
目を開き遊駆は無表情のまま窓の外を見る。
無の感情で見る太陽は輝きを放たず、ただモノクロの光を放つ。
遊駆の眼にはこのアカデミアがどう見えているのだろう?
それは遊駆にしか分からないが、今の遊駆は、謎の少女との出逢いが何かの運命を変えているように思えた。
(・・・これから様々な出来事がある。それすらも彼女は知っている。そして俺もその様々な出来事を経験していくんだ...。)
ガチャ
「遊駆!暇だからデュエルしようぜ!」
「・・・ああ。」
考えても一切の事は分からなかった。だが少女はいつかまた逢おうと言っていた。遊駆は逢える事に淡い期待を抱き少し笑顔になりながら輪廻に返事をする。
輪廻には、遊駆の顔は無表情に見えていた。
遊駆──。
どこか分からない空間で少女は遊駆の名を呼ぶ──。
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