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6月8日──ハックツークラッキング! 作:コンドル
─この世界には俺しかいない。そしてこの世界に俺はいない。
大会開始から一時間が経過した。
「・・・」
藤玄遊駆は現在デュエルアカデミア本館2階廊下にいた。
「・・・」
現在アカデミア全体では大規模な大会が開催されている。そのためアカデミアという島は謂わば超巨大なデュエルフィールドなのだ。
「・・・」
「遊駆君」
名前を呼ぶ声がした。声の方を向く。
「・・・巧」
山野巧だ。
「偶然だね、相手は見つかったかい?」
「いや」
通り過ぎようとした遊駆を巧が呼び止める。
「言っておきたい事があるんだ」
「・・・」
「遊駆君、僕が君に直接合う機会は激減するだろう、だから、君のデュエルを見ることも...」
その言葉を遊駆が遮る。
「巧」
「?」
遊駆が服の前ポケットから何かを取りだし巧に渡した。
「メモ帳と...黒ボールペン?」
「・・・これから必要になる」
それを言うと遊駆は真っ直ぐ歩きだした。巧が同行しながら理由を聞いても遊駆は説明不要だと言っているような態度で何も言わなかった。
周りを見渡せば人ばかり。しかし、遊駆に闘いを挑んでくる者は以外にもいなかった。というよりかは、まだ、闘いが始まっていなかったのである。
「成る程...対戦相手を選んでいるのか」
巧はそう分析する。
闘い気持ちはある。しかし、もし負けてしまったらどうすればよいのだろうか。恐らくこの空間にいる者達はそう考えているのでは無いか。
しかし、その考えを持っていない、もしくはしていない者も必ず存在する。
「・・・」
遊駆はそういった人間を一人だけ知っているのだ。
この状況から進んで闘いを挑み、勝ち負けを視野に入れず闘う男を。
「・・・今だけだろう」
「・・・そうだろうね」
無感情な瞳で遊駆はそう呟く。巧は小さく笑って答えた。
「ん!?おー!!」
笑っていると遊駆達の目の前に小柄な少年が戦意に満ちた瞳で遊駆に向かって突進するように走ってきた。
「お前!お前!お前ー!あ、自己紹介!」
感情の高ぶりを抑えるためか、少年は大きく咳払いをした。
「俺っちの名前は倉木 龍平(くらき りゅうへい)、クラスは3組!お前は藤玄遊駆だよな!?」
倉木と名乗るこの少年は遊駆の名前を感情が高ぶっているのか、それとももとからなのか、大声で叫ぶように呼ぶ。
「ん?なんで名前を知ってるのかって聞かないのか?」
「・・・4月11日」
4月11日、億谷護という人物が教師に知られていないほんの些細な事件を起こした。生徒は皆困り果てていたのだが、遊駆が登場しその解決されのである。なので、遊駆の名前を覚えているまたは知っている初対面の人間の大半は間違いなくその事件に居合わせた人間しか考えられないのだ。
「なんだ分かるのか!だったら話は早いや。藤玄遊駆!あの時はありがとう!けど今は大会、デュエリストが決闘を挑んできたら、後はもう言うまでもないだろ!?」
「・・・構わないが、観客が一人いるぞ」
「大丈夫だい!さぁ、始めようぜ!」
遊駆がディスクを展開する。心地よい音が遊駆の耳に響き渡る。
ディスクを展開する音、デッキがシャッフルされる音、シャッフルが完了される音、全てが無駄無く洗練されたシンフォニー。この音楽で遊駆のデュエリストとしてのスイッチが入るのである。
「始まるか...」
「デュエル!!」
「デュエル」
遊駆 LP4000
龍平 LP4000
手札を確認すると、龍平はニヤリと笑った。
「ヘヘヘ...俺っちは後攻で行かせて貰うぜ!」
先攻は遊駆だ。
「俺のターン。・・・俺はカードを一枚伏せてターンエンド」
遊駆 LP4000 手札3 墓地除外無 場伏カード1
先ずは様子見か、と巧は遊駆の方向を見て分析を始める。
「俺っちのターン、ドローだい!」
(さて...倉木君はどう出るかな...)
「完璧な手札だい!俺は手札から『ハック・ワーム』の効果発動だい!」
その名前を聞いた巧の目付きが一変し、警戒の表情が浮かび遊駆に一瞥を与える。
「そっちは分かってるようだい、そう、このハック・ワームは、元制限カード!超強力なんだい!じゃあ行くだい!ハック・ワームの効果発動!このカードは相手フィールドにモンスターが存在しない場合、特殊召喚できるだい!」
機械的な虫のような見た目をしたモンスターが龍平のフィールドに現れる。
「シャァァ」 LV1 ATK400/DEF0
「更にもう1体!」
「シャァァ」 LV1 ATK400/DEF0
「行くだい遊駆!」
ハック・ワームが光の粒子となって何かに吸い込まれて行く。吸い込んでいるモノの巨体に光が宿り始める。
「遊駆、昔流行った『ハックツークラッキング』って勝ち方知ってるか?」
遊駆は首を横に静かに振る。
「だろうなぁ。だが、昔は流行ったんだ。魅せてやるよ遊駆!ハックツークラッキング!俺はハック・ワーム二体をリリースし、『クラッキング・ドラゴン』をアドバンス召喚だい!」
クラッキング・ドラゴンが姿を現す。その重量感溢れる巨体を動かし、龍平のもとへ召喚された。
「グオォォ!!」LV8 ATK3000/DEF0
(クラッキング・ドラゴン...ハック・ワームと同じく元制限カード...。そしてハックツークラッキングか...懐かしい召喚方法だな...リンク召喚が流行りだしたばかりの頃に暴れた召喚方法だっけ)
「バトル!クラッキング・ドラゴンで、遊駆に直接攻撃!」
トラフィック・ブラスト!
クラッキング・ドラゴンの口が開き、全身が光り始め、上体を反らして、遊駆にめがけ翡翠のような色をした光線を発射する。
「・・・!」遊駆LP4000→1000
「これでターンエンドだい!」
龍平 LP4000 手札3 場 モンスター1体伏無 墓地モンスター2 除外無
遊駆 LP1000 手札3 場伏1 墓地無 除外無
いきなり残りライフが1000になってしまう遊駆、しかし遊駆はまだ余裕そうに見えてしまう。
遊駆のターンだ。遊駆はいつものように崖っぷちの状態でカードをドローした。
「・・・巧」
「何?」
「・・・さっき渡したメモ帳とボールペンを出しておいた方がいい」
「え?・・・分かった」
「俺のターン、ドロー。・・・俺は」
「宝石呪文(ジュエルスペル)を...」
「発動する」
大会開始から一時間が経過した。
「・・・」
藤玄遊駆は現在デュエルアカデミア本館2階廊下にいた。
「・・・」
現在アカデミア全体では大規模な大会が開催されている。そのためアカデミアという島は謂わば超巨大なデュエルフィールドなのだ。
「・・・」
「遊駆君」
名前を呼ぶ声がした。声の方を向く。
「・・・巧」
山野巧だ。
「偶然だね、相手は見つかったかい?」
「いや」
通り過ぎようとした遊駆を巧が呼び止める。
「言っておきたい事があるんだ」
「・・・」
「遊駆君、僕が君に直接合う機会は激減するだろう、だから、君のデュエルを見ることも...」
その言葉を遊駆が遮る。
「巧」
「?」
遊駆が服の前ポケットから何かを取りだし巧に渡した。
「メモ帳と...黒ボールペン?」
「・・・これから必要になる」
それを言うと遊駆は真っ直ぐ歩きだした。巧が同行しながら理由を聞いても遊駆は説明不要だと言っているような態度で何も言わなかった。
周りを見渡せば人ばかり。しかし、遊駆に闘いを挑んでくる者は以外にもいなかった。というよりかは、まだ、闘いが始まっていなかったのである。
「成る程...対戦相手を選んでいるのか」
巧はそう分析する。
闘い気持ちはある。しかし、もし負けてしまったらどうすればよいのだろうか。恐らくこの空間にいる者達はそう考えているのでは無いか。
しかし、その考えを持っていない、もしくはしていない者も必ず存在する。
「・・・」
遊駆はそういった人間を一人だけ知っているのだ。
この状況から進んで闘いを挑み、勝ち負けを視野に入れず闘う男を。
「・・・今だけだろう」
「・・・そうだろうね」
無感情な瞳で遊駆はそう呟く。巧は小さく笑って答えた。
「ん!?おー!!」
笑っていると遊駆達の目の前に小柄な少年が戦意に満ちた瞳で遊駆に向かって突進するように走ってきた。
「お前!お前!お前ー!あ、自己紹介!」
感情の高ぶりを抑えるためか、少年は大きく咳払いをした。
「俺っちの名前は倉木 龍平(くらき りゅうへい)、クラスは3組!お前は藤玄遊駆だよな!?」
倉木と名乗るこの少年は遊駆の名前を感情が高ぶっているのか、それとももとからなのか、大声で叫ぶように呼ぶ。
「ん?なんで名前を知ってるのかって聞かないのか?」
「・・・4月11日」
4月11日、億谷護という人物が教師に知られていないほんの些細な事件を起こした。生徒は皆困り果てていたのだが、遊駆が登場しその解決されのである。なので、遊駆の名前を覚えているまたは知っている初対面の人間の大半は間違いなくその事件に居合わせた人間しか考えられないのだ。
「なんだ分かるのか!だったら話は早いや。藤玄遊駆!あの時はありがとう!けど今は大会、デュエリストが決闘を挑んできたら、後はもう言うまでもないだろ!?」
「・・・構わないが、観客が一人いるぞ」
「大丈夫だい!さぁ、始めようぜ!」
遊駆がディスクを展開する。心地よい音が遊駆の耳に響き渡る。
ディスクを展開する音、デッキがシャッフルされる音、シャッフルが完了される音、全てが無駄無く洗練されたシンフォニー。この音楽で遊駆のデュエリストとしてのスイッチが入るのである。
「始まるか...」
「デュエル!!」
「デュエル」
遊駆 LP4000
龍平 LP4000
手札を確認すると、龍平はニヤリと笑った。
「ヘヘヘ...俺っちは後攻で行かせて貰うぜ!」
先攻は遊駆だ。
「俺のターン。・・・俺はカードを一枚伏せてターンエンド」
遊駆 LP4000 手札3 墓地除外無 場伏カード1
先ずは様子見か、と巧は遊駆の方向を見て分析を始める。
「俺っちのターン、ドローだい!」
(さて...倉木君はどう出るかな...)
「完璧な手札だい!俺は手札から『ハック・ワーム』の効果発動だい!」
その名前を聞いた巧の目付きが一変し、警戒の表情が浮かび遊駆に一瞥を与える。
「そっちは分かってるようだい、そう、このハック・ワームは、元制限カード!超強力なんだい!じゃあ行くだい!ハック・ワームの効果発動!このカードは相手フィールドにモンスターが存在しない場合、特殊召喚できるだい!」
機械的な虫のような見た目をしたモンスターが龍平のフィールドに現れる。
「シャァァ」 LV1 ATK400/DEF0
「更にもう1体!」
「シャァァ」 LV1 ATK400/DEF0
「行くだい遊駆!」
ハック・ワームが光の粒子となって何かに吸い込まれて行く。吸い込んでいるモノの巨体に光が宿り始める。
「遊駆、昔流行った『ハックツークラッキング』って勝ち方知ってるか?」
遊駆は首を横に静かに振る。
「だろうなぁ。だが、昔は流行ったんだ。魅せてやるよ遊駆!ハックツークラッキング!俺はハック・ワーム二体をリリースし、『クラッキング・ドラゴン』をアドバンス召喚だい!」
クラッキング・ドラゴンが姿を現す。その重量感溢れる巨体を動かし、龍平のもとへ召喚された。
「グオォォ!!」LV8 ATK3000/DEF0
(クラッキング・ドラゴン...ハック・ワームと同じく元制限カード...。そしてハックツークラッキングか...懐かしい召喚方法だな...リンク召喚が流行りだしたばかりの頃に暴れた召喚方法だっけ)
「バトル!クラッキング・ドラゴンで、遊駆に直接攻撃!」
トラフィック・ブラスト!
クラッキング・ドラゴンの口が開き、全身が光り始め、上体を反らして、遊駆にめがけ翡翠のような色をした光線を発射する。
「・・・!」遊駆LP4000→1000
「これでターンエンドだい!」
龍平 LP4000 手札3 場 モンスター1体伏無 墓地モンスター2 除外無
遊駆 LP1000 手札3 場伏1 墓地無 除外無
いきなり残りライフが1000になってしまう遊駆、しかし遊駆はまだ余裕そうに見えてしまう。
遊駆のターンだ。遊駆はいつものように崖っぷちの状態でカードをドローした。
「・・・巧」
「何?」
「・・・さっき渡したメモ帳とボールペンを出しておいた方がいい」
「え?・・・分かった」
「俺のターン、ドロー。・・・俺は」
「宝石呪文(ジュエルスペル)を...」
「発動する」
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なかなか面白くなりそうなデュエルですね!見逃せない。
先程渡したのは分析するためなのだろうか? (2019-02-05 07:10)
次回は強くなったJMと龍平のクラッキング・ドラゴンが勝負を繰り広げます。デュエルシーンを面白くできるように、色々と考えてやってみます!
メモ帳とボールペンを渡したのはまさに分析というよりも、遊駆のこれから繰り出す新しいカード達を巧に知ってもらうために渡したと言ったほうがいいかもしれませんね。 (2019-02-05 16:56)