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第4話:魔術師の共演 その1 作:氷色
エビル・デーモンの猛攻に終始するかと思われたこのターンだが、最後の最後でユウヒが相棒と呼ぶ《ブラック・マジシャン・ガール》の特殊召喚に成功した。
3000もの大ダメージを受けてまで出したモンスターだ、切り札になり得なければ大損だが、果たしてーー。
「《ブラック・マジシャン・ガール》……。攻撃力3000を相手に攻撃力2000のモンスターで挑むからには、何か策がありそうだけど……」
ユウヒの考えを推し量るアスナの言葉に、アンリも頷く。
「今まで“伝説のデュエリスト”と呼ばれる人達の中には、カードの精霊を従えていた人が多いと聞きます。私も精霊を連れている人を見たのは初めてですが、きっと斯波くんも普通のデュエリストとは違うはずです。信じましょう、彼とーー彼の精霊の力を」
デュエルの専門家集団であるLDSの、更にトップチームに名を列ねる上位守護官にも何人か会ったことがあるが、確かに少なくともアスナの会った人物の中には精霊を連れているような人はいなかった。
斯波ユウヒがそういう意味では稀有な存在であることは間違いない。
しかしそれが現時点でのユウヒの実力を推し量るための材料となるかと言えば、答えは否だ。
アスナは隣に立つアンリを見やる。
彼女はなぜさっき会ったばかりのあの少年をそこまで信じることができるのだろう?
アスナには、先程アンリ自身が言った精霊云々は後付けの理由に過ぎないように思えた。彼女は彼の中に自分とは違う他の何かを見出だしているように思えるのだ。
そこでふとアスナは周りを見渡した。そして一つ不審な点を見出だして、眉を寄せた。
あれ、観衆が増えているようなーー。
普通、こんな街中にあれほどのモンスターが出現すれば我先にと逃げ出す者が続出しパニックになるものだ。
いくらデュエルフィールドが展開されエビル・デーモンがそこから出られないとは言え、もしユウヒが負けるようなことになればこの壁も消える。そうなれば次に襲われるのは間違いなく今ここにいる群集の中の誰かだ。
にも関わらず、このデュエルを見ようと逆に人々が集まってきている。
アスナにはこれが何を意味するのか、その答えはまだ出せない。
ただユウヒが負けないように祈るばかりだった。
「俺のターン!ドロー!」
自分のターンを迎えたユウヒがドローする。
引いたカードは魔法カードだった。守りに使えるカードではない。
これでユウヒの手札は5枚。しかしその中に守備的なカードは1枚もない。やはりこのターンは攻めに打って出るしか手はなさそうだ。幸いそのための下準備は整っている。
ユウヒはその中からモンスターカードを1枚選んでデュエルディスクにセットする。
「マナ一人で何ができるかって言ったよな? 残念ながらマナは一人じゃない! 《ブラック・マジシャン・ガール》には頼れる仲間達がいる! そいつを見せてやるぜッ! 俺は《アップル・マジシャン・ガール》を召喚!!」
†
《アップル・マジシャン・ガール》
効果モンスター
星3/炎属性/魔法使い族/攻1200/守 800
(1):1ターンに1度、このカードが攻撃対象に選択された場合に発動できる。手札からレベル5以下の魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。その後、攻撃対象をそのモンスターに移し替え、攻撃モンスターの攻撃力を半分にする。
(2):このカードが戦闘・効果で破壊された場合、このカード以外の自分の墓地の「マジシャン・ガール」モンスターを3体まで対象として発動できる(同名カードは1枚まで)。そのカードを手札に加える。
†
現れたのは《ブラック・マジシャン・ガール》によく似た雰囲気の女の子だった。
お決まりらしいポーズがビシッと決まっている。
青を基調としたミニドレス風の《ブラック・マジシャン・ガール》とは異なり、こちらは赤で統一されたチャイナドレス風の衣裳。やはりテーマとしては魔法少女系のコスプレのようだ。背中にはデフォルメされた翼が付いている。
マナが多少アホっぽいので幼く感じるが見た目としては18~20歳くらいなのに対し、彼女は少しだけ幼い感じ。歳の頃で言えば15~17歳くらいか。マナの妹だと言われれば充分に納得いくだろう。
だが当のマナは『げげッ、いきなりライバル登場!?』とおののいている。
魔法少女が二人となったユウヒのフィールド。
それを見ても、エビル・デーモンの顔は険しい。
『またも貧弱な下級モンスターか。その娘の攻撃力もたかが1200。儂のモンスターには及ばんぞ』
「まだまだぁ!」
だっと駆け出すユウヒに、マナはポンと魔法の杖を取り出すとそれに股がった。まるで箒で空を飛ぶ魔女のようだ。
ユウヒは走り出した勢いのままその後ろに飛び乗る。
「行っけぇマナ!!」
『はいぃ♪』
そのまま杖は急加速で上空へと舞い上がった。
そのアクロバティックな飛行に観衆から歓声が上がる。
『ぬ、狙いはアクションカードか……!』
その狙いには気付いたものの、すでにユウヒ達はエビル・デーモンの妨害圏外。
ユウヒは狙い通り空中のアクションカードをゲットした。
しかしユウヒの戦術はこれで終わりではない。
「確かに俺のモンスター達は1体ずつじゃアンタのモンスターには及ばない。だけど弱い力も束にしてかかれば強いモンスターを倒せるんだ! それをこのカードで証明してやる!」
ユウゴが手札から更なるカードを抜き出した。
「俺は手札のこのカードを発動する!」
そしてそのカードをそのまま墓地へ送
った。
「更なる“マジシャン・ガール”よ! 今こそ絆の力を紡ぎ、仲間に麗しの力を与えよ! 《キウイ・マジシャン・ガール》!!」
ユウヒのフィールドに新たな“マジシャン・ガール”が姿を現した。
《キウイ・マジシャン・ガール》は他の二人とは少々雰囲気の違う少女だ。
雰囲気としては可愛い感じの二人とは異なり、こちらは切れ長の目をしたクールな美人。緑と黒を基調としたコスチュームも落ち着いた印象を与える。
容姿も雰囲気も最もアダルティーなことから、“マジシャン・ガール”達の長姉といったところか。
「《キウイ・マジシャン・ガール》の効果!! このカードは手札から墓地に送ることによって、フィールドの“マジシャン・ガール”の攻撃力・守備力をフィールド・墓地の“マジシャン・ガール”1種類につき300ポイントアップさせる!!」
†
《キウイ・マジシャン・ガール》
効果モンスター
星5/風属性/魔法使い族/攻1800/守1200 (1):このカードを手札から捨てて発動できる。自分フィールドの「マジシャン・ガール」モンスターの攻撃力・守備力はターン終了時まで、お互いのフィールド・墓地の「マジシャン・ガール」モンスターの種類×300アップする。この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、 自分フィールドの魔法使い族モンスターは効果で破壊されず、 相手の効果の対象にならない。
†
《キウイ・マジシャン・ガール》が杖を振るうと、まるで魔力のシャワーのようにそこから瑞々しい力が降り注いだ。
それらはフィールドの《ブラック・マジシャン・ガール》、《アップル・マジシャン・ガール》に緑色のオーラとなって力を与える。
「今フィールドには《ブラック・マジシャン・ガール》と《アップル・マジシャン・ガール》、墓地には《キウイ・マジシャン・ガール》がいる。よってフィールド・墓地に“マジシャン・ガール”は3種類。これによりフィールドの2体の“マジシャン・ガール”のステータスはそれぞれ900ポイントアップする!!」
ブラック・マジシャン・ガール/攻2000→2900
アップル・マジシャン・ガール/攻1200→2100
役目を果たし消えていく《キウイ・マジシャン・ガール》。
しかしその強化性能は強力だった。
同レベルのモンスターと比べても見劣りする程だった2体の魔法少女のステータスを一気に上級モンスター並へと押し上げた。
だがそれを見てもエビル・デーモンの顔には大した動揺は現れない。
『なるほど、そんな強化モンスターを持っていたか。だがそれでもそやつらでは儂のモンスターは倒せぬぞ』
ユウヒの最大戦力は《ブラック・マジシャン・ガール》の攻撃力2900。しかし対峙する《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の攻撃力は3000だ。僅かに届かない。
「分かってるさ! そのためのこのカードだ!」
ユウヒは更に手札からカードを抜き出す。
そのカードの背には“A”の文字。
『先のアクションカードかッ!!』
「そういうこと! アクション魔法発動! 《フレイム・チェーン》!!」
ユウヒがアクション魔法をデュエルディスクに挿入した。
†
《フレイム・チェーン》
アクション魔法
(1):相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力を400下げる。
†
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の足下から炎を包まれた鎖が幾本も出現する。
それらは瞬く間に《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》に絡み付きその体を絞め上げた。
鎖の絞め付けと炎によって《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》も苦悶の声を上げると共に、その効果によって攻撃力がダウンする。
真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン/攻3000→2600
これで《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の攻撃力を《ブラック・マジシャン・ガール》の攻撃力が上回った。
『なんだとッ!?』
このデュエル中、初めてエビル・デーモンの表情に驚きが表れた。
これがユウヒの秘策だった。
総じて攻撃力の低いユウヒのモンスター達は1体ずつの力ではエビル・デーモンの強力なモンスター達には敵わない。そこでユウヒの取った作戦がこれだ。
1対1で敵わないなら1対2で闘う。それでも敵わなければ1対3で闘う。単純だが、これが弱者の闘い方である。
「バトルフェイズだ!!」
マナが杖を高く掲げ、魔力をその先端へと注ぐ。
すると杖の先に球状の黒い魔力の塊が現れ、徐々に大きくなっていく。
《ブラック・マジシャン・ガール》の魔力は闇属性。扱うのは闇の黒魔術である。あれはおそらく彼女の全力が込められた最大攻撃魔法なのだろう。
しかしそこに込められているのはマナの魔力だけではない。
《キウイ・マジシャン・ガール》の効果によって、今のマナには3種類の“マジシャン・ガール”により紡がれた力が宿っているのだ。
この布陣を作るために、LPの4分の3を捨てた。この一撃に全てを懸けたのだ。
そのユウヒの覚悟も飲み込んで、マナの魔力球はかなりの大きさへと膨らんでいた。
ユウヒが、そしてマナが叫ぶ。
「《ブラック・マジシャン・ガール》で《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》に、攻撃ィ!!」
『いっけぇーッ!!』
「『“黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)”ゥゥゥッ!!!』」
掛け声と共にマナが炎の魔力球“黒・魔・導・爆・裂・破”を放った。
『ぬ、お、お、おおおおぉー!!』
黒光りしながら迫り来るそれは、もはや一つの巨大な砲弾だ。
叫ばれたその悲鳴はもう《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》のものなのか、その主のものなのか判別できなかった。
そしてユウヒ、マナ、《アップル・マジシャン・ガール》、《キウイ・マジシャン・ガール》の全てを込めた会心の一撃は、その両者を巻き込んで凄まじい爆発となって炸裂する。
爆発と共に《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》が吹き飛ぶのが見えた。
エビル・デーモン/LP4000→3700
それと同時に観衆からわっと歓声が上がった。
「まるでエンターテイメントショーだわ……!」
その鮮やかな逆転劇もさることながら、ユウヒの繰り出すモンスター達の可愛らしさと煌びやかな演出は人々の心を確かに惹き付けるものであった。
黒、赤、緑の魔法少女達が舞うように戦い、攻撃に転じれば派手の一言。まるでショーを観ている感覚に陥る。
アンリの目はすでにユウヒの一挙手一投足に釘付けになっていた。
「よっしゃああああぁー!!」
ユウヒは拳を天に突き上げた。
渾身の、そして起死回生の一発は凄まじい爆発となって確かに《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》を吹き飛ばした。これを喜ばずにいられようか。
しかもユウヒにはまだ攻撃力2100の《アップル・マジシャン・ガール》の攻撃が残されている。この直接攻撃が決まれば、エビル・デーモンのLPを一気に半分以上削れる。
「更に《アップル・マジシャン・ガール》でダイレーー」
爆煙が晴れるのを待たずにユウヒは《アップル・マジシャン・ガール》に攻撃の指令を出そうとする。
しかしーー
『待ってッ!』
ーーそれを止めたのはマナだった。
「マナ?」
その意図が分からず、ユウヒは眉をひそめる。 覗き込んだマナの表情は意外にも険しい。
与えたダメージ自体は確かに僅かなものだったかもしれないが、それでも目下の脅威であった《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》は他でもない彼女自身の攻撃で倒すことができたのだ、マナならもっとはしゃぐかと思ったのだが。
『違うよマスター…』
違う?何が違うというのだろう。
マナは難しい表情のまま、エビル・デーモンのフィールドを見つめている。
何気なくその視線をユウヒも追い、そして気付いた。
「嘘……だろ……」
マナの“黒・魔・導・爆・裂・破”によって立ち込めていた爆煙が晴れて、その合間からエビル・デーモンの姿が見え始めている。
そこに立っていたのは2体のエビル・デーモンだったのだ。
言うまでもなく、内1体はデュエルの相手としてのエビル・デーモン。そしてもう1体の方はさっきのマナの攻撃で吹き飛んだはずの《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》であった。
「なんで……」
“黒・魔・導・爆・裂・破”は確かに直撃したはずだ。なのに何故《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》が涼しげな顔でまだそこにいるのだ。
『……罠カード《デーモンの雄叫び》』
不意にエビル・デーモンが口を開く。
『儂はすでにこのカードを発動していたのだ。《デーモンの雄叫び》はLP500を支払うことで墓地の“デーモン”モンスターを特殊召喚する蘇生罠。その対象にレベル制限はない。上級モンスターである儂の分身ーー《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》も例外なく復活できる』
†
《デーモンの雄叫び》
通常罠
500ライフポイントを払い発動する。自分の墓地から「デーモン」という名のついたモンスターカード1枚を 自分のフィールド上に特殊召喚する。このモンスターは、いかなる場合にも生け贄にする事はできず、このターンのエンドフェイズに破壊される。
†
“黒・魔・導・爆・裂・破”は確かに一度《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》を破壊してはいた。
しかしその直後に《デーモンの雄叫び》により復活させられていたのだ。
フィールドには爆発で生じた砂埃が舞い上がっていた。その中でそれらの状況が起こっていたため、あたかも破壊されずに健在だったかのように見えたのだ。
思い起こせば《デーモンの雄叫び》は《トラッシュ・デーモン》の効果でサーチされたカードだ。
最初のターン、《トラッシュ・デーモン》を処理できていればこのピンチはなかった。《トラッシュ・デーモン》を倒すことを諦め、3体の“マジシャン・ガール”によるコンボ攻撃に全てを懸けたユウヒの戦術が、ここにきて否定されたようなものだ。
だがまだ光明はある。
ユウヒは《デーモンの雄叫び》のテキストに目を向ける。
《デーモンの雄叫び》は確かに“デーモン”モンスターであればどんなモンスターでも蘇生できる強力なカードだ。
だが同時に、蘇生されたモンスターはそのターンの終了時に破壊されるデメリットもテキストに明記されている。
つまり《デーモンの雄叫び》で蘇生されたモンスターはそのターン中しか生きられない運命なのだ。
『本当にそう思うか? 儂は《デーモンの雄叫び》発動の直前に、更にこの永続罠《デーモンの暴虐》を発動していた』
†
《デーモンの暴虐》(*オリカ)
永続罠
(1):自分フィールドの「デーモン」モンスターはスタンバイフェイズにライフポイントを払わなくてもよい。
(2):自分は「デーモン」魔法・罠カードを発動するためにライフポイントを払わなくてもよい。
(3):自分フィールドの「デーモン」モンスターは効果では破壊されない。
(4):自分フィールドの「デーモン」モンスターが戦闘・効果で相手モンスターを破壊した場合、発動できる。破壊した相手モンスターの数×400ポイントのダメージを相手に与える。
†
エビル・デーモンのフィールドに存在していたのは《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》だけではなかった。
罠カードを示すピンク色のカードが1枚、表側になって立っている。
『通常、魔法・罠カードは発動され効果が処理されればフィールドからは消え去る。しかし永続魔法・永続罠は別だ。これらのカードは発動後もフィールドに残り破壊されるまで効果が持続する。《デーモンの暴虐》は“デーモン”魔法・罠カード発動のためのライフコストをなしにし、更にフィールドの“デーモン”モンスターは効果では破壊されなくなる! 貴様がこのカードを破壊するまでずっとな!』
「なんだと!?」
このカードが存在する限り“デーモン”モンスターは効果では破壊されない。
ということはエビル・デーモンの“デーモン”モンスターーーつまりは《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》はユウヒのカード効果では除去できないだけではなく、《デーモンの雄叫び》のターン終了時の破壊も適用されず次のターン以降もフィールドに残るということだ。
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》はただ単純に復活したわけではなかった。効果破壊耐性も備える更に厄介な存在として、ユウヒ達の前に立ち塞がったのである。
『先の攻撃は中々見事だった。流石の儂も一瞬ひやりとしたわ』
不意に発せられたエビル・デーモンからの称賛。
しかしその次の言葉は『だが……』と前置きして紡がれる。
『……まだ足りぬな。儂を倒すのなら、一気に儂のLPを0にするくらいの攻撃でなければ。この程度ではまだ貴様を対等な相手だと認めてやるわけにはいかぬわ』
復活した《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》は再び《闇の二重魔法陣》の効果を受け、攻撃力が3000に上がっている。攻撃力2100の《アップル・マジシャン・ガール》では突破できない。
このターンはすでにアクションカードを使用しているため、再びそれに頼ることもできない。ここは悔しいが攻めを断念するしかない。
「くっそ~」
仕方なくユウヒは手札からカードを1枚選ぶ。
「バトルフェイズは終了!続いてメインフェイズ2!俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」
《キウイ・マジシャン・ガール》の強化効果はターン内のみという制約がある。
このターンに強化された“マジシャン・ガール”達の攻撃力は、ユウヒがエンド宣言したことで元に戻る。
ブラック・マジシャン・ガール/攻2900→2000
アップル・マジシャン・ガール/攻2100→1200
◇ユウゴ(手札2・LP1000)
モンスター
ブラック・マジシャン・ガール/攻2000
アップル・マジシャン・ガール/攻1200
魔法・罠
セットカード×1
◇エビル・デーモン(手札3・LP3700)
モンスター
真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン/攻3000
魔法・罠
闇の二重魔法陣/永続
デーモンの暴虐/永続
ターンが移り、エビル・デーモンのターン。
このターンの攻めをなんとかして防がねば、これがラストターンとなりかねない。
『ドロー!』
エビル・デーモンがデッキからカードをドローする。
引いたカードは罠カード。
このターンには使えないが、エビル・デーモンの勝利を更に磐石にするには都合のいいカードだった。
『やはり儂の勝利は揺るがぬ』
ユウヒの推察通りエビル・デーモンは自らの力に誇りを持っている。
ユウヒがどんな戦術を用いようがその全てを跳ね返す自信があった。
最後まで勝負を諦めなずサレンダーする気配のないユウヒの姿勢には好感が持てる。
しかしそれで結果が変わるほど、戦いとは甘いものではない。
『《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》は墓地から蘇ったモンスター! しかし、だからと言って《闇の二重魔法陣》の効果を受けぬわけではない! 依然《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》は再度召喚状態だ!』
《闇の二重魔法陣》の効果範囲は単に闇属性のデュアルモンスターとしか指定されていない。手札から召喚されようが、墓地から特殊召喚されようが、再度召喚状態として扱うことに違いはない。
つまりこの《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の相手モンスターを破壊する効果も有効だということだ。
『ゆくぞッ!《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の効果発動ッ!《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の攻撃力以下の守備力を持つ相手モンスターを全て破壊する!!』
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の攻撃力は3000。
対するユウヒのモンスターの守備力は、《ブラック・マジシャン・ガール》が1700、《アップル・マジシャン・ガール》に至っては僅かに800。この効果に耐えられるモンスターはいない。
『フハハハハッ!吹き飛べ!“怒髪天昇撃”ィ!!』
《祈りの聖女 ホーリー・エルフ》の時と同じく、《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》が雷のオーラを放射し、ユウヒのフィールドが雷柱に襲われる。
「くッ……マナッ!!」
『キャアアアアッ!』
マナが悲鳴を上げながらその雷柱を避けて逃げ惑う。杖の後ろに乗っている形のユウヒは振り落とされないように必死でしがみつく。
まるでジェットコースターのように襲い来る雷を無茶苦茶なスピードで蛇行しながら避けていく。
『あん♪ 変なとこ触んないで下さいよぅマスター』
「んなこと言ってる場合かッ!」
すぐ傍でスパークする雷撃に身を縮めながらユウヒはマナの腰に回した腕に力を込める。
『えっ……じゃあ変なとこ触っていいですよ』
「だからそんなこと言ってる場合じゃないって言ってるだろッ!」
急に頬を赤らめるマナに、それどころじゃないユウヒがツッコミを入れる。
だが《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の放った雷撃はそんなことお構いなしに襲い来る。
マナもそうずっとそれを避けられるものではない。
何とかしなければ、とユウヒが目を凝らすと、先にアクションカードが見えた。
「あれだッ! マナ!」
『了解でぇす!』
マナがスピードを上げてそれに向けて飛ぶ。
しかしその直前に雷柱が出現した。
「ぶつかるッ!」
すでにマナの杖はトップスピード。それを避けるのには間に合わない。
もう駄目か、とユウヒが目を閉じかけたーーその時だ。
その雷柱に横から何かが飛び出してきて、ユウヒ達よりも早くぶつかった。
「《アップル・マジシャン・ガール》ッ!」
それはユウヒのもう一人の仲間である赤き魔法少女だった。
彼女がまるで盾になるかのように雷柱に体をぶつけ、ユウヒ達を守ったのだ。
『マスターッ!』
マナがその一瞬を見逃すことなく雷柱を避け、ユウヒ達は無事アクションカードへと辿り着いた。
しかし《アップル・マジシャン・ガール》は雷柱にやられ、その姿を消していく。
「ごめん……ありがとう《アップル・マジシャン・ガール》」
ユウヒが消え行く《アップル・マジシャン・ガール》にそう別れの言葉を告げると、彼女はにこりと微笑んだ。
だが、感傷に浸る間もなくまた新たな雷柱がユウヒとマナを襲う。
「くっそ……! だけどこれでどうだッ!」
ユウヒは手にしたばかりのアクションカードをデュエルディスクに挿入する。
「アクション魔法《ミラー・バリア》ッ! こいつで《ブラック・マジシャン・ガール》は守られる!」
ユウヒとマナを包むように、まるでミラーボールのような障壁が現れた。それが雷を弾き、二人を守る。
†
《ミラー・バリア》
アクション魔法
(1):フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターはカードの効果では破壊されない。
†
『アクションカードに救われたかッ! だが小娘を消し去っただけでは終わらぬぞッ!《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》が貴様のモンスターを破壊したことにより、《デーモンの暴虐》の効果が発動! 貴様に400ポイントのダメージを与える!』
永続罠《デーモンの暴虐》には、“デーモン”モンスターが相手モンスターを破壊した場合、その数×400ポイントのダメージを与える効果もある。
《アップル・マジシャン・ガール》を破壊されたユウヒには400ポイントのダメージが課される。
《ミラー・バリア》をすり抜けて侵入した雷撃がユウヒの体を走る。
「ぐあっ……あッ!」
身体を走る電撃は容赦なく肌を焼く。
ユウヒ/LP1000→600
「く……そ……ッ」
ユウヒは拳を強く握り絞める。
身体を焼かれる痛みよりも、仲間が雷に消し飛ばされたことによってまるで身を切り裂かれたように胸が痛む。
だが悲しんでばかりもいられない。
ユウヒにはユウヒのやるべきことがある。
「《アップル・マジシャン・ガール》が破壊されたことで、その効果が発動するッ!このカードが破壊された場合、墓地から《アップル・マジシャン・ガール》以外の“マジシャン・ガール”を手札に戻すことができる!」
これは《アップル・マジシャン・ガール》の第2の能力だ。
《アップル・マジシャン・ガール》は破壊されると、墓地の自身以外の“マジシャン・ガール”を3種類まで選んで手札に戻す効果があるのだ。これは破壊以外に他の制約がないため、墓地に“マジシャン・ガール”が多く置かれていれば多大なハンドアドバンテージを得ることのできる強力な効果だった。
だが今はこの効果で戻せるカードは1枚しかない。
「俺は《アップル・マジシャン・ガール》の効果で、墓地から《キウイ・マジシャン・ガール》を手札に戻す!」
フィールドに大きなリンゴが現れる。
それがポンと割れると中から出てきたのは《キウイ・マジシャン・ガール》だった。
《キウイ・マジシャン・ガール》はすぐさまカードに身を変え、ユウヒの手札へと戻ってくる。
どうやらこれが《アップル・マジシャン・ガール》の効果による演出らしい。
《キウイ・マジシャン・ガール》が手札に戻ったということは、その効果を再び使えるようになったということだ。
今はフィールドに《ブラック・マジシャン・ガール》、墓地に《アップル・マジシャン・ガール》があるため、この効果を使用すれば、再び《ブラック・マジシャン・ガール》の攻撃力は2900まで上げられる。そしてその効果は相手ターンであるこのターンにも発動可能だった。
だがそれらの効果は、エビル・デーモンの攻撃を止める要因にはならなかった。
『それが何だと言うのだッ!《ブラック・マジシャン・ガール》を強化しようがその攻撃力は2900止まり! 攻撃力3000の《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の攻撃が止められなければ意味などあるまいッ! バトルフェイズ!! 我が分身ーー《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》よ!小僧に引導を渡してやれ!』
エビル・デーモンが手を振るい、《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》に攻撃を命じる。
それに応えて《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の手に雷のエネルギーが握られた。
『終わりだ、小僧ッ!“魔降雷”ィィィ!!』
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》によって、その最強攻撃技である雷の矢が放たれた。
放たれた雷がユウヒの視界を埋め尽くすようにして襲い迫る。
その標的はユウヒ唯一のモンスターである《ブラック・マジシャン・ガール》ーーマナだ。
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の攻撃力は3000。対して《ブラック・マジシャン・ガール》の攻撃力は2000。
ユウヒのLPが残り600しかない以上、この攻撃が決まればユウヒのLPは間違いなく0となる。もしここで手札の《キウイ・マジシャン・ガール》を発動させたならば《ブラック・マジシャン・ガール》の攻撃力は2900まで上がりユウヒの敗北は避けられるものの、マナがやられてしまうことに変わりはない。
だがーー
「そんなことはさせないッ!!」
《ブラック・マジシャン・ガール》は《アップル・マジシャン・ガール》が身を呈して守ってくれたユウヒが最も信頼を置く仲間。
《キウイ・マジシャン・ガール》は破壊された《アップル・マジシャン・ガール》が託してくれたカードだ。
その想いを無駄にしないためにも、ここでむざむざと使い捨てるわけにはいかなかった。
ユウヒがひらりとマナの杖から飛び下り、着地すると同時に伏せカードを発動させる。
「さぁ、世紀のイリュージョンを始めようかッ! 罠、発動! 《エスケープ・イリュージョン》!!」
マナを中に納めるように箱が現れた。
それが《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の“魔降雷”に貫かれる。
箱はマジックショーで使われるような頑丈な鉄製だが、《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の雷撃の前には無力だ。
衝撃でどこかしら歪んだのか箱の扉がギギギと軋みながら開く。
しかしその中にマナの姿はなかった。
『なにッ!?』
その空になった内部の様子にエビル・デーモンが驚きの声を上げる。
攻撃を受けて消し飛んだわけではない。その証拠にユウヒのLPは変動していない。
ユウヒはにやりと笑う。
「さぁ、消えたマナはどこに行ったんでしょうか?」
両手を広げてエビル・デーモンに問いかけるユウヒの姿は、まるで一流マジシャンのようだ。
『ぬ……』
答えられないエビル・デーモンに、ユウヒは両腕でバツを作った。
「ブブー。時間切れ。正解はーー」
ユウヒは手札から1枚のカードを抜き出し、ひらりと見せる。
「ーー手札の中でした♪」
見せたカードは確かに《ブラック・マジシャン・ガール》のカードだった。
『ハぁ~イ♪ マナちゃんふっか~つ』
すうっとユウヒの頭上にマナも姿を現す。
こちらはマジシャンのアシスタントを気取ったポーズ。
「罠カード《エスケープ・イリュージョン》は自分フィールドのカード1枚を手札に戻し相手のバトルフェイズを強制的に終了させるのさ!」
†
《エスケープ・イリュージョン》
通常罠
(1):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。自分フィールドのカード1枚を手札に戻し、そのバトルフェイズを終了する。
†
『むぅ……防御系のカードを温存していたか……』
本当に抜け目のない小僧だ。
ここまでこのデュエルの主導権はエビル・デーモンが握っていたと言って過言ではない。
だが一方でエビル・デーモンにも懸念はあった。
確かにこれまではエビル・デーモンの推測通りに事が運んでいる。だがそれでもこの小僧にはすんでのところでまるで掴む手を掻い潜る魚のようにするりと逃げられてしまう。まるで掴み所がないのだ。
ギリギリのところでこちらの思惑を外すユウヒの戦い方を最初はその場しのぎと浅く見ていた。しかしここに来てエビル・デーモンはそのことに脅威を覚え始めていた。
本当にこの小僧がやっているのはその場しのぎに過ぎないのかーー?
ユウヒを仕止めるために手を伸ばせば伸ばすほど、奴に誘われて引き返せない深みに引き寄せられているような気がする。
深みーー。
そうしてエビル・デーモンは気付く。
こういう感覚を何と言うのか。
『“底が知れぬ”ーーか』
握れば潰してしまいそうに小さい存在であることは変わらない。
しかし歴戦の経験がエビル・デーモンの中で警鐘を鳴らす。この小僧は“深き沼”だと。
エビル・デーモンのバトルフェイズは強制的に終了させられてしまった。
できることはそう多くない。
『儂はカードを1枚伏せてターン終了だ』
エビル・デーモンのフィールドにセットカードが現れる。
それはこのターンのドローフェイズで引いた罠カード。
確かにエビル・デーモンはユウヒを甘く考えすぎていたのかもしれない。
今のこの状況ももしかしたらユウヒが意図して作り上げたものなのかもしれない。
しかし最後に勝つのが自分であることは変わらない、とエビル・デーモンは高を括った。
エビル・デーモンはこの罠カードの存在により自らの負けなどあるはずがない、と確信していた。
そして事実そのカードは発動を許せば一瞬でユウゴを塵にできるほどの力を秘めているのだった。
◇エビル・デーモン(手札4・LP3700)
モンスター
真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン/攻3000
魔法・罠
闇の二重魔法陣/永続魔法
デーモンの暴虐/永続罠
セットカード×1
◇ユウヒ(手札4・LP600)
モンスター
なし
魔法・罠
なし
3000もの大ダメージを受けてまで出したモンスターだ、切り札になり得なければ大損だが、果たしてーー。
「《ブラック・マジシャン・ガール》……。攻撃力3000を相手に攻撃力2000のモンスターで挑むからには、何か策がありそうだけど……」
ユウヒの考えを推し量るアスナの言葉に、アンリも頷く。
「今まで“伝説のデュエリスト”と呼ばれる人達の中には、カードの精霊を従えていた人が多いと聞きます。私も精霊を連れている人を見たのは初めてですが、きっと斯波くんも普通のデュエリストとは違うはずです。信じましょう、彼とーー彼の精霊の力を」
デュエルの専門家集団であるLDSの、更にトップチームに名を列ねる上位守護官にも何人か会ったことがあるが、確かに少なくともアスナの会った人物の中には精霊を連れているような人はいなかった。
斯波ユウヒがそういう意味では稀有な存在であることは間違いない。
しかしそれが現時点でのユウヒの実力を推し量るための材料となるかと言えば、答えは否だ。
アスナは隣に立つアンリを見やる。
彼女はなぜさっき会ったばかりのあの少年をそこまで信じることができるのだろう?
アスナには、先程アンリ自身が言った精霊云々は後付けの理由に過ぎないように思えた。彼女は彼の中に自分とは違う他の何かを見出だしているように思えるのだ。
そこでふとアスナは周りを見渡した。そして一つ不審な点を見出だして、眉を寄せた。
あれ、観衆が増えているようなーー。
普通、こんな街中にあれほどのモンスターが出現すれば我先にと逃げ出す者が続出しパニックになるものだ。
いくらデュエルフィールドが展開されエビル・デーモンがそこから出られないとは言え、もしユウヒが負けるようなことになればこの壁も消える。そうなれば次に襲われるのは間違いなく今ここにいる群集の中の誰かだ。
にも関わらず、このデュエルを見ようと逆に人々が集まってきている。
アスナにはこれが何を意味するのか、その答えはまだ出せない。
ただユウヒが負けないように祈るばかりだった。
「俺のターン!ドロー!」
自分のターンを迎えたユウヒがドローする。
引いたカードは魔法カードだった。守りに使えるカードではない。
これでユウヒの手札は5枚。しかしその中に守備的なカードは1枚もない。やはりこのターンは攻めに打って出るしか手はなさそうだ。幸いそのための下準備は整っている。
ユウヒはその中からモンスターカードを1枚選んでデュエルディスクにセットする。
「マナ一人で何ができるかって言ったよな? 残念ながらマナは一人じゃない! 《ブラック・マジシャン・ガール》には頼れる仲間達がいる! そいつを見せてやるぜッ! 俺は《アップル・マジシャン・ガール》を召喚!!」
†
《アップル・マジシャン・ガール》
効果モンスター
星3/炎属性/魔法使い族/攻1200/守 800
(1):1ターンに1度、このカードが攻撃対象に選択された場合に発動できる。手札からレベル5以下の魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。その後、攻撃対象をそのモンスターに移し替え、攻撃モンスターの攻撃力を半分にする。
(2):このカードが戦闘・効果で破壊された場合、このカード以外の自分の墓地の「マジシャン・ガール」モンスターを3体まで対象として発動できる(同名カードは1枚まで)。そのカードを手札に加える。
†
現れたのは《ブラック・マジシャン・ガール》によく似た雰囲気の女の子だった。
お決まりらしいポーズがビシッと決まっている。
青を基調としたミニドレス風の《ブラック・マジシャン・ガール》とは異なり、こちらは赤で統一されたチャイナドレス風の衣裳。やはりテーマとしては魔法少女系のコスプレのようだ。背中にはデフォルメされた翼が付いている。
マナが多少アホっぽいので幼く感じるが見た目としては18~20歳くらいなのに対し、彼女は少しだけ幼い感じ。歳の頃で言えば15~17歳くらいか。マナの妹だと言われれば充分に納得いくだろう。
だが当のマナは『げげッ、いきなりライバル登場!?』とおののいている。
魔法少女が二人となったユウヒのフィールド。
それを見ても、エビル・デーモンの顔は険しい。
『またも貧弱な下級モンスターか。その娘の攻撃力もたかが1200。儂のモンスターには及ばんぞ』
「まだまだぁ!」
だっと駆け出すユウヒに、マナはポンと魔法の杖を取り出すとそれに股がった。まるで箒で空を飛ぶ魔女のようだ。
ユウヒは走り出した勢いのままその後ろに飛び乗る。
「行っけぇマナ!!」
『はいぃ♪』
そのまま杖は急加速で上空へと舞い上がった。
そのアクロバティックな飛行に観衆から歓声が上がる。
『ぬ、狙いはアクションカードか……!』
その狙いには気付いたものの、すでにユウヒ達はエビル・デーモンの妨害圏外。
ユウヒは狙い通り空中のアクションカードをゲットした。
しかしユウヒの戦術はこれで終わりではない。
「確かに俺のモンスター達は1体ずつじゃアンタのモンスターには及ばない。だけど弱い力も束にしてかかれば強いモンスターを倒せるんだ! それをこのカードで証明してやる!」
ユウゴが手札から更なるカードを抜き出した。
「俺は手札のこのカードを発動する!」
そしてそのカードをそのまま墓地へ送
った。
「更なる“マジシャン・ガール”よ! 今こそ絆の力を紡ぎ、仲間に麗しの力を与えよ! 《キウイ・マジシャン・ガール》!!」
ユウヒのフィールドに新たな“マジシャン・ガール”が姿を現した。
《キウイ・マジシャン・ガール》は他の二人とは少々雰囲気の違う少女だ。
雰囲気としては可愛い感じの二人とは異なり、こちらは切れ長の目をしたクールな美人。緑と黒を基調としたコスチュームも落ち着いた印象を与える。
容姿も雰囲気も最もアダルティーなことから、“マジシャン・ガール”達の長姉といったところか。
「《キウイ・マジシャン・ガール》の効果!! このカードは手札から墓地に送ることによって、フィールドの“マジシャン・ガール”の攻撃力・守備力をフィールド・墓地の“マジシャン・ガール”1種類につき300ポイントアップさせる!!」
†
《キウイ・マジシャン・ガール》
効果モンスター
星5/風属性/魔法使い族/攻1800/守1200 (1):このカードを手札から捨てて発動できる。自分フィールドの「マジシャン・ガール」モンスターの攻撃力・守備力はターン終了時まで、お互いのフィールド・墓地の「マジシャン・ガール」モンスターの種類×300アップする。この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、 自分フィールドの魔法使い族モンスターは効果で破壊されず、 相手の効果の対象にならない。
†
《キウイ・マジシャン・ガール》が杖を振るうと、まるで魔力のシャワーのようにそこから瑞々しい力が降り注いだ。
それらはフィールドの《ブラック・マジシャン・ガール》、《アップル・マジシャン・ガール》に緑色のオーラとなって力を与える。
「今フィールドには《ブラック・マジシャン・ガール》と《アップル・マジシャン・ガール》、墓地には《キウイ・マジシャン・ガール》がいる。よってフィールド・墓地に“マジシャン・ガール”は3種類。これによりフィールドの2体の“マジシャン・ガール”のステータスはそれぞれ900ポイントアップする!!」
ブラック・マジシャン・ガール/攻2000→2900
アップル・マジシャン・ガール/攻1200→2100
役目を果たし消えていく《キウイ・マジシャン・ガール》。
しかしその強化性能は強力だった。
同レベルのモンスターと比べても見劣りする程だった2体の魔法少女のステータスを一気に上級モンスター並へと押し上げた。
だがそれを見てもエビル・デーモンの顔には大した動揺は現れない。
『なるほど、そんな強化モンスターを持っていたか。だがそれでもそやつらでは儂のモンスターは倒せぬぞ』
ユウヒの最大戦力は《ブラック・マジシャン・ガール》の攻撃力2900。しかし対峙する《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の攻撃力は3000だ。僅かに届かない。
「分かってるさ! そのためのこのカードだ!」
ユウヒは更に手札からカードを抜き出す。
そのカードの背には“A”の文字。
『先のアクションカードかッ!!』
「そういうこと! アクション魔法発動! 《フレイム・チェーン》!!」
ユウヒがアクション魔法をデュエルディスクに挿入した。
†
《フレイム・チェーン》
アクション魔法
(1):相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力を400下げる。
†
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の足下から炎を包まれた鎖が幾本も出現する。
それらは瞬く間に《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》に絡み付きその体を絞め上げた。
鎖の絞め付けと炎によって《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》も苦悶の声を上げると共に、その効果によって攻撃力がダウンする。
真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン/攻3000→2600
これで《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の攻撃力を《ブラック・マジシャン・ガール》の攻撃力が上回った。
『なんだとッ!?』
このデュエル中、初めてエビル・デーモンの表情に驚きが表れた。
これがユウヒの秘策だった。
総じて攻撃力の低いユウヒのモンスター達は1体ずつの力ではエビル・デーモンの強力なモンスター達には敵わない。そこでユウヒの取った作戦がこれだ。
1対1で敵わないなら1対2で闘う。それでも敵わなければ1対3で闘う。単純だが、これが弱者の闘い方である。
「バトルフェイズだ!!」
マナが杖を高く掲げ、魔力をその先端へと注ぐ。
すると杖の先に球状の黒い魔力の塊が現れ、徐々に大きくなっていく。
《ブラック・マジシャン・ガール》の魔力は闇属性。扱うのは闇の黒魔術である。あれはおそらく彼女の全力が込められた最大攻撃魔法なのだろう。
しかしそこに込められているのはマナの魔力だけではない。
《キウイ・マジシャン・ガール》の効果によって、今のマナには3種類の“マジシャン・ガール”により紡がれた力が宿っているのだ。
この布陣を作るために、LPの4分の3を捨てた。この一撃に全てを懸けたのだ。
そのユウヒの覚悟も飲み込んで、マナの魔力球はかなりの大きさへと膨らんでいた。
ユウヒが、そしてマナが叫ぶ。
「《ブラック・マジシャン・ガール》で《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》に、攻撃ィ!!」
『いっけぇーッ!!』
「『“黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)”ゥゥゥッ!!!』」
掛け声と共にマナが炎の魔力球“黒・魔・導・爆・裂・破”を放った。
『ぬ、お、お、おおおおぉー!!』
黒光りしながら迫り来るそれは、もはや一つの巨大な砲弾だ。
叫ばれたその悲鳴はもう《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》のものなのか、その主のものなのか判別できなかった。
そしてユウヒ、マナ、《アップル・マジシャン・ガール》、《キウイ・マジシャン・ガール》の全てを込めた会心の一撃は、その両者を巻き込んで凄まじい爆発となって炸裂する。
爆発と共に《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》が吹き飛ぶのが見えた。
エビル・デーモン/LP4000→3700
それと同時に観衆からわっと歓声が上がった。
「まるでエンターテイメントショーだわ……!」
その鮮やかな逆転劇もさることながら、ユウヒの繰り出すモンスター達の可愛らしさと煌びやかな演出は人々の心を確かに惹き付けるものであった。
黒、赤、緑の魔法少女達が舞うように戦い、攻撃に転じれば派手の一言。まるでショーを観ている感覚に陥る。
アンリの目はすでにユウヒの一挙手一投足に釘付けになっていた。
「よっしゃああああぁー!!」
ユウヒは拳を天に突き上げた。
渾身の、そして起死回生の一発は凄まじい爆発となって確かに《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》を吹き飛ばした。これを喜ばずにいられようか。
しかもユウヒにはまだ攻撃力2100の《アップル・マジシャン・ガール》の攻撃が残されている。この直接攻撃が決まれば、エビル・デーモンのLPを一気に半分以上削れる。
「更に《アップル・マジシャン・ガール》でダイレーー」
爆煙が晴れるのを待たずにユウヒは《アップル・マジシャン・ガール》に攻撃の指令を出そうとする。
しかしーー
『待ってッ!』
ーーそれを止めたのはマナだった。
「マナ?」
その意図が分からず、ユウヒは眉をひそめる。 覗き込んだマナの表情は意外にも険しい。
与えたダメージ自体は確かに僅かなものだったかもしれないが、それでも目下の脅威であった《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》は他でもない彼女自身の攻撃で倒すことができたのだ、マナならもっとはしゃぐかと思ったのだが。
『違うよマスター…』
違う?何が違うというのだろう。
マナは難しい表情のまま、エビル・デーモンのフィールドを見つめている。
何気なくその視線をユウヒも追い、そして気付いた。
「嘘……だろ……」
マナの“黒・魔・導・爆・裂・破”によって立ち込めていた爆煙が晴れて、その合間からエビル・デーモンの姿が見え始めている。
そこに立っていたのは2体のエビル・デーモンだったのだ。
言うまでもなく、内1体はデュエルの相手としてのエビル・デーモン。そしてもう1体の方はさっきのマナの攻撃で吹き飛んだはずの《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》であった。
「なんで……」
“黒・魔・導・爆・裂・破”は確かに直撃したはずだ。なのに何故《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》が涼しげな顔でまだそこにいるのだ。
『……罠カード《デーモンの雄叫び》』
不意にエビル・デーモンが口を開く。
『儂はすでにこのカードを発動していたのだ。《デーモンの雄叫び》はLP500を支払うことで墓地の“デーモン”モンスターを特殊召喚する蘇生罠。その対象にレベル制限はない。上級モンスターである儂の分身ーー《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》も例外なく復活できる』
†
《デーモンの雄叫び》
通常罠
500ライフポイントを払い発動する。自分の墓地から「デーモン」という名のついたモンスターカード1枚を 自分のフィールド上に特殊召喚する。このモンスターは、いかなる場合にも生け贄にする事はできず、このターンのエンドフェイズに破壊される。
†
“黒・魔・導・爆・裂・破”は確かに一度《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》を破壊してはいた。
しかしその直後に《デーモンの雄叫び》により復活させられていたのだ。
フィールドには爆発で生じた砂埃が舞い上がっていた。その中でそれらの状況が起こっていたため、あたかも破壊されずに健在だったかのように見えたのだ。
思い起こせば《デーモンの雄叫び》は《トラッシュ・デーモン》の効果でサーチされたカードだ。
最初のターン、《トラッシュ・デーモン》を処理できていればこのピンチはなかった。《トラッシュ・デーモン》を倒すことを諦め、3体の“マジシャン・ガール”によるコンボ攻撃に全てを懸けたユウヒの戦術が、ここにきて否定されたようなものだ。
だがまだ光明はある。
ユウヒは《デーモンの雄叫び》のテキストに目を向ける。
《デーモンの雄叫び》は確かに“デーモン”モンスターであればどんなモンスターでも蘇生できる強力なカードだ。
だが同時に、蘇生されたモンスターはそのターンの終了時に破壊されるデメリットもテキストに明記されている。
つまり《デーモンの雄叫び》で蘇生されたモンスターはそのターン中しか生きられない運命なのだ。
『本当にそう思うか? 儂は《デーモンの雄叫び》発動の直前に、更にこの永続罠《デーモンの暴虐》を発動していた』
†
《デーモンの暴虐》(*オリカ)
永続罠
(1):自分フィールドの「デーモン」モンスターはスタンバイフェイズにライフポイントを払わなくてもよい。
(2):自分は「デーモン」魔法・罠カードを発動するためにライフポイントを払わなくてもよい。
(3):自分フィールドの「デーモン」モンスターは効果では破壊されない。
(4):自分フィールドの「デーモン」モンスターが戦闘・効果で相手モンスターを破壊した場合、発動できる。破壊した相手モンスターの数×400ポイントのダメージを相手に与える。
†
エビル・デーモンのフィールドに存在していたのは《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》だけではなかった。
罠カードを示すピンク色のカードが1枚、表側になって立っている。
『通常、魔法・罠カードは発動され効果が処理されればフィールドからは消え去る。しかし永続魔法・永続罠は別だ。これらのカードは発動後もフィールドに残り破壊されるまで効果が持続する。《デーモンの暴虐》は“デーモン”魔法・罠カード発動のためのライフコストをなしにし、更にフィールドの“デーモン”モンスターは効果では破壊されなくなる! 貴様がこのカードを破壊するまでずっとな!』
「なんだと!?」
このカードが存在する限り“デーモン”モンスターは効果では破壊されない。
ということはエビル・デーモンの“デーモン”モンスターーーつまりは《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》はユウヒのカード効果では除去できないだけではなく、《デーモンの雄叫び》のターン終了時の破壊も適用されず次のターン以降もフィールドに残るということだ。
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》はただ単純に復活したわけではなかった。効果破壊耐性も備える更に厄介な存在として、ユウヒ達の前に立ち塞がったのである。
『先の攻撃は中々見事だった。流石の儂も一瞬ひやりとしたわ』
不意に発せられたエビル・デーモンからの称賛。
しかしその次の言葉は『だが……』と前置きして紡がれる。
『……まだ足りぬな。儂を倒すのなら、一気に儂のLPを0にするくらいの攻撃でなければ。この程度ではまだ貴様を対等な相手だと認めてやるわけにはいかぬわ』
復活した《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》は再び《闇の二重魔法陣》の効果を受け、攻撃力が3000に上がっている。攻撃力2100の《アップル・マジシャン・ガール》では突破できない。
このターンはすでにアクションカードを使用しているため、再びそれに頼ることもできない。ここは悔しいが攻めを断念するしかない。
「くっそ~」
仕方なくユウヒは手札からカードを1枚選ぶ。
「バトルフェイズは終了!続いてメインフェイズ2!俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」
《キウイ・マジシャン・ガール》の強化効果はターン内のみという制約がある。
このターンに強化された“マジシャン・ガール”達の攻撃力は、ユウヒがエンド宣言したことで元に戻る。
ブラック・マジシャン・ガール/攻2900→2000
アップル・マジシャン・ガール/攻2100→1200
◇ユウゴ(手札2・LP1000)
モンスター
ブラック・マジシャン・ガール/攻2000
アップル・マジシャン・ガール/攻1200
魔法・罠
セットカード×1
◇エビル・デーモン(手札3・LP3700)
モンスター
真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン/攻3000
魔法・罠
闇の二重魔法陣/永続
デーモンの暴虐/永続
ターンが移り、エビル・デーモンのターン。
このターンの攻めをなんとかして防がねば、これがラストターンとなりかねない。
『ドロー!』
エビル・デーモンがデッキからカードをドローする。
引いたカードは罠カード。
このターンには使えないが、エビル・デーモンの勝利を更に磐石にするには都合のいいカードだった。
『やはり儂の勝利は揺るがぬ』
ユウヒの推察通りエビル・デーモンは自らの力に誇りを持っている。
ユウヒがどんな戦術を用いようがその全てを跳ね返す自信があった。
最後まで勝負を諦めなずサレンダーする気配のないユウヒの姿勢には好感が持てる。
しかしそれで結果が変わるほど、戦いとは甘いものではない。
『《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》は墓地から蘇ったモンスター! しかし、だからと言って《闇の二重魔法陣》の効果を受けぬわけではない! 依然《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》は再度召喚状態だ!』
《闇の二重魔法陣》の効果範囲は単に闇属性のデュアルモンスターとしか指定されていない。手札から召喚されようが、墓地から特殊召喚されようが、再度召喚状態として扱うことに違いはない。
つまりこの《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の相手モンスターを破壊する効果も有効だということだ。
『ゆくぞッ!《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の効果発動ッ!《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の攻撃力以下の守備力を持つ相手モンスターを全て破壊する!!』
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の攻撃力は3000。
対するユウヒのモンスターの守備力は、《ブラック・マジシャン・ガール》が1700、《アップル・マジシャン・ガール》に至っては僅かに800。この効果に耐えられるモンスターはいない。
『フハハハハッ!吹き飛べ!“怒髪天昇撃”ィ!!』
《祈りの聖女 ホーリー・エルフ》の時と同じく、《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》が雷のオーラを放射し、ユウヒのフィールドが雷柱に襲われる。
「くッ……マナッ!!」
『キャアアアアッ!』
マナが悲鳴を上げながらその雷柱を避けて逃げ惑う。杖の後ろに乗っている形のユウヒは振り落とされないように必死でしがみつく。
まるでジェットコースターのように襲い来る雷を無茶苦茶なスピードで蛇行しながら避けていく。
『あん♪ 変なとこ触んないで下さいよぅマスター』
「んなこと言ってる場合かッ!」
すぐ傍でスパークする雷撃に身を縮めながらユウヒはマナの腰に回した腕に力を込める。
『えっ……じゃあ変なとこ触っていいですよ』
「だからそんなこと言ってる場合じゃないって言ってるだろッ!」
急に頬を赤らめるマナに、それどころじゃないユウヒがツッコミを入れる。
だが《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の放った雷撃はそんなことお構いなしに襲い来る。
マナもそうずっとそれを避けられるものではない。
何とかしなければ、とユウヒが目を凝らすと、先にアクションカードが見えた。
「あれだッ! マナ!」
『了解でぇす!』
マナがスピードを上げてそれに向けて飛ぶ。
しかしその直前に雷柱が出現した。
「ぶつかるッ!」
すでにマナの杖はトップスピード。それを避けるのには間に合わない。
もう駄目か、とユウヒが目を閉じかけたーーその時だ。
その雷柱に横から何かが飛び出してきて、ユウヒ達よりも早くぶつかった。
「《アップル・マジシャン・ガール》ッ!」
それはユウヒのもう一人の仲間である赤き魔法少女だった。
彼女がまるで盾になるかのように雷柱に体をぶつけ、ユウヒ達を守ったのだ。
『マスターッ!』
マナがその一瞬を見逃すことなく雷柱を避け、ユウヒ達は無事アクションカードへと辿り着いた。
しかし《アップル・マジシャン・ガール》は雷柱にやられ、その姿を消していく。
「ごめん……ありがとう《アップル・マジシャン・ガール》」
ユウヒが消え行く《アップル・マジシャン・ガール》にそう別れの言葉を告げると、彼女はにこりと微笑んだ。
だが、感傷に浸る間もなくまた新たな雷柱がユウヒとマナを襲う。
「くっそ……! だけどこれでどうだッ!」
ユウヒは手にしたばかりのアクションカードをデュエルディスクに挿入する。
「アクション魔法《ミラー・バリア》ッ! こいつで《ブラック・マジシャン・ガール》は守られる!」
ユウヒとマナを包むように、まるでミラーボールのような障壁が現れた。それが雷を弾き、二人を守る。
†
《ミラー・バリア》
アクション魔法
(1):フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターはカードの効果では破壊されない。
†
『アクションカードに救われたかッ! だが小娘を消し去っただけでは終わらぬぞッ!《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》が貴様のモンスターを破壊したことにより、《デーモンの暴虐》の効果が発動! 貴様に400ポイントのダメージを与える!』
永続罠《デーモンの暴虐》には、“デーモン”モンスターが相手モンスターを破壊した場合、その数×400ポイントのダメージを与える効果もある。
《アップル・マジシャン・ガール》を破壊されたユウヒには400ポイントのダメージが課される。
《ミラー・バリア》をすり抜けて侵入した雷撃がユウヒの体を走る。
「ぐあっ……あッ!」
身体を走る電撃は容赦なく肌を焼く。
ユウヒ/LP1000→600
「く……そ……ッ」
ユウヒは拳を強く握り絞める。
身体を焼かれる痛みよりも、仲間が雷に消し飛ばされたことによってまるで身を切り裂かれたように胸が痛む。
だが悲しんでばかりもいられない。
ユウヒにはユウヒのやるべきことがある。
「《アップル・マジシャン・ガール》が破壊されたことで、その効果が発動するッ!このカードが破壊された場合、墓地から《アップル・マジシャン・ガール》以外の“マジシャン・ガール”を手札に戻すことができる!」
これは《アップル・マジシャン・ガール》の第2の能力だ。
《アップル・マジシャン・ガール》は破壊されると、墓地の自身以外の“マジシャン・ガール”を3種類まで選んで手札に戻す効果があるのだ。これは破壊以外に他の制約がないため、墓地に“マジシャン・ガール”が多く置かれていれば多大なハンドアドバンテージを得ることのできる強力な効果だった。
だが今はこの効果で戻せるカードは1枚しかない。
「俺は《アップル・マジシャン・ガール》の効果で、墓地から《キウイ・マジシャン・ガール》を手札に戻す!」
フィールドに大きなリンゴが現れる。
それがポンと割れると中から出てきたのは《キウイ・マジシャン・ガール》だった。
《キウイ・マジシャン・ガール》はすぐさまカードに身を変え、ユウヒの手札へと戻ってくる。
どうやらこれが《アップル・マジシャン・ガール》の効果による演出らしい。
《キウイ・マジシャン・ガール》が手札に戻ったということは、その効果を再び使えるようになったということだ。
今はフィールドに《ブラック・マジシャン・ガール》、墓地に《アップル・マジシャン・ガール》があるため、この効果を使用すれば、再び《ブラック・マジシャン・ガール》の攻撃力は2900まで上げられる。そしてその効果は相手ターンであるこのターンにも発動可能だった。
だがそれらの効果は、エビル・デーモンの攻撃を止める要因にはならなかった。
『それが何だと言うのだッ!《ブラック・マジシャン・ガール》を強化しようがその攻撃力は2900止まり! 攻撃力3000の《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の攻撃が止められなければ意味などあるまいッ! バトルフェイズ!! 我が分身ーー《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》よ!小僧に引導を渡してやれ!』
エビル・デーモンが手を振るい、《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》に攻撃を命じる。
それに応えて《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の手に雷のエネルギーが握られた。
『終わりだ、小僧ッ!“魔降雷”ィィィ!!』
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》によって、その最強攻撃技である雷の矢が放たれた。
放たれた雷がユウヒの視界を埋め尽くすようにして襲い迫る。
その標的はユウヒ唯一のモンスターである《ブラック・マジシャン・ガール》ーーマナだ。
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の攻撃力は3000。対して《ブラック・マジシャン・ガール》の攻撃力は2000。
ユウヒのLPが残り600しかない以上、この攻撃が決まればユウヒのLPは間違いなく0となる。もしここで手札の《キウイ・マジシャン・ガール》を発動させたならば《ブラック・マジシャン・ガール》の攻撃力は2900まで上がりユウヒの敗北は避けられるものの、マナがやられてしまうことに変わりはない。
だがーー
「そんなことはさせないッ!!」
《ブラック・マジシャン・ガール》は《アップル・マジシャン・ガール》が身を呈して守ってくれたユウヒが最も信頼を置く仲間。
《キウイ・マジシャン・ガール》は破壊された《アップル・マジシャン・ガール》が託してくれたカードだ。
その想いを無駄にしないためにも、ここでむざむざと使い捨てるわけにはいかなかった。
ユウヒがひらりとマナの杖から飛び下り、着地すると同時に伏せカードを発動させる。
「さぁ、世紀のイリュージョンを始めようかッ! 罠、発動! 《エスケープ・イリュージョン》!!」
マナを中に納めるように箱が現れた。
それが《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の“魔降雷”に貫かれる。
箱はマジックショーで使われるような頑丈な鉄製だが、《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の雷撃の前には無力だ。
衝撃でどこかしら歪んだのか箱の扉がギギギと軋みながら開く。
しかしその中にマナの姿はなかった。
『なにッ!?』
その空になった内部の様子にエビル・デーモンが驚きの声を上げる。
攻撃を受けて消し飛んだわけではない。その証拠にユウヒのLPは変動していない。
ユウヒはにやりと笑う。
「さぁ、消えたマナはどこに行ったんでしょうか?」
両手を広げてエビル・デーモンに問いかけるユウヒの姿は、まるで一流マジシャンのようだ。
『ぬ……』
答えられないエビル・デーモンに、ユウヒは両腕でバツを作った。
「ブブー。時間切れ。正解はーー」
ユウヒは手札から1枚のカードを抜き出し、ひらりと見せる。
「ーー手札の中でした♪」
見せたカードは確かに《ブラック・マジシャン・ガール》のカードだった。
『ハぁ~イ♪ マナちゃんふっか~つ』
すうっとユウヒの頭上にマナも姿を現す。
こちらはマジシャンのアシスタントを気取ったポーズ。
「罠カード《エスケープ・イリュージョン》は自分フィールドのカード1枚を手札に戻し相手のバトルフェイズを強制的に終了させるのさ!」
†
《エスケープ・イリュージョン》
通常罠
(1):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。自分フィールドのカード1枚を手札に戻し、そのバトルフェイズを終了する。
†
『むぅ……防御系のカードを温存していたか……』
本当に抜け目のない小僧だ。
ここまでこのデュエルの主導権はエビル・デーモンが握っていたと言って過言ではない。
だが一方でエビル・デーモンにも懸念はあった。
確かにこれまではエビル・デーモンの推測通りに事が運んでいる。だがそれでもこの小僧にはすんでのところでまるで掴む手を掻い潜る魚のようにするりと逃げられてしまう。まるで掴み所がないのだ。
ギリギリのところでこちらの思惑を外すユウヒの戦い方を最初はその場しのぎと浅く見ていた。しかしここに来てエビル・デーモンはそのことに脅威を覚え始めていた。
本当にこの小僧がやっているのはその場しのぎに過ぎないのかーー?
ユウヒを仕止めるために手を伸ばせば伸ばすほど、奴に誘われて引き返せない深みに引き寄せられているような気がする。
深みーー。
そうしてエビル・デーモンは気付く。
こういう感覚を何と言うのか。
『“底が知れぬ”ーーか』
握れば潰してしまいそうに小さい存在であることは変わらない。
しかし歴戦の経験がエビル・デーモンの中で警鐘を鳴らす。この小僧は“深き沼”だと。
エビル・デーモンのバトルフェイズは強制的に終了させられてしまった。
できることはそう多くない。
『儂はカードを1枚伏せてターン終了だ』
エビル・デーモンのフィールドにセットカードが現れる。
それはこのターンのドローフェイズで引いた罠カード。
確かにエビル・デーモンはユウヒを甘く考えすぎていたのかもしれない。
今のこの状況ももしかしたらユウヒが意図して作り上げたものなのかもしれない。
しかし最後に勝つのが自分であることは変わらない、とエビル・デーモンは高を括った。
エビル・デーモンはこの罠カードの存在により自らの負けなどあるはずがない、と確信していた。
そして事実そのカードは発動を許せば一瞬でユウゴを塵にできるほどの力を秘めているのだった。
◇エビル・デーモン(手札4・LP3700)
モンスター
真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン/攻3000
魔法・罠
闇の二重魔法陣/永続魔法
デーモンの暴虐/永続罠
セットカード×1
◇ユウヒ(手札4・LP600)
モンスター
なし
魔法・罠
なし
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氷色
いつのまにやら閲覧100突破してた。いつも読んでくれてる方々ありがとうございます! (2016-09-02 21:59)
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