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第21話 星屑の竜 作:氷色
「最初はボクだ!」
タッグデュエル最初のターンプレイヤーは遊緋。
初手の5枚は積極的に動ける類いのものではない。
それ以前に遊緋には懸念があった。
一つは無論タッグデュエルの勝手か分からないことだが、それはやりながら慣れていくしかない。
重要なのは、タッグパートナーであるシンシアが『DNo』の所持者であるという事実だった。D・ゲームのプレイヤー同士は同じクランに所属する仲間でない限り、『金色の王』を目指すため『DNo』を奪い合う間柄だ。よしんばこのタッグデュエルに勝ったとしても、次はシンシアが遊緋に牙を剥く可能性も十二分にある。このタッグデュエルで手の内をどの程度晒すかも慎重に考えながら闘わなくてはならない。
遊緋は手札を1枚選んでデュエルディスクに挿入する。
「ボクは手札から《M・HERO 烈火》を召喚し、ターンエンド」
遊緋達のフィールドに《M・HERO 烈火》が現れる。
しかし通常のデュエルと同じで最初のターンはバトルできないため、そのままターンは終了した。
遊緋&シンシア/LP8000・手札4&5
モンスター
烈火/攻1600
「ん?」
エンド宣言した遊緋がデュエルディスクに表示されたフィールド状況に眉をひそめる。
「初期ライフは8000なのか。それにフィールドも……」
フィールドの名前欄が『遊緋&シンシア』になっている。
『タッグデュエルではぁ、手札とエクストラデッキ以外は全てパートナーと共有ですからねぇ~♪そういう表記になるんですよぉ~♪初期ライフが8000なのはぁ、通常通りの4000スタートだと一瞬で終わっちゃうかもだからですぅ♪』
すでに脳がデュエルモードに切り替わっている遊緋には、今の説明ですぐに納得がいった。
確かにタッグデュエルでは今の遊緋のように何の防御策も講じずターンを明け渡した場合、初期ライフ4000ではパートナーにターンが回るまでに1ターンキルされかねない。それを防ぐための処置なのだろう。
「俺のターンだ!ドロー!」
遊緋とフレイヤが話している内に、次のターンプレイヤーである茶髪がカードをドローする。
そして手札から2枚のカードを選んでデュエルディスクに挿入した。
「俺はモンスターをセット。更にカードを1枚伏せてターンエンドだ」
向こうのフィールドに2枚の裏側カードが現れる。
茶髪&ニット帽/LP8000・手札4&5
モンスター
セットモンスター×1
魔法・罠
伏せカード×1
遊緋&シンシア/LP8000・手札4&5
モンスター
烈火/攻1600
これでとりあえずお互いのカードが出揃ったことになる。
そのフィールドを観てフレイヤが言う。
『初動はどっちも静かな入りでしたねぇ♪動くのはここからかな♪』
それに反応したのは、次のターンプレイヤーであるシンシアだ。
「そういうこと。アタシはガンガン行くよ!」
そしてドローフェイズにカードを引く。
「アタシのターン!」
シンシアの決断は早い。すぐに手札を1枚切る。
「まずは手札から《調律》を発動!このカードはデッキから「シンクロン」モンスター1体をサーチし、デッキトップのカード1枚を墓地に送る魔法カード!アタシはデッキから《ジャンク・シンクロン》を手札に加え、デッキトップの《スピード・ウォリアー》を墓地に送る!」
シンシアが発動した魔法カード《調律》が処理され、シンシアはデッキから宣言通り《ジャンク・シンクロン 》というモンスターを手札に加える。そして彼女のデッキの一番上のカードが墓地に送られた。落ちたのはレベル2の効果モンスターだ。
†
《調律》
通常魔法
(1):デッキから「シンクロン」チューナー1体を手札に加えてデッキをシャッフルする。その後、自分のデッキの一番上のカードを墓地へ送る。
†
「都合の良いカードが墓地に行ってくれたな。アタシは更に《シンクロン・キャリアー》を召喚!」
シンシア達のフィールドに、背中にクレーンを搭載した少年程の背丈のモンスターが現れた。その姿はまるでクレーントラックが擬人化したかのようだ。
「《シンクロン・キャリアー》のモンスター効果!自分はもう1度手札の「シンクロン」モンスターを召喚できる!」
†
《シンクロン・キャリアー》
効果モンスター
星2/地属性/機械族/攻 0/守1000
「シンクロン・キャリアー」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分は通常召喚に加えてもう1度だけ、自分メインフェイズに「シンクロン」モンスター1体を召喚できる。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在し、このカード以外の「シンクロン」モンスターが 戦士族または機械族SモンスターのS素材として自分の墓地へ送られた場合に発動できる。自分フィールドに「シンクロン・トークン」(機械族・地・星2・攻1000/守0)1体を特殊召喚する。
†
「アタシは手札からいま手札に加えたばかりのチューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》を召喚!そして《ジャンク・シンクロン》のモンスター効果!このカードが召喚に成功した時、墓地からレベル2以下のモンスター1体を効果を無効にして守備表示で特殊召喚できる!」
†
《ジャンク・シンクロン》
チューナー・効果モンスター
星3/闇属性/戦士族/攻1300/守 500
(1):このカードが召喚に成功した時、自分の墓地のレベル2以下のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。
†
《シンクロン・キャリアー》の背中のクレーンに吊り下げられるようにしてフィールドに《ジャンク・シンクロン》が現れる。
《ジャンク・シンクロン》は背中にエンジンを背負った昔のメカニックマンのようなモンスターだった。こちらも小柄でデフォルメされた二頭身。
「アタシは《ジャンク・シンクロン》の効果で、《調律》により墓地に送られた《スピード・ウォリアー》を守備表示で特殊召喚!蘇れ、《スピード・ウォリアー》!!」
†
《スピード・ウォリアー》
効果モンスター
星2/風属性/戦士族/攻 900/守 400
(1):このカードの召喚に成功したターンのバトルステップに発動できる。このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで元々の攻撃力の倍になる。
†
《ジャンク・シンクロン》の効果により、更に足にローラーのある細身の戦士が特殊召喚された。こちらは腕を組み膝をつく守備体勢だ。
「凄い、あっという間に3体のモンスターを並べた……!」
フィールドに新たに召喚されたモンスターはステータス的には大したことはないモンスター達ではあるが、簡単にモンスターを3体並べた展開力は圧巻だ。これは遊緋のM・HEROデッキにはない力だと言える。
しかしシンシアは当然それで満足などしない。
これらは目当てのモンスターを呼び出すための前段に過ぎないのだ。
「更にアタシは手札から速攻魔法《スター・チェンジャー》を発動!このカードはフィールドのモンスター1体のレベルを1上げるか下げることができる!アタシはこのカードの対象に《ジャンク・シンクロン》を選択!《ジャンク・シンクロン》のレベルを1上げ、レベル4とする!」
ジャンク・シンクロン/レベル3→4
「そして、レベル2の《シンクロン・キャリアー》と同じくレベル2の《スピード・ウォリアー》にレベル4となった《ジャンク・シンクロン》をチューニング!!」
「チューニング!?」
遊緋が驚きの声を上げるのを尻目に、《シンクロン・キャリアー》と《スピード・ウォリアー》が浮き上がり、《ジャンク・シンクロン》は四つの光の輪へと姿を変える。
2+2+4=8
そして先の2体がその輪を通り抜けると、そのレベルを参照した四つの星となり、そして光が爆ぜた。
「集いし願いが新たに輝く星となる。光射す道となれ!シンクロ召喚!飛翔せよ、レベル8《スターダスト・ドラゴン》!!」
それは白銀に輝く美しいドラゴンだった。
大きな翼を雄々しく広げ、シンシアを見守るように空中で浮遊する。
遊緋がこのD・ゲームに参加してから、非人間型のモンスターを見るのはこれが初めてだ。だが不思議とこのドラゴンには恐怖を感じない。感じるのは、ただただその神々しいまでの美しさだけだ。満天の星空を見上げ、そのあまりの美しさに圧倒されてしまうようなそんな感じだった。
†
《スターダスト・ドラゴン》
シンクロ・効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):フィールドのカードを破壊する魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、このカードをリリースして発動できる。その発動を無効にし破壊する。
(2):このカードの(1)の効果を適用したターンのエンドフェイズに発動できる。その効果を発動するためにリリースしたこのカードを墓地から特殊召喚する。
†
「これがシンクロ召喚……!」
シンクロ召喚はデュエルモンスターズにはない召喚法だった。
どうやらD・ゲームのデュエルでは、エクストラデッキから特殊召喚されるのは融合モンスターだけではないらしい。
『シンクロ召喚は、チューナーモンスターとそれ以外のモンスターのレベルの合計が呼び出すシンクロモンスターのレベルと同じになるようチューニングすることでエクストラデッキからそのシンクロモンスターを特殊召喚する召喚法なんですよぉ♪』
なるほど、融合召喚が《融合》を必要とする代わりにシンクロ召喚ではチューナーモンスターという特別なモンスターが必要になるわけか。しかも融合召喚と違い、シンクロ召喚はそれらをフィールドに展開する必要もある。
都合3枚以上の手札を使用する融合召喚よりも最低2枚の消費で強力なモンスターを呼び出すことができる分低燃費ではあるが、チューナーとそれらをフィールドに呼び出す展開力が求められるわけだ。
「この子がアタシのエースモンスターさ。どう、驚いた?」
シンシアが得意気ににんまりと笑う。
どうやら彼女自身このモンスターにかなりの愛着があるらしい。これだけ美しく強い威圧感を放つモンスターだ、その気持ちは分かる。
「うん、驚いた。こんな綺麗なドラゴンを従えるなんて凄いよ」
だから遊緋は素直に頷いた。
そのあまりに真っ直ぐな感嘆に、逆にシンシアの毒気が抜かれてしまうよう。遊緋の目はまたも未知なるモンスターの登場にキラキラ輝いている。
「ハハッ、変なヤツ。だけどこれは真剣勝負、当然手は抜かないし出し惜しみもなしだ!バトルっ!」
シンシアが腕を振るう。
それに反応して、フィールドの《M・HERO 烈火》は前傾姿勢を取り、《スターダスト・ドラゴン》は吠える。
タッグデュエルでフィールドを共有しているということは、モンスターも共有しているといいことだ。遊緋の《M・HERO 烈火》もシンシアの指示に従うことになる。
「アンタのモンスターには露払いをしてもらうよッ!まずは《M・HERO 烈火》でセットモンスターに攻撃ッ!」
シンシアの指示が飛ぶと同時に《烈火》が地を蹴る。向かうは未だセットされたままの茶髪のモンスターだ。
《烈火》が相手のフィールドに踏み込むと同時にそのモンスターがリバースする。
飛び出してきたのはまるでトマトのようなモンスターだ。
†
《キラー・トマト》
効果モンスター
星4/闇属性/植物族/攻1400/守1100
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
†
《キラー・トマト》はその名の通りトマトのモンスターだ。よく熟れたトマトの真ん中におぞましい邪悪な表情の顔が浮かんでいる。
しかしその守備力は1100。《烈火》の敵ではない。
烈火/攻1600○
↓
キラー・トマト/守1100×
《烈火》の繰り出したパンチによって、《キラー・トマト》はぐちゃりと潰され弾け飛んでしまった。
しかしそれは茶髪の思惑通り。
「この瞬間、《キラー・トマト》の効果発動!このカードは戦闘で破壊され墓地に送られた時、デッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚できる!」
「リクルーターか……」
デッキからモンスターを特殊召喚する効果を持つモンスターはリクルーターと呼ばれる。《キラー・トマト》は自身が戦闘で破壊され墓地に送られることをトリガーとするリクルーターだった。
そして本来ならば《烈火》もまた『相手モンスターを戦闘破壊した時、デッキから《マスク・チェンジ》をセットできる』というこのタイミングで発動する効果を持っているのだが、シンシアのデッキには《マスク・チェンジ》がないため、その効果は不発となる。
「俺が特殊召喚するのは《首領・ザルーグ》だ!!」
茶髪がリクルートするモンスターを決定すると、フィールドに一人の男が姿を現した。
青みがかった銀髪、右目を隠す眼帯、筋骨隆々の鍛え抜かれた肉体、その太い両手には二丁の拳銃が握られている。
†
《首領(ドン)・ザルーグ》
効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻1400/守1500
このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、以下の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●相手の手札をランダムに1枚捨てる。
●相手のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。
†
しかしシンシアに怯む様子はない。
「それがどうしたッ!!続けて《スターダスト・ドラゴン》で攻撃ッ!!対象は《首領・ザルーグ》だ!!」
《首領・ザルーグ》の攻撃力は1400。シンシアの《スターダスト・ドラゴン》の攻撃力2500だ。そんなモンスターなど敵ではない。
《スターダスト・ドラゴン》がその口を開ける。
口内に満ちているのは星屑を集めたような輝くエネルギーだ。
「“シューティング・ソニック”!!」
その光弾は《首領・ザルーグ》目掛けて真っ直ぐに射出された。
「チィ……!」
茶髪がデュエルディスクを操作し、伏せていたカードが発動する。
「永続罠《団長の献身》!!」
†
《団長の献身》 (オリジナル)
永続罠
(1):自分フィールドの《首領・ザルーグ》は戦闘では破壊されない。
(2):自分フィールドに《首領・ザルーグ》が存在し、自分フィールドの「黒蠍」モンスターが攻撃対象にされた相手の攻撃宣言時に発動する。その攻撃対象は《首領・ザルーグ》になる。
†
「《団長の献身》がフィールドに存在する限り、俺の《首領・ザルーグ》は戦闘では破壊されない!」
「チィ、だがダメージは受けてもらう!」
スターダスト・ドラゴン/攻2500○
↓
首領・ザルーグ/攻1400×
光弾は《首領・ザルーグ》に直撃するも、それを消し飛ばすまでには至らなかった。
「グゥゥ……」
茶髪&ニット帽/LP8000→6900
茶髪達のライフを削りはしたものの、初期LP8000のこのタッグデュエルに於ては微々たるダメージだ。
シンシアは舌を打ち、手札を1枚伏せる。
「アタシはカードを1枚伏せ、ターンエンド」
ターン開始時に想定していたほどのダメージは与えられず、ボードアドバンテージも広げられなかった。
だが相手もノーガードで挑んでくるほど馬鹿ではない。ここは仕方ないと割りきるしかない。
遊緋&シンシア/LP8000・手札4&2
モンスター
烈火/攻1600
スターダスト・ドラゴン/攻2500
魔法・罠
セットカード×1
茶髪&ニット帽/LP6900・手札4&5
モンスター
首領・ザルーグ/攻1400
魔法・罠
団長の献身/永続
タッグデュエル最初のターンプレイヤーは遊緋。
初手の5枚は積極的に動ける類いのものではない。
それ以前に遊緋には懸念があった。
一つは無論タッグデュエルの勝手か分からないことだが、それはやりながら慣れていくしかない。
重要なのは、タッグパートナーであるシンシアが『DNo』の所持者であるという事実だった。D・ゲームのプレイヤー同士は同じクランに所属する仲間でない限り、『金色の王』を目指すため『DNo』を奪い合う間柄だ。よしんばこのタッグデュエルに勝ったとしても、次はシンシアが遊緋に牙を剥く可能性も十二分にある。このタッグデュエルで手の内をどの程度晒すかも慎重に考えながら闘わなくてはならない。
遊緋は手札を1枚選んでデュエルディスクに挿入する。
「ボクは手札から《M・HERO 烈火》を召喚し、ターンエンド」
遊緋達のフィールドに《M・HERO 烈火》が現れる。
しかし通常のデュエルと同じで最初のターンはバトルできないため、そのままターンは終了した。
遊緋&シンシア/LP8000・手札4&5
モンスター
烈火/攻1600
「ん?」
エンド宣言した遊緋がデュエルディスクに表示されたフィールド状況に眉をひそめる。
「初期ライフは8000なのか。それにフィールドも……」
フィールドの名前欄が『遊緋&シンシア』になっている。
『タッグデュエルではぁ、手札とエクストラデッキ以外は全てパートナーと共有ですからねぇ~♪そういう表記になるんですよぉ~♪初期ライフが8000なのはぁ、通常通りの4000スタートだと一瞬で終わっちゃうかもだからですぅ♪』
すでに脳がデュエルモードに切り替わっている遊緋には、今の説明ですぐに納得がいった。
確かにタッグデュエルでは今の遊緋のように何の防御策も講じずターンを明け渡した場合、初期ライフ4000ではパートナーにターンが回るまでに1ターンキルされかねない。それを防ぐための処置なのだろう。
「俺のターンだ!ドロー!」
遊緋とフレイヤが話している内に、次のターンプレイヤーである茶髪がカードをドローする。
そして手札から2枚のカードを選んでデュエルディスクに挿入した。
「俺はモンスターをセット。更にカードを1枚伏せてターンエンドだ」
向こうのフィールドに2枚の裏側カードが現れる。
茶髪&ニット帽/LP8000・手札4&5
モンスター
セットモンスター×1
魔法・罠
伏せカード×1
遊緋&シンシア/LP8000・手札4&5
モンスター
烈火/攻1600
これでとりあえずお互いのカードが出揃ったことになる。
そのフィールドを観てフレイヤが言う。
『初動はどっちも静かな入りでしたねぇ♪動くのはここからかな♪』
それに反応したのは、次のターンプレイヤーであるシンシアだ。
「そういうこと。アタシはガンガン行くよ!」
そしてドローフェイズにカードを引く。
「アタシのターン!」
シンシアの決断は早い。すぐに手札を1枚切る。
「まずは手札から《調律》を発動!このカードはデッキから「シンクロン」モンスター1体をサーチし、デッキトップのカード1枚を墓地に送る魔法カード!アタシはデッキから《ジャンク・シンクロン》を手札に加え、デッキトップの《スピード・ウォリアー》を墓地に送る!」
シンシアが発動した魔法カード《調律》が処理され、シンシアはデッキから宣言通り《ジャンク・シンクロン 》というモンスターを手札に加える。そして彼女のデッキの一番上のカードが墓地に送られた。落ちたのはレベル2の効果モンスターだ。
†
《調律》
通常魔法
(1):デッキから「シンクロン」チューナー1体を手札に加えてデッキをシャッフルする。その後、自分のデッキの一番上のカードを墓地へ送る。
†
「都合の良いカードが墓地に行ってくれたな。アタシは更に《シンクロン・キャリアー》を召喚!」
シンシア達のフィールドに、背中にクレーンを搭載した少年程の背丈のモンスターが現れた。その姿はまるでクレーントラックが擬人化したかのようだ。
「《シンクロン・キャリアー》のモンスター効果!自分はもう1度手札の「シンクロン」モンスターを召喚できる!」
†
《シンクロン・キャリアー》
効果モンスター
星2/地属性/機械族/攻 0/守1000
「シンクロン・キャリアー」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分は通常召喚に加えてもう1度だけ、自分メインフェイズに「シンクロン」モンスター1体を召喚できる。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在し、このカード以外の「シンクロン」モンスターが 戦士族または機械族SモンスターのS素材として自分の墓地へ送られた場合に発動できる。自分フィールドに「シンクロン・トークン」(機械族・地・星2・攻1000/守0)1体を特殊召喚する。
†
「アタシは手札からいま手札に加えたばかりのチューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》を召喚!そして《ジャンク・シンクロン》のモンスター効果!このカードが召喚に成功した時、墓地からレベル2以下のモンスター1体を効果を無効にして守備表示で特殊召喚できる!」
†
《ジャンク・シンクロン》
チューナー・効果モンスター
星3/闇属性/戦士族/攻1300/守 500
(1):このカードが召喚に成功した時、自分の墓地のレベル2以下のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。
†
《シンクロン・キャリアー》の背中のクレーンに吊り下げられるようにしてフィールドに《ジャンク・シンクロン》が現れる。
《ジャンク・シンクロン》は背中にエンジンを背負った昔のメカニックマンのようなモンスターだった。こちらも小柄でデフォルメされた二頭身。
「アタシは《ジャンク・シンクロン》の効果で、《調律》により墓地に送られた《スピード・ウォリアー》を守備表示で特殊召喚!蘇れ、《スピード・ウォリアー》!!」
†
《スピード・ウォリアー》
効果モンスター
星2/風属性/戦士族/攻 900/守 400
(1):このカードの召喚に成功したターンのバトルステップに発動できる。このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで元々の攻撃力の倍になる。
†
《ジャンク・シンクロン》の効果により、更に足にローラーのある細身の戦士が特殊召喚された。こちらは腕を組み膝をつく守備体勢だ。
「凄い、あっという間に3体のモンスターを並べた……!」
フィールドに新たに召喚されたモンスターはステータス的には大したことはないモンスター達ではあるが、簡単にモンスターを3体並べた展開力は圧巻だ。これは遊緋のM・HEROデッキにはない力だと言える。
しかしシンシアは当然それで満足などしない。
これらは目当てのモンスターを呼び出すための前段に過ぎないのだ。
「更にアタシは手札から速攻魔法《スター・チェンジャー》を発動!このカードはフィールドのモンスター1体のレベルを1上げるか下げることができる!アタシはこのカードの対象に《ジャンク・シンクロン》を選択!《ジャンク・シンクロン》のレベルを1上げ、レベル4とする!」
ジャンク・シンクロン/レベル3→4
「そして、レベル2の《シンクロン・キャリアー》と同じくレベル2の《スピード・ウォリアー》にレベル4となった《ジャンク・シンクロン》をチューニング!!」
「チューニング!?」
遊緋が驚きの声を上げるのを尻目に、《シンクロン・キャリアー》と《スピード・ウォリアー》が浮き上がり、《ジャンク・シンクロン》は四つの光の輪へと姿を変える。
2+2+4=8
そして先の2体がその輪を通り抜けると、そのレベルを参照した四つの星となり、そして光が爆ぜた。
「集いし願いが新たに輝く星となる。光射す道となれ!シンクロ召喚!飛翔せよ、レベル8《スターダスト・ドラゴン》!!」
それは白銀に輝く美しいドラゴンだった。
大きな翼を雄々しく広げ、シンシアを見守るように空中で浮遊する。
遊緋がこのD・ゲームに参加してから、非人間型のモンスターを見るのはこれが初めてだ。だが不思議とこのドラゴンには恐怖を感じない。感じるのは、ただただその神々しいまでの美しさだけだ。満天の星空を見上げ、そのあまりの美しさに圧倒されてしまうようなそんな感じだった。
†
《スターダスト・ドラゴン》
シンクロ・効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):フィールドのカードを破壊する魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、このカードをリリースして発動できる。その発動を無効にし破壊する。
(2):このカードの(1)の効果を適用したターンのエンドフェイズに発動できる。その効果を発動するためにリリースしたこのカードを墓地から特殊召喚する。
†
「これがシンクロ召喚……!」
シンクロ召喚はデュエルモンスターズにはない召喚法だった。
どうやらD・ゲームのデュエルでは、エクストラデッキから特殊召喚されるのは融合モンスターだけではないらしい。
『シンクロ召喚は、チューナーモンスターとそれ以外のモンスターのレベルの合計が呼び出すシンクロモンスターのレベルと同じになるようチューニングすることでエクストラデッキからそのシンクロモンスターを特殊召喚する召喚法なんですよぉ♪』
なるほど、融合召喚が《融合》を必要とする代わりにシンクロ召喚ではチューナーモンスターという特別なモンスターが必要になるわけか。しかも融合召喚と違い、シンクロ召喚はそれらをフィールドに展開する必要もある。
都合3枚以上の手札を使用する融合召喚よりも最低2枚の消費で強力なモンスターを呼び出すことができる分低燃費ではあるが、チューナーとそれらをフィールドに呼び出す展開力が求められるわけだ。
「この子がアタシのエースモンスターさ。どう、驚いた?」
シンシアが得意気ににんまりと笑う。
どうやら彼女自身このモンスターにかなりの愛着があるらしい。これだけ美しく強い威圧感を放つモンスターだ、その気持ちは分かる。
「うん、驚いた。こんな綺麗なドラゴンを従えるなんて凄いよ」
だから遊緋は素直に頷いた。
そのあまりに真っ直ぐな感嘆に、逆にシンシアの毒気が抜かれてしまうよう。遊緋の目はまたも未知なるモンスターの登場にキラキラ輝いている。
「ハハッ、変なヤツ。だけどこれは真剣勝負、当然手は抜かないし出し惜しみもなしだ!バトルっ!」
シンシアが腕を振るう。
それに反応して、フィールドの《M・HERO 烈火》は前傾姿勢を取り、《スターダスト・ドラゴン》は吠える。
タッグデュエルでフィールドを共有しているということは、モンスターも共有しているといいことだ。遊緋の《M・HERO 烈火》もシンシアの指示に従うことになる。
「アンタのモンスターには露払いをしてもらうよッ!まずは《M・HERO 烈火》でセットモンスターに攻撃ッ!」
シンシアの指示が飛ぶと同時に《烈火》が地を蹴る。向かうは未だセットされたままの茶髪のモンスターだ。
《烈火》が相手のフィールドに踏み込むと同時にそのモンスターがリバースする。
飛び出してきたのはまるでトマトのようなモンスターだ。
†
《キラー・トマト》
効果モンスター
星4/闇属性/植物族/攻1400/守1100
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
†
《キラー・トマト》はその名の通りトマトのモンスターだ。よく熟れたトマトの真ん中におぞましい邪悪な表情の顔が浮かんでいる。
しかしその守備力は1100。《烈火》の敵ではない。
烈火/攻1600○
↓
キラー・トマト/守1100×
《烈火》の繰り出したパンチによって、《キラー・トマト》はぐちゃりと潰され弾け飛んでしまった。
しかしそれは茶髪の思惑通り。
「この瞬間、《キラー・トマト》の効果発動!このカードは戦闘で破壊され墓地に送られた時、デッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚できる!」
「リクルーターか……」
デッキからモンスターを特殊召喚する効果を持つモンスターはリクルーターと呼ばれる。《キラー・トマト》は自身が戦闘で破壊され墓地に送られることをトリガーとするリクルーターだった。
そして本来ならば《烈火》もまた『相手モンスターを戦闘破壊した時、デッキから《マスク・チェンジ》をセットできる』というこのタイミングで発動する効果を持っているのだが、シンシアのデッキには《マスク・チェンジ》がないため、その効果は不発となる。
「俺が特殊召喚するのは《首領・ザルーグ》だ!!」
茶髪がリクルートするモンスターを決定すると、フィールドに一人の男が姿を現した。
青みがかった銀髪、右目を隠す眼帯、筋骨隆々の鍛え抜かれた肉体、その太い両手には二丁の拳銃が握られている。
†
《首領(ドン)・ザルーグ》
効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻1400/守1500
このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、以下の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●相手の手札をランダムに1枚捨てる。
●相手のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。
†
しかしシンシアに怯む様子はない。
「それがどうしたッ!!続けて《スターダスト・ドラゴン》で攻撃ッ!!対象は《首領・ザルーグ》だ!!」
《首領・ザルーグ》の攻撃力は1400。シンシアの《スターダスト・ドラゴン》の攻撃力2500だ。そんなモンスターなど敵ではない。
《スターダスト・ドラゴン》がその口を開ける。
口内に満ちているのは星屑を集めたような輝くエネルギーだ。
「“シューティング・ソニック”!!」
その光弾は《首領・ザルーグ》目掛けて真っ直ぐに射出された。
「チィ……!」
茶髪がデュエルディスクを操作し、伏せていたカードが発動する。
「永続罠《団長の献身》!!」
†
《団長の献身》 (オリジナル)
永続罠
(1):自分フィールドの《首領・ザルーグ》は戦闘では破壊されない。
(2):自分フィールドに《首領・ザルーグ》が存在し、自分フィールドの「黒蠍」モンスターが攻撃対象にされた相手の攻撃宣言時に発動する。その攻撃対象は《首領・ザルーグ》になる。
†
「《団長の献身》がフィールドに存在する限り、俺の《首領・ザルーグ》は戦闘では破壊されない!」
「チィ、だがダメージは受けてもらう!」
スターダスト・ドラゴン/攻2500○
↓
首領・ザルーグ/攻1400×
光弾は《首領・ザルーグ》に直撃するも、それを消し飛ばすまでには至らなかった。
「グゥゥ……」
茶髪&ニット帽/LP8000→6900
茶髪達のライフを削りはしたものの、初期LP8000のこのタッグデュエルに於ては微々たるダメージだ。
シンシアは舌を打ち、手札を1枚伏せる。
「アタシはカードを1枚伏せ、ターンエンド」
ターン開始時に想定していたほどのダメージは与えられず、ボードアドバンテージも広げられなかった。
だが相手もノーガードで挑んでくるほど馬鹿ではない。ここは仕方ないと割りきるしかない。
遊緋&シンシア/LP8000・手札4&2
モンスター
烈火/攻1600
スターダスト・ドラゴン/攻2500
魔法・罠
セットカード×1
茶髪&ニット帽/LP6900・手札4&5
モンスター
首領・ザルーグ/攻1400
魔法・罠
団長の献身/永続
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いつも楽しく読ませてもらってます
氷色さんの作品は描写が細かくて登場人物の心情がよく分かると思います
これからも頑張って下さい
更新お待ちしています
ところで、前の作品はもう更新されないのでしょうか? (2017-04-26 12:52)
間違ってたらスイマセン、以前別のサイトで仲良くさせてもらっていた方と同じ名前だったので……。
現在多忙でSSの更新が滞ってしまっていて、本当に申し訳ないことでございます。
前作に関しては現在凍結中という感じでしょうか。 (2017-04-26 13:51)
覚えていてもらえてると思いませんでした!お久しぶりです!ここで密かに氷色さんの作品読んでました!
それで自分でも遊戯王のSSを書いてみたくなったんですけどよかったら氷色さんが前に書いてたやつのオリジナルモンスターを使わせてもらえたらなって思ってるんです
どうでしょうか? (2017-04-26 16:38)
それはコラボということですか?
こちらは別に構いませんが、ここでやり取りすると水天影さんのSSのネタバレになりかねません。例のSNSでメッセージしてますので、以後はそちらでやり取りすることにしましょう。
(2017-04-26 17:51)
ワンターンキルが起きない様に、LPの初期値が8000に設定されているタッグデュエルのルールが、デュエルの公平性が保たれていまして、とても素晴らしいと思いました!
タッグデュエルの醍醐味は何と言っても、仲間のカードと力を合わせて戦える所ですよね。普段では行えないタッグデュエルだからこその戦術を取ることが出来ますし。
シンシアとデュエルする事も想定して、慎重に様子見をしていた遊緋のプレイングが、とてもクレバーでカッコ良かったです!この様に洞察力が鋭い所やスターダストの登場に目をキラキラさせていた素直な性格が、遊緋の魅力の一つだと思います!
シンシアもエースモンスターのスターダスト・ドラゴンに愛着を持っている所や、遊緋にスターダスト・ドラゴンを褒められて嬉しそうにしていた所が、とても好感が持てました!シンシアの様な強気な女の子が喜びの感情を表している所は、本当に可愛らしいですね!
対戦相手のデッキがザルーグを主軸に据えたデッキとは、中々渋くて良いですね!このデュエルでどの様な戦術を見せてくれるのか、とても楽しみです!
氷色さんがお書きになられている遊戯王英雄譚DGは、いつも展開が面白くて、楽しく読ませて頂いております!これ程素晴らしい作品をお書きになって頂いて、ありがとうございます!
無理なさらずにご執筆頑張ってください!応援しております!
以前氷色さんがコメント欄で、ご自身の地の文について仰っていましたが、氷色さんの地の文は作品の世界観が緻密かつ鮮明に表現されていて作品の世界観に浸れるので、私は大好きです!
(2017-04-28 19:08)
最近連絡が取れないのでこちらに書きます
ssのことで質問があります
これ見たら連絡くださーい (2017-05-03 22:04)