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第5話「怪物の襲撃」 作:コンドル
小込綾羽が謎の光る球体―遊駆たちは人魂と呼んでいる―に取り憑かれ暴走した騒動から翌日。
疲れからか、昨日眠りすぎた輪廻は今、砂埃をあげながらアカデミアに向かって全力疾走していた。その昼休憩のこと。
「お疲れさまだね。でも遊駆君もちゃんと起こしてあげないと。同室なんだし」
「そうだぜ遊駆~!なんで起こしてくれなかったんだー!」
「何度もさすったし、耳元で聞こえるように言ったんだ。それでも起きなかった」
「え、そうなの?全然気づかなかったぜ」
「…ところで」
遊駆は体を横にそらし、食堂に設置された洋風の四角形の柱をジッと見つめる。すると柱から白いポニーテールとピンク色のハートの形をしたペンダントを付けた人影が姿を現した。遊駆に思いを寄せる少女、小込綾羽だ。目が合うなり、顔を赤くして、体をもじもじさせる。
「ずっと見ていたが、何か用か?」
「あの、こんにちは。隣、いいですか?」
目線を逸らしたまま、遠慮がちに尋ねてくる。遊駆は黙ってうなずくと、綾羽は遠慮がちに「失礼します」と言って座った。
「誰?遊駆君の彼女?」
「…の候補、的な?説明するよ」
「…というわけで連れ去られた俺を遊駆が助けてくれたってわけよ」
身振り手振りで説明した輪廻の話を巧は「うんうん」とうなずきながら聞いている。その表情は真剣そのものだ。
「砂男を見て、今度は怪力の女子生徒と人魂。創作だと思って聞いていたけど、どうも違うみたいだね」
巧は続ける。
「都市伝説やネット掲示板には『釣り』というのが存在してて―わかりやすく言うと作り話だね―前回輪廻君が話してくれた砂男に遭遇したって話、あれもそうかと疑ってたんだけど...違うみたいだね。信じなくてごめん」
「いや、むしろ信じてくれてありがとな…ってやべ、話してたら昼休み終わっちまう!早く食おうぜ!」
その夜のことだった。
遊駆が窓越しに、巧が森の中へ入っていくのを見たのは。
第5話「怪物の襲撃」
誰にも気づかれないように寮を抜け出した遊駆は降りて巧を追ってきた。あたりは蒼暗く、物音は一切せずに静寂が支配していた。遠くにある灯台と、月の光、妙に近く感じる星々を頼りにして、遊駆は巧を探して森のほうへ向かった。幸い距離はそんなに離れていないため、何とか追いつけそうだ。
(懐中電灯を持っているのか。準備がいいな)
左手あたりから光が出ている。停電時に使うための懐中電灯を持ってきたのだろうか。
「何をしているんだ」
無事追いつき、森の入り口で立ち止まる巧を見つけて後ろから声をかけた。
「うおっ!?なんだ...脅かさないでよ。駄目だよ遊駆君、こんな時間に外に出ちゃあ。校則違反だよ?」
「それはそちらもだろう。それで、何をしているんだ」
「…人魂を探しに来たのさ。妖怪が現れる時間帯は夜が多いからね。もしかしたら会えるかもしれないと思ってさ」
巧は笑顔でそう答えた。その回答は遊駆も予想していたのか、「そうか」とだけ返した。
「ちょうどいいや。遊駆君には色々聞きたかったんだよね。例えば...なんで人魂を探すのか、とか」
「信じがたいと思うが...」
遊駆はこれまでの自分の身に起きた出来事を語った。まず幼少期に脳内に謎の女性の声がアカデミアに来るように告げてきたこと。その声と同じ声が人魂からすること。それらを微笑み顔で聞いていた。
「そして、入学式の時だった。声が聞こえて、地面に触れると輝いて人魂が飛び出して...」
「なんだって!?」
その話をした時だった。急に巧の表情がこわばり、目を大きく見開いた。大きな声だったため、遊駆は思わず話すのをやめ、相手をじっと見る。
「嘘だろ...い、いや、触れたら、光った?地面が?今そういったのかい?」
「そうだ。それがどうかしたのか」
緊迫した空気が流れる。間の鈍い遊駆でも、何かしら異常な空気に変わったことが理解できる。何か言っていけないことを言ってしまっただろうか。巧の次の言葉が何なのか予測できない。
「いや...。そうか...わかったよ」
「遊駆君、君に教えておきたいことが...」
「そこ、何をしている?」
突然懐中電灯の光が後ろから当たった。振り向くとそこにいたのはアカデミア校長の「神原恒久(かんばらつねひさ)」だった。長い黒髪と真ん中にラインの入った白髪を揺らしながら、歩いてくる。背は180センチはあろうか、ただ歩くだけで威圧感がある。
「何か大きな声がしたから来てみれば、二人して森の前で立ち話か?夜間の出歩きは校則違反だ。今日はもう遅いから、明日の昼休憩の時、校長室に来なさい。まったく...」
神原はそういうと二人が寮に戻るのを見届けてから自室に戻っていった。
「校長ぉ、余計なことを...遊駆君、明日の放課後もう一回、探しに行こう。そこで君に言いたいことがある」
「今じゃダメなのか?」
「いや、また落ち着いたタイミングがいい。だから、明日、だ。お願いね」
そういって、巧は両手を合わせ、謝罪のポーズをとった後、去っていった。
(話、か。何か気になることでもあっただろうか)
自分の言葉を思い出しながら部屋に戻ろうと歩いていると、何かに気づいたのか、ふと立ち止まった。
(さっき両手を合わせて帰っていかなかったか?懐中電灯を持っていたんじゃなかったのか...?)
「えぇ。そうです。探している人物は間違いなく、藤玄遊駆君で間違いないです。ただ気になることがあって。はい...はい...明日、必ず確かめます。…神原校長」
虚空に向かい話す。神原の名を出して。
翌日、遊駆と巧は校長室に呼び出された。
「もう一度聞くがなぜ夜間に外出したんだ?」
神原は困惑の表情を隠さずに先ほど聞いた質問を聞き返した。
「ですから人魂を探しに行ったんですよ。校長は僕がオカルト話に目がないの知ってますよね?」
「ほお、では藤玄君も同じ理由かね?」
「俺は巧が外に出たのを見て何をしているのかと思いまして...」
「とにかく、警備の関係で夜間の外出は禁止されている。過去にはDモールの中にあるカードショップに泥棒が入ったり、カード狩りが起きたりしたんだ。君たちも自分の身を守ることだと思って、やめてくれたまえ。そもそも...」
「もし次に夜間に外出しているのを見つけたら、反省文を書かせる。覚悟しておいてくれたまえよ…藤玄君は戻りたまえ。山野君は残りなさい」
「えーなんで僕だけ」
「君には聞きたいことがある。…藤玄君、早く戻りなさい」
校長室に残った神原と巧は真剣な表情で話し込んでいた。
「人魂から発せられる声が彼をアカデミアに導いたとも話していました。これ、校長のご友人が話していた『予言』と全く同じ話ですよ。彼が王の復活に関わっていることは間違いありません」
おちゃらけた雰囲気は消え、神原に話す巧。緊張しているのか、唇が少し震えているようだ。
「予言か...ー少し語弊があるが、今はいいだろうー彼は16年前、確かに藤玄君のような人間が来ると言っていたな」
重い空気をごまかすために、巧は一度目を伏せて深呼吸した。
「とりあえず、僕は放課後、人魂を探すために森へ行きます。もし何か進展があれば、報告するので、校長の『能力』で、いつでも話せるようにしておいてください」
そういって巧は校長室から出て行った。
「…入学式の時からそうではないかと思っていたが、やはり、か。…クロト、お前の言う通りになったよ。なぁ、クロト...」
神原は忘れられない光景を脳裏に浮かべていた。まだ学生だった頃の自分と、大切な友人の姿。その友人と手をつなぎ地面に触れた日のこと。友人の一挙手一投足すべてを思い出しながら、目を閉じた。
夕方になった。
森の入り口にて待ち合わせる遊駆と巧。
「黄昏時、逢魔が時ともいわれているこの時間...人魂探しにはうってつけだね。早速行こうか」
そのころ輪廻と綾羽は校庭で偶然会っていた。
「あ、あれ?遊駆さんと一緒じゃないなんて珍しいですね。喧嘩でもしたんですか?」
「そういうわけじゃねーよ。遊駆なら巧と一緒に森に行った。例の人魂探しだと」
「それ...大丈夫なんですか?もしかしたら、私みたいに誰かに取り憑くんじゃ...私、心配だから行ってきます!」
「お、おい...待てよ!」
再び森の中。2人は横に並び何も話さずにただ歩いていた。
聞こえてくるのは鳥の羽ばたく音と、風で震える葉の音だけだ。こんな時輪廻なら気さくに雑談をするんだろうな、と遊駆は考えた。
「…昨日の話を聞いて色々考えたんだけどさ」
巧は歩く速度を少しずつ下げ、立ち止まる。巧の方向へ向き直し、遊駆は不思議そうにうなずいた。
「その声が聞こえたのって、いつ頃なのかな。何歳とか、覚えてない?」
「いや...小学生のころだったのは覚えているが...」
「そう。いや、何、気になっただけだよ。ところでもう一つ聞いていいかな」
「何だ?」
「…君、人にはない能力持ってない?人魂に遭遇したり、地面に触れて人魂が飛び出してきて...話の中心にいるのはいつだって『人魂』だ。それが現れたのも君が来てから…変だと思わないかい?」
「…何が言いたいんだ」
「…話したいことがあるって言ったでしょ。遊駆君、君は」
何かを言おうとしたその時、びゅおおお、と雄たけびのような音を出しながら風が吹いた。木々が少し揺れ、鳥がどこかへ一斉に飛んでいく。少しして、巨大な影が二人の元へ突っ込んでくるのが見えた。
「っ!?」
その影は遊駆の首元をつかみ、どぉん!と音を立てて地面へ叩き伏せる。あまりにも一瞬の出来事だったので、巧は遅れて反応した。
(怪物!?なんだ、急に出てきたぞ。僕が何か言おうとした瞬間を待ってたみたいに...)
その時、背後に気配を感じた。殺気。振り向けば命を奪われると本能が悟る。気づくと肩に、さらさらとした不思議な感触のものが触れていた。
(…砂?砂、砂、男)
「聞かせてもらったよ。そいつが『器』なんだな。オレらの代わりに見つけてくれてご苦労さん。死 んでいいぜ」
砂男は巧の耳元でそうささやき、ゆっくりと、口と耳の穴へさらさらした砂を流し込み始める。助けを求めようと、思わず遊駆のほうを見る。
2メートルはあろうか、紫色の皮膚で竜の頭の形をした人型の怪物に上から乗りかかられ首を絞められていた。
怪物は力を強め、遊駆の命を奪おうとしているのがわかる。最初は腕を振り払おうと抵抗していた遊駆も、次第に力が抜けて、両腕が倒れてしまっている。一瞬だけ目が合った。意識はまだあるようだ。
「おいおい生け捕りだろうが...あのへたくそ」
砂を流し込みながら、砂男はそうつぶやく。巧の意識も段々消えていこうとしていた。
(ああしくじったかな。まだ...父さんのところへ向かうわけには...いかないのにな)
ぽおう...
「なんだ、こいつの体...光って...」
巧の体が光り始めた。ぼんやりとした光が段々と勢いが増していき、ついにその光は太陽の如き威力に至った。
「くっ...」
眩しさのあまり、思わず巧の体を離してしまう。砂男から抜け出した巧は、口と耳から砂をこぼしながら走り、遊駆の元へ向かう。
「っ!」
怪物もその眩しさから手を離す。砂男と怪物が並び、巧は倒れている遊駆を守るように前に立って睨みつけた。
「こいつ...能力者か!おい、誰だか知らねぇが、今回は退いてやるよ。でもなぁ、その器は絶対にオレらが回収する。絶対だ!」
そう言って、砂男と怪物はどこかへ逃げていった。
完全にいなくなったことを確認した巧は遊駆の青い跡の残った喉を触れて、呼吸していることを確認してから、体内の砂を吐き出し始めた。
「た、くみ...そのす、が、た...」
「…ごめん遊駆君。色々言いたかったけど、イレギュラーな事態が起きてしまった。全部説明するよ。この能力のことも。僕らのことも」
それを聞き終えて、遊駆は意識を失った。
その時、ガサガサ、と草むらをかき分ける音がした。まさか戻ってきたのか。
「遊駆、と、光る人間...!?」
「何がどうなってるの...⁉」
音を聞いて輪廻と綾羽が駆け付けた。
(どうやら、説明すべき相手が増えたみたいだ)
巧は心の中でそうつぶやいてから遊駆を抱え上げ、光った体を元に戻した。
第5話 終
次回予告
そうだ、俺は怪物に襲われ、保健室で目を覚ましたんだ。あれから...そうだ、巧はどうなったんだ。いや、巧の体が光って。俺を助けてくれたのか。
砂男は能力者と呼んでいたな。一体、何がどうなっているんだ。全て説明してもらうぞ、巧。
次回 遊戯王エターナルタイムRE:
第6話 「動き出した刻」
俺たちはもう、知る前には戻れない。
疲れからか、昨日眠りすぎた輪廻は今、砂埃をあげながらアカデミアに向かって全力疾走していた。その昼休憩のこと。
「お疲れさまだね。でも遊駆君もちゃんと起こしてあげないと。同室なんだし」
「そうだぜ遊駆~!なんで起こしてくれなかったんだー!」
「何度もさすったし、耳元で聞こえるように言ったんだ。それでも起きなかった」
「え、そうなの?全然気づかなかったぜ」
「…ところで」
遊駆は体を横にそらし、食堂に設置された洋風の四角形の柱をジッと見つめる。すると柱から白いポニーテールとピンク色のハートの形をしたペンダントを付けた人影が姿を現した。遊駆に思いを寄せる少女、小込綾羽だ。目が合うなり、顔を赤くして、体をもじもじさせる。
「ずっと見ていたが、何か用か?」
「あの、こんにちは。隣、いいですか?」
目線を逸らしたまま、遠慮がちに尋ねてくる。遊駆は黙ってうなずくと、綾羽は遠慮がちに「失礼します」と言って座った。
「誰?遊駆君の彼女?」
「…の候補、的な?説明するよ」
「…というわけで連れ去られた俺を遊駆が助けてくれたってわけよ」
身振り手振りで説明した輪廻の話を巧は「うんうん」とうなずきながら聞いている。その表情は真剣そのものだ。
「砂男を見て、今度は怪力の女子生徒と人魂。創作だと思って聞いていたけど、どうも違うみたいだね」
巧は続ける。
「都市伝説やネット掲示板には『釣り』というのが存在してて―わかりやすく言うと作り話だね―前回輪廻君が話してくれた砂男に遭遇したって話、あれもそうかと疑ってたんだけど...違うみたいだね。信じなくてごめん」
「いや、むしろ信じてくれてありがとな…ってやべ、話してたら昼休み終わっちまう!早く食おうぜ!」
その夜のことだった。
遊駆が窓越しに、巧が森の中へ入っていくのを見たのは。
第5話「怪物の襲撃」
誰にも気づかれないように寮を抜け出した遊駆は降りて巧を追ってきた。あたりは蒼暗く、物音は一切せずに静寂が支配していた。遠くにある灯台と、月の光、妙に近く感じる星々を頼りにして、遊駆は巧を探して森のほうへ向かった。幸い距離はそんなに離れていないため、何とか追いつけそうだ。
(懐中電灯を持っているのか。準備がいいな)
左手あたりから光が出ている。停電時に使うための懐中電灯を持ってきたのだろうか。
「何をしているんだ」
無事追いつき、森の入り口で立ち止まる巧を見つけて後ろから声をかけた。
「うおっ!?なんだ...脅かさないでよ。駄目だよ遊駆君、こんな時間に外に出ちゃあ。校則違反だよ?」
「それはそちらもだろう。それで、何をしているんだ」
「…人魂を探しに来たのさ。妖怪が現れる時間帯は夜が多いからね。もしかしたら会えるかもしれないと思ってさ」
巧は笑顔でそう答えた。その回答は遊駆も予想していたのか、「そうか」とだけ返した。
「ちょうどいいや。遊駆君には色々聞きたかったんだよね。例えば...なんで人魂を探すのか、とか」
「信じがたいと思うが...」
遊駆はこれまでの自分の身に起きた出来事を語った。まず幼少期に脳内に謎の女性の声がアカデミアに来るように告げてきたこと。その声と同じ声が人魂からすること。それらを微笑み顔で聞いていた。
「そして、入学式の時だった。声が聞こえて、地面に触れると輝いて人魂が飛び出して...」
「なんだって!?」
その話をした時だった。急に巧の表情がこわばり、目を大きく見開いた。大きな声だったため、遊駆は思わず話すのをやめ、相手をじっと見る。
「嘘だろ...い、いや、触れたら、光った?地面が?今そういったのかい?」
「そうだ。それがどうかしたのか」
緊迫した空気が流れる。間の鈍い遊駆でも、何かしら異常な空気に変わったことが理解できる。何か言っていけないことを言ってしまっただろうか。巧の次の言葉が何なのか予測できない。
「いや...。そうか...わかったよ」
「遊駆君、君に教えておきたいことが...」
「そこ、何をしている?」
突然懐中電灯の光が後ろから当たった。振り向くとそこにいたのはアカデミア校長の「神原恒久(かんばらつねひさ)」だった。長い黒髪と真ん中にラインの入った白髪を揺らしながら、歩いてくる。背は180センチはあろうか、ただ歩くだけで威圧感がある。
「何か大きな声がしたから来てみれば、二人して森の前で立ち話か?夜間の出歩きは校則違反だ。今日はもう遅いから、明日の昼休憩の時、校長室に来なさい。まったく...」
神原はそういうと二人が寮に戻るのを見届けてから自室に戻っていった。
「校長ぉ、余計なことを...遊駆君、明日の放課後もう一回、探しに行こう。そこで君に言いたいことがある」
「今じゃダメなのか?」
「いや、また落ち着いたタイミングがいい。だから、明日、だ。お願いね」
そういって、巧は両手を合わせ、謝罪のポーズをとった後、去っていった。
(話、か。何か気になることでもあっただろうか)
自分の言葉を思い出しながら部屋に戻ろうと歩いていると、何かに気づいたのか、ふと立ち止まった。
(さっき両手を合わせて帰っていかなかったか?懐中電灯を持っていたんじゃなかったのか...?)
「えぇ。そうです。探している人物は間違いなく、藤玄遊駆君で間違いないです。ただ気になることがあって。はい...はい...明日、必ず確かめます。…神原校長」
虚空に向かい話す。神原の名を出して。
翌日、遊駆と巧は校長室に呼び出された。
「もう一度聞くがなぜ夜間に外出したんだ?」
神原は困惑の表情を隠さずに先ほど聞いた質問を聞き返した。
「ですから人魂を探しに行ったんですよ。校長は僕がオカルト話に目がないの知ってますよね?」
「ほお、では藤玄君も同じ理由かね?」
「俺は巧が外に出たのを見て何をしているのかと思いまして...」
「とにかく、警備の関係で夜間の外出は禁止されている。過去にはDモールの中にあるカードショップに泥棒が入ったり、カード狩りが起きたりしたんだ。君たちも自分の身を守ることだと思って、やめてくれたまえ。そもそも...」
「もし次に夜間に外出しているのを見つけたら、反省文を書かせる。覚悟しておいてくれたまえよ…藤玄君は戻りたまえ。山野君は残りなさい」
「えーなんで僕だけ」
「君には聞きたいことがある。…藤玄君、早く戻りなさい」
校長室に残った神原と巧は真剣な表情で話し込んでいた。
「人魂から発せられる声が彼をアカデミアに導いたとも話していました。これ、校長のご友人が話していた『予言』と全く同じ話ですよ。彼が王の復活に関わっていることは間違いありません」
おちゃらけた雰囲気は消え、神原に話す巧。緊張しているのか、唇が少し震えているようだ。
「予言か...ー少し語弊があるが、今はいいだろうー彼は16年前、確かに藤玄君のような人間が来ると言っていたな」
重い空気をごまかすために、巧は一度目を伏せて深呼吸した。
「とりあえず、僕は放課後、人魂を探すために森へ行きます。もし何か進展があれば、報告するので、校長の『能力』で、いつでも話せるようにしておいてください」
そういって巧は校長室から出て行った。
「…入学式の時からそうではないかと思っていたが、やはり、か。…クロト、お前の言う通りになったよ。なぁ、クロト...」
神原は忘れられない光景を脳裏に浮かべていた。まだ学生だった頃の自分と、大切な友人の姿。その友人と手をつなぎ地面に触れた日のこと。友人の一挙手一投足すべてを思い出しながら、目を閉じた。
夕方になった。
森の入り口にて待ち合わせる遊駆と巧。
「黄昏時、逢魔が時ともいわれているこの時間...人魂探しにはうってつけだね。早速行こうか」
そのころ輪廻と綾羽は校庭で偶然会っていた。
「あ、あれ?遊駆さんと一緒じゃないなんて珍しいですね。喧嘩でもしたんですか?」
「そういうわけじゃねーよ。遊駆なら巧と一緒に森に行った。例の人魂探しだと」
「それ...大丈夫なんですか?もしかしたら、私みたいに誰かに取り憑くんじゃ...私、心配だから行ってきます!」
「お、おい...待てよ!」
再び森の中。2人は横に並び何も話さずにただ歩いていた。
聞こえてくるのは鳥の羽ばたく音と、風で震える葉の音だけだ。こんな時輪廻なら気さくに雑談をするんだろうな、と遊駆は考えた。
「…昨日の話を聞いて色々考えたんだけどさ」
巧は歩く速度を少しずつ下げ、立ち止まる。巧の方向へ向き直し、遊駆は不思議そうにうなずいた。
「その声が聞こえたのって、いつ頃なのかな。何歳とか、覚えてない?」
「いや...小学生のころだったのは覚えているが...」
「そう。いや、何、気になっただけだよ。ところでもう一つ聞いていいかな」
「何だ?」
「…君、人にはない能力持ってない?人魂に遭遇したり、地面に触れて人魂が飛び出してきて...話の中心にいるのはいつだって『人魂』だ。それが現れたのも君が来てから…変だと思わないかい?」
「…何が言いたいんだ」
「…話したいことがあるって言ったでしょ。遊駆君、君は」
何かを言おうとしたその時、びゅおおお、と雄たけびのような音を出しながら風が吹いた。木々が少し揺れ、鳥がどこかへ一斉に飛んでいく。少しして、巨大な影が二人の元へ突っ込んでくるのが見えた。
「っ!?」
その影は遊駆の首元をつかみ、どぉん!と音を立てて地面へ叩き伏せる。あまりにも一瞬の出来事だったので、巧は遅れて反応した。
(怪物!?なんだ、急に出てきたぞ。僕が何か言おうとした瞬間を待ってたみたいに...)
その時、背後に気配を感じた。殺気。振り向けば命を奪われると本能が悟る。気づくと肩に、さらさらとした不思議な感触のものが触れていた。
(…砂?砂、砂、男)
「聞かせてもらったよ。そいつが『器』なんだな。オレらの代わりに見つけてくれてご苦労さん。死 んでいいぜ」
砂男は巧の耳元でそうささやき、ゆっくりと、口と耳の穴へさらさらした砂を流し込み始める。助けを求めようと、思わず遊駆のほうを見る。
2メートルはあろうか、紫色の皮膚で竜の頭の形をした人型の怪物に上から乗りかかられ首を絞められていた。
怪物は力を強め、遊駆の命を奪おうとしているのがわかる。最初は腕を振り払おうと抵抗していた遊駆も、次第に力が抜けて、両腕が倒れてしまっている。一瞬だけ目が合った。意識はまだあるようだ。
「おいおい生け捕りだろうが...あのへたくそ」
砂を流し込みながら、砂男はそうつぶやく。巧の意識も段々消えていこうとしていた。
(ああしくじったかな。まだ...父さんのところへ向かうわけには...いかないのにな)
ぽおう...
「なんだ、こいつの体...光って...」
巧の体が光り始めた。ぼんやりとした光が段々と勢いが増していき、ついにその光は太陽の如き威力に至った。
「くっ...」
眩しさのあまり、思わず巧の体を離してしまう。砂男から抜け出した巧は、口と耳から砂をこぼしながら走り、遊駆の元へ向かう。
「っ!」
怪物もその眩しさから手を離す。砂男と怪物が並び、巧は倒れている遊駆を守るように前に立って睨みつけた。
「こいつ...能力者か!おい、誰だか知らねぇが、今回は退いてやるよ。でもなぁ、その器は絶対にオレらが回収する。絶対だ!」
そう言って、砂男と怪物はどこかへ逃げていった。
完全にいなくなったことを確認した巧は遊駆の青い跡の残った喉を触れて、呼吸していることを確認してから、体内の砂を吐き出し始めた。
「た、くみ...そのす、が、た...」
「…ごめん遊駆君。色々言いたかったけど、イレギュラーな事態が起きてしまった。全部説明するよ。この能力のことも。僕らのことも」
それを聞き終えて、遊駆は意識を失った。
その時、ガサガサ、と草むらをかき分ける音がした。まさか戻ってきたのか。
「遊駆、と、光る人間...!?」
「何がどうなってるの...⁉」
音を聞いて輪廻と綾羽が駆け付けた。
(どうやら、説明すべき相手が増えたみたいだ)
巧は心の中でそうつぶやいてから遊駆を抱え上げ、光った体を元に戻した。
第5話 終
次回予告
そうだ、俺は怪物に襲われ、保健室で目を覚ましたんだ。あれから...そうだ、巧はどうなったんだ。いや、巧の体が光って。俺を助けてくれたのか。
砂男は能力者と呼んでいたな。一体、何がどうなっているんだ。全て説明してもらうぞ、巧。
次回 遊戯王エターナルタイムRE:
第6話 「動き出した刻」
俺たちはもう、知る前には戻れない。
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光る体の巧、その正体を知るべく、次の行動を起こす主人公たち。
砂男の言う器とは……次回が気になりますね。 (2024-12-02 23:18)
今回の話から作品の流れが変わります。砂男に謎の怪物、それに未知の能力を持つ仲間...彼らは一体何なのか、遊駆達はどうなるのか。それらの謎が次回明かされます。
気長にお待ちください (2024-12-03 22:28)
約束の通り、翌日森で待ち合わせる遊駆と巧。しかし、彼らの前に竜の怪物が出現!それだけではなく、件の砂男まで出現し、巧の体へ入り込むかのような素振りを見せる始末。普通に命を落としかねない状況に陥った彼らですが、突如光り輝く巧によって、何とか生き延びる事に成功。
怪物側にも知性が感じられるので、悪意をばらまく亡霊系とは違った組織的な可能性も考えられますな…。
能力者というワードに、物音を聞きつけた輪廻と綾羽も交えて次回以降巧の謎が明かされていく事でしょう! (2024-12-09 21:52)
砂男の行動により命を落としかけた巧ですが、謎の力によって窮地を脱せました。しかし、普通の人間が発光するなんてことはありえません。まして体が砂でできた男や竜の怪物などは...。
「能力者」、「器」と物語を動かすキーワードが登場いたしました。
これから物語はどうなっていくのか、是非、次回をご期待ください。 (2024-12-12 17:25)