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テラ・フォーミング 作:プレミメイカー
『ギャラクシーサーペントか、まぁ、それに近しいものになってしまったのかもしれんな。
加護か呪いか、魂の欠片が竜としてこの世に留まったようだ。』
光の龍は翼であごをさすりながら答えた。
「なってしまった?あなたは元々その姿ではなかったというわけ?」
どうやら、レイナにも彼の声は聞こえているらしい。
「そうです。多分その竜は、俺の父さんです。」
『え!お父さんなの!?』
「なら、私が斬った竜はバスターの父親ではなかったわけね。」
「……安心してるんですか?やさしいんですね。」
「ち、違うわ。ただ、親だったら自身でけじめをつけてあげさせたかっただけよ……。」
レイナは決まりが悪そうに俺から目線を外した。
『うん、うん。仲睦まじいようでなにより。』
「「違う!」」 タイミングばっちり。
「そこは『仲がいい』くらいでいいでしょう。なんでわざわざ誤解を生む言い回しを!」
レイナは恥ずかしさのあまりうずくまっている。
『あぁ、悪かった。少しでも場を和ませたかっただけなのだ。これからの旅はきっと長く過酷なものになるだろうからな。』
「これから……では、父さんも今回の事件の真相を、」
『あぁ、霊体のような存在になったせいか、少しだけだが残留思念のようなものを感じ取れるようでな。見張りをしていた者たちの念が教えてくれたよ。まさか、我が弟が裏切ったとは……』
龍を包む光が僅かに暗く淀む。父さんもこの事実には動揺を隠せないようだ。
「早く邪竜を追って倒さなければ……」
俺は拳に力を込める。
『いや、このまま奴を追い戦いを挑んだとしても、今のお前では歯が立たないだろう。それは、対峙したお前が一番よくわかっているはずだ。』
「く……」
渾身の一閃がいとも容易くかき消された瞬間が脳裏によぎる。
『完全に奴を葬れるのは真の破壊剣士に目覚めた者のみ。まずは力をつける必要がある。竜に所縁のある土地を訪ねるのだ。これをお前に。』
すると、目の前に光の玉が現れ、その中から1枚の手のひらほどの札が3枚現れた。どれも緑色の枠内に、同じように球体の一部が描かれている。
「……これは?」
『古の魔術の札、通称「カード」。遥か昔の魔術師たちはこのような札を用いて魔術の行使、魔物の召喚に用いたという。このカードに込められた魔法は《テラ・フォーミング》。一度使えば札は消失してしまうが、使用者一行をそれに記憶された土地へ瞬時に導く。』
「記憶された場所へ?すでに行先が決まっているんですか?」
『あぁ、このカードも代々の長に受け継がれてきたもの。この札に土地を記憶させたのは、始祖マスター・ブレイダー様であり、邪竜の復活に備え、真の破壊剣士覚醒への試練を与えるために残された。と、伝えられているものだ。』
真の破壊剣士……純白の鎧を身に纏う伝説の存在。はたして、俺はそれにふさわしい剣士なのか?剣術さえ父さんに遠く及ばないのに……。
「……俺が、」
『不安か?それもそうだろう。剣術だけならお前を凌ぐ剣士は少なくなかった。
が、強さだけで伝説の剣士になれるのなら、この世には星の数にも劣らない伝説が存在していることだろう。では、なぜ、限られた者のみが伝説と呼ばれるのか。
それは、彼らが選ばれたからだ。《運命》と呼ばれる人智を越えた大いなる流れに。
運命は本人の意志、実力如何に関わらず世界に変革が訪れたとき、残酷にもその行く末を我々背負わせる。お前は里が壊滅するほどの災厄の中、唯一破壊剣士として生き残った。それも伝説の剣をその手に。
それは運命に選ばれてしまったということ。今、邪竜を倒し、伝説となる権利を与えられたのはお前だけなのだ。』
邪竜は倒したい。倒さなければならない。その思いは変わらない。しかし、こうして自分が背負わされてしまったものの大きさを実感するほどに、その目標が、遠く困難で強大なものに感じられ、今にも心が押しつぶされそうになった。
『逃げることなど叶わない。既に世界は滅びへと向かい始めた。運命に選ばれたお前が滅びを受け入れるというならば、それが世界の定めなのだろう。
だが!滅びを待つか、伝説となるか以外に、お前が選択を許されたものがある。
それは戦う理由だ。世界を救うなどと大仰な志を掲げる必要など、ない。
どんな小さなことでもいい、この世界にお前が失いたくないと強く思うものがあるのなら、そのために戦いなさい。』
俺が、失いたくないもの……
そんなの決まっている!
そっと、リトルを抱え上げる。
また、見失うところだった。世界という底の見えない存在に飲まれて……
「ありがとう、父さん。こいつのためなら俺は、
邪竜だろうが伝説だろうがなんだって、乗り越えてみせる!」
『覚悟は決まったようだな。では、早速向かうとしよう。《竜の渓谷》へ!』
カードが青白い光を放つ。
「……レイナさんも一緒に来ませんか?厳しい旅になるかも知れませんが、竜に所縁のある土地であれば村を救う方法も見つかるかもしれません。それに、あなたほどの戦士が、共に戦ったてくれれば、こんなに心強いことはない。」
「……足、引っ張らないでね。」
差し伸べた手を彼女は力強く握る。
カードが放った光は球状に俺たちを包み込んだ。
加護か呪いか、魂の欠片が竜としてこの世に留まったようだ。』
光の龍は翼であごをさすりながら答えた。
「なってしまった?あなたは元々その姿ではなかったというわけ?」
どうやら、レイナにも彼の声は聞こえているらしい。
「そうです。多分その竜は、俺の父さんです。」
『え!お父さんなの!?』
「なら、私が斬った竜はバスターの父親ではなかったわけね。」
「……安心してるんですか?やさしいんですね。」
「ち、違うわ。ただ、親だったら自身でけじめをつけてあげさせたかっただけよ……。」
レイナは決まりが悪そうに俺から目線を外した。
『うん、うん。仲睦まじいようでなにより。』
「「違う!」」 タイミングばっちり。
「そこは『仲がいい』くらいでいいでしょう。なんでわざわざ誤解を生む言い回しを!」
レイナは恥ずかしさのあまりうずくまっている。
『あぁ、悪かった。少しでも場を和ませたかっただけなのだ。これからの旅はきっと長く過酷なものになるだろうからな。』
「これから……では、父さんも今回の事件の真相を、」
『あぁ、霊体のような存在になったせいか、少しだけだが残留思念のようなものを感じ取れるようでな。見張りをしていた者たちの念が教えてくれたよ。まさか、我が弟が裏切ったとは……』
龍を包む光が僅かに暗く淀む。父さんもこの事実には動揺を隠せないようだ。
「早く邪竜を追って倒さなければ……」
俺は拳に力を込める。
『いや、このまま奴を追い戦いを挑んだとしても、今のお前では歯が立たないだろう。それは、対峙したお前が一番よくわかっているはずだ。』
「く……」
渾身の一閃がいとも容易くかき消された瞬間が脳裏によぎる。
『完全に奴を葬れるのは真の破壊剣士に目覚めた者のみ。まずは力をつける必要がある。竜に所縁のある土地を訪ねるのだ。これをお前に。』
すると、目の前に光の玉が現れ、その中から1枚の手のひらほどの札が3枚現れた。どれも緑色の枠内に、同じように球体の一部が描かれている。
「……これは?」
『古の魔術の札、通称「カード」。遥か昔の魔術師たちはこのような札を用いて魔術の行使、魔物の召喚に用いたという。このカードに込められた魔法は《テラ・フォーミング》。一度使えば札は消失してしまうが、使用者一行をそれに記憶された土地へ瞬時に導く。』
「記憶された場所へ?すでに行先が決まっているんですか?」
『あぁ、このカードも代々の長に受け継がれてきたもの。この札に土地を記憶させたのは、始祖マスター・ブレイダー様であり、邪竜の復活に備え、真の破壊剣士覚醒への試練を与えるために残された。と、伝えられているものだ。』
真の破壊剣士……純白の鎧を身に纏う伝説の存在。はたして、俺はそれにふさわしい剣士なのか?剣術さえ父さんに遠く及ばないのに……。
「……俺が、」
『不安か?それもそうだろう。剣術だけならお前を凌ぐ剣士は少なくなかった。
が、強さだけで伝説の剣士になれるのなら、この世には星の数にも劣らない伝説が存在していることだろう。では、なぜ、限られた者のみが伝説と呼ばれるのか。
それは、彼らが選ばれたからだ。《運命》と呼ばれる人智を越えた大いなる流れに。
運命は本人の意志、実力如何に関わらず世界に変革が訪れたとき、残酷にもその行く末を我々背負わせる。お前は里が壊滅するほどの災厄の中、唯一破壊剣士として生き残った。それも伝説の剣をその手に。
それは運命に選ばれてしまったということ。今、邪竜を倒し、伝説となる権利を与えられたのはお前だけなのだ。』
邪竜は倒したい。倒さなければならない。その思いは変わらない。しかし、こうして自分が背負わされてしまったものの大きさを実感するほどに、その目標が、遠く困難で強大なものに感じられ、今にも心が押しつぶされそうになった。
『逃げることなど叶わない。既に世界は滅びへと向かい始めた。運命に選ばれたお前が滅びを受け入れるというならば、それが世界の定めなのだろう。
だが!滅びを待つか、伝説となるか以外に、お前が選択を許されたものがある。
それは戦う理由だ。世界を救うなどと大仰な志を掲げる必要など、ない。
どんな小さなことでもいい、この世界にお前が失いたくないと強く思うものがあるのなら、そのために戦いなさい。』
俺が、失いたくないもの……
そんなの決まっている!
そっと、リトルを抱え上げる。
また、見失うところだった。世界という底の見えない存在に飲まれて……
「ありがとう、父さん。こいつのためなら俺は、
邪竜だろうが伝説だろうがなんだって、乗り越えてみせる!」
『覚悟は決まったようだな。では、早速向かうとしよう。《竜の渓谷》へ!』
カードが青白い光を放つ。
「……レイナさんも一緒に来ませんか?厳しい旅になるかも知れませんが、竜に所縁のある土地であれば村を救う方法も見つかるかもしれません。それに、あなたほどの戦士が、共に戦ったてくれれば、こんなに心強いことはない。」
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差し伸べた手を彼女は力強く握る。
カードが放った光は球状に俺たちを包み込んだ。
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