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27:戦いの涙 作:ほーがん
第27話「戦いの涙」
ーそれは、数年前の出来事。平穏なる日常は、突然の宣戦布告により崩れ去った。
強さとはある種、この世の大部分を決定する性を持つ。それは単純な腕力や体力から、精神力、果ては財力や権力など。そのあらゆる強さに共通する事は、より強いものが勝ち、生き残るという鉄則。
そして、”奴ら”の持つ強さとは、本当の意味で次元を超えていた。
最初はどこか遠くで起きた出来事のように思っていた。自分には関係ない。世界のどこかで戦争が起きようと、また明日から変わらぬ日常が待っている。いつものように目覚め、電車に乗り、仕事へ向かう。遠い場所での争い事なんていうものは、自分に何の影響も与えないと。
だが、そんな考えは甘いと知った。”奴ら”が求めたのは、土地でも、資源でも、奴隷でもない。
ただの、”破壊”。
それこそが、唯一にして絶対の目的。
急速に拡大していく勢力は、いとも簡単に街から光を奪った。それは、自分の元にも。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
走っていた。恐怖と焦燥。全身を支配するのは、ただ”逃げる”という意志のみ。
陥落する建造物。その代わりに浮かび上がるのは、二本の柱。振り子は嘲るように揺れ、また一人、また一人と命を奪って行く。
見慣れた風景は、炎の壁に変わる。鉄屑と砕けたコンクリート。文明の亡骸が横たわり、その絶望が視界を覆った。
「・・・すけて・・・」
後方、耳に届いたのは呻く声。足を止める。振り向いたそこには、手を伸ばす、人の影。
「・・・助けて・・・ください・・・」
瓦礫に挟まれた女性。その周囲を血が滲む。戦火が焦がす煙と熱の中で、女性は助けを求めた。
「助けて・・・助けて・・・」
鉄骨に潰された脚。粉砕された骨と肉が辺りに散乱する。無理だと分かった。もう、助かる見込みは。
目を逸らし、走った。悲痛な叫びが谺する。生を求め、死を恐れる、一つの命が発した絶叫。その声から逃れるように、ただ走った。次の瞬間、耳を劈くような爆発音と共に、声は聞こえなくなった。
振り向けなかった。戦う術など無い。一介の人間である自分に、何が出来る。
人とは死の恐怖に対面した時、恐ろしく残酷になれるのだ。道徳や思いやりなんて言うものは、均衡のとれた社会の中でしか形成されないと分かった。
死にたくない、死にたくない。ただそれだけを叫びながら。自ら以外の命など構っている暇は無い。死にゆく者に差し伸べる手など、どこにあろうか。
力の無い者は逃げるしかない。
しかし。恐怖はやがて別の感情に変わる。我が物顔でのさばり、侵攻を続ける軍勢。いつしか、自分は畏怖よりも先に、憎しみが先行している事に気付いた。
そして、その憎しみは怒りに。怒りは闘争心に変わった。
開戦からしばらく経った。未だ敵の勢力は衰える事はない。だが、無抵抗で狩られるだけの獲物で居るつもりも無かった。
構えるは盾(ディスク)。切り裂くは剣(カード)。人はそれを持つ者をレジスタンスと呼んだ。
「なぁ、ヨシト。」
市街地。敵の侵攻作戦の情報を得たレジスタンスは、先回りして敵の出現を待っていた。
「なんだい、ジャックス。」
横から話しかけて来た同胞に、彼は応える。
「勝てると思うか。」
問い。とてもシンプルに、真実を突きつける言葉。答えは明白だった。
「いや。」
「分かってるか、お前も。」
これまでにレジスタンスが勝利を収めた事は、ほぼ無に等しい。やっているのは時間稼ぎ。何か画期的な対抗策を模索する中で、当てられる肉の壁。それが、前線に立つ自分達だった。
「・・・逃げるか。」
同胞の言葉に、ヨシトは目を丸くする。
「本気か。」
「見つかると思ってるのか、対策案なんて。俺達は使い捨ての兵士だ。俺達が殺されれば、また別の奴が第2、第3の俺達になる。分かってるだろ。」
同胞、ジャックスはそう言った。
「ああ。そうだね。でも・・・」
俯く、ヨシト。
「逃げられる場所があるのかい、この世界で。毎日、五月蝿いほど流れていた侵攻と襲撃を知らせるニュースでさえ、もう無くなった。」
「・・・」
「僕らは戦う力を得た。そう思っていた。けど、奴らは・・・」
それ以上の言葉は必要なかった。眼前に広がる惨状こそが、その答えだ。”僕らは勝てない”。
「・・・もうすぐだね。」
襲撃の時間が迫る。ヨシトはディスクを構えた。しかし、ジャックスは動かない。
「ジャックス、作戦時間だ。行かなきゃ。」
「・・・断る。」
「どうして。」
握りしめた拳が震える。それは闘争心から来るものでは無い。ジャックスを支配するのは、恐れ。
「俺は、逃げる。こんな所で、無駄に、無意味に、くたばるのは御免だ。」
痛いほど伝わる感情。誰が咎められようか。
僕らはこれから死にに行くのだ。圧倒的な力の前に敗れ、どんな無惨な死に方をするかも分からない。屍体すら残らないかもしれない。そして、そんな死さえ、誰にも覚えられない。長い争いの中で散った、無名の兵士。そんな存在に僕らはなりにゆく。そして、知るのだ。自分の人生がいかに無意味だったかを。
それを怖くない人間がどこに居る。本当は泣きじゃくり、何かにすがりたい。何か奇跡が起こり、助かる可能性を見たい。あと数分後には、死ぬというのに。
「・・・当たり前じゃないか。」
ヨシトは構えた腕を降ろした。
「当たり前じゃないか、そんなこと。逃げたいさ、ああ、逃げたいよ。どこか遠い場所へ。争いの無い、理想郷へ。走っていきたい。」
同胞へと向き直る。ヨシトは言葉を続けた。
「でも無理だ。そんな場所は無いから。戦争は終わらない。この世界を破壊し尽くすまで、奴らは戦いを止めない。」
諦観。それが、ヨシトを死に向かわせる。どうせ死ぬならば、少しでも意味のある死に方をしたい。彼の闘争心はいつしか、そんな感情に成り下がっていた。
だが、その男は違った。
「なぁ、ヨシト。逃げられる所まで、逃げてみないか。争いの無い、そんな場所が本当に無いのかどうか、確かめてみないか。」
「正気か。」
一抹の希望。それが、ジャックスをこの世に繋ぎ止めていた。ヨシトは迷う。
「作戦はどうする。僕らが時間を稼がなきゃ、レジスタンスは壊滅する。」
「だから、なんだ。」
ジャックスの目は揺るがない。
「俺達を捨て駒にし、”肉の壁”と揶揄する連中がなんだ。どうせ長くは持たない。奴らはここのレジスタンスを一人残らず滅ぼし、次の戦場に向かうだけだ。・・・なぁ、ヨシト。”生きてみたい”とは思わないのか。」
戦いの中で、出来た友人。ヨシトの心の中にある感情が芽生え始めていた。
”こいつに、自分の人生を預けてみようか”
そして、始まる襲撃。
降り立つは、光の柱。天空にアークを描き、滅びの振り子が揺れる。ヨシトは建物の影からそれを見つめた。
「・・・始まったか。」
肩を揺さぶり、ジャックスは叫んだ。
「ヨシト、決めろ!!ここで無惨に肉塊となって死ぬか、俺と共に生きる可能性を見つけるか!!時間が無い!!」
「ジャックス・・・」
争いの無い、理想郷。そんなものが本当にあるのか。
ーいや、そんな事は問題じゃない。大事なのは、そう。
「・・・諦めたくない。」
ヨシトはジャックスを見つめた。
「諦めたくない・・・僕は・・・生きる事を・・・」
「なら、どうする・・・!」
突如、後方より響いた爆発音。敵の手はすぐそこまで迫っていた。だが、二人は立ち向かう事なく、逆方向へ走り出した。
「どこへ向かうつもりだ、ジャックス。」
「ここで死ぬより、ずっとマシな場所だ!!」
飛び交う攻撃と戦火。周りのレジスタンス達が次々に打ち倒されて行く、その真っ只中を走った。その先に何が待っているかなんて分からない。だが、今はただ走るのだ。
生きる為に。
やがて、戦場は遠ざかり、二人は荒れ果てた廃墟に囲まれていた。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
肩で呼吸をしながら、周りを見渡す。あるのは、瓦礫と廃墟。そして、足元に転がる無数の屍体。そのどれもがまともな形状を保っていない。
「あのまま戦っていれば、今頃、俺達もこんなになってたのかもな。」
黒く固まった血を帯びた肉塊を見つめ、ジャックスは呟く。血液と煙の臭いが鼻腔を刺激した。
「それで、これからどうするんだ、ジャックス。」
ヨシトの問いに、ジャックスはポケットから1枚のパスを取り出した。
「・・・1つ、当てがある。」
「それは?」
再び、ポケットにパスを仕舞い込みながら、ジャックスは言う。
「生きて行ける可能性が残る場所、そこへの鍵だ。だが、ここからかなりの距離がある。」
「・・・でも、行くんだろ。」
会話を終える前に二人は歩き出していた。答えは分かっている。もはや、今の自分達に選択の余地などないのだから。
旅が始まる。その道のりは険しく、決して平坦ではなかった。最初に躓いたのは食事の問題。レジスタンスから支給された質素な食料など、二日と持たない。前線に立つ兵士を、生かす事など考えられてはいなかったのだ。
絶望する二人。しかし、僅かな希望がこの世界に残っている事を彼らは知る。
「難民、キャンプ?」
逃げ出してから数日後。道の途中、立てかけられた看板に足を止める。ヨシトはハッとした。
「・・・そうだ!まだニュースが流れていた頃、各地に難民キャンプがあると喧伝していた筈。もしかすると、まだ残っているのかもしれない。」
そうして、二人は一筋の希望を見据え、看板の指す方向へと足を運んだ。しばらく歩いた先に、それは見え始めた。
「すげぇ、こんなに人が残ってるとはな。」
「ああ。来て正解だった。」
その目に映ったのは、広い土地にいくつものテントが立ち並ぶ光景。本来ならばかなり目立つであろうそれは、まわりの高い木々によって囲まれ、上手い具合に隠蔽されているようだった。
「降りよう。」
人の波をかき分け、二人はキャンプの中へと進む。ふと鼻をくすぐる臭いに引きつけられ、ジャックスは走り出す。慌ててヨシトもその後に続いた。
辿り着いた先。炊き出しの鍋を前に、ジャックスは興奮した面持ちで口を開く。
「これはすごい。レジスタンスの食い物とは比べ物にならないな。」
「ふふっ、このスープ飲みますか?暖まりますよ。」
お玉杓子を手に、目の前の女性が笑う。横から顔だしたヨシトはジャックスの代わりに言った。
「頂けるならありがたいです。」
「ここは難民キャンプですから、遠慮しないでくださいね。どうぞ。」
スープを装った皿をヨシトに手渡した女性は、鍋を凝視するジャックスに微笑みかける。
「あなたも、はい。」
出された皿を、ジャックスは慌てて受け取った。
「ああ、すまない。ありがとう。あんた、名前は?」
「私はシェリー。ここで炊き出しをやってます。スープが飲みたくなったら私を探して下さいね。」
彼女の笑顔にジャックスは頬を赤らめると、スープを一気に飲み干した。
「ヨシト、他も見て回ろう。」
「ああ、うん。それじゃあ、シェリーさん。また。」
手を振るヨシトに、シェリーも小さく振り返す。テントの間を歩きながらジャックスは言った。
「・・・もう、ここにずっと居てもいいかもな。」
「そうだね。ここは木に囲まれてて、周りからは見えづらいし。・・・あの日、あそこで決心できて良かった。」
「生きていれば、良い事もあるんだ、ヨシト。捨て駒で終わらないで良かった。」
互いに頷き合う。もしかすると、理想郷はここなのかもしれない。そんな思いをヨシトは抱き始めていた。
翌日、二人は再びシェリーの元へ向かった。
「あら、おはようございます。」
「ああ、うん。おはよう。」
たじたじと応答するジャックス。シェリーは二人に訊ねた。
「そう言えば、お名前を聞きそびれてましたね。えっと・・・」
「僕はヨシト。で、こっちが友人のジャックス。よろしくね、シェリーさん。」
それを聞き、シェリーは笑った。
「ええ、よろしく。ヨシトさん、ジャックスさん。ふふっ、今日のスープは、私特製のオニオンスープですよ。どうですか?」
「良い匂いだ。貰おうかな。」
身を乗り出すジャックス。シェリーは優しい笑顔を見せると、スープを装った皿を二人に差し出す。
「さぁどうぞ。」
「ありがとう・・・・ん、うまい!それに身体が暖まる。素晴らしいスープだ。」
ジャックスの賛辞に、シェリーは照れくさそうに言った。
「大げさですよ、ジャックスさん。私のスープなんかで。」
「そんなことないと思うよ。シェリーさんのスープは本当に美味しい。にしても、なんでシェリーさんは、この難民キャンプに?」
それを聞き少し俯くと、手を止めシェリーは語り出す。
「私は元々教師でした。でも、教え子はみんな戦争で・・・」
小さく嗚咽が漏れる。それでもシェリーは言葉を続けた。
「・・・私は生き残った自分に何が出来るのか考えました。そこで知ったんです、難民キャンプの存在を。直ぐさま私はボランティアに登録して、ここへやってきました。私にできるのはせいぜいご飯を作る事ぐらいですが、誰かの役に立ちたい、そう思って・・・」
ジャックスは突然、声を張り上げた。
「俺達にできる事があったら、何でも言ってくれ。」
「うん。僕らも貰ってばかりじゃ悪いから。何かあった時は遠慮しないでね。」
二人の言葉を聞き、シェリーは溢れた涙を拭い笑った。
「ありがとうございます・・・優しいんですね。」
それから、ヨシトとジャックスは毎日のようにシェリーの元に通い、スープを飲み続けた。過酷な戦争の中で出会ったこの三人には、いつしか絆のようなものが出来上がりつつあった。
しかし。魔の軍勢はその絆を嘲笑うかのように、力を振りかざす。
キャンプへとやって来た日から数週間後の朝。テントの中で眠る二人を起こしたのは、悲鳴と爆発だった。急いでテントから這い出した彼らの目に映ったのは。
「光の・・・柱・・・」
振り子が揺れる。逃げ惑う人々。まるで感情の無い声が轟いた。
『ペンデュラム召喚。』
ヨシトは、かりそめの平和の中で忘れかけていた恐怖を思い出した。
「”僕らは勝てない”」
その時。ジャックスが呟く。
「おい・・・ヨシト。あっちの方向って、シェリーさんのテントがある場所だよな。」
「ジャックス・・・!」
次の瞬間、ジャックスは走り出していた。ヨシトが声を掛ける間もなく、ジャックスの姿は土煙の中に消える。
「シェリーさん!!どこですか!!居るなら返事をして下さい!!」
煙の視界を覆われながらも、ジャックスは叫び続けた。しかし、その声は人々の悲鳴に掻き消され、遠くへは届かない。
「・・・ジャックスさん・・・」
その時。微かに聞こえたのは聞き覚えのある声。もう一度、渾身の叫びをジャックスは放った。
「シェリーさん!!無事ですか!!」
闇をかき分け、ジャックスは声の元へと走った。その先に探している人物は居た。
「ジャックスさん・・・足が・・・」
ジャックスの目に飛び込んで来たのは、崩れたテントの骨組みに、右足を挟まれたシェリーの姿。痛みと恐怖に震えながらシェリーは言う。
「・・・ジャックスさん・・・助けて・・・」
「待ってろ、今退かしてやる!」
ジャックスは急いで骨組みを持ち上げると、後方へ投げ捨てた。直ぐさま、しゃがみ込み、シェリーの足を診る。
「頸骨の骨折に筋肉裂傷。・・・とてもじゃないが、これじゃ歩けない。」
「ジャックスさん・・・足が・・・痛いの・・・助けて・・・」
荒い息を吐き、シェリーはすがるように呟く。意を決し、ジャックスはシェリーの身体を背負った。
「そうだ、あの場所に辿り着ければ、この足も治せるかもしれない。それまで、シェリーさんは俺が背負う・・・!」
ヨシトの待つ方へ歩き出そうとした、その時。
「なんだ・・・?」
それは不気味な足音のような何か。土煙の中、見えない何かが蠢く。
「一体、何が居る・・・。」
その瞬間、煙が晴れた。それを払ったのは、想像を絶する”何か”
無数の眼球と、鋭利な爪。不可解なまでに細長い胴体。そして、恐らく顔であろう場所。そこに刺さった”杭”を、甲殻類を思わせる腕で抜き差ししながら、その巨大な怪物は唸った。
「うううっ・・・うぅぅぅうううぅうぅうぅうぅっ!!!」
杭の刺さっている部位から血が流れ落ちる。その痛みに愉悦を感じるのか、恍惚とした目で怪物は唸り続けた。
「うううぅぅううっ!!うううぅうぅうっ!!」
ジャックスはその怪物に未知の恐怖を感じた。たじろぐ脚が後ずさる。
その時。どこからとも無く、ゆったりとした声が谺する。
「何か良いものを見つけたのか、《EMリッパー・オブ・サイコパス》。」
徐々に明らかになるシルエット。その影に向かって、ジャックスは叫んだ。
「お前は、誰だ!!」
影は軽く御辞儀をすると、怪物の顔を撫でた。
「これはこれは・・・まだお客さんがいたとはね。いや、失礼。おい《EMリッパー・オブ・サイコパス》、ショーはまだ終わってなかったみたいだ。」
「ううぅううぅう!!!」
杭を引き抜き、笑い転げる怪物。影は変わらぬ口調で続ける。
「でも、まだまだやる事があるからね。ここは一旦出直しだ。・・・俺は”破壊の王”と呼ばれる者。お楽しみは、これからだよ。」
刹那。怪物と影の姿は風のように消える。ジャックスの身体は怯え切り、止まらない震えに支配されていた。
「なんだったんだ・・・今のは・・・」
次回 第28話「絶望の旅路」
ーそれは、数年前の出来事。平穏なる日常は、突然の宣戦布告により崩れ去った。
強さとはある種、この世の大部分を決定する性を持つ。それは単純な腕力や体力から、精神力、果ては財力や権力など。そのあらゆる強さに共通する事は、より強いものが勝ち、生き残るという鉄則。
そして、”奴ら”の持つ強さとは、本当の意味で次元を超えていた。
最初はどこか遠くで起きた出来事のように思っていた。自分には関係ない。世界のどこかで戦争が起きようと、また明日から変わらぬ日常が待っている。いつものように目覚め、電車に乗り、仕事へ向かう。遠い場所での争い事なんていうものは、自分に何の影響も与えないと。
だが、そんな考えは甘いと知った。”奴ら”が求めたのは、土地でも、資源でも、奴隷でもない。
ただの、”破壊”。
それこそが、唯一にして絶対の目的。
急速に拡大していく勢力は、いとも簡単に街から光を奪った。それは、自分の元にも。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
走っていた。恐怖と焦燥。全身を支配するのは、ただ”逃げる”という意志のみ。
陥落する建造物。その代わりに浮かび上がるのは、二本の柱。振り子は嘲るように揺れ、また一人、また一人と命を奪って行く。
見慣れた風景は、炎の壁に変わる。鉄屑と砕けたコンクリート。文明の亡骸が横たわり、その絶望が視界を覆った。
「・・・すけて・・・」
後方、耳に届いたのは呻く声。足を止める。振り向いたそこには、手を伸ばす、人の影。
「・・・助けて・・・ください・・・」
瓦礫に挟まれた女性。その周囲を血が滲む。戦火が焦がす煙と熱の中で、女性は助けを求めた。
「助けて・・・助けて・・・」
鉄骨に潰された脚。粉砕された骨と肉が辺りに散乱する。無理だと分かった。もう、助かる見込みは。
目を逸らし、走った。悲痛な叫びが谺する。生を求め、死を恐れる、一つの命が発した絶叫。その声から逃れるように、ただ走った。次の瞬間、耳を劈くような爆発音と共に、声は聞こえなくなった。
振り向けなかった。戦う術など無い。一介の人間である自分に、何が出来る。
人とは死の恐怖に対面した時、恐ろしく残酷になれるのだ。道徳や思いやりなんて言うものは、均衡のとれた社会の中でしか形成されないと分かった。
死にたくない、死にたくない。ただそれだけを叫びながら。自ら以外の命など構っている暇は無い。死にゆく者に差し伸べる手など、どこにあろうか。
力の無い者は逃げるしかない。
しかし。恐怖はやがて別の感情に変わる。我が物顔でのさばり、侵攻を続ける軍勢。いつしか、自分は畏怖よりも先に、憎しみが先行している事に気付いた。
そして、その憎しみは怒りに。怒りは闘争心に変わった。
開戦からしばらく経った。未だ敵の勢力は衰える事はない。だが、無抵抗で狩られるだけの獲物で居るつもりも無かった。
構えるは盾(ディスク)。切り裂くは剣(カード)。人はそれを持つ者をレジスタンスと呼んだ。
「なぁ、ヨシト。」
市街地。敵の侵攻作戦の情報を得たレジスタンスは、先回りして敵の出現を待っていた。
「なんだい、ジャックス。」
横から話しかけて来た同胞に、彼は応える。
「勝てると思うか。」
問い。とてもシンプルに、真実を突きつける言葉。答えは明白だった。
「いや。」
「分かってるか、お前も。」
これまでにレジスタンスが勝利を収めた事は、ほぼ無に等しい。やっているのは時間稼ぎ。何か画期的な対抗策を模索する中で、当てられる肉の壁。それが、前線に立つ自分達だった。
「・・・逃げるか。」
同胞の言葉に、ヨシトは目を丸くする。
「本気か。」
「見つかると思ってるのか、対策案なんて。俺達は使い捨ての兵士だ。俺達が殺されれば、また別の奴が第2、第3の俺達になる。分かってるだろ。」
同胞、ジャックスはそう言った。
「ああ。そうだね。でも・・・」
俯く、ヨシト。
「逃げられる場所があるのかい、この世界で。毎日、五月蝿いほど流れていた侵攻と襲撃を知らせるニュースでさえ、もう無くなった。」
「・・・」
「僕らは戦う力を得た。そう思っていた。けど、奴らは・・・」
それ以上の言葉は必要なかった。眼前に広がる惨状こそが、その答えだ。”僕らは勝てない”。
「・・・もうすぐだね。」
襲撃の時間が迫る。ヨシトはディスクを構えた。しかし、ジャックスは動かない。
「ジャックス、作戦時間だ。行かなきゃ。」
「・・・断る。」
「どうして。」
握りしめた拳が震える。それは闘争心から来るものでは無い。ジャックスを支配するのは、恐れ。
「俺は、逃げる。こんな所で、無駄に、無意味に、くたばるのは御免だ。」
痛いほど伝わる感情。誰が咎められようか。
僕らはこれから死にに行くのだ。圧倒的な力の前に敗れ、どんな無惨な死に方をするかも分からない。屍体すら残らないかもしれない。そして、そんな死さえ、誰にも覚えられない。長い争いの中で散った、無名の兵士。そんな存在に僕らはなりにゆく。そして、知るのだ。自分の人生がいかに無意味だったかを。
それを怖くない人間がどこに居る。本当は泣きじゃくり、何かにすがりたい。何か奇跡が起こり、助かる可能性を見たい。あと数分後には、死ぬというのに。
「・・・当たり前じゃないか。」
ヨシトは構えた腕を降ろした。
「当たり前じゃないか、そんなこと。逃げたいさ、ああ、逃げたいよ。どこか遠い場所へ。争いの無い、理想郷へ。走っていきたい。」
同胞へと向き直る。ヨシトは言葉を続けた。
「でも無理だ。そんな場所は無いから。戦争は終わらない。この世界を破壊し尽くすまで、奴らは戦いを止めない。」
諦観。それが、ヨシトを死に向かわせる。どうせ死ぬならば、少しでも意味のある死に方をしたい。彼の闘争心はいつしか、そんな感情に成り下がっていた。
だが、その男は違った。
「なぁ、ヨシト。逃げられる所まで、逃げてみないか。争いの無い、そんな場所が本当に無いのかどうか、確かめてみないか。」
「正気か。」
一抹の希望。それが、ジャックスをこの世に繋ぎ止めていた。ヨシトは迷う。
「作戦はどうする。僕らが時間を稼がなきゃ、レジスタンスは壊滅する。」
「だから、なんだ。」
ジャックスの目は揺るがない。
「俺達を捨て駒にし、”肉の壁”と揶揄する連中がなんだ。どうせ長くは持たない。奴らはここのレジスタンスを一人残らず滅ぼし、次の戦場に向かうだけだ。・・・なぁ、ヨシト。”生きてみたい”とは思わないのか。」
戦いの中で、出来た友人。ヨシトの心の中にある感情が芽生え始めていた。
”こいつに、自分の人生を預けてみようか”
そして、始まる襲撃。
降り立つは、光の柱。天空にアークを描き、滅びの振り子が揺れる。ヨシトは建物の影からそれを見つめた。
「・・・始まったか。」
肩を揺さぶり、ジャックスは叫んだ。
「ヨシト、決めろ!!ここで無惨に肉塊となって死ぬか、俺と共に生きる可能性を見つけるか!!時間が無い!!」
「ジャックス・・・」
争いの無い、理想郷。そんなものが本当にあるのか。
ーいや、そんな事は問題じゃない。大事なのは、そう。
「・・・諦めたくない。」
ヨシトはジャックスを見つめた。
「諦めたくない・・・僕は・・・生きる事を・・・」
「なら、どうする・・・!」
突如、後方より響いた爆発音。敵の手はすぐそこまで迫っていた。だが、二人は立ち向かう事なく、逆方向へ走り出した。
「どこへ向かうつもりだ、ジャックス。」
「ここで死ぬより、ずっとマシな場所だ!!」
飛び交う攻撃と戦火。周りのレジスタンス達が次々に打ち倒されて行く、その真っ只中を走った。その先に何が待っているかなんて分からない。だが、今はただ走るのだ。
生きる為に。
やがて、戦場は遠ざかり、二人は荒れ果てた廃墟に囲まれていた。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
肩で呼吸をしながら、周りを見渡す。あるのは、瓦礫と廃墟。そして、足元に転がる無数の屍体。そのどれもがまともな形状を保っていない。
「あのまま戦っていれば、今頃、俺達もこんなになってたのかもな。」
黒く固まった血を帯びた肉塊を見つめ、ジャックスは呟く。血液と煙の臭いが鼻腔を刺激した。
「それで、これからどうするんだ、ジャックス。」
ヨシトの問いに、ジャックスはポケットから1枚のパスを取り出した。
「・・・1つ、当てがある。」
「それは?」
再び、ポケットにパスを仕舞い込みながら、ジャックスは言う。
「生きて行ける可能性が残る場所、そこへの鍵だ。だが、ここからかなりの距離がある。」
「・・・でも、行くんだろ。」
会話を終える前に二人は歩き出していた。答えは分かっている。もはや、今の自分達に選択の余地などないのだから。
旅が始まる。その道のりは険しく、決して平坦ではなかった。最初に躓いたのは食事の問題。レジスタンスから支給された質素な食料など、二日と持たない。前線に立つ兵士を、生かす事など考えられてはいなかったのだ。
絶望する二人。しかし、僅かな希望がこの世界に残っている事を彼らは知る。
「難民、キャンプ?」
逃げ出してから数日後。道の途中、立てかけられた看板に足を止める。ヨシトはハッとした。
「・・・そうだ!まだニュースが流れていた頃、各地に難民キャンプがあると喧伝していた筈。もしかすると、まだ残っているのかもしれない。」
そうして、二人は一筋の希望を見据え、看板の指す方向へと足を運んだ。しばらく歩いた先に、それは見え始めた。
「すげぇ、こんなに人が残ってるとはな。」
「ああ。来て正解だった。」
その目に映ったのは、広い土地にいくつものテントが立ち並ぶ光景。本来ならばかなり目立つであろうそれは、まわりの高い木々によって囲まれ、上手い具合に隠蔽されているようだった。
「降りよう。」
人の波をかき分け、二人はキャンプの中へと進む。ふと鼻をくすぐる臭いに引きつけられ、ジャックスは走り出す。慌ててヨシトもその後に続いた。
辿り着いた先。炊き出しの鍋を前に、ジャックスは興奮した面持ちで口を開く。
「これはすごい。レジスタンスの食い物とは比べ物にならないな。」
「ふふっ、このスープ飲みますか?暖まりますよ。」
お玉杓子を手に、目の前の女性が笑う。横から顔だしたヨシトはジャックスの代わりに言った。
「頂けるならありがたいです。」
「ここは難民キャンプですから、遠慮しないでくださいね。どうぞ。」
スープを装った皿をヨシトに手渡した女性は、鍋を凝視するジャックスに微笑みかける。
「あなたも、はい。」
出された皿を、ジャックスは慌てて受け取った。
「ああ、すまない。ありがとう。あんた、名前は?」
「私はシェリー。ここで炊き出しをやってます。スープが飲みたくなったら私を探して下さいね。」
彼女の笑顔にジャックスは頬を赤らめると、スープを一気に飲み干した。
「ヨシト、他も見て回ろう。」
「ああ、うん。それじゃあ、シェリーさん。また。」
手を振るヨシトに、シェリーも小さく振り返す。テントの間を歩きながらジャックスは言った。
「・・・もう、ここにずっと居てもいいかもな。」
「そうだね。ここは木に囲まれてて、周りからは見えづらいし。・・・あの日、あそこで決心できて良かった。」
「生きていれば、良い事もあるんだ、ヨシト。捨て駒で終わらないで良かった。」
互いに頷き合う。もしかすると、理想郷はここなのかもしれない。そんな思いをヨシトは抱き始めていた。
翌日、二人は再びシェリーの元へ向かった。
「あら、おはようございます。」
「ああ、うん。おはよう。」
たじたじと応答するジャックス。シェリーは二人に訊ねた。
「そう言えば、お名前を聞きそびれてましたね。えっと・・・」
「僕はヨシト。で、こっちが友人のジャックス。よろしくね、シェリーさん。」
それを聞き、シェリーは笑った。
「ええ、よろしく。ヨシトさん、ジャックスさん。ふふっ、今日のスープは、私特製のオニオンスープですよ。どうですか?」
「良い匂いだ。貰おうかな。」
身を乗り出すジャックス。シェリーは優しい笑顔を見せると、スープを装った皿を二人に差し出す。
「さぁどうぞ。」
「ありがとう・・・・ん、うまい!それに身体が暖まる。素晴らしいスープだ。」
ジャックスの賛辞に、シェリーは照れくさそうに言った。
「大げさですよ、ジャックスさん。私のスープなんかで。」
「そんなことないと思うよ。シェリーさんのスープは本当に美味しい。にしても、なんでシェリーさんは、この難民キャンプに?」
それを聞き少し俯くと、手を止めシェリーは語り出す。
「私は元々教師でした。でも、教え子はみんな戦争で・・・」
小さく嗚咽が漏れる。それでもシェリーは言葉を続けた。
「・・・私は生き残った自分に何が出来るのか考えました。そこで知ったんです、難民キャンプの存在を。直ぐさま私はボランティアに登録して、ここへやってきました。私にできるのはせいぜいご飯を作る事ぐらいですが、誰かの役に立ちたい、そう思って・・・」
ジャックスは突然、声を張り上げた。
「俺達にできる事があったら、何でも言ってくれ。」
「うん。僕らも貰ってばかりじゃ悪いから。何かあった時は遠慮しないでね。」
二人の言葉を聞き、シェリーは溢れた涙を拭い笑った。
「ありがとうございます・・・優しいんですね。」
それから、ヨシトとジャックスは毎日のようにシェリーの元に通い、スープを飲み続けた。過酷な戦争の中で出会ったこの三人には、いつしか絆のようなものが出来上がりつつあった。
しかし。魔の軍勢はその絆を嘲笑うかのように、力を振りかざす。
キャンプへとやって来た日から数週間後の朝。テントの中で眠る二人を起こしたのは、悲鳴と爆発だった。急いでテントから這い出した彼らの目に映ったのは。
「光の・・・柱・・・」
振り子が揺れる。逃げ惑う人々。まるで感情の無い声が轟いた。
『ペンデュラム召喚。』
ヨシトは、かりそめの平和の中で忘れかけていた恐怖を思い出した。
「”僕らは勝てない”」
その時。ジャックスが呟く。
「おい・・・ヨシト。あっちの方向って、シェリーさんのテントがある場所だよな。」
「ジャックス・・・!」
次の瞬間、ジャックスは走り出していた。ヨシトが声を掛ける間もなく、ジャックスの姿は土煙の中に消える。
「シェリーさん!!どこですか!!居るなら返事をして下さい!!」
煙の視界を覆われながらも、ジャックスは叫び続けた。しかし、その声は人々の悲鳴に掻き消され、遠くへは届かない。
「・・・ジャックスさん・・・」
その時。微かに聞こえたのは聞き覚えのある声。もう一度、渾身の叫びをジャックスは放った。
「シェリーさん!!無事ですか!!」
闇をかき分け、ジャックスは声の元へと走った。その先に探している人物は居た。
「ジャックスさん・・・足が・・・」
ジャックスの目に飛び込んで来たのは、崩れたテントの骨組みに、右足を挟まれたシェリーの姿。痛みと恐怖に震えながらシェリーは言う。
「・・・ジャックスさん・・・助けて・・・」
「待ってろ、今退かしてやる!」
ジャックスは急いで骨組みを持ち上げると、後方へ投げ捨てた。直ぐさま、しゃがみ込み、シェリーの足を診る。
「頸骨の骨折に筋肉裂傷。・・・とてもじゃないが、これじゃ歩けない。」
「ジャックスさん・・・足が・・・痛いの・・・助けて・・・」
荒い息を吐き、シェリーはすがるように呟く。意を決し、ジャックスはシェリーの身体を背負った。
「そうだ、あの場所に辿り着ければ、この足も治せるかもしれない。それまで、シェリーさんは俺が背負う・・・!」
ヨシトの待つ方へ歩き出そうとした、その時。
「なんだ・・・?」
それは不気味な足音のような何か。土煙の中、見えない何かが蠢く。
「一体、何が居る・・・。」
その瞬間、煙が晴れた。それを払ったのは、想像を絶する”何か”
無数の眼球と、鋭利な爪。不可解なまでに細長い胴体。そして、恐らく顔であろう場所。そこに刺さった”杭”を、甲殻類を思わせる腕で抜き差ししながら、その巨大な怪物は唸った。
「うううっ・・・うぅぅぅうううぅうぅうぅうぅっ!!!」
杭の刺さっている部位から血が流れ落ちる。その痛みに愉悦を感じるのか、恍惚とした目で怪物は唸り続けた。
「うううぅぅううっ!!うううぅうぅうっ!!」
ジャックスはその怪物に未知の恐怖を感じた。たじろぐ脚が後ずさる。
その時。どこからとも無く、ゆったりとした声が谺する。
「何か良いものを見つけたのか、《EMリッパー・オブ・サイコパス》。」
徐々に明らかになるシルエット。その影に向かって、ジャックスは叫んだ。
「お前は、誰だ!!」
影は軽く御辞儀をすると、怪物の顔を撫でた。
「これはこれは・・・まだお客さんがいたとはね。いや、失礼。おい《EMリッパー・オブ・サイコパス》、ショーはまだ終わってなかったみたいだ。」
「ううぅううぅう!!!」
杭を引き抜き、笑い転げる怪物。影は変わらぬ口調で続ける。
「でも、まだまだやる事があるからね。ここは一旦出直しだ。・・・俺は”破壊の王”と呼ばれる者。お楽しみは、これからだよ。」
刹那。怪物と影の姿は風のように消える。ジャックスの身体は怯え切り、止まらない震えに支配されていた。
「なんだったんだ・・・今のは・・・」
次回 第28話「絶望の旅路」
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100 | 12:新たなる出発 | 1122 | 2 | 2016-02-23 | - | |
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125 | 14:忘却都市と生存兵 | 1168 | 4 | 2016-03-07 | - | |
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61 | 23:極限のドロップ・ドロー・前編 | 910 | 2 | 2016-06-07 | - | |
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やはりといいますか、シェリーもジャックスもこの世界に実在する人物なのでした。破壊の王のモデルは、言わずもがなペンデュラムの創始者たる彼なので、言動は似通った感じにしています。性格は全く違いますけどね。 (2016-06-11 07:32)