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17:第2の村 作:ほーがん
第17話「第2の村」
赤の教会、その地下。無数のケーブルを繋がれ、ユーガは横たわっていた。そのケーブルの行き着く先、コンピュータを操作するヘラルドは興奮気味に口を開く。
「早く・・・早く見せるんだ・・・!」
その背後から見守るリチャードも思わず息を飲む。
コンピュータに解析率が表示される。その数値は、みるみる内に上昇し、とうとうその記憶の全貌を明らかにしようとしていた。
しかし。
「な、なんだ!?」
突然の警告音。コンピュータの解析が停止し、数値が下がって行く。ヘラルドは困惑と焦りで声を荒げた。
「どういうことだ!!一体何が起こっている!?」
「おい、ヘラルド!こりゃどういう事だ!?」
リチャードが後ろから肩を掴む。ヘラルドはその手を振り払い、コンピュータのパネルを叩いた。
「くっ、何が問題なんだ!!一体何が!!何が我々を阻んでいる!!」
あらゆる入力コードを試すが、その全てがエラー。ヘラルドは横たわるユーガを睨みつけた。
「こやつ、一体何を・・・!!」
その時だった。コンピュータから擦れた音声が響いた。
『残念だったな、マサカーよ。この記憶にはロックを掛けている。君達を王の元へは行かせない。』
その声を聞いたリチャードはハッとする。
「この声は・・・ヨシト!!!」
ヘラルドは爪が食い込み、血が出るほど拳を固め、怒りに身体を震わす。
「そうか・・・ヨシト・・・貴様が・・・!!がぁああああっ!!!」
その拳をコンピュータに叩き付け、ヘラルドは喚いた。
「あと一歩!!!あと一歩だというのに!!ぐうううぅうう!!!」
呆然と立っていたリチャードは、ふとコンピュータの横に転がっていたドリル器具を拾い上げる。
「へっ・・・渡さねぇってのか。俺達を・・・まだ俺達をこんな瓦礫の星に足止めする気か。・・・なら、てめぇにもう用はねぇ!!!」
ふらふらとユーガの身体に近づいたリチャードは、露出しケーブルに繋がれた脳めがけ、ドリルを振りかざした。それを見たヘラルドが叫ぶ。
「やめろリチャード!!まだ方法がある筈だ!!”鍵はこれしか無い”のだぞ!!!」
それを聞いたリチャードは、激昂して叫ぶ。
「うるせぇ!!!何年待ったと思ってる!!!あの日、屈辱の敗北から!!!何年!!!もう沢山だ!!!こんな所に閉じ込められるのはぁぁあ!!!」
振り下ろされる腕。ドリルの先端が迫る。
だが、次の瞬間。響き渡ったのは金属音。
「!!」
砕け散るドリルの先端。輝くは騎士の刃。
「こ、こいつは・・・!!」
そこにはユーガを庇うように剣を構えた、「アライブナイト・ウェイス」の姿があった。
「どういう事だ・・!!何が起こって・・・」
突然の自体に困惑するヘラルド。刹那、ウェイスの姿が消えたと同時にケーブルが飛び散り、切開されていたユーガの頭部が瞬時に治癒する。何かに突き動かされるように目覚めたユーガは、実験台の上に飛び上がった。
《”起動”》
そのぎらつき赤く染まった瞳は、ものを言うことなくリチャードを睨む。
「その目・・・まさか、てめぇは・・!!」
その時、突如として上の教会から轟音が響く。それを聞いたヘラルドは苦い顔をする。
「このタイミングで連中が来るのか・・・!!」
二人の気が上に逸れた瞬間、ユーガはその機を逃さなかった。まるで人間離れした動きで、地上へと続く階段を一気に駆け上がる。
「おい、逃げたぞリチャード!!追え、追うんだ!!」
「クソっ!!」
先端の無くなった器具を投げ捨て、リチャードは走り出した。
既にユーガは地上の教会へと出て来ていた。だが、地に足を着けた瞬間、意識が歪む。
《”過負荷により、休息状態に移行”》
頭の中に響いた電子音声のような何か。訳も分からないまま、ユーガはその場に倒れた。
轟音の正体。それを起こした人物は倒れたユーガの様子を見てハッとする。
「あの倒れ方に、電子音声。彼は・・・捕まったのか。」
ようやく追いついたリチャードが見たものは、ぐったりとしたユーガを抱きかかえ、竜のようなモンスターに乗る少年の姿だった。
「おい、てめぇ!!そいつを返せ!!今はてめぇらの相手をしてる場合じゃねぇんだよ!!」
リチャードの言葉に、少年は毅然とした態度で返す。
「黙れ!!僕らの他にまだASを捕まえていたとは・・・同胞は返してもらう!!」
「待て!!そいつはてめぇらとは違うんだよ!!」
少年は身を任せている竜に命令する。
「ふん!帰るぞ、《アヴァランチ・ドレイク》!この少年の手当をしなくては!」
竜は咆哮を上げ、岩石の翼を広げた。リチャードは叫ぶ。
「畜生がァァ!!ジェイミーの奴は何してやがる!!なんでいねぇんだ!!」
教会の天井を突き破り、竜は大空へと飛び出した。リチャードは膝を折り、呆然と空を見つめる。
「ふ、ふざけるな・・・。俺は、俺達はいつまでここに居ればいい・・・。」
そして、沸き上がる怒りのままポケットから端末を取り出し、勝手に行方を眩ませた仲間に電話を掛けた。
朦朧とする意識の中で、ユーガは声を聞いていた。
「・・・い!」
うっすらと目を開ける。そこは涼しい空気が流れる青空の下。
「おい!君!大丈夫だったかい?奴らに殺されそうだったんだろ?」
ユーガは困惑して訊ねる。
「ここは・・・俺は・・一体・・・」
その声の主、視界に映った少年は笑う。
「大丈夫、僕も君と同じだ。さぁ、手を貸そう。」
その少年の手を取り、ユーガは上体を起こす。ようやく映り込んだ周りの景色に、ユーガは驚く。
「ここは・・・人が・・こんなに・・・!」
そこは瓦礫を利用した小屋が立ち並び、多くの人が生活をする場所。旅の中で一度として、こんな光景は見た事がない。
「驚いたかい?これが僕らの”村”さ。おっと自己紹介が遅れたね。僕はケンジ。君と同じ離反したASさ。」
握手を求め、差し出された手。しかし、ユーガは代わりにその少年、ケンジに訊ねる。
「・・・待ってくれ。離反?AS?何の話だ?」
「君もASなんだろう?そして奴ら”マサカー”から逃げていた。そうじゃないのか?」
ユーガは混乱し、今までの出来事を整理した。
「・・・リチャードとの遭遇と、ジェイミーの裏切り。俺はあの後マサカーに捕まったのか。それで、この少年に助けられた・・・。いや、カケルやリンカはどこだ。ここは一体・・・」
「おい、大丈夫かい?なんだか凄く混乱してるみたいだけど・・・」
心配そうに顔を覗くケンジに対し、ユーガは答える。
「ああ、何が起こったのかよく覚えていないんだ。とにかく俺は、ASというものでも無いし、何かから離反した覚えはない。」
それを聞いたケンジは、怪訝な顔をする。
「そんな。でもあの倒れ方、まるで電源を抜かれた機械のような動き。加えてオーバーロードを伝える電子音声。君は間違いなくASだと思うんだけど・・・。」
「いや、俺はユーガだ。そのASとは何の事だ?」
ユーガの反応を見たケンジは驚いたように言う。
「その感じを見るに、本当に違うみたいだね、ユーガ。・・・ASっていうのは「アドバンス・ソルジャーズ」の略称。つまり尖兵の事だよ。」
「尖兵?何のだ?」
その質問に、ケンジは悲哀の表情を浮かべる。
「『A・A・M(アグレッション・アンド・マサカー)』・・・。この世界の人達がペンデュラム軍と呼ぶ、世界を滅ぼした軍勢の尖兵。それが、僕らASだ。」
「・・・なんだと。」
小屋の横に設置されたベッドから立ち上がり、ユーガは周りを見渡した。
「ここにいる人々全てが、世界を滅ぼしたペンデュラムの手先なのか!?ケンジ、お前も!!」
「手先”だった”だ、ユーガ。君はペンデュラムに深い憎しみを持ってるんだね。・・・当然だと思う。僕の知ってる事は全て話すよ。」
ユーガはケンジの目を見つめる。そして、落ち着きを取り戻すと、再びベッドに腰を降ろした。それを確認し、ケンジは口を開く。
「僕らASは特殊な改造を施された人間なんだ。いわばデュエルのためのサイボーグのようなものさ。きっと僕らは身寄りの無い孤児や奴隷のような存在だったんだろう。」
「きっと、とはどういうことだ?」
自分の頭をさすりながら、ケンジは言う。
「無いんだ、記憶が。ASに改造される前の。きっと消されたんだ、邪魔だったろうから。・・・気付けば僕らはA・A・Mの為に前線で戦っていた。その意味も分からず、ただ、無感情のままにデュエルで圧倒し続け、多くの人々を・・・殺して来た。」
その言葉に、ユーガは終戦直後の惨状を思い出す。
「ああ。そうだな。」
ユーガから目を逸らしながらも、ケンジは言葉を続けた。
「けれど、僕らは自分のしている事に違和感を覚え始めた。これが、本当に正しい事なのか。そして僕らは段々と感情を取り戻していったんだ。ちょうど、その時だった。A・A・Mのリーダー”破壊の王”が倒されたという情報が入ったのは。」
「破壊の、王?」
ケンジは答える。
「A・A・Mを設立し、あらゆる世界を滅ぼして来たと言われてる、最凶最悪の人物。それが”破壊の王”さ。A・A・Mの幹部達は破壊の王を信奉していた。でも、戦争の最中、その破壊の王は誰かに討ち取られた。それはA・A・Mにとって絶対的な敗北を意味する。僕らはそれを機に、反旗を翻した。破壊を止め、デュエルを止めた。もう嫌だった。これ以上、罪の無い人々を傷つけるのは。」
「・・・だが、世界の崩壊はもうすでに止められなかった。」
ユーガの突きつける現実に、ケンジは力なく頷くしかなかった。
「・・・僕らが戦いをやめた事で、A・A・Mの幹部達は生き残った人々からの報復を恐れ、逃げた。それが、奴ら。」
強い憎しみにユーガの顔が歪む。
「マサカー・・・!!」
「僕らは奴ら、マサカーの行方を追っていた。そして、さっきの場所”赤の教会”を根城にしている事を突き止めたんだ。生き残った、四人の幹部達がね。」
その言葉にユーガが訊ねる。
「四人の幹部だと?」
「ああ、側近のヘラルドを筆頭にジェイミー、リチャード。そして、A・A・M幹部の紅一点。彼女の名は・・・」
帰って来たジェイミーの胸ぐらを掴むと、リチャードは思い切り殴り飛ばした。
「てめぇ!!どこ行ってやがった!!」
壁に背中を打ち付けられたジェイミーは、殴られた頬をさすりながら立ち上がる。
「・・・野暮用だ。」
「野暮用だと!!?ふざけるなァ!!てめぇが、てめぇがここに残ってりゃなぁ・・・!!」
その時、教会の扉が開く。
「全く。相変わらず五月蝿いねぇ、君達。」
響き渡る声に、リチャードは口を止める。ジェイミーは、その声の主を見ると笑った。
「おや、長い間姿を眩ませていたと思ったら、お姫様がご帰還なされたか。」
「・・・お前・・・今までどこで何してやがった!」
リチャードとジェイミーの言葉に、声の主は答える。
「良いものを持って来たよ。主君の遺産をね。」
リチャードとジェイミー、二人の後方からヘラルドが口を挟む。
「ほう、やっと見つかったか。ご苦労だったな。」
「フフッ。」
声の主、その女は小さく笑った。
ケンジは震える声でその名を紡ぐ。
「彼女の名は・・・ルナ。」
次回第18話「月華の黒薔薇」
赤の教会、その地下。無数のケーブルを繋がれ、ユーガは横たわっていた。そのケーブルの行き着く先、コンピュータを操作するヘラルドは興奮気味に口を開く。
「早く・・・早く見せるんだ・・・!」
その背後から見守るリチャードも思わず息を飲む。
コンピュータに解析率が表示される。その数値は、みるみる内に上昇し、とうとうその記憶の全貌を明らかにしようとしていた。
しかし。
「な、なんだ!?」
突然の警告音。コンピュータの解析が停止し、数値が下がって行く。ヘラルドは困惑と焦りで声を荒げた。
「どういうことだ!!一体何が起こっている!?」
「おい、ヘラルド!こりゃどういう事だ!?」
リチャードが後ろから肩を掴む。ヘラルドはその手を振り払い、コンピュータのパネルを叩いた。
「くっ、何が問題なんだ!!一体何が!!何が我々を阻んでいる!!」
あらゆる入力コードを試すが、その全てがエラー。ヘラルドは横たわるユーガを睨みつけた。
「こやつ、一体何を・・・!!」
その時だった。コンピュータから擦れた音声が響いた。
『残念だったな、マサカーよ。この記憶にはロックを掛けている。君達を王の元へは行かせない。』
その声を聞いたリチャードはハッとする。
「この声は・・・ヨシト!!!」
ヘラルドは爪が食い込み、血が出るほど拳を固め、怒りに身体を震わす。
「そうか・・・ヨシト・・・貴様が・・・!!がぁああああっ!!!」
その拳をコンピュータに叩き付け、ヘラルドは喚いた。
「あと一歩!!!あと一歩だというのに!!ぐうううぅうう!!!」
呆然と立っていたリチャードは、ふとコンピュータの横に転がっていたドリル器具を拾い上げる。
「へっ・・・渡さねぇってのか。俺達を・・・まだ俺達をこんな瓦礫の星に足止めする気か。・・・なら、てめぇにもう用はねぇ!!!」
ふらふらとユーガの身体に近づいたリチャードは、露出しケーブルに繋がれた脳めがけ、ドリルを振りかざした。それを見たヘラルドが叫ぶ。
「やめろリチャード!!まだ方法がある筈だ!!”鍵はこれしか無い”のだぞ!!!」
それを聞いたリチャードは、激昂して叫ぶ。
「うるせぇ!!!何年待ったと思ってる!!!あの日、屈辱の敗北から!!!何年!!!もう沢山だ!!!こんな所に閉じ込められるのはぁぁあ!!!」
振り下ろされる腕。ドリルの先端が迫る。
だが、次の瞬間。響き渡ったのは金属音。
「!!」
砕け散るドリルの先端。輝くは騎士の刃。
「こ、こいつは・・・!!」
そこにはユーガを庇うように剣を構えた、「アライブナイト・ウェイス」の姿があった。
「どういう事だ・・!!何が起こって・・・」
突然の自体に困惑するヘラルド。刹那、ウェイスの姿が消えたと同時にケーブルが飛び散り、切開されていたユーガの頭部が瞬時に治癒する。何かに突き動かされるように目覚めたユーガは、実験台の上に飛び上がった。
《”起動”》
そのぎらつき赤く染まった瞳は、ものを言うことなくリチャードを睨む。
「その目・・・まさか、てめぇは・・!!」
その時、突如として上の教会から轟音が響く。それを聞いたヘラルドは苦い顔をする。
「このタイミングで連中が来るのか・・・!!」
二人の気が上に逸れた瞬間、ユーガはその機を逃さなかった。まるで人間離れした動きで、地上へと続く階段を一気に駆け上がる。
「おい、逃げたぞリチャード!!追え、追うんだ!!」
「クソっ!!」
先端の無くなった器具を投げ捨て、リチャードは走り出した。
既にユーガは地上の教会へと出て来ていた。だが、地に足を着けた瞬間、意識が歪む。
《”過負荷により、休息状態に移行”》
頭の中に響いた電子音声のような何か。訳も分からないまま、ユーガはその場に倒れた。
轟音の正体。それを起こした人物は倒れたユーガの様子を見てハッとする。
「あの倒れ方に、電子音声。彼は・・・捕まったのか。」
ようやく追いついたリチャードが見たものは、ぐったりとしたユーガを抱きかかえ、竜のようなモンスターに乗る少年の姿だった。
「おい、てめぇ!!そいつを返せ!!今はてめぇらの相手をしてる場合じゃねぇんだよ!!」
リチャードの言葉に、少年は毅然とした態度で返す。
「黙れ!!僕らの他にまだASを捕まえていたとは・・・同胞は返してもらう!!」
「待て!!そいつはてめぇらとは違うんだよ!!」
少年は身を任せている竜に命令する。
「ふん!帰るぞ、《アヴァランチ・ドレイク》!この少年の手当をしなくては!」
竜は咆哮を上げ、岩石の翼を広げた。リチャードは叫ぶ。
「畜生がァァ!!ジェイミーの奴は何してやがる!!なんでいねぇんだ!!」
教会の天井を突き破り、竜は大空へと飛び出した。リチャードは膝を折り、呆然と空を見つめる。
「ふ、ふざけるな・・・。俺は、俺達はいつまでここに居ればいい・・・。」
そして、沸き上がる怒りのままポケットから端末を取り出し、勝手に行方を眩ませた仲間に電話を掛けた。
朦朧とする意識の中で、ユーガは声を聞いていた。
「・・・い!」
うっすらと目を開ける。そこは涼しい空気が流れる青空の下。
「おい!君!大丈夫だったかい?奴らに殺されそうだったんだろ?」
ユーガは困惑して訊ねる。
「ここは・・・俺は・・一体・・・」
その声の主、視界に映った少年は笑う。
「大丈夫、僕も君と同じだ。さぁ、手を貸そう。」
その少年の手を取り、ユーガは上体を起こす。ようやく映り込んだ周りの景色に、ユーガは驚く。
「ここは・・・人が・・こんなに・・・!」
そこは瓦礫を利用した小屋が立ち並び、多くの人が生活をする場所。旅の中で一度として、こんな光景は見た事がない。
「驚いたかい?これが僕らの”村”さ。おっと自己紹介が遅れたね。僕はケンジ。君と同じ離反したASさ。」
握手を求め、差し出された手。しかし、ユーガは代わりにその少年、ケンジに訊ねる。
「・・・待ってくれ。離反?AS?何の話だ?」
「君もASなんだろう?そして奴ら”マサカー”から逃げていた。そうじゃないのか?」
ユーガは混乱し、今までの出来事を整理した。
「・・・リチャードとの遭遇と、ジェイミーの裏切り。俺はあの後マサカーに捕まったのか。それで、この少年に助けられた・・・。いや、カケルやリンカはどこだ。ここは一体・・・」
「おい、大丈夫かい?なんだか凄く混乱してるみたいだけど・・・」
心配そうに顔を覗くケンジに対し、ユーガは答える。
「ああ、何が起こったのかよく覚えていないんだ。とにかく俺は、ASというものでも無いし、何かから離反した覚えはない。」
それを聞いたケンジは、怪訝な顔をする。
「そんな。でもあの倒れ方、まるで電源を抜かれた機械のような動き。加えてオーバーロードを伝える電子音声。君は間違いなくASだと思うんだけど・・・。」
「いや、俺はユーガだ。そのASとは何の事だ?」
ユーガの反応を見たケンジは驚いたように言う。
「その感じを見るに、本当に違うみたいだね、ユーガ。・・・ASっていうのは「アドバンス・ソルジャーズ」の略称。つまり尖兵の事だよ。」
「尖兵?何のだ?」
その質問に、ケンジは悲哀の表情を浮かべる。
「『A・A・M(アグレッション・アンド・マサカー)』・・・。この世界の人達がペンデュラム軍と呼ぶ、世界を滅ぼした軍勢の尖兵。それが、僕らASだ。」
「・・・なんだと。」
小屋の横に設置されたベッドから立ち上がり、ユーガは周りを見渡した。
「ここにいる人々全てが、世界を滅ぼしたペンデュラムの手先なのか!?ケンジ、お前も!!」
「手先”だった”だ、ユーガ。君はペンデュラムに深い憎しみを持ってるんだね。・・・当然だと思う。僕の知ってる事は全て話すよ。」
ユーガはケンジの目を見つめる。そして、落ち着きを取り戻すと、再びベッドに腰を降ろした。それを確認し、ケンジは口を開く。
「僕らASは特殊な改造を施された人間なんだ。いわばデュエルのためのサイボーグのようなものさ。きっと僕らは身寄りの無い孤児や奴隷のような存在だったんだろう。」
「きっと、とはどういうことだ?」
自分の頭をさすりながら、ケンジは言う。
「無いんだ、記憶が。ASに改造される前の。きっと消されたんだ、邪魔だったろうから。・・・気付けば僕らはA・A・Mの為に前線で戦っていた。その意味も分からず、ただ、無感情のままにデュエルで圧倒し続け、多くの人々を・・・殺して来た。」
その言葉に、ユーガは終戦直後の惨状を思い出す。
「ああ。そうだな。」
ユーガから目を逸らしながらも、ケンジは言葉を続けた。
「けれど、僕らは自分のしている事に違和感を覚え始めた。これが、本当に正しい事なのか。そして僕らは段々と感情を取り戻していったんだ。ちょうど、その時だった。A・A・Mのリーダー”破壊の王”が倒されたという情報が入ったのは。」
「破壊の、王?」
ケンジは答える。
「A・A・Mを設立し、あらゆる世界を滅ぼして来たと言われてる、最凶最悪の人物。それが”破壊の王”さ。A・A・Mの幹部達は破壊の王を信奉していた。でも、戦争の最中、その破壊の王は誰かに討ち取られた。それはA・A・Mにとって絶対的な敗北を意味する。僕らはそれを機に、反旗を翻した。破壊を止め、デュエルを止めた。もう嫌だった。これ以上、罪の無い人々を傷つけるのは。」
「・・・だが、世界の崩壊はもうすでに止められなかった。」
ユーガの突きつける現実に、ケンジは力なく頷くしかなかった。
「・・・僕らが戦いをやめた事で、A・A・Mの幹部達は生き残った人々からの報復を恐れ、逃げた。それが、奴ら。」
強い憎しみにユーガの顔が歪む。
「マサカー・・・!!」
「僕らは奴ら、マサカーの行方を追っていた。そして、さっきの場所”赤の教会”を根城にしている事を突き止めたんだ。生き残った、四人の幹部達がね。」
その言葉にユーガが訊ねる。
「四人の幹部だと?」
「ああ、側近のヘラルドを筆頭にジェイミー、リチャード。そして、A・A・M幹部の紅一点。彼女の名は・・・」
帰って来たジェイミーの胸ぐらを掴むと、リチャードは思い切り殴り飛ばした。
「てめぇ!!どこ行ってやがった!!」
壁に背中を打ち付けられたジェイミーは、殴られた頬をさすりながら立ち上がる。
「・・・野暮用だ。」
「野暮用だと!!?ふざけるなァ!!てめぇが、てめぇがここに残ってりゃなぁ・・・!!」
その時、教会の扉が開く。
「全く。相変わらず五月蝿いねぇ、君達。」
響き渡る声に、リチャードは口を止める。ジェイミーは、その声の主を見ると笑った。
「おや、長い間姿を眩ませていたと思ったら、お姫様がご帰還なされたか。」
「・・・お前・・・今までどこで何してやがった!」
リチャードとジェイミーの言葉に、声の主は答える。
「良いものを持って来たよ。主君の遺産をね。」
リチャードとジェイミー、二人の後方からヘラルドが口を挟む。
「ほう、やっと見つかったか。ご苦労だったな。」
「フフッ。」
声の主、その女は小さく笑った。
ケンジは震える声でその名を紡ぐ。
「彼女の名は・・・ルナ。」
次回第18話「月華の黒薔薇」
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ケンジが明かすASの正体や敵の背景など、世界の良いおさらいになりました。失われた記憶も気になりますね。
そして最後の最後に出た女幹部、次回タイトルからして早速何かをやらかしそう。 (2016-05-26 04:00)
実は4話の吹き飛ばされたのに無傷なユーガも、普通の人間ではないという伏線だったりします。敵がどういう存在だったのか徐々に明らかになってきましたが、残った謎もあります。その謎も追々分かってくると思います。
次回、謎の女幹部の使うカテゴリはやはりアレなのでしょうか。お楽しみに。
(2016-05-26 06:02)