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1-1 運命かそれとも選択か 作:霧雨
運命などというものを信じてはいなかった。ゲームだって同じだ。自ら選択し、そして勝つ。それだけだ。俺はずっとそうやって生きてきた。いつしか身に付けていた生きるすべに運任せなど存在しない。神に頼むなら自分に頼む、当然のことだ。
そんな俺にかかってきた運命的な電話に、どう反応すればよかったのかはわからない。
「新峠 遊くんだね。俺はWanted Hunterの者だ。君をスカウトしたい」
普通に考えたら、こんな不審な電話などそうそうない。それも非通知で掛けてきたのならなおさらだ。住所と連絡先を告げ、明日の午後6時に来いと言い放ち、最後に篝火 昴とだけ名乗ったその男は、それ以上語ることなくいやにあっさりと電話を切った。
そして次の日。
・・・結論から言おう。来ていた。
少しわかりにくかったか。正確に言おう。Wanted Hunterらしき建物の前に、来ていた。我ながらのこのこやってきたものだ。
はっきり言って緊張している。俺は人見知りだ。赤の他人の目を見て話すこともままならない。それだって俺がゲームで生きていこうと決めた一つの理由だ。
目の前にあるその建物が、きっとWanted Hunterの事務所か何かなのだろう。
まあ実をいうとカードショップにしか見えないわけだが、実態の掴めないものはそういう正体の隠し方をしててもなんら不思議ではあるまい。
「・・・俺の見立てでは、面白いことが待っているだろう」
この物語が始まって最初の主人公の一言がこれというのもどうかと思うが、とりあえず予防線にもならないことを呟いて気持ちを落ち着かせた。よし、これなら入れる。
俺にしては威勢よく開けた扉の先に待っていたのは、あまり面白くない光景だった。俺と同い年くらいの二人組が、何やら店主らしき人に怒鳴っていた。
「この野郎!俺たちがハンターに入れないってのか!」
「この山口兄弟の実力を思い知らせてやってもいいんだぞ、てめえ!」
ふむ、この双子みたいな二人は山口というらしい。なんかインセクター羽蛾みたいな髪型してるな、どっちも。てかインセクター羽蛾って誰だよ。
がなり立てるその姿は小物にしか見えないが、その腕には遊戯王の世界を実体化させるというデュエルディスクを付けていた。まあ、空港から帰る最中にすれ違った人も半分くらいは付けてて、乗る飛行機を間違えたのかと思ってしまったわけだが。
とりあえず、この二人は邪魔だった。
「申し訳ないがどいてくれないか」
「なんだ、てめえ!」
兄らしき人が叫ぶ。
「俺は篝火 昴という男に呼ばれてここに来たんだ。新峠 遊と言う」
「なんだとぉ・・!?お前、ハンターにスカウトされたわけじゃねえだろうな!?」
「そのようだな」
「何ぃ、上等だ!ハンターになりたいと先に思ったのは俺たちだぞ!こうなったらデュエルで決着をつけようじゃないか!」
だから俺は遊戯王のルールは知らないしカードも持っていない。デュエルディスクを持っていないのだから察してくれ。すると、さっきまで黙っていた店主風の男が、
「ははは、彼は遊戯王は初心者だよ。まだ触れてもいない。アメリカではチェスばかりやっていたみたいだからね」
「な、なんだとぉ・・!?」
チェスばかりというわけでもないが、なるほど。やはりこの男が俺を呼んだ篝火 昴か。
「あんたが篝火 昴か」
「うむ、言葉遣いは合格だな。他でもない、俺が君をハンターにスカウトしたよ」
この言葉遣いのどこが合格だ。自分でいうのも馬鹿馬鹿しいが。
「Wanted Hunter代表の篝火 昴だ。君にこのカードを託そう。これがあれば、君はいずれ世界一のデュエリストになるだろう。もちろん、これがなくても君の才能は一流だ。しかしこれがあれば更に、より一層上へと駆け上がれるだろう。一週間だ。一週間で君だけのデッキを作り上げてくれ。本来ならここで資金をあげるところだが・・・君には必要ないだろう?」
「ああ、金ならある。出世払いするまでもない」
「よく言った。ハンターになってくれるということで、いいかな?」
いくらなんでも話が早すぎるが、まあアルバイトの面接だってこれくらい早く決まるもんだし、あまり驚いてはいない。望み通りの展開だった。
「ちょっと待ったぁ!俺たちを忘れるな!一週間って言ったな?ど素人め、作れるものなら作ってみろ!そして俺たちと戦え!もし俺たちが勝ったら、ハンターになるのは俺たちだからな!いいよな、篝火さん!!?」
「勝てたら、な」
いや、勝てたらって。まあいいか。最初の腕試しはこの、邪魔口兄弟(・・って言うの?)ということになるわけだな。
一週間か。運命などではない、俺の選択によって俺だけのデッキを作ってやる。この、昴とやらに託されたカードと共にな。
「よろしくな、『バイパー』」
そんな俺にかかってきた運命的な電話に、どう反応すればよかったのかはわからない。
「新峠 遊くんだね。俺はWanted Hunterの者だ。君をスカウトしたい」
普通に考えたら、こんな不審な電話などそうそうない。それも非通知で掛けてきたのならなおさらだ。住所と連絡先を告げ、明日の午後6時に来いと言い放ち、最後に篝火 昴とだけ名乗ったその男は、それ以上語ることなくいやにあっさりと電話を切った。
そして次の日。
・・・結論から言おう。来ていた。
少しわかりにくかったか。正確に言おう。Wanted Hunterらしき建物の前に、来ていた。我ながらのこのこやってきたものだ。
はっきり言って緊張している。俺は人見知りだ。赤の他人の目を見て話すこともままならない。それだって俺がゲームで生きていこうと決めた一つの理由だ。
目の前にあるその建物が、きっとWanted Hunterの事務所か何かなのだろう。
まあ実をいうとカードショップにしか見えないわけだが、実態の掴めないものはそういう正体の隠し方をしててもなんら不思議ではあるまい。
「・・・俺の見立てでは、面白いことが待っているだろう」
この物語が始まって最初の主人公の一言がこれというのもどうかと思うが、とりあえず予防線にもならないことを呟いて気持ちを落ち着かせた。よし、これなら入れる。
俺にしては威勢よく開けた扉の先に待っていたのは、あまり面白くない光景だった。俺と同い年くらいの二人組が、何やら店主らしき人に怒鳴っていた。
「この野郎!俺たちがハンターに入れないってのか!」
「この山口兄弟の実力を思い知らせてやってもいいんだぞ、てめえ!」
ふむ、この双子みたいな二人は山口というらしい。なんかインセクター羽蛾みたいな髪型してるな、どっちも。てかインセクター羽蛾って誰だよ。
がなり立てるその姿は小物にしか見えないが、その腕には遊戯王の世界を実体化させるというデュエルディスクを付けていた。まあ、空港から帰る最中にすれ違った人も半分くらいは付けてて、乗る飛行機を間違えたのかと思ってしまったわけだが。
とりあえず、この二人は邪魔だった。
「申し訳ないがどいてくれないか」
「なんだ、てめえ!」
兄らしき人が叫ぶ。
「俺は篝火 昴という男に呼ばれてここに来たんだ。新峠 遊と言う」
「なんだとぉ・・!?お前、ハンターにスカウトされたわけじゃねえだろうな!?」
「そのようだな」
「何ぃ、上等だ!ハンターになりたいと先に思ったのは俺たちだぞ!こうなったらデュエルで決着をつけようじゃないか!」
だから俺は遊戯王のルールは知らないしカードも持っていない。デュエルディスクを持っていないのだから察してくれ。すると、さっきまで黙っていた店主風の男が、
「ははは、彼は遊戯王は初心者だよ。まだ触れてもいない。アメリカではチェスばかりやっていたみたいだからね」
「な、なんだとぉ・・!?」
チェスばかりというわけでもないが、なるほど。やはりこの男が俺を呼んだ篝火 昴か。
「あんたが篝火 昴か」
「うむ、言葉遣いは合格だな。他でもない、俺が君をハンターにスカウトしたよ」
この言葉遣いのどこが合格だ。自分でいうのも馬鹿馬鹿しいが。
「Wanted Hunter代表の篝火 昴だ。君にこのカードを託そう。これがあれば、君はいずれ世界一のデュエリストになるだろう。もちろん、これがなくても君の才能は一流だ。しかしこれがあれば更に、より一層上へと駆け上がれるだろう。一週間だ。一週間で君だけのデッキを作り上げてくれ。本来ならここで資金をあげるところだが・・・君には必要ないだろう?」
「ああ、金ならある。出世払いするまでもない」
「よく言った。ハンターになってくれるということで、いいかな?」
いくらなんでも話が早すぎるが、まあアルバイトの面接だってこれくらい早く決まるもんだし、あまり驚いてはいない。望み通りの展開だった。
「ちょっと待ったぁ!俺たちを忘れるな!一週間って言ったな?ど素人め、作れるものなら作ってみろ!そして俺たちと戦え!もし俺たちが勝ったら、ハンターになるのは俺たちだからな!いいよな、篝火さん!!?」
「勝てたら、な」
いや、勝てたらって。まあいいか。最初の腕試しはこの、邪魔口兄弟(・・って言うの?)ということになるわけだな。
一週間か。運命などではない、俺の選択によって俺だけのデッキを作ってやる。この、昴とやらに託されたカードと共にな。
「よろしくな、『バイパー』」
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