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第四話・サウンド・マッスル 作:でんでん
「レンタルデッキぃ?」
「そう。私とあなた、ランダムに選んだレンタルデッキでデュエルをし、勝ったほうが要求を通せる。デュエルアカデミア流のいい決着方法でしょ?」
彼女はそう言ってにっこり笑うが、遊李も如月も依然として不安の表情を崩さぬまま、奇っ怪な宣言をはじめた御手洗を物の怪でも見るかのような眼で見つめていた。
「な、なんで俺のランキングの下降条件がデュエルの勝利なんだよ」
「さっき言ったでしょ。私はランキングを乱すやつは絶対に許さない。でもランキングを下げてほしいって要求するような人は初めて。多分、退っ引きならない事情があるんでしょうね
だから、あなたがどうしてもランキングで目立ちたくない、って言うなら、策を講じてあげてもいいわ。もちろん、それを叶えたいなら勝利すること。
でなければ私たちはあなたをランキングを乱す不正分子としてランキングから除外、このことを正式に教師陣へ上告し、場合によっては適正な処分を取らせていただきます」
「しょ……」
「事の重大さがわかったかしら、遊李くん?」
少女のような快活な瞳をしていながら厳しい人間だ、と思いながらも遊李はこれまでの雑なデュエルがこのような形で誰かに迷惑を与えていたのか、と考え心を痛めることとなった。むしろ彼女はデュエルで素晴らしい腕前を見せてくれればそれに免じて何か対策を考えようと言ってくれている。これは温情とも言うべき措置である。デュエルアカデミア基ネオドミノシティ全域に住まう人間は皆、デュエルの強さこそ美、正義と考える向きが少なくはなく、見事なデュエルさえ披露すれば軽犯罪さえ許されるという場合もあるのだ。
とは言え、あのような状況で突然意識をなくし、目が覚めたら本気を出していた、ということが原因でこうなるのは少々理不尽な気もしていた。
「どうするの?」
「お、俺……俺……」
「遊李……無理に受けなくていいよ。ね? 事情があるなら先生に説明して……」
「いいよ。やる。元々手を抜いていた俺が悪い。事情なんか関係ない」
臍を固めて遊李は一歩足を踏み出す。やむにやまれぬ事情があったとはいえ、彼も一デュエリスト、カードと共に生まれカードと共に育ち、カードと共に生きてきた彼は、デュエリストとしての一線を退いても尚その熱意を失うことはなかった。
「よし、御手洗先輩。やりましょう」
「いい心がけ。でも先輩じゃなくていいのよ、私、一年生だから」
「えっ!?」
「改めて自己紹介するわ。私はデュエルランキング12位、御手洗君江。特待生よ。君たちはまだ無所属だろうけど、気に入ったらうちの委員会に来てね!」
デュエルアカデミアでは極力年功序列が廃止され、委員長職以外は一学年でも立候補可能なのである。さらに言えば、試験で優秀な成績を残した人間は希望した委員会、委員職に就ける。気の短い真面目なものは始業式から委員職を始めるような場合もある。
御手洗はそう言って軽く目礼すると、デュエルディスクを胸の前に構えた。今の今まであまりの展開に二人は気づかなかったが、思いの外ボリューム豊かな胸が揺れ、遊李は凝視、如月は膨れる。
御手洗は一旦そのデュエルディスクを収束すると、デュエルディスク付属のタブレットを操作し、デッキを選択しようとしていた。
「さて、レンタルデッキの説明はいらない?」
「タイプは?」
「もちろん、オリジナル・デッキよ。ランダムでね」
レンタルデッキ――カードどころか、デッキそのものを用意するのに困難、あるいは入学試験時のデッキでは猛者の集うデュエルアカデミアで戦えない、という生徒のために学校側が用意したデッキである。当然レンタルカードよりも借用制限が厳しいが、その分手軽に強力なデッキを揃えられる。初心者でも扱える5つの「スタンダード・デッキ」に加え、トップスリーの委員会が独自に構築した「オリジナル・デッキ」6つ、計11のデッキが存在している。情報アドバンテージという部分で不利であるため、それを技術でなんとか乗り越えるという課題はあるものの、概ね生徒にはありがたがられているシステムである。
「じゃ、いっくわよ~! ルーレットスタートッ!」
「キャラ変わってないかあの委員長」
「遊李、やっぱあの子危ないわよ……」
訝しむ二人を余所にルーレットは回り、チーンというタイプライターのような音を立ててデッキが決まった。
「あ、私たちはレンタルデッキの内容全部知ってるから、アドバンテージを考慮してデッキの名前は伏せておくわ。もちろん、あなたもわからないよ」
「別にいいよ。で、どこでデュエルする」
「ふふん、それはねー……もちろんココっ!」
彼女がそう言った途端、委員会の面々が一斉に飛び退き、机の周りから逃げるようにして離れた。机が突然二つに別れたかと思うと、突然に開いた穴へ机が収納されソリットビジョンがつく。
「ええええええ!?」
「トップスリーの委員会室には常備されているシステムよ?」
御手洗はウインクをするとディスプレイに触れて再度展開する。と同時に、遊李のデュエル・ディスクから突然デッキが現れた。接触反応型のカード、即ち触れることのできるソリットビジョンである。空中に投映されるタッチパネルのようなもの、と言えばわかりやすい。
「それじゃあ、はじめますか」
「……わかった。いくぜ、フィールド・オープン……ゲート・セット!」
「「スタンディングデュエル・リ・ブート!!」」
伯浪遊李 手札5 LP4000
御手洗君江 手札5 LP4000
「私が先行ね。ドロー! 手札から、《深海のみなし児》を召喚! そして、《深海のみなし児》に装備魔法、《真空気泡》を装備ッ! 更に永続魔法、《待ち受ける水流》を発動するわ!
自分フィールド上に存在する水属性モンスターはダメージステップ時だけ、攻撃力が800ポイントアップするのよ!」
「水属性デッキ! くそっ、いきなり壁が……」
《深海のみなし児》
効果モンスター
星4/水属性/魔法使い族/攻1800/守 300
(1):1ターンに1度、自分フィールド上に存在する魔法カードを2枚破壊し、発動できる。デッキからレベル2以下の水属性モンスター1体を特殊召喚する。
《真空気泡》
装備魔法
水属性モンスターにのみ装備可能。
(1):装備したモンスターは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない
(2):装備モンスターが破壊される場合、代わりにこのカードを破壊する。
《待ち受ける水流》
永続魔法
(1):1ターンに1度、自分の水属性モンスターが相手ターンに戦闘を行うダメージステップ時、そのモンスターの攻撃力を800アップする
「ふふ。1枚伏せてターンエンド」
「さすがレンタルデッキ。汎用性が高くて厄介だ。
――エクストラ・ゲート、オープン! 俺のターン、ドロー!」
伯浪遊李 手札6 LP4000
御手洗君江 手札2 LP4000
遊李は手札を確認した瞬間、目を見開く。遊李が引き当てたデッキは――
「……俺は《サウンド・マッスル――C》を守備表示で召喚。カードを二枚伏せてターンエンド!」
「【サウンド・マッスル】? ふふ、面白いデッキね」
現れたのは、極めて面妖なモンスターであった。ボディビルダーかと疑われるほどの浅黒い隆起した筋肉を全身に漲らせ、ポージングを取りながら「C」の形をした顔を動かしている。顔には五線譜らしき図が書いてあり、ドに位置するところへ光が灯っていた。
《サウンド・マッスル―C》
効果モンスター
星1/風属性/戦士族/攻600/0
(1):このカードが戦闘で破壊されるとき、自分の墓地に存在する「サウンド・マッスル」と名の付いたモンスターカード1枚をデッキに戻しシャッフルする。
その後、1枚ドローする。
「【サウンド・マッスル】は場持ちが悪いから速攻型のビートダウンに弱い……そして、私が作ったこのデッキは高打点を狙える水属性ビートダウン!」
「遊李のデッキとは相性が悪い、ってこと?」
「そうだ、葵」
「ふっふっふ。私のターンね、ドロー!」
如月は不安な面持ちを崩さぬまま二人を交互に見る。もし、遊李が負ければ即学校に報告。目立たないどころか、学校一の大馬鹿者として嘲笑と侮蔑の対象となる。そればかりか、停学、留年、最悪退学の可能性さえありうるのだ。この勝負、遊李は絶対に負けるわけには行かなかった。
伯浪遊李 手札3 LP4000
御手洗君江 手札3 LP4000
「私は《深海のみなし児》の効果発動ッ! 魔法カード二枚を墓地へ送って、デッキからレベル2以下の水属性モンスターを召喚する!
《真空気泡》《待ち受ける水流》を墓地へ送り、デッキからケミカルモンスター《流れ姫》を召喚!」
「ケミカルモンスター……だと……」
「今、私の手札に二体の魔法使い族モンスターが揃った……」
彼女の言葉に反応した委員たちがざわめき出す。如月は眼を見開き、遊李は眉をひそめて体を構えた。
「《深海のみなし児》をアレロケミカルに指定! 《流れ姫》をケミカルに送り、アレロパシー! 海に沈みし魔術師よ、その力を顕現し世界を鯨波で呑み込め!
パトス召喚!《玉海のヴォジャノーイ》!!」
彼女の宣言に反応し、《深海のみなし児》と《流れ姫》が青白く好き通り光の礫に変化する。その礫が恰も天の川のように連なると、その中をくぐり抜けて、一体のモンスターが君臨した。カエルとも、人間ともつかぬ奇っ怪な顔をしていて、襤褸布のような濡れたローブを身にまとい、口ひげを絶えず痙攣させている。
「《玉海のヴォジャノーイ》は、水属性・魔法使い族が二体でなければ召喚できない。その代わり、強力な効果を持つ!《玉海のヴォジャノーイ》は、1ターンに1度ケミカルモンスター1体を特殊召喚。そのモンスターの攻撃力を、自分と同じものにするのよ!
そして、《サウンド・マッスル――C》を攻撃表示にもできる!」
「な、何っ!?」
《玉海のヴォジャノーイ》
パトスモンスター
星8/水属性/魔法使い族/攻2500/守 800
アレロケミカル+ケミカルモンスター1体
(1):1ターンに1度、ケミカルモンスター1体を特殊召喚できる。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効となり、攻撃力はこのカードの攻撃力と同じ数値になる。
(2):手札を1枚捨てて発動できる。相手フィールド上にいるモンスター1体の表示形式を変更する。
「さあ《玉海のヴォジャノーイ》ッ! 《サウンド・マッスル――C》を攻撃表示にしてっ!
バトル! 《玉海のヴォジャノーイ》で《サウンド・マッスル――C》にアタック! 」
「ぐあっ!」
《玉海のヴォジャノーイ》が放つ紫色の液体がかかり、《サウンド・マッスル――C》の体が溶けて、弾けた。光の粒がフィールドに漂う。
伯浪遊李 手札3 LP4000→2100
「ごめんね、遊李くん。私は本気で戦わせてもらうわ。このダイレクトアタックで終わり、運が悪かったわね。いくら恨んでもかまわないけど、これに懲りたらもう手を抜かないのよ?」
「……」
御手洗の挑発的とも取れる口調に遊李は押し黙ったまま両手をだらんと下げている。御手洗は先程までウキウキしていた表情を崩して顔をしかめ、背筋を正すと指を突き指した。
「――《流れ姫》でダイレクトアタック!!」
「罠発動、《クラシック・ギャラリー》! 墓地から【サウンド・マッスル】1体を特殊召喚し、バトルフェイズを強制終了する!」
「ッ! やるわね!」
《クラシック・ギャラリー》
カウンター罠
相手プレイヤーに直接攻撃されたとき発動できる。墓地に存在するレベル3以下の「サウンド・マッスル」と名のつくモンスター1体を特殊召喚し、バトルフェイズを強制終了する。
「でも、いつまで持つかしら?そんなその場凌ぎ……私の考える限り、この2500二体を倒して4000もあるライフポイントを削るには、五枚以上のカードが必要だけど?」
「……そうかい? じゃあ手札、フィールド、全部のカードを使わせてもらう」
遊李はそう言うと不敵に笑う。デュエルを始める前の、怠惰で、驚きやすく、半ばクレーマーのようだった彼とは明らかに違う威圧的な雰囲気。彼の赤い髪が徐々に逆だっている。
御手洗は心の底から楽しんでいるような笑顔を見せると、カードを一枚伏せてターンエンド、と朗らかに告げた。
「遊李……」
彼の幼馴染である如月葵は、その状態をよく知っていたが、あえて事の顛末を見守るために沈黙を押し通しつつ、いざとなれば駆け寄って誰よりも速く助ける覚悟を固めて体を構えていた。遊李はそんな如月を余所に深呼吸をすると、御手洗君江をデュエリストらしい鋭い瞳で睨み、カードを引いた。
「――俺のターン、ドロー!」
伯浪遊李 手札4 LP1900
御手洗君江 手札2 LP4000
「来たぜ、俺は手札から、《Ⅳ――サウンド・ドミナント》を発動! 自分フィールドに存在する【サウンド・マッスル】よりレベルの4つ高いモンスター1体を、デッキから特殊召喚する! 現れよ、《サウンド・マッスル――G》!」
「ッ!」
《サウンド・マッスル――C》が全身の筋肉を唸らせて声高く吠えると、どこからともなく凄まじい跳躍力を持って、更に巨大で強靭な体格を持つ【サウンド・マッスル】が現れる。
《サウンド・マッスル――G》
効果モンスター
星5/風属性/戦士族/攻2800/0
このカードは「ドミナント」と名前のつく魔法カードの効果以外では特殊召喚できない。
(1):このカードがエンドフェイズ時にフィールド上に存在するとき、強制的に守備表示となる。
(2):このカードが破壊されたときに発動できる。墓地から「サウンド・マッスル」と名のつくモンスター2体を手札に加え、手札に加えたモンスターのうち1体を特殊召喚する。
「更に俺は魔法カード、《Ⅲ―サウンド・サブドミナント》! デッキから《サウンドマッスル―F》を特殊召喚! そしてこれが決め手だ、《コード―Csus4》を発動する!
自分フィールド上にレベル1,レベル4,レベル5の【サウンド・マッスル】が存在するとき、レベル4の【サウンド・マッスル】は、自分フィールド上のモンスターの攻撃力の合計値となる!」
「なんですって!? 2800……600……1600……5000!?」
《Ⅲ―サウンド・サブドミナント》
通常魔法
自分フィールド上に存在する「サウンド・マッスル」1体を選択して発動する。そのカードよりレベルが3つ上の「サウンド・マッスル」1体を、デッキから特殊召喚する。
このカードは1ターンに1度しか使えない
《Ⅳ―サウンド・ドミナント》
通常魔法
自分フィールド上に存在する「サウンド・マッスル」1体を選択して発動する。そのカードよりレベルが4つ上の「サウンド・マッスル」1体を、デッキから特殊召喚する。
このカードは1ターンに1度しか使えない
《コード―Csus4》
速攻魔法
自分フィールド上にレベル1、レベル4,レベル5サウンドマッスルが存在するときのみ発動できる。
レベル4の「サウンド・マッスル」の攻撃力は、自分フィールド上に存在するモンスターの攻撃力の合計値となる。
「さあ、アタックだッ! 《サウンド・マッスル―F》、《玉海のヴォジャノーイ》に攻撃!」
「きゃあッ!」
御手洗君江 手札2 LP4000→1500
「《サウンド・マッスル―G》も《流れ姫》に攻撃だッ!」
「くぅっ!―でも、駄目ね、私のライフポイントは1200、《サウンド・マッスル――C》じゃ足りない!」
御手洗君江 手札2 LP1500→1200
「いやぁ、言ったろ、このターンで終わらせる……。速攻魔法、《倍音筋肉》を発動! 自分フィールド上にいるもっともレベルの低い【サウンド・マッスル】の攻撃力が倍になる!」
「うそッ!? させない、罠カード《大波小波》! 自分の墓地に存在する水属性モンスター1体を除外して直接攻撃を無効にする!」
「無駄だッ、カウンター罠《アクティブ・サイレンサー》! 【サウンド・マッスル】1体を墓地へ送り、相手の罠を無効化する! 《サウンド・マッスル――G》を送るぜ!」
《倍音筋肉》
速攻魔法
自分フィールド上に3体以上「サウンド・マッスル」と名のつくモンスターがいる場合のみ発動できる。
自分フィールド上のもっともレベルの低い「サウンド・マッスル」と名のつくモンスター1体の攻撃力は倍になる。
《大波小波》
通常罠
自分の墓地に存在する水属性モンスター1体を除外し発動できる。相手モンスター1体の直接攻撃を無効にする。
《アクティブ・サイレンサー》
カウンター罠
自分フィールド上に存在する「サウンド・マッスル」と名のつくモンスター1体を墓地へ送り、相手の発動した魔法・罠カードを無効にして破壊する。
「これで終わりだ、ベンチ・ブレス!」
筋肉が肥大化し倍の大きさとなった《サウンド・マッスル――C》の全力の吐息が、御手洗のフィールドに吹き荒れた。カードが舞い、ライフポイントを削る。
「きゃあああああッ」
御手洗君江 手札2 LP1200→0
*
「……素晴らしいデュエルでした。広報委員会副委員長として、デュエル・アカデミア特待生として、また一デュエリストとして、あなたとのデュエルを誇りに思うわ」
「あ、ありがとう」
先程から不安定な彼女が急に厳正な口振りで挨拶をするものだから、遊李は困惑して少々恥ずかしく思いながらも軽く頭を下げる。御手洗は一旦軽い呼吸をすると、続けてこう言った。
「あなたには悪いけど、ランキングの不正変動は出来ない。このルールはずっと変わらないわ」
「な、そんな!?」
「ちょっと御手洗さん! 遊李は勝ったのに!」
遊李と如月から反感を食らった御手洗だが、平然とした雰囲気を保ちつつも、にっこりと笑いかける。
「策を講じる、と言ったの。私達の発表するデュエル・ランキングは、上位のデュエリストを狩ろうとする、自分の名前を利用して不正を行う、などを防ぐためにデュエル・ネーム制を導入しているの。中等部まではなかったけれど」
「え……」
「本当は1学期の中間以降、申請が通った人間から随時ニックネームになるんだけれど……あなたを特例とし、中間までランクは200位固定、その後は無条件でデュエル・ネームを使用させることを宣言するわ」
「ほんとか……ってか、それ、目立たない?」
「ほんと目立つのを気にするのね。大丈夫、中間以降は結構ネーム使用する人も多いのよ。あなたがハイランカーとは……まあ予想されるだろうけど、順位知られないならどうとでも言えるでしょ」
「よ、よかった……」
遊李は心から安堵したようなため息を漏らし、如月もそんな彼を見て微笑む。しかし、そんな二人へだけど、と少し大きな声で呼びかける。
「そのかわり、条件があるわ。絶対飲め、とは言わないけど、うちに協力すると思ってやってちょうだい。これはね、デュエル・ランキングに関わることなの」
「な、なんですか」
「……。あなたの他にも、ランキングを乱している人間がいる。あなたとは違う、正真正銘の不正ランカー。しかも彼は卓越した技術を持っていて、金、カード、地位などをもらって代行デュエルをし、数人のデュエリストのランクを不正に上げる。そういう卑劣な奴が、この学校に紛れ込んでいるのよ」
「不正デュエリスト……でも、それを買う生徒がいるってことは」
「忘れたの? 昔この学校は結構悪い学校だったのよ。いくら厳しくなったとは言え、その名残くらいはあるわ。それでね、そんな不良時代の生き残りとも言える生徒たちは、圧倒的な強さを誇る彼を讃えてこう呼ぶ」
御手洗はデュエル・ディスクを収束させ、デッキをケースにしまう。
「彼の名は―M」
次回予告
遊李「謎のデュエリスト、Mを見つけるように言われた俺だが、あいにくそいつを探る手段はない。
仕方なく、俺は二年、三年も含めた全デュエル・ランキングを見て犯人を探ることに……。
そこで見つけたとあるデュエリスト、なんだか嫌味なガリ勉優等生。一体、Mって誰なんだ? というか、体育館でのあれはなんだったんだ?
次回、遊戯王 HERO S 「第五話・デュエル アカデミア特区校の生徒たち」
スタンディングデュエル、リ・ブート!」
「そう。私とあなた、ランダムに選んだレンタルデッキでデュエルをし、勝ったほうが要求を通せる。デュエルアカデミア流のいい決着方法でしょ?」
彼女はそう言ってにっこり笑うが、遊李も如月も依然として不安の表情を崩さぬまま、奇っ怪な宣言をはじめた御手洗を物の怪でも見るかのような眼で見つめていた。
「な、なんで俺のランキングの下降条件がデュエルの勝利なんだよ」
「さっき言ったでしょ。私はランキングを乱すやつは絶対に許さない。でもランキングを下げてほしいって要求するような人は初めて。多分、退っ引きならない事情があるんでしょうね
だから、あなたがどうしてもランキングで目立ちたくない、って言うなら、策を講じてあげてもいいわ。もちろん、それを叶えたいなら勝利すること。
でなければ私たちはあなたをランキングを乱す不正分子としてランキングから除外、このことを正式に教師陣へ上告し、場合によっては適正な処分を取らせていただきます」
「しょ……」
「事の重大さがわかったかしら、遊李くん?」
少女のような快活な瞳をしていながら厳しい人間だ、と思いながらも遊李はこれまでの雑なデュエルがこのような形で誰かに迷惑を与えていたのか、と考え心を痛めることとなった。むしろ彼女はデュエルで素晴らしい腕前を見せてくれればそれに免じて何か対策を考えようと言ってくれている。これは温情とも言うべき措置である。デュエルアカデミア基ネオドミノシティ全域に住まう人間は皆、デュエルの強さこそ美、正義と考える向きが少なくはなく、見事なデュエルさえ披露すれば軽犯罪さえ許されるという場合もあるのだ。
とは言え、あのような状況で突然意識をなくし、目が覚めたら本気を出していた、ということが原因でこうなるのは少々理不尽な気もしていた。
「どうするの?」
「お、俺……俺……」
「遊李……無理に受けなくていいよ。ね? 事情があるなら先生に説明して……」
「いいよ。やる。元々手を抜いていた俺が悪い。事情なんか関係ない」
臍を固めて遊李は一歩足を踏み出す。やむにやまれぬ事情があったとはいえ、彼も一デュエリスト、カードと共に生まれカードと共に育ち、カードと共に生きてきた彼は、デュエリストとしての一線を退いても尚その熱意を失うことはなかった。
「よし、御手洗先輩。やりましょう」
「いい心がけ。でも先輩じゃなくていいのよ、私、一年生だから」
「えっ!?」
「改めて自己紹介するわ。私はデュエルランキング12位、御手洗君江。特待生よ。君たちはまだ無所属だろうけど、気に入ったらうちの委員会に来てね!」
デュエルアカデミアでは極力年功序列が廃止され、委員長職以外は一学年でも立候補可能なのである。さらに言えば、試験で優秀な成績を残した人間は希望した委員会、委員職に就ける。気の短い真面目なものは始業式から委員職を始めるような場合もある。
御手洗はそう言って軽く目礼すると、デュエルディスクを胸の前に構えた。今の今まであまりの展開に二人は気づかなかったが、思いの外ボリューム豊かな胸が揺れ、遊李は凝視、如月は膨れる。
御手洗は一旦そのデュエルディスクを収束すると、デュエルディスク付属のタブレットを操作し、デッキを選択しようとしていた。
「さて、レンタルデッキの説明はいらない?」
「タイプは?」
「もちろん、オリジナル・デッキよ。ランダムでね」
レンタルデッキ――カードどころか、デッキそのものを用意するのに困難、あるいは入学試験時のデッキでは猛者の集うデュエルアカデミアで戦えない、という生徒のために学校側が用意したデッキである。当然レンタルカードよりも借用制限が厳しいが、その分手軽に強力なデッキを揃えられる。初心者でも扱える5つの「スタンダード・デッキ」に加え、トップスリーの委員会が独自に構築した「オリジナル・デッキ」6つ、計11のデッキが存在している。情報アドバンテージという部分で不利であるため、それを技術でなんとか乗り越えるという課題はあるものの、概ね生徒にはありがたがられているシステムである。
「じゃ、いっくわよ~! ルーレットスタートッ!」
「キャラ変わってないかあの委員長」
「遊李、やっぱあの子危ないわよ……」
訝しむ二人を余所にルーレットは回り、チーンというタイプライターのような音を立ててデッキが決まった。
「あ、私たちはレンタルデッキの内容全部知ってるから、アドバンテージを考慮してデッキの名前は伏せておくわ。もちろん、あなたもわからないよ」
「別にいいよ。で、どこでデュエルする」
「ふふん、それはねー……もちろんココっ!」
彼女がそう言った途端、委員会の面々が一斉に飛び退き、机の周りから逃げるようにして離れた。机が突然二つに別れたかと思うと、突然に開いた穴へ机が収納されソリットビジョンがつく。
「ええええええ!?」
「トップスリーの委員会室には常備されているシステムよ?」
御手洗はウインクをするとディスプレイに触れて再度展開する。と同時に、遊李のデュエル・ディスクから突然デッキが現れた。接触反応型のカード、即ち触れることのできるソリットビジョンである。空中に投映されるタッチパネルのようなもの、と言えばわかりやすい。
「それじゃあ、はじめますか」
「……わかった。いくぜ、フィールド・オープン……ゲート・セット!」
「「スタンディングデュエル・リ・ブート!!」」
伯浪遊李 手札5 LP4000
御手洗君江 手札5 LP4000
「私が先行ね。ドロー! 手札から、《深海のみなし児》を召喚! そして、《深海のみなし児》に装備魔法、《真空気泡》を装備ッ! 更に永続魔法、《待ち受ける水流》を発動するわ!
自分フィールド上に存在する水属性モンスターはダメージステップ時だけ、攻撃力が800ポイントアップするのよ!」
「水属性デッキ! くそっ、いきなり壁が……」
《深海のみなし児》
効果モンスター
星4/水属性/魔法使い族/攻1800/守 300
(1):1ターンに1度、自分フィールド上に存在する魔法カードを2枚破壊し、発動できる。デッキからレベル2以下の水属性モンスター1体を特殊召喚する。
《真空気泡》
装備魔法
水属性モンスターにのみ装備可能。
(1):装備したモンスターは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない
(2):装備モンスターが破壊される場合、代わりにこのカードを破壊する。
《待ち受ける水流》
永続魔法
(1):1ターンに1度、自分の水属性モンスターが相手ターンに戦闘を行うダメージステップ時、そのモンスターの攻撃力を800アップする
「ふふ。1枚伏せてターンエンド」
「さすがレンタルデッキ。汎用性が高くて厄介だ。
――エクストラ・ゲート、オープン! 俺のターン、ドロー!」
伯浪遊李 手札6 LP4000
御手洗君江 手札2 LP4000
遊李は手札を確認した瞬間、目を見開く。遊李が引き当てたデッキは――
「……俺は《サウンド・マッスル――C》を守備表示で召喚。カードを二枚伏せてターンエンド!」
「【サウンド・マッスル】? ふふ、面白いデッキね」
現れたのは、極めて面妖なモンスターであった。ボディビルダーかと疑われるほどの浅黒い隆起した筋肉を全身に漲らせ、ポージングを取りながら「C」の形をした顔を動かしている。顔には五線譜らしき図が書いてあり、ドに位置するところへ光が灯っていた。
《サウンド・マッスル―C》
効果モンスター
星1/風属性/戦士族/攻600/0
(1):このカードが戦闘で破壊されるとき、自分の墓地に存在する「サウンド・マッスル」と名の付いたモンスターカード1枚をデッキに戻しシャッフルする。
その後、1枚ドローする。
「【サウンド・マッスル】は場持ちが悪いから速攻型のビートダウンに弱い……そして、私が作ったこのデッキは高打点を狙える水属性ビートダウン!」
「遊李のデッキとは相性が悪い、ってこと?」
「そうだ、葵」
「ふっふっふ。私のターンね、ドロー!」
如月は不安な面持ちを崩さぬまま二人を交互に見る。もし、遊李が負ければ即学校に報告。目立たないどころか、学校一の大馬鹿者として嘲笑と侮蔑の対象となる。そればかりか、停学、留年、最悪退学の可能性さえありうるのだ。この勝負、遊李は絶対に負けるわけには行かなかった。
伯浪遊李 手札3 LP4000
御手洗君江 手札3 LP4000
「私は《深海のみなし児》の効果発動ッ! 魔法カード二枚を墓地へ送って、デッキからレベル2以下の水属性モンスターを召喚する!
《真空気泡》《待ち受ける水流》を墓地へ送り、デッキからケミカルモンスター《流れ姫》を召喚!」
「ケミカルモンスター……だと……」
「今、私の手札に二体の魔法使い族モンスターが揃った……」
彼女の言葉に反応した委員たちがざわめき出す。如月は眼を見開き、遊李は眉をひそめて体を構えた。
「《深海のみなし児》をアレロケミカルに指定! 《流れ姫》をケミカルに送り、アレロパシー! 海に沈みし魔術師よ、その力を顕現し世界を鯨波で呑み込め!
パトス召喚!《玉海のヴォジャノーイ》!!」
彼女の宣言に反応し、《深海のみなし児》と《流れ姫》が青白く好き通り光の礫に変化する。その礫が恰も天の川のように連なると、その中をくぐり抜けて、一体のモンスターが君臨した。カエルとも、人間ともつかぬ奇っ怪な顔をしていて、襤褸布のような濡れたローブを身にまとい、口ひげを絶えず痙攣させている。
「《玉海のヴォジャノーイ》は、水属性・魔法使い族が二体でなければ召喚できない。その代わり、強力な効果を持つ!《玉海のヴォジャノーイ》は、1ターンに1度ケミカルモンスター1体を特殊召喚。そのモンスターの攻撃力を、自分と同じものにするのよ!
そして、《サウンド・マッスル――C》を攻撃表示にもできる!」
「な、何っ!?」
《玉海のヴォジャノーイ》
パトスモンスター
星8/水属性/魔法使い族/攻2500/守 800
アレロケミカル+ケミカルモンスター1体
(1):1ターンに1度、ケミカルモンスター1体を特殊召喚できる。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効となり、攻撃力はこのカードの攻撃力と同じ数値になる。
(2):手札を1枚捨てて発動できる。相手フィールド上にいるモンスター1体の表示形式を変更する。
「さあ《玉海のヴォジャノーイ》ッ! 《サウンド・マッスル――C》を攻撃表示にしてっ!
バトル! 《玉海のヴォジャノーイ》で《サウンド・マッスル――C》にアタック! 」
「ぐあっ!」
《玉海のヴォジャノーイ》が放つ紫色の液体がかかり、《サウンド・マッスル――C》の体が溶けて、弾けた。光の粒がフィールドに漂う。
伯浪遊李 手札3 LP4000→2100
「ごめんね、遊李くん。私は本気で戦わせてもらうわ。このダイレクトアタックで終わり、運が悪かったわね。いくら恨んでもかまわないけど、これに懲りたらもう手を抜かないのよ?」
「……」
御手洗の挑発的とも取れる口調に遊李は押し黙ったまま両手をだらんと下げている。御手洗は先程までウキウキしていた表情を崩して顔をしかめ、背筋を正すと指を突き指した。
「――《流れ姫》でダイレクトアタック!!」
「罠発動、《クラシック・ギャラリー》! 墓地から【サウンド・マッスル】1体を特殊召喚し、バトルフェイズを強制終了する!」
「ッ! やるわね!」
《クラシック・ギャラリー》
カウンター罠
相手プレイヤーに直接攻撃されたとき発動できる。墓地に存在するレベル3以下の「サウンド・マッスル」と名のつくモンスター1体を特殊召喚し、バトルフェイズを強制終了する。
「でも、いつまで持つかしら?そんなその場凌ぎ……私の考える限り、この2500二体を倒して4000もあるライフポイントを削るには、五枚以上のカードが必要だけど?」
「……そうかい? じゃあ手札、フィールド、全部のカードを使わせてもらう」
遊李はそう言うと不敵に笑う。デュエルを始める前の、怠惰で、驚きやすく、半ばクレーマーのようだった彼とは明らかに違う威圧的な雰囲気。彼の赤い髪が徐々に逆だっている。
御手洗は心の底から楽しんでいるような笑顔を見せると、カードを一枚伏せてターンエンド、と朗らかに告げた。
「遊李……」
彼の幼馴染である如月葵は、その状態をよく知っていたが、あえて事の顛末を見守るために沈黙を押し通しつつ、いざとなれば駆け寄って誰よりも速く助ける覚悟を固めて体を構えていた。遊李はそんな如月を余所に深呼吸をすると、御手洗君江をデュエリストらしい鋭い瞳で睨み、カードを引いた。
「――俺のターン、ドロー!」
伯浪遊李 手札4 LP1900
御手洗君江 手札2 LP4000
「来たぜ、俺は手札から、《Ⅳ――サウンド・ドミナント》を発動! 自分フィールドに存在する【サウンド・マッスル】よりレベルの4つ高いモンスター1体を、デッキから特殊召喚する! 現れよ、《サウンド・マッスル――G》!」
「ッ!」
《サウンド・マッスル――C》が全身の筋肉を唸らせて声高く吠えると、どこからともなく凄まじい跳躍力を持って、更に巨大で強靭な体格を持つ【サウンド・マッスル】が現れる。
《サウンド・マッスル――G》
効果モンスター
星5/風属性/戦士族/攻2800/0
このカードは「ドミナント」と名前のつく魔法カードの効果以外では特殊召喚できない。
(1):このカードがエンドフェイズ時にフィールド上に存在するとき、強制的に守備表示となる。
(2):このカードが破壊されたときに発動できる。墓地から「サウンド・マッスル」と名のつくモンスター2体を手札に加え、手札に加えたモンスターのうち1体を特殊召喚する。
「更に俺は魔法カード、《Ⅲ―サウンド・サブドミナント》! デッキから《サウンドマッスル―F》を特殊召喚! そしてこれが決め手だ、《コード―Csus4》を発動する!
自分フィールド上にレベル1,レベル4,レベル5の【サウンド・マッスル】が存在するとき、レベル4の【サウンド・マッスル】は、自分フィールド上のモンスターの攻撃力の合計値となる!」
「なんですって!? 2800……600……1600……5000!?」
《Ⅲ―サウンド・サブドミナント》
通常魔法
自分フィールド上に存在する「サウンド・マッスル」1体を選択して発動する。そのカードよりレベルが3つ上の「サウンド・マッスル」1体を、デッキから特殊召喚する。
このカードは1ターンに1度しか使えない
《Ⅳ―サウンド・ドミナント》
通常魔法
自分フィールド上に存在する「サウンド・マッスル」1体を選択して発動する。そのカードよりレベルが4つ上の「サウンド・マッスル」1体を、デッキから特殊召喚する。
このカードは1ターンに1度しか使えない
《コード―Csus4》
速攻魔法
自分フィールド上にレベル1、レベル4,レベル5サウンドマッスルが存在するときのみ発動できる。
レベル4の「サウンド・マッスル」の攻撃力は、自分フィールド上に存在するモンスターの攻撃力の合計値となる。
「さあ、アタックだッ! 《サウンド・マッスル―F》、《玉海のヴォジャノーイ》に攻撃!」
「きゃあッ!」
御手洗君江 手札2 LP4000→1500
「《サウンド・マッスル―G》も《流れ姫》に攻撃だッ!」
「くぅっ!―でも、駄目ね、私のライフポイントは1200、《サウンド・マッスル――C》じゃ足りない!」
御手洗君江 手札2 LP1500→1200
「いやぁ、言ったろ、このターンで終わらせる……。速攻魔法、《倍音筋肉》を発動! 自分フィールド上にいるもっともレベルの低い【サウンド・マッスル】の攻撃力が倍になる!」
「うそッ!? させない、罠カード《大波小波》! 自分の墓地に存在する水属性モンスター1体を除外して直接攻撃を無効にする!」
「無駄だッ、カウンター罠《アクティブ・サイレンサー》! 【サウンド・マッスル】1体を墓地へ送り、相手の罠を無効化する! 《サウンド・マッスル――G》を送るぜ!」
《倍音筋肉》
速攻魔法
自分フィールド上に3体以上「サウンド・マッスル」と名のつくモンスターがいる場合のみ発動できる。
自分フィールド上のもっともレベルの低い「サウンド・マッスル」と名のつくモンスター1体の攻撃力は倍になる。
《大波小波》
通常罠
自分の墓地に存在する水属性モンスター1体を除外し発動できる。相手モンスター1体の直接攻撃を無効にする。
《アクティブ・サイレンサー》
カウンター罠
自分フィールド上に存在する「サウンド・マッスル」と名のつくモンスター1体を墓地へ送り、相手の発動した魔法・罠カードを無効にして破壊する。
「これで終わりだ、ベンチ・ブレス!」
筋肉が肥大化し倍の大きさとなった《サウンド・マッスル――C》の全力の吐息が、御手洗のフィールドに吹き荒れた。カードが舞い、ライフポイントを削る。
「きゃあああああッ」
御手洗君江 手札2 LP1200→0
*
「……素晴らしいデュエルでした。広報委員会副委員長として、デュエル・アカデミア特待生として、また一デュエリストとして、あなたとのデュエルを誇りに思うわ」
「あ、ありがとう」
先程から不安定な彼女が急に厳正な口振りで挨拶をするものだから、遊李は困惑して少々恥ずかしく思いながらも軽く頭を下げる。御手洗は一旦軽い呼吸をすると、続けてこう言った。
「あなたには悪いけど、ランキングの不正変動は出来ない。このルールはずっと変わらないわ」
「な、そんな!?」
「ちょっと御手洗さん! 遊李は勝ったのに!」
遊李と如月から反感を食らった御手洗だが、平然とした雰囲気を保ちつつも、にっこりと笑いかける。
「策を講じる、と言ったの。私達の発表するデュエル・ランキングは、上位のデュエリストを狩ろうとする、自分の名前を利用して不正を行う、などを防ぐためにデュエル・ネーム制を導入しているの。中等部まではなかったけれど」
「え……」
「本当は1学期の中間以降、申請が通った人間から随時ニックネームになるんだけれど……あなたを特例とし、中間までランクは200位固定、その後は無条件でデュエル・ネームを使用させることを宣言するわ」
「ほんとか……ってか、それ、目立たない?」
「ほんと目立つのを気にするのね。大丈夫、中間以降は結構ネーム使用する人も多いのよ。あなたがハイランカーとは……まあ予想されるだろうけど、順位知られないならどうとでも言えるでしょ」
「よ、よかった……」
遊李は心から安堵したようなため息を漏らし、如月もそんな彼を見て微笑む。しかし、そんな二人へだけど、と少し大きな声で呼びかける。
「そのかわり、条件があるわ。絶対飲め、とは言わないけど、うちに協力すると思ってやってちょうだい。これはね、デュエル・ランキングに関わることなの」
「な、なんですか」
「……。あなたの他にも、ランキングを乱している人間がいる。あなたとは違う、正真正銘の不正ランカー。しかも彼は卓越した技術を持っていて、金、カード、地位などをもらって代行デュエルをし、数人のデュエリストのランクを不正に上げる。そういう卑劣な奴が、この学校に紛れ込んでいるのよ」
「不正デュエリスト……でも、それを買う生徒がいるってことは」
「忘れたの? 昔この学校は結構悪い学校だったのよ。いくら厳しくなったとは言え、その名残くらいはあるわ。それでね、そんな不良時代の生き残りとも言える生徒たちは、圧倒的な強さを誇る彼を讃えてこう呼ぶ」
御手洗はデュエル・ディスクを収束させ、デッキをケースにしまう。
「彼の名は―M」
次回予告
遊李「謎のデュエリスト、Mを見つけるように言われた俺だが、あいにくそいつを探る手段はない。
仕方なく、俺は二年、三年も含めた全デュエル・ランキングを見て犯人を探ることに……。
そこで見つけたとあるデュエリスト、なんだか嫌味なガリ勉優等生。一体、Mって誰なんだ? というか、体育館でのあれはなんだったんだ?
次回、遊戯王 HERO S 「第五話・デュエル アカデミア特区校の生徒たち」
スタンディングデュエル、リ・ブート!」
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111 | プロローグ 運命の一分 | 760 | 0 | 2017-09-11 | - | |
85 | 第一話 デュエルアカデミアと、伯浪遊李 | 733 | 0 | 2017-09-11 | - | |
85 | 第二話 惑わせ!幻惑の魔術師 | 651 | 0 | 2017-09-12 | - | |
114 | スイッチ召喚・パトス召喚について 1 | 721 | 0 | 2017-09-12 | - | |
94 | 第三話・デュエル・ランキング | 738 | 0 | 2017-09-12 | - | |
129 | 第四話・サウンド・マッスル | 816 | 4 | 2017-09-13 | - | |
165 | 第五話・Mとサイコデュエリスト | 1465 | 2 | 2017-10-09 | - |
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Amazonのアソシエイトとして、管理人は適格販売により収入を得ています。
ひとつ気になったのですが、レベル1=Cの音ならば《メジャー・コード―C》の効果にあるレベル1、レベル4,レベル5という組み合わせではCsus4にならないでしょうか?
《Ⅲ―サウンド・サブドミナント》でデッキから特殊召喚された《サウンドマッスル――E》の存在からレベル4はレベル3だと思うのですが… (2017-09-14 02:18)
アッ!なんてミスを...元々《長調》と名のつく魔法カードがあって、それを元に変幻自在にコードを組むようなデッキにしたかったのですが、どうしても枚数が多くなってしまい、書きながら色々手を加えているうちにこんな馬鹿なミスを...
ご指摘ありがとうございます。ただちに修正いたします。
今後とも遊戯王HEROSをよろしくお願いいたします。では!
(2017-09-14 10:17)
SSを投稿するにあたって、「」を連続していないのに『「」が連続されているので投稿できません。』と表示されることはありませんか?
もしあったらどうすればSSを投稿できるのかを教えて頂けると幸いです。
実際私はその問題の影響で約20日間投稿ができていないので、もしあれば、お願い致します。 (2017-10-03 23:05)
返信が遅くなりまして大変申し訳ございません。
私も最新話投稿にあたりまして同様の症状を確認しましたので、以下に試したことを記録いたします。
①本当に連続している部分がないか
→一箇所発見し修正したが、同様のエラーメッセージが吐き出された。
②「」をすべて削除
→投稿不可。同様のエラーメッセージ
③本文を「あ」にし、投稿。
→成功。
→更に、数行ごとに登校しどの部分が引っかかっているかチェック→一度エラーメッセージが吐き出された後、数度修正しても同様のエラーメッセージが吐き出され投稿できないことを確認
仮説として、一度エラーメッセージが出された後、修正後も同じようなエラーメッセージが出続け投稿不可能になるのでは?
→しかし、敢えて間違った文面で投稿し一度エラーメッセージを出した後修正して再投稿した際は普通に投稿された→ランダムな要素が含まれているか?
④アスタリスクを削除するとエラーに引っかからなくなった
→敢えてアスタリスクを文末に入れて投稿しても出来た。
⑤エラーメッセージのでない、投稿できた文章をコピーして、最新話として投稿
→投稿可能
以上のことから、エラーメッセージが出た原因に関しては文章に問題があると考えられますが、その後エラーを起こし続けるのはシステム側のバグが原因かと思われます。
解決策としては、改めて遂行しエラー原因を完全に削除して投稿し直すか、私と同じように適当な文字列で投稿した後、数行ずつ文章を追加していって、該当箇所を探るのがベストかと思われます。
参考に慣れれば幸いでございます。 (2017-10-09 17:30)