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第1話 出会いは紅葉の中で 作:イベリコ豚丼
青い戦闘服に身を包み、被った帽子を後ろに回す。右手に剣を、左手に盾を、手には篭手、脚には脛当。さぁ今日も戦いへといざ行かん。そう、ここが俺の戦場、デュエルアカデミア イースタン校
……の北校舎裏自転車置場前。
俺は自分の通った道を振り返る。
「フッ…」
そこには赤や黄色の落ち葉がまるで俺を祝福するかのように舞い踊っていた。
いや、今のは嘘だ。
落ち葉は俺を嘲笑うかのように舞い散っていやがった。
「ふざけんじゃねぇぇぇ!!掃いても掃いてもエンドレスで降ってくんじゃねぇか!終わる訳ねぇだろこんなもん!あのクソジジイ、何が「ここ終わったらもう上がっていいよ」だ!端から帰らせる気ゼロじゃねぇかぁ!!!」
夕暮れの秋空に、俺の怒号がこだまする――。
青い作業着に身を包み、被った帽子を後ろに回す。右手に箒を、左手にチリトリを、手には軍手、脚には長靴。デュエルアカデミアに居はしても、俺の仕事はデュエリストじゃない。ただの清掃員だ。
「畜生…、ちょっと時給が良いと思ったらまたブラックバイトかよ…。あぁもう辞めてやる…。今日限りでこんな所ともおさらばだ…。」
文句を言いながらも箒を動かす手は止めない。止めたら帰れないしタダ働きになっちまうからな。
「はぁ…何で俺ばっかこんな目に……ん?」
「俺はモンスターでダイレクトアタック!」
「うわぁぁ!!!」
アカデミアの生徒達がデュエルをしているようだ。
勝った体のゴツイ奴が吹っ飛んだ小さい奴に近付いていく。
「はっはっは!また俺の勝ちだなぁ宗介!」
「さっすが剛田さん!今回も痺れるデュエルでしたよ!」
「マジリスペクトっすよ剛田さん!」
後ろの2人は剛田と呼ばれるあの少年の取り巻きらしい。
「まったく、多田野ごときが剛田さんに勝とうなんて100年早いんだよ!」
「いやいや、100年じゃ足りねぇ、100億光年だ!」
「おいおい野木田に骨山、その辺にしといてやれ。まさかコイツもこの俺に勝とうと思ってデュエルしてたんじゃないだろうからよ!」
「「ハッハッハッハッハッハッハ!!」」
…どうやら普通に友達同士でデュエルをしていた訳では無いみたいだ。どこにでもあるんだなこういうのは。しかし、剛田に野木田に骨山か。
どっかで聞いたことある名前だな。
「いてて……」
「じゃあ宗介、来週も俺達のパシリ頼むぜ。そういう約束だったからなぁ!」
「せっかく剛田さんがパシリを止めるチャンスを与えてくれたのに残念だったなぁ多田野!」
「まったく、こんな心の広い剛田さんの好意をフイにするなんて失礼な野郎だぜ!」
「……うん解ったよ。また明日から全員分僕が買ってくるよ」
「理解が早いじゃねぇか。なぁ宗介、別に俺らはお前をイジメてるんじゃあないんだぜ?いつでも俺はお前のパシリをしてやるよ。ま、お前が俺に勝てればの話だがなぁ!!」
「「アッハッハッハッハ!!」」
そう言って3人は立ち去って行った。
一人残された少年は地面に寝転がってデッキを広げる。
「はぁ…、また勝てなかったなぁ…。今度こそ自信作のはずだったんだけど、一体どこがダメだったんだろ?」
ほぉ…『賢妖精』か。なかなか面白いデッキ使ってるじゃねぇか。
だが……
「おい坊主、その右端の2枚はいらねぇよ。代わりにそっちのカードを2枚入れときな」
「え?」
「それからそいつとそいつは3枚だ。後は…それだな。それは1枚でいい。」
「ちょ、ちょっと待ってください!いったいオジサン誰なんですか!?」
「オジサンじゃねぇ!俺はまだ22歳だ!」
「す、すいません…。」
「それに俺には鶴岐 勇(つるぎ いさみ)っていう格好いい名前があるんだよ」
「はぁ…、じゃあ鶴岐さん。あなたはいったい何物ですか」
「あん?ただの清掃員だよ」
「それは見れば解ります。そういう事ではなくてですね…。えぇと……、何で急に僕に話し掛けて来たんですか?」
「お前あの剛田って奴に勝ちたいんだろ?じゃあ俺が協力してやるよ」
「…怪しいですね。新手の詐欺ですか?僕おばあちゃんに怪しい人とは関わるなって言われてるんです」
「誰が詐欺師だ」
「僕おばあちゃんに鶴岐っていう名字の人には関わるなって言われてるんです」
「どんなおばあちゃんだよ!全国の鶴岐さんに謝れ!」
何なんだ最近の子供は。
これがゆとりか。
「まぁ冗談はさておき、鶴岐さんデュエル詳しいんですか?」
「まぁそれなりにな」
「そうですか…」
そう言って少年は黙り込む。
まだ俺を信用するか決めかねているみたいだ。
俺そんな人相悪いかなぁ…。
「わかりました、じゃあデッキ診断お願いします」
そういってデッキを差し出してくる。
「いいのか?」
「何ですか、やっぱり詐欺師だったんですか?」
「そういうことじゃねぇ。…デッキは決闘者の命だろ。それをそう易々と人に渡すのは…」
「大丈夫です。そろそろ自分一人では限界だったので他の人の意見を聞きたいと思っていたところですし。…それに、そんな事を頼める友達もいませんしね」
「……悪い」
「あはは、気にしないで下さい。それじゃあデッキの再構築、始めましょうか」
「あぁそうだな」
「……後はこれを入れてと、よし完成だ」
「できたぁ!」
少年は嬉しそうに新しいデッキを抱える。
「鶴岐さんありがとうございました!今迄のデッキの中で最高の出来ですよ!」
「まぁこの俺が手伝ったんだから当然だな」
「それじゃあ鶴岐さん、デュエルしましょう!せっかく新しく作ったんですからやっぱり実戦で試さないと!」
「あぁ悪ぃ、俺デュエルはしないんだわ」
俺は即答する。
「え?でも鶴岐さんカードの事あんなに詳しかったじゃないですか」
「昔はやってたんだよ。でも今はもう辞めた」
理由は言わない。
「…………。そうですか、じゃあ仕方ないですね。家で一人で試す事にします」
「…………。」
どうやら察してくれたようだ。
さっきのデッキ構築の時もそうだったが、この少年頭は悪く無いようだ。
ん…、そういえば…
「そういえばまだ名前聞いてなかったな。お前何て言うんだ?」
「僕は多田野 宗介(ただの そうすけ)です。みんなは多田野とか宗介とか…まぁ名前を呼ばれること自体稀ですけどね」
「ちょいちょい悲しい話を差し込んでくるな。じゃあ宗介、今日は遅いからもう帰りな」
「はい、そうします。鶴岐さん、今日は本当にありがとうございました。」
「気にすんな、俺も楽しかったからよ」
「では、―――また明日」
そう言って宗介は走り去って行った。
俺は一人になった校舎裏の地べたに座り込む。
「……『また明日』か」
これでバイト辞めれなくなっちまったじゃねぇか。
……の北校舎裏自転車置場前。
俺は自分の通った道を振り返る。
「フッ…」
そこには赤や黄色の落ち葉がまるで俺を祝福するかのように舞い踊っていた。
いや、今のは嘘だ。
落ち葉は俺を嘲笑うかのように舞い散っていやがった。
「ふざけんじゃねぇぇぇ!!掃いても掃いてもエンドレスで降ってくんじゃねぇか!終わる訳ねぇだろこんなもん!あのクソジジイ、何が「ここ終わったらもう上がっていいよ」だ!端から帰らせる気ゼロじゃねぇかぁ!!!」
夕暮れの秋空に、俺の怒号がこだまする――。
青い作業着に身を包み、被った帽子を後ろに回す。右手に箒を、左手にチリトリを、手には軍手、脚には長靴。デュエルアカデミアに居はしても、俺の仕事はデュエリストじゃない。ただの清掃員だ。
「畜生…、ちょっと時給が良いと思ったらまたブラックバイトかよ…。あぁもう辞めてやる…。今日限りでこんな所ともおさらばだ…。」
文句を言いながらも箒を動かす手は止めない。止めたら帰れないしタダ働きになっちまうからな。
「はぁ…何で俺ばっかこんな目に……ん?」
「俺はモンスターでダイレクトアタック!」
「うわぁぁ!!!」
アカデミアの生徒達がデュエルをしているようだ。
勝った体のゴツイ奴が吹っ飛んだ小さい奴に近付いていく。
「はっはっは!また俺の勝ちだなぁ宗介!」
「さっすが剛田さん!今回も痺れるデュエルでしたよ!」
「マジリスペクトっすよ剛田さん!」
後ろの2人は剛田と呼ばれるあの少年の取り巻きらしい。
「まったく、多田野ごときが剛田さんに勝とうなんて100年早いんだよ!」
「いやいや、100年じゃ足りねぇ、100億光年だ!」
「おいおい野木田に骨山、その辺にしといてやれ。まさかコイツもこの俺に勝とうと思ってデュエルしてたんじゃないだろうからよ!」
「「ハッハッハッハッハッハッハ!!」」
…どうやら普通に友達同士でデュエルをしていた訳では無いみたいだ。どこにでもあるんだなこういうのは。しかし、剛田に野木田に骨山か。
どっかで聞いたことある名前だな。
「いてて……」
「じゃあ宗介、来週も俺達のパシリ頼むぜ。そういう約束だったからなぁ!」
「せっかく剛田さんがパシリを止めるチャンスを与えてくれたのに残念だったなぁ多田野!」
「まったく、こんな心の広い剛田さんの好意をフイにするなんて失礼な野郎だぜ!」
「……うん解ったよ。また明日から全員分僕が買ってくるよ」
「理解が早いじゃねぇか。なぁ宗介、別に俺らはお前をイジメてるんじゃあないんだぜ?いつでも俺はお前のパシリをしてやるよ。ま、お前が俺に勝てればの話だがなぁ!!」
「「アッハッハッハッハ!!」」
そう言って3人は立ち去って行った。
一人残された少年は地面に寝転がってデッキを広げる。
「はぁ…、また勝てなかったなぁ…。今度こそ自信作のはずだったんだけど、一体どこがダメだったんだろ?」
ほぉ…『賢妖精』か。なかなか面白いデッキ使ってるじゃねぇか。
だが……
「おい坊主、その右端の2枚はいらねぇよ。代わりにそっちのカードを2枚入れときな」
「え?」
「それからそいつとそいつは3枚だ。後は…それだな。それは1枚でいい。」
「ちょ、ちょっと待ってください!いったいオジサン誰なんですか!?」
「オジサンじゃねぇ!俺はまだ22歳だ!」
「す、すいません…。」
「それに俺には鶴岐 勇(つるぎ いさみ)っていう格好いい名前があるんだよ」
「はぁ…、じゃあ鶴岐さん。あなたはいったい何物ですか」
「あん?ただの清掃員だよ」
「それは見れば解ります。そういう事ではなくてですね…。えぇと……、何で急に僕に話し掛けて来たんですか?」
「お前あの剛田って奴に勝ちたいんだろ?じゃあ俺が協力してやるよ」
「…怪しいですね。新手の詐欺ですか?僕おばあちゃんに怪しい人とは関わるなって言われてるんです」
「誰が詐欺師だ」
「僕おばあちゃんに鶴岐っていう名字の人には関わるなって言われてるんです」
「どんなおばあちゃんだよ!全国の鶴岐さんに謝れ!」
何なんだ最近の子供は。
これがゆとりか。
「まぁ冗談はさておき、鶴岐さんデュエル詳しいんですか?」
「まぁそれなりにな」
「そうですか…」
そう言って少年は黙り込む。
まだ俺を信用するか決めかねているみたいだ。
俺そんな人相悪いかなぁ…。
「わかりました、じゃあデッキ診断お願いします」
そういってデッキを差し出してくる。
「いいのか?」
「何ですか、やっぱり詐欺師だったんですか?」
「そういうことじゃねぇ。…デッキは決闘者の命だろ。それをそう易々と人に渡すのは…」
「大丈夫です。そろそろ自分一人では限界だったので他の人の意見を聞きたいと思っていたところですし。…それに、そんな事を頼める友達もいませんしね」
「……悪い」
「あはは、気にしないで下さい。それじゃあデッキの再構築、始めましょうか」
「あぁそうだな」
「……後はこれを入れてと、よし完成だ」
「できたぁ!」
少年は嬉しそうに新しいデッキを抱える。
「鶴岐さんありがとうございました!今迄のデッキの中で最高の出来ですよ!」
「まぁこの俺が手伝ったんだから当然だな」
「それじゃあ鶴岐さん、デュエルしましょう!せっかく新しく作ったんですからやっぱり実戦で試さないと!」
「あぁ悪ぃ、俺デュエルはしないんだわ」
俺は即答する。
「え?でも鶴岐さんカードの事あんなに詳しかったじゃないですか」
「昔はやってたんだよ。でも今はもう辞めた」
理由は言わない。
「…………。そうですか、じゃあ仕方ないですね。家で一人で試す事にします」
「…………。」
どうやら察してくれたようだ。
さっきのデッキ構築の時もそうだったが、この少年頭は悪く無いようだ。
ん…、そういえば…
「そういえばまだ名前聞いてなかったな。お前何て言うんだ?」
「僕は多田野 宗介(ただの そうすけ)です。みんなは多田野とか宗介とか…まぁ名前を呼ばれること自体稀ですけどね」
「ちょいちょい悲しい話を差し込んでくるな。じゃあ宗介、今日は遅いからもう帰りな」
「はい、そうします。鶴岐さん、今日は本当にありがとうございました。」
「気にすんな、俺も楽しかったからよ」
「では、―――また明日」
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コメントありがとうございます!
遊戯王の世界ではやっぱりデュエルは盛んですが、色々あってしない人もいるんじゃないかと思いで作りました。
明里姉ちゃんとかしてませんでしたしね。
これから不定期で更新していくことになりますが、どうか温かい目で見守って下さい。 (2016-02-16 18:18)