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八符「見えぬその深さ」 作:ツバサ
3枚の「幻想絆」は、神奈子の墓地に葬られる。
早苗の中では間違いなく次の布石となると予想出来ていたが、それが行われる前にまずは同時に墓地に送られていた「シャドール・ビースト」の効果処理である。
「『シャドール・ビースト』がカード効果によって墓地に送られた場合、私はカードを1枚ドローする。
これで私の手札は5枚・・・それに、こいつも引き当てることができた」
ククッ、とどこか不気味にほくそ笑みながら神奈子は効果を処理する。
やはり「幻想絆」の悪影響を受けているようだ。普段の神奈子ではない。
そして神奈子は、その引き当てたカードを発動する。
「さあ、見せてやるよ・・・私は手札から魔法カード、『夢幻想絆・天命魍魎』を発動させる!!」
「夢幻想絆・・・!?そのようなカード、紫さんが渡したカードの中にはありませんでしたよ!?」
「ほう?だが私もいつの間にか持っていたカードだしねぇ・・・」
「残念だけど早苗、存在している以上は受け入れるしかないよ?」
正体不明の魔法カードを疑いなく受け入れる神奈子と諏訪子・・・それも悪影響がもたらすものなのだろうか・・・。
そしてその効果も驚愕のものであった。
「このカードは自分と相手の墓地に存在する『幻想絆』モンスターを任意の数対象として発動する。
そして、2つの内一つを選択して効果を発動するのさ・・・」
(私の墓地も対象に取れる時点で明らかに恐ろしい効果を秘めていると予想が付きますね・・・)
「1つ目の効果を選択。対象となったモンスターを私の場に特殊召喚し、その数×500ポイントのダメージを私は受ける!!」
苦い表情を浮かべる早苗。ある程度覚悟はしていたが、「ソウル・チャージ」を「幻想絆」限定でコストやデメリットを最小限に発動できると考えればやはりインチキ呼ばわりできるほどの性能である。
そのうえ、これも1つ目の効果・・・つまり、2つ目の効果も選択できると考えるとやはり恐ろしい。
神奈子のモンスターゾーンに黒い渦が3つ出現すると、その中から3体のモンスターが姿を現す。
赤い上着とロングスカートの金髪の少女は紅葉の神、秋静葉。カード名は「幻想絆・静葉」。
黄色い上着、黒いロングスカートにオレンジのエプロンを付けた金髪の少女、静葉の妹で豊穣の神、秋穣子。カード名は「幻想絆・穣子」。
赤を基調としたワンピース、緑髪に赤いリボンを付けた少女は厄神様、鍵山雛。カード名は「幻想絆・雛」。
幻想郷内ではそこまで強力と言える神ではないが、それでも神は神。
その攻撃力は静葉と穣子が2200。雛が2400。言っておくが、いずれもレベル4である。
「・・・それらの神々は、自身以外のモンスターが2体以上存在しない場合、攻撃力を1400として扱うデメリットが備わっている・・・」
「その通り、信仰が無ければ大した力を発揮できないわけだ・・・まあ、今回の場合神様同士で信仰を補っているようなものだがね。
さて、ここで『幻想絆・雛』の永続効果が適用される。
このカード以外のフィールド上のモンスターの攻撃力、守備力は、その厄により300ポイントダウンする・・・味方も例外ではないね」
静葉、穣子、フォース・ストリクスは黒いオーラをその身に受け、攻撃力と守備力がダウンする。
2体の神は1900とまだ下級モンスターの基準ラインを維持しているが、フォース・ストリクスは1700。その光景に早苗は思わず眉をひそめる。
「この状況では私にとってはデメリットでしかないか・・・まあ仕方ないだろう。強大な力にはリスクが付き物だ。
それに、どのみち下級モンスターラインを維持していればダメージとしては十分だ。一気にいかせてもらうよ・・・」
そのままバトルフェイズへと突入する神奈子。静葉、穣子のどちらかでフォース・ストリクスを破壊し、残り2体で直接攻撃を決めれば早苗のライフは一気に半分以下に。ライフアドバンテージが軽視されている現在のデュエルモンスターズとはいえ、これは避けたいところ。
「バトルだ。まずは『幻想絆・静葉』でフォース・ストリクスを攻撃する!!」
「破壊はさせません!リバースカード、オープン!
『RR-レディネス』の効果により、このターン私の場の『RR』は戦闘では破壊されません!」
罠カードの効果を受けたことでフォース・ストリクスは迫りくる秋をイメージした弾幕に即座に対応。
主な弾幕を飛翔して回避しつつ、残る少量の弾は自身の爪で引き裂いて消し去り、その戦闘を凌いだ。
「まあ、先ほどお前が手札に加えたカードだ。この局面で発動させることは当然わかっていたよ。
残り2体が追撃したところで、フォース・ストリクスは破壊できない・・・バトルフェイズは終了し、カードを1枚伏せてターン終了だよ」
手札を3枚としてターンを渡す神奈子。
とりあえずフォース・ストリクスを残しつつ自分のターンを迎えられたのは幸いだ。とはいえ、このままでは3体の神には対抗できない。
「私のターン、ドロー!
ここでフォース・ストリクスの残るオーバーレイユニットを取り除いて効果を発動。再び『RR-バニシング・レイニアス』を手札に加えます・・・」
既に危機的状況。そのうえこれですらまだ本気ではない・・・だとすれば、早苗に出し惜しみをする余裕はない。
神奈子をキッと見据え、手札のカードを自身の陣に叩きつけるように発動させる。
「魔法カードを発動します!『RUM-レイド・フォース』!!
自分フィールドのエクシーズモンスター1体を素材として、ランクが1つ高い『RR』エクシーズモンスターにランクアップさせます!
私はランク4の『RR-フォース・ストリクス』でオーバーレイネットワークを再構築!!」
フォース・ストリクスが再び現れた時空の渦の中へと吸い込まれる。
しばらくその中で混ざり合った後に、渦ごと大爆発を巻き起こす。
「ランクアップ・エクシーズチェンジ!!
来てください、ランク5!『RR-ブレイズ・ファルコン』!!」
そこから新たに出現したのは、紅いボディを得たハヤブサ。
その攻撃力はたったの1000。さらに「幻想絆・雛」の厄をその身に受けたことで700へと減少する。
しかし、このカードの力はその攻撃力に非ず。それを示すかのようにブレイズ・ファルコンの体からいくつもの小さいパーツが浮かび出す。
「ブレイズ・ファルコンのモンスター効果!オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、相手フィールド上の特殊召喚されたモンスターを全て破壊し、その数×500ポイントのダメージを与えます!
神奈子様のモンスターは全て『夢幻想絆・天命魍魎』によって特殊召喚されているため、これで全滅します!」
それらパーツは神奈子のフィールドに群がるように展開すると、1つ1つがレーザーを放ち、「幻想絆」達に襲い掛かる。
いくら攻撃力が高かろうが耐性が無ければ回避することはできない。雛、静葉、穣子はそれらをその身に受け、爆発して消滅。
同時にそれらをコントロールしていた神奈子もその衝撃を受け、思わず腕で顔を覆う。
それでもダメージは受けるため、合計1500のダメージを受け、神奈子は「夢幻想絆・天命魍魎」のコストである1500と合わせて3000のライフを失い、その残りライフは5000となった。
「くっ・・・だが『幻想絆・雛』の効果を忘れたわけではないだろう?
このカードが破壊された場合、相手フィールドのモンスター全ての攻撃力を300ダウンさせる・・・」
ブレイズ・ファルコンが受けていた厄は、消えることなくそのままとどまり、攻撃力を700としたまま。
が、早苗にとっては大した問題ではない。元々低い攻撃力なのだ。たかだか300のダウンでは大差無い。
「ここはこのカードにご登場願います!『幻想絆・椛』を召喚!」
どこからともなく素早く飛び出したのは、白い服に身を包み、獣の耳を生やした白狼天狗、犬走椛。
攻撃力は1200と低いものの、かすり傷なり与えられるくらいの数値ではある。
「『幻想絆・椛』が召喚、特殊召喚に成功したことで、私は神奈子様がセットしたカードを全て確認できます!
さあ、見せてもらいますよ!」
素早く行動に移す椛。神奈子の場にセットされた1枚の伏せカードに近づくと、それを掴んで即座に表にする。
そしてそのまま早苗のフィールドに帰還・・・が、肝心の早苗は決して快いとは言えない表情であった。
なぜならその伏せカードが・・・。
「・・・『くず鉄のかかし』・・・でしたか・・・」
「くず鉄のかかし」・・・攻撃宣言時に相手モンスターの攻撃を1度無効にする通常罠カードだ。
それだけなら「攻撃の無力化」のような敵全体の攻撃を封じるカードの方が強力なのだが、このカードは発動後再びセットできるという他のカードにはほとんど備わっていない特徴がある。
そのため1ターンに1度攻撃を無効にできるという中々に優秀な罠カードなのだが・・・。
「このカードはセットのルールに縛られているからこそ1ターンに1度しか効果を発揮できない。
だが、私の場には『王家の神殿』が発動している・・・つまりだ。
セットした罠カードを1ターンに1度即座に発動可能とするこのカードと組み合わせることで、私は2回の攻撃を防ぐことが可能となるのさ・・・」
相手ターンではほとんどその効果を活かせない「王家の神殿」だが、こうして活かせるカードと組み合わせることでその能力を最大限に引き出している。
いわば、神奈子は自分ターンでは強力な攻めを、相手ターンでは強力な守りを操ることができるということだ。
「・・・このまま攻撃しても、2体の攻撃は止められる・・・私はこのままターンを終了させます」
手札4枚のままターンを終了する早苗。
ライフ差では既に大差をつけているものの、ここからさらに削り取るのは難しいことだろう。
「私のターンだね、ドロー・・・」
カードをドローし、4枚の手札にした神奈子。
・・・そして引いたカードをそのままフィールドにセットする。
「場にカードを1枚伏せる。
そして『王家の神殿』の効果により、伏せたこの罠カードを即座に発動させる。
罠カード、『死なばもろとも』!」
「うっ・・・ここでそのカードを・・・!」
「お互いの手札が3枚以上の場合に発動可能な罠カードだ。
互いに手札を任意の順番で全てデッキの下に戻し、私はこの効果で戻したカードの数×300のライフを失う。
・・・そして、お互いにカードを5枚ドローするのさ。
だがこのままだとライフが少し危ないことになるね・・・そこでこいつだ。
私はこのカードの発動にチェーンして手札から2枚の速攻魔法を発動させる。
『ご隠居の猛毒薬』・・・それが2枚だよ」
ここまで完璧な引きを発揮する辺り、神奈子の引きの強さは相当なものである。
そして早苗もこれらを見て増々表情を曇らせる。
「・・・『ご隠居の猛毒薬』・・・発動時に2つの効果を選んで適用する速攻魔法。
1つの効果は相手に800ダメージを与える効果。そしてもう1つが自分のライフを1200回復する効果・・・」
「その通り。私は最後に発動した方は回復の効果を、最初に発動した方はダメージを与える効果を適用させる。
チェーンの逆順処理だ。まずは2枚目の『ご隠居の猛毒薬』でライフを1200回復。
そして最初の『ご隠居の猛毒薬』でお前に800ダメージを与える」
フィールドに緑の煙と紫の煙が漂い出す。
緑の煙を吸った神奈子はその効果によりライフを6200に回復。
だが紫の煙を吸った早苗は咳き込み、そのライフを7200へと減少させる。
「げほっ・・・そ、そしてそれらのコンボはここからが本領を発揮する・・・!」
「そう、最後に『死なばもろとも』の効果だ。
私の手札は1枚。だがこのカードは発動時に手札がお互いに3枚ずつあればいい。ゆえにその後のチェーンの結果手札を失っても問題は無いのさ・・・」
(神奈子のやつ、相変わらず確実かつ派手にやるねぇ。
2枚のカードをチェーン発動させたことで手札の枚数は減り、デメリットであるライフ減少は2100から1500へと軽減された。
そのうえ、本来戻すはずのカードを使ったうえでドローするわけだから、神奈子が得るアドバンテージも相当なものだ)
諏訪子の分析通り、この場面で神奈子が得るアドバンテージは相当なものである。
神奈子は残った1枚をそのまま下に戻し、早苗は4枚の手札を一応順番を変えつつ下に戻す。
そして神奈子のライフは1500減って4700となった後、お互いにカードを5枚ずつ引いてチェーンは終了した。
「・・・ほう、これはいいカードを引いた。
早苗、そろそろお前自身を使ってやるとしようか・・・」
「・・・!引いたのですか?それを・・・!」
「そうさ・・・私は『幻想絆・早苗』を召喚する!!」
神奈子が早苗から奪った最後のカード、「幻想絆・早苗」が神奈子の場に置かれると同時にその姿を現す。
まさに現身。その姿は全く同じだ。
攻撃力1300、守備力2000と守備を重視した数値ではあるが・・・。
「このカードが召喚に成功した時、墓地からレベル4の幻想族モンスター1体を特殊召喚できる。
私はこの効果で墓地から『幻想絆・雛』を蘇らせる!」
「幻想絆・早苗」がその手に持ったお祓い棒を掲げると、光とともに神奈子のフィールドに「幻想絆・雛」が蘇る。
信仰を失ったことでその攻撃力は1400へと減少したが、厄を発生させてフィールドのモンスター達を弱体化させる。
「・・・早苗、お前はこのターンで思い知ることになるよ。
私たちの強さは、お前が到底及ばないものであるということをね・・・」
純粋な神。その強さ。
早苗はまだ、その片鱗しか見ていないのであった。
後書き
不定期更新にもほどがあるでしょう自分。
今回は神々のスペックと早苗の攻めを描写。ただ、展開が展開なだけにあまり派手ではない。
神奈子のタクティクスに注目してくれればいいかなー、なんて。
「死なばもろとも」はいいカードですね。手札を気軽に補充できるカードとしては「裁きの天秤」とともに積極的に使っていきたいところです。
次回も不定期になりますが、ついにあの2体の神が降臨するかもしれません。
今回は終始早苗が遊ばれる、そんなデュエルになるかもしれませんね。
早苗の中では間違いなく次の布石となると予想出来ていたが、それが行われる前にまずは同時に墓地に送られていた「シャドール・ビースト」の効果処理である。
「『シャドール・ビースト』がカード効果によって墓地に送られた場合、私はカードを1枚ドローする。
これで私の手札は5枚・・・それに、こいつも引き当てることができた」
ククッ、とどこか不気味にほくそ笑みながら神奈子は効果を処理する。
やはり「幻想絆」の悪影響を受けているようだ。普段の神奈子ではない。
そして神奈子は、その引き当てたカードを発動する。
「さあ、見せてやるよ・・・私は手札から魔法カード、『夢幻想絆・天命魍魎』を発動させる!!」
「夢幻想絆・・・!?そのようなカード、紫さんが渡したカードの中にはありませんでしたよ!?」
「ほう?だが私もいつの間にか持っていたカードだしねぇ・・・」
「残念だけど早苗、存在している以上は受け入れるしかないよ?」
正体不明の魔法カードを疑いなく受け入れる神奈子と諏訪子・・・それも悪影響がもたらすものなのだろうか・・・。
そしてその効果も驚愕のものであった。
「このカードは自分と相手の墓地に存在する『幻想絆』モンスターを任意の数対象として発動する。
そして、2つの内一つを選択して効果を発動するのさ・・・」
(私の墓地も対象に取れる時点で明らかに恐ろしい効果を秘めていると予想が付きますね・・・)
「1つ目の効果を選択。対象となったモンスターを私の場に特殊召喚し、その数×500ポイントのダメージを私は受ける!!」
苦い表情を浮かべる早苗。ある程度覚悟はしていたが、「ソウル・チャージ」を「幻想絆」限定でコストやデメリットを最小限に発動できると考えればやはりインチキ呼ばわりできるほどの性能である。
そのうえ、これも1つ目の効果・・・つまり、2つ目の効果も選択できると考えるとやはり恐ろしい。
神奈子のモンスターゾーンに黒い渦が3つ出現すると、その中から3体のモンスターが姿を現す。
赤い上着とロングスカートの金髪の少女は紅葉の神、秋静葉。カード名は「幻想絆・静葉」。
黄色い上着、黒いロングスカートにオレンジのエプロンを付けた金髪の少女、静葉の妹で豊穣の神、秋穣子。カード名は「幻想絆・穣子」。
赤を基調としたワンピース、緑髪に赤いリボンを付けた少女は厄神様、鍵山雛。カード名は「幻想絆・雛」。
幻想郷内ではそこまで強力と言える神ではないが、それでも神は神。
その攻撃力は静葉と穣子が2200。雛が2400。言っておくが、いずれもレベル4である。
「・・・それらの神々は、自身以外のモンスターが2体以上存在しない場合、攻撃力を1400として扱うデメリットが備わっている・・・」
「その通り、信仰が無ければ大した力を発揮できないわけだ・・・まあ、今回の場合神様同士で信仰を補っているようなものだがね。
さて、ここで『幻想絆・雛』の永続効果が適用される。
このカード以外のフィールド上のモンスターの攻撃力、守備力は、その厄により300ポイントダウンする・・・味方も例外ではないね」
静葉、穣子、フォース・ストリクスは黒いオーラをその身に受け、攻撃力と守備力がダウンする。
2体の神は1900とまだ下級モンスターの基準ラインを維持しているが、フォース・ストリクスは1700。その光景に早苗は思わず眉をひそめる。
「この状況では私にとってはデメリットでしかないか・・・まあ仕方ないだろう。強大な力にはリスクが付き物だ。
それに、どのみち下級モンスターラインを維持していればダメージとしては十分だ。一気にいかせてもらうよ・・・」
そのままバトルフェイズへと突入する神奈子。静葉、穣子のどちらかでフォース・ストリクスを破壊し、残り2体で直接攻撃を決めれば早苗のライフは一気に半分以下に。ライフアドバンテージが軽視されている現在のデュエルモンスターズとはいえ、これは避けたいところ。
「バトルだ。まずは『幻想絆・静葉』でフォース・ストリクスを攻撃する!!」
「破壊はさせません!リバースカード、オープン!
『RR-レディネス』の効果により、このターン私の場の『RR』は戦闘では破壊されません!」
罠カードの効果を受けたことでフォース・ストリクスは迫りくる秋をイメージした弾幕に即座に対応。
主な弾幕を飛翔して回避しつつ、残る少量の弾は自身の爪で引き裂いて消し去り、その戦闘を凌いだ。
「まあ、先ほどお前が手札に加えたカードだ。この局面で発動させることは当然わかっていたよ。
残り2体が追撃したところで、フォース・ストリクスは破壊できない・・・バトルフェイズは終了し、カードを1枚伏せてターン終了だよ」
手札を3枚としてターンを渡す神奈子。
とりあえずフォース・ストリクスを残しつつ自分のターンを迎えられたのは幸いだ。とはいえ、このままでは3体の神には対抗できない。
「私のターン、ドロー!
ここでフォース・ストリクスの残るオーバーレイユニットを取り除いて効果を発動。再び『RR-バニシング・レイニアス』を手札に加えます・・・」
既に危機的状況。そのうえこれですらまだ本気ではない・・・だとすれば、早苗に出し惜しみをする余裕はない。
神奈子をキッと見据え、手札のカードを自身の陣に叩きつけるように発動させる。
「魔法カードを発動します!『RUM-レイド・フォース』!!
自分フィールドのエクシーズモンスター1体を素材として、ランクが1つ高い『RR』エクシーズモンスターにランクアップさせます!
私はランク4の『RR-フォース・ストリクス』でオーバーレイネットワークを再構築!!」
フォース・ストリクスが再び現れた時空の渦の中へと吸い込まれる。
しばらくその中で混ざり合った後に、渦ごと大爆発を巻き起こす。
「ランクアップ・エクシーズチェンジ!!
来てください、ランク5!『RR-ブレイズ・ファルコン』!!」
そこから新たに出現したのは、紅いボディを得たハヤブサ。
その攻撃力はたったの1000。さらに「幻想絆・雛」の厄をその身に受けたことで700へと減少する。
しかし、このカードの力はその攻撃力に非ず。それを示すかのようにブレイズ・ファルコンの体からいくつもの小さいパーツが浮かび出す。
「ブレイズ・ファルコンのモンスター効果!オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、相手フィールド上の特殊召喚されたモンスターを全て破壊し、その数×500ポイントのダメージを与えます!
神奈子様のモンスターは全て『夢幻想絆・天命魍魎』によって特殊召喚されているため、これで全滅します!」
それらパーツは神奈子のフィールドに群がるように展開すると、1つ1つがレーザーを放ち、「幻想絆」達に襲い掛かる。
いくら攻撃力が高かろうが耐性が無ければ回避することはできない。雛、静葉、穣子はそれらをその身に受け、爆発して消滅。
同時にそれらをコントロールしていた神奈子もその衝撃を受け、思わず腕で顔を覆う。
それでもダメージは受けるため、合計1500のダメージを受け、神奈子は「夢幻想絆・天命魍魎」のコストである1500と合わせて3000のライフを失い、その残りライフは5000となった。
「くっ・・・だが『幻想絆・雛』の効果を忘れたわけではないだろう?
このカードが破壊された場合、相手フィールドのモンスター全ての攻撃力を300ダウンさせる・・・」
ブレイズ・ファルコンが受けていた厄は、消えることなくそのままとどまり、攻撃力を700としたまま。
が、早苗にとっては大した問題ではない。元々低い攻撃力なのだ。たかだか300のダウンでは大差無い。
「ここはこのカードにご登場願います!『幻想絆・椛』を召喚!」
どこからともなく素早く飛び出したのは、白い服に身を包み、獣の耳を生やした白狼天狗、犬走椛。
攻撃力は1200と低いものの、かすり傷なり与えられるくらいの数値ではある。
「『幻想絆・椛』が召喚、特殊召喚に成功したことで、私は神奈子様がセットしたカードを全て確認できます!
さあ、見せてもらいますよ!」
素早く行動に移す椛。神奈子の場にセットされた1枚の伏せカードに近づくと、それを掴んで即座に表にする。
そしてそのまま早苗のフィールドに帰還・・・が、肝心の早苗は決して快いとは言えない表情であった。
なぜならその伏せカードが・・・。
「・・・『くず鉄のかかし』・・・でしたか・・・」
「くず鉄のかかし」・・・攻撃宣言時に相手モンスターの攻撃を1度無効にする通常罠カードだ。
それだけなら「攻撃の無力化」のような敵全体の攻撃を封じるカードの方が強力なのだが、このカードは発動後再びセットできるという他のカードにはほとんど備わっていない特徴がある。
そのため1ターンに1度攻撃を無効にできるという中々に優秀な罠カードなのだが・・・。
「このカードはセットのルールに縛られているからこそ1ターンに1度しか効果を発揮できない。
だが、私の場には『王家の神殿』が発動している・・・つまりだ。
セットした罠カードを1ターンに1度即座に発動可能とするこのカードと組み合わせることで、私は2回の攻撃を防ぐことが可能となるのさ・・・」
相手ターンではほとんどその効果を活かせない「王家の神殿」だが、こうして活かせるカードと組み合わせることでその能力を最大限に引き出している。
いわば、神奈子は自分ターンでは強力な攻めを、相手ターンでは強力な守りを操ることができるということだ。
「・・・このまま攻撃しても、2体の攻撃は止められる・・・私はこのままターンを終了させます」
手札4枚のままターンを終了する早苗。
ライフ差では既に大差をつけているものの、ここからさらに削り取るのは難しいことだろう。
「私のターンだね、ドロー・・・」
カードをドローし、4枚の手札にした神奈子。
・・・そして引いたカードをそのままフィールドにセットする。
「場にカードを1枚伏せる。
そして『王家の神殿』の効果により、伏せたこの罠カードを即座に発動させる。
罠カード、『死なばもろとも』!」
「うっ・・・ここでそのカードを・・・!」
「お互いの手札が3枚以上の場合に発動可能な罠カードだ。
互いに手札を任意の順番で全てデッキの下に戻し、私はこの効果で戻したカードの数×300のライフを失う。
・・・そして、お互いにカードを5枚ドローするのさ。
だがこのままだとライフが少し危ないことになるね・・・そこでこいつだ。
私はこのカードの発動にチェーンして手札から2枚の速攻魔法を発動させる。
『ご隠居の猛毒薬』・・・それが2枚だよ」
ここまで完璧な引きを発揮する辺り、神奈子の引きの強さは相当なものである。
そして早苗もこれらを見て増々表情を曇らせる。
「・・・『ご隠居の猛毒薬』・・・発動時に2つの効果を選んで適用する速攻魔法。
1つの効果は相手に800ダメージを与える効果。そしてもう1つが自分のライフを1200回復する効果・・・」
「その通り。私は最後に発動した方は回復の効果を、最初に発動した方はダメージを与える効果を適用させる。
チェーンの逆順処理だ。まずは2枚目の『ご隠居の猛毒薬』でライフを1200回復。
そして最初の『ご隠居の猛毒薬』でお前に800ダメージを与える」
フィールドに緑の煙と紫の煙が漂い出す。
緑の煙を吸った神奈子はその効果によりライフを6200に回復。
だが紫の煙を吸った早苗は咳き込み、そのライフを7200へと減少させる。
「げほっ・・・そ、そしてそれらのコンボはここからが本領を発揮する・・・!」
「そう、最後に『死なばもろとも』の効果だ。
私の手札は1枚。だがこのカードは発動時に手札がお互いに3枚ずつあればいい。ゆえにその後のチェーンの結果手札を失っても問題は無いのさ・・・」
(神奈子のやつ、相変わらず確実かつ派手にやるねぇ。
2枚のカードをチェーン発動させたことで手札の枚数は減り、デメリットであるライフ減少は2100から1500へと軽減された。
そのうえ、本来戻すはずのカードを使ったうえでドローするわけだから、神奈子が得るアドバンテージも相当なものだ)
諏訪子の分析通り、この場面で神奈子が得るアドバンテージは相当なものである。
神奈子は残った1枚をそのまま下に戻し、早苗は4枚の手札を一応順番を変えつつ下に戻す。
そして神奈子のライフは1500減って4700となった後、お互いにカードを5枚ずつ引いてチェーンは終了した。
「・・・ほう、これはいいカードを引いた。
早苗、そろそろお前自身を使ってやるとしようか・・・」
「・・・!引いたのですか?それを・・・!」
「そうさ・・・私は『幻想絆・早苗』を召喚する!!」
神奈子が早苗から奪った最後のカード、「幻想絆・早苗」が神奈子の場に置かれると同時にその姿を現す。
まさに現身。その姿は全く同じだ。
攻撃力1300、守備力2000と守備を重視した数値ではあるが・・・。
「このカードが召喚に成功した時、墓地からレベル4の幻想族モンスター1体を特殊召喚できる。
私はこの効果で墓地から『幻想絆・雛』を蘇らせる!」
「幻想絆・早苗」がその手に持ったお祓い棒を掲げると、光とともに神奈子のフィールドに「幻想絆・雛」が蘇る。
信仰を失ったことでその攻撃力は1400へと減少したが、厄を発生させてフィールドのモンスター達を弱体化させる。
「・・・早苗、お前はこのターンで思い知ることになるよ。
私たちの強さは、お前が到底及ばないものであるということをね・・・」
純粋な神。その強さ。
早苗はまだ、その片鱗しか見ていないのであった。
後書き
不定期更新にもほどがあるでしょう自分。
今回は神々のスペックと早苗の攻めを描写。ただ、展開が展開なだけにあまり派手ではない。
神奈子のタクティクスに注目してくれればいいかなー、なんて。
「死なばもろとも」はいいカードですね。手札を気軽に補充できるカードとしては「裁きの天秤」とともに積極的に使っていきたいところです。
次回も不定期になりますが、ついにあの2体の神が降臨するかもしれません。
今回は終始早苗が遊ばれる、そんなデュエルになるかもしれませんね。
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イイネ | タイトル | 閲覧数 | コメ数 | 投稿日 | 操作 | |
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53 | 零符「予兆、異変の始まり」 | 954 | 0 | 2014-11-24 | - | |
85 | 壱符「始まり、託された絆」 | 958 | 1 | 2014-11-25 | - | |
85 | 二符「開幕、紅き主の剣」 | 891 | 0 | 2014-11-26 | - | |
62 | 参符「ロストプライド」 | 1345 | 0 | 2014-11-28 | - | |
88 | 四符「心理の内」 | 822 | 0 | 2014-11-29 | - | |
84 | 五符「運命と微かな希望」 | 979 | 0 | 2014-11-30 | - | |
95 | 六符「歪められた運命」 | 1070 | 5 | 2014-12-01 | - | |
114 | 七符「正常な異常」 | 854 | 2 | 2015-02-16 | - | |
142 | 八符「見えぬその深さ」 | 1774 | 2 | 2015-06-13 | - |
更新情報 - NEW -
- 2024/10/25 新商品 SUPREME DARKNESS カードリスト追加。
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- 11/06 08:42 SS 第13話:スターブライト・ライジング
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- 11/06 01:09 評価 10点 《原石竜アナザー・ベリル》「【原石】ギミックをぐるぐるさせる…
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- 11/06 00:26 評価 7点 《魔轟神ルリー》「手札から捨てられるとそのまま蘇生される光属性…
- 11/06 00:13 評価 10点 《原石の鳴獰》「たったこれ1枚で、2000LPのコストのみでリクルー…
- 11/05 23:55 評価 10点 《原石の皇脈》「サーチ、打点強化、通常モンスターの供給と【原…
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- 11/05 20:32 デッキ 天盃龍+破壞劍
- 11/05 19:58 評価 3点 《No.20 蟻岩土ブリリアント》「最初期の《No.》兼汎用ラン…
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修正箇所は最初辺りのデュエル描写がごっそり抜け落ちていたためそのまま追加。
何やってんだと言わんばかりのミスですが、メモ帳でメモしつつ書いてそれを丸ごとコピーして写したうえでの投稿だったため気付かなかったものと思います。申し訳ありませんでした。 (2015-06-15 21:26)
早苗さんの活躍に期待です!
(2015-08-14 05:55)